貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える
アビジット・V・バナジー(著)
,エスター・デュフロ(著)
,山形浩生(訳)
/みすず書房
作品情報
貧困研究は、ここまで進んだ! 食糧、医療、教育、家族、マイクロ融資、貯蓄……世界の貧困問題をサイエンスする新・経済学。W・イースタリーやJ・サックスらの図式的な見方(市場 vs 政府)を越えて、ランダム化対照試行(RCT)といわれる、精緻なフィールド実験が、丹念に解決策を明らかにしていきます。
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商品情報
- 著者
- アビジット・V・バナジー, エスター・デュフロ, 山形浩生
- 出版社
- みすず書房
- 書籍発売日
- 2012.04.02
- Reader Store発売日
- 2016.06.10
- ファイルサイズ
- 0.8MB
- ページ数
- 408ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (77件のレビュー)
-
2019年にノーベル経済学賞を受賞した、インドの経済学者アビジット・バナジーとフランス人経済学者エスター・デュフロ(二人はご夫婦だそうです)の共著のこの本を頑張って読んでみました。
この本では経済、教…育、農業、政治を通し、人間の心理まで考えます。
言葉が非常に丁寧で、貧乏な国や地域の問題を読者の多くがいるであろう先進国の人たちも身近に感じることができるような説明になっています。
そもそも「貧乏な国、家庭はずっと貧乏である」、つまり貧困の罠に囚われるということはあるのかということは、長年議論されています。
貧しいことに対して他者(他国)からの援助は必要なのか。この問題は「貧困に囚われているなら、一つの世代に“どん!”と後押しをするべきだ」という意見もあるし、「そのようなおせっかいはその国の自由市場を奪う」という意見もあります。
それぞれ調査結果により勘案されてはいますが、数字だけではわからないその国や人の事情があり、それを現地調査しなければいけません。
例えば「マラリアを予防すれば医療費はかからないし将来的に働き手にもなり、経済的に向上する」と分かっていても、蚊を避けるための蚊帳をお金を出して買う人が少ないとする。この結果をどう読み取るか。「蚊帳を買わない人は貧乏な人だ。将来的に良いことだと分かっていてもお金がない」と言う場合もあれば、「蚊帳を買わない人はお金持ちだ。コネで無料で回してもらえるから」という場合もあるというわけです。
こちらの本では、例えば2つの地域に別々のアプローチをして効果を確認したり、数字だけでは見えない実情を現地で調査したりしています。
私自身は世界情勢政治経済がとても苦手なので根本が分かっていなかったり理解できないことも相当ありますが、
しかしこの本を読んで貧しいことへの問題について非常に身近だと感じたことは多々あります。
❐食よりも大切なもの。
・1日1食しか食べられない家庭があったとして、収入が上がった(または補助する)としても、1日2食になるのではなくて、その1食が少し良いものになるということ。
人間は味気のないものをたくさん食べるよりも、ちょっといいものを(高いもの)買いたがる。
⇒私達が「安月給だけどスマホは必需品」と思うのなら貧困の人たちも「1日1食しか食べられないけれどカラーテレビは必需品」と同じように思うのです。
❐教育支援のこと
・子供が複数いる家では、収入が上がったとしても全部の子供を学校に行かせるのではなく、一番できる子供をより上の教育(高価な学校)により高度な教育を与えたがる。
・学校を作っても、子供自身が行きたがらない。
・学校を作っても教師がいない、またはやる気がなければ意味がない。
・「この学校に入りこの技術を身につけたらこの会社で雇い、給料はどのくらいです」と現実的に示せば就学率は上がる。しかし「そこまでおせっかいするのか。その国が精神的に独立しない」ということもある。
❐貯蓄の難しさ
・全員が先の見えない大成功のために努力をしたいわけではない。自分の知っている範囲での成功で良いという考えもあるとなると、貯蓄や融資を利用するほどでもない。
・家庭内で夫のほうが妻より決定権があると、女性の意見は取り入れられづらい。
・融資を受けた場合、返却する、しない、は地域ごとになる。たとえば一つの村はほぼ全員が返し、一つの村はほぼ全員が返さない。人間は周りと同じ行動になる。
・人は、明日の自分は今日よりも立派になっていると錯覚する。
⇒「今日はケーキを食べて、ダイエットは明日から★」が実行できない私たちにも心当たりがありすぎますねorz
・1年間肥料を無料配布し、現実的に収益が上がった。しかしその村で翌年の肥料を買う人は少なかった。現実的に成功を体験したし、収穫直後は「翌年も肥料を買います!」と言ったにも関わらず。調査したら「肥料がある店が遠すぎて行けなかった」「肥料を買いに行くまでに、別のものが必要になり、肥料代がなくなった」
⇒似たような心当たりはありすぎますねorz
ではなぜ「分かっているけれど教育を受けない」「分かっているけれど貯蓄できない」「人は堅実な医療行為を受けるため貯蓄や保険を利用せず、呪いや即効性のある注射を信用する」のか。
それは、教育や貯蓄や保険によった良い結果が現れるのは長い先であり、成功するかもわからないので「賭け」になります。そのため「大変だけれど将来のため勉強しよう」「目の前のお酒を我慢して貯蓄しよう」ということが難しいわけです。…いや、これまさに自分orz
さらには途上国では「安心できる」「強制的な」社会システムが構築されておらず、確実性がないということもあります。
そして先進国では、教育、医療、保険、法律などの「後押し」「おせっかい」を知らず知らずのうちに受けて生きているのです。(同じ国の中での貧富の差も、根本はその「おせっかい」に手が届かないということ??)
…とこのように、貧乏な国の問題と言われると、戦争が〜旱魃が〜などの事情に原因があると思ったり、どうして蚊帳を買わないの?などと考えてしまいますが、
貯蓄や保険や教育などまさに私達と同じ考え方であり、人間の考え方は変わらないのだなと思います。
この本では、どうすればよいというような解決はないし、私自身も自分がすぐできる効果的な行動もわかりませんが、
「貧乏人の経済学」を身近なものとして感じ、そして今自分が所属している社会のシステムを見回してみよう、という気持ちになります。続きを読む投稿日:2020.01.25
このレビューはネタバレを含みます
事例が多く、事例に引き込また、
レビューの続きを読む
多くの本が引用、紹介されており、これ全部読めばいろいろ相当になるだろうなと感じた。時間がないのでトライ断ねん。
貧乏人へ金銭支援をする。あげた人は解決してほしい問題に…使ってほしいが、うまくいかない。貧乏人は目先の快楽にお金を使ってしまう。
貧乏人は、何も持たないから何でも自分でしようとする。チャレンジ精神が旺盛で、小さい家業を営む者も多い。が、ほとんどが小さすぎる。家業が生活の暮らし向きを飛躍的に向上させることはあまりないと言える。
政府からの支援は、その政策がまともで、それをしっかり実行する土壌があって成功する。
貧乏人の多い国では。政策、実行する土壌が整っていないことが多い。結果の出ない支援になることが多い。
支援が実を結んでいる例はある。
第一部
第一章
貧困に囚われているのか?
この議論は一般的な原則を理解するのに有効。所得や財産をすぐに増やす方法はあるが、投資をするにもお金がない人たちにとってその方法を選ぶことは難しく、障害となっている。大きく投資できる人が急速に増えるような状況では、貧困の罠が発生することになる。
もし、貧困者の急成長の可能性が大きい場合、豊かになるにつれて貧困の罠はなくなると言える。
貧困になってしまうルートがたくさんあるのではなく、主要な要因はごく少数。この問題を改善すれば、貧困を解消できる
現在はデータとツール(RCT)ランダム化対比試がある。。貧困アクション研究所(のちのアブドゥル。ラティーフ・ジャーナル貧困アクション研究所 J-PAL)は新しい経済学を実践できるように支援し政策立案者に広めようとしている
新しい経済学とは、理論だけでは不十分だった経済学を見直し、・・・?現実の状況がそうなっているのかを明らかにし。問題発見。解決策を模索する
■この新しい経済学の記述は私が書いたもの。本書では別の表現で不空箇所にちりばめられている。不足有)P29・32にグラフを用いて旧経済学、新経済学の違いが書かれている。
第2章
飢えているの定義を見直した方がいい。こんな現状がある。
貧困者で収入が増えた場合その増えた割合分食費に回されるのではない。また食料購入できた多としても、カロリーの最大化のための購入ではなく。よりおいしい高価なカロリーを買う傾向にある。
収入の増加について、貧困層と富裕層で食費に回す率は変わらない。収入が1%増加しても、食料総額は0.67%しか増加せず、この比率はに両層に差はなかった。
多くの人が貧困のままなのは食が足りているせいではない。
食事が十分になったととき、収入の劇的向上は見られなくなる。
また食料が買うようになれたとしても、食事を増やしたがらない。カロリー的に実際には減っている。他の栄養バランスも改善が見られない。もっとおいしいものを食べることが優先されている。(本分では中国の支援。インドの経済成長が事例にある)
■この点、―運動しても痩せないのはなぜかーの本と同じ傾向が書いてあると思った。普遍法則は非合理的な世界にあるんだなと感じた。まぁ訳の分からないモノに規則性を見つけようとするんだから当たり前か。不自然になるわ、そりゃ。
第3章
貧困の世界では、公衆衛生の改善が重要となってくる。水を殺菌する塩素系漂白剤、塩、砂糖、水道と下水施設、蚊帳、駆虫剤、栄養強化小麦粉などが必要となる。
貧困の罠の中にはしごを下ろしても、上り方を知らない、さらには登りたくないとすら思っているよう。
だが健康改善願望はある。健康のへのお金は、民間の医療機関(医師のレベルが十分でない)や伝統的祈祷師に使われる。公的な病院があってもそれを利用することは少ない。なぜか、それは病院がうまく機能していないように見えるから。看護師は欠勤が多く。患者も少ない。誰も利用してないことを不信がり足が遠のく。看護師は仕事がなく、欠勤して・・・の負のループがそこにある。
価格が安いという点も心理的に大きく影響する。人は高品質を価格で判断し。安いは無価値と判断してしまう。人は今の小さな出資をためらいリスクを未来へ先送りしている。小さな出資からの利益を過小評価していることが多い。
貧乏な人々は、情報不足、弱い信念、問題の先送りなどの問題に直面している。実は貧乏ではない私たちもこれらの問題を抱えている。今の公衆衛生の仕組みも知らない。豊かな国でも過干渉な支援が行われているが、仕組みの中に埋没し多くの人がそれに気が付いていない。過干渉の支援を受けると、生活の他のことに専念することができる。
貧乏な人々は、情報を得ても、うまくいかないことが多い。それが実情。
貧乏な人々への過干渉な支援は大きな恩恵を得られるのも事実
第4章
教育は良い結果を生みだす。が貧乏は人は兄弟の中で最も頭がいい子供に集中投資をする傾向にある。ほかの落ちこぼれ兄弟は教育の恩恵にあずかれず、多くの才能が無駄になっている。
公共教育の質は燦燦たるものが多い。私立の学校では公立の学校に通うよりも多くの勉強をする生徒が多い。しかし学力の低いも者も多くいる。P124 以下教育に正常な市場原理(学校間の競争による質の向上)が働いていない。教育の中にある独特の重要な問題などか書かれていた。割愛
第2部
省略続きを読む投稿日:2024.04.23
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