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総合評価

522件)
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    西加奈子さんの作品はあまり読んだことないけど、サラバ!はもちろん読んだ。本当に素晴らしい小説だった。 i は、シリアで生まれてセレブな日本人とアメリカ人の夫婦に養子にもらわれたアイという女の子の物語。当然アイデンティティの問題に直面する。自分はこの両親にもらわれなかったら、ろくな生活をしなかったかもしれない、もしかしたら死んでいたかもしれない、私が選ばれたことで、選ばれなかった赤ちゃんは死んだに違いない…。 そんな風に考えながら成長するって、どんな気持ちだろう。小説を読めば、たいていの登場人物には感情移入するけれど、これは簡単には想像できない。 アイは内向してゆく。数学の世界にのめりこむ。世界で起こるテロや飢餓、災害で多くの人が死んだと報じられると、それをノートに書きためてゆく。書いたからと言って、自分に何ができるわけでもない。辛くて仕方がない。 その数の多さを、どう受け止めれば良いのだろう?アイは内向してゆく。太ってゆく。生活が豊かで、太っている自分が許せない。 高校時代は、唯一の親友に救われる。年ごろになり、美しくなり、一人の男性と出会う。新たな悩みの始まり…。友人との行き違い。 ・・・ちょっと、結婚してからのアイの悩みが、私としては、それはまた別の物語で描いてほしかったかな、と残念だった。それより、アイを養子としてもらった母はなぜ自分の「本当の子ども」を持たなかったのか、そこにも必ず女性としての苦悩が存在するはずだ。そっちを少しだけ、ほのめかすくらいでも描いてほしかったな。まぁ、この作品はあくまでもアイの目線で、アイのアイデンティティの問題を描いている。 犠牲者の数をノートに書き続ける作業には、ある日突然、変化が訪れる。犠牲者はたったの一人だけれど、その一人の子供の名前が報じられ、ノートに一行、名前を書くのだ。 名前! 何人という数、何十人、何百人という数の羅列よりも、幼い子供の痛ましい写真と、その名前。その名前を書いたとき、アイの中で何かが変わる。 読者も、アイと一緒に心を痛めながら読み進め、その名前にたどり着く、ということに意味があるのかな。 残念ながらその後もテロや紛争、正義を語った戦争の中での誤爆、女性や子どもの襲撃、行き場のない難民の犠牲は増え続けているが、この世界には、アイがある。亡くなった人たちを思って心を痛める自分「アイ」はここにいていい。心を痛めたからと言って、何もできはしないけれど、確かに心を痛めている自分が存在している。それは、どこかへつながっている。 私も心を痛め続けようと思います。私にできることは本当にわずかだけれど。わずかどころか、何にもなっていないかもしれないけど。

    1
    投稿日: 2019.12.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    2019.12.09 読了 感想がパッと浮かんでこない! iの複雑な環境や、考えてすぎてしまう性質もなぜだかスッと読み進められるのが西加奈子さんの小説の不思議。 ・恵まれた環境にいる自分の葛藤 ・世界中で起きている悲惨な出来事に対して、渦中にいないものが悲しんだり、語ることへの傲慢 この二つが主軸であり、この二つの答えは 「愛があるか」 ちょっと違うかもしれないけど、私もiのように自分もとても恵まれた環境にいるのに、何者にもなれない自分との葛藤があった。 努力をしてさらなる高みを目指すことができない自分を恥じた。 でも歳を重ねるにつれて、相対的ではなく、絶対的に自分をみることができるようになって、とても生きやすくなった気がする。

    1
    投稿日: 2019.12.10
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    とんでもなく遠くまで飛び交える力を手に入れた情報のせいで世界はまるで蜃気楼みたいだ。 アイが負わなければならなかった負い目は何の為にあっただろう。 世界の悲劇は何の為にあるのだろう。 意味なんてない。 だけどやっぱり人は人の為にいる。 自分は誰かの為にいる。 無力でも無関心でも自分本意でも、それは人間の善性を否定しないはず。 自分と他者と世界の境界が曖昧であるが故にアイは苦しんだけど 自分の延長上に他者がいて、世界がある気がする。 言葉も物語もそれに連れ添って後押しをする。そうあってほしい。 西さんのそうあってほしいが込められてたのかなー。

    1
    投稿日: 2019.12.08
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    ミナさんとの関係がすごくよかった。 世界で起きていることがたくさん出てきた、最近わたしの口からなんと言っていいかわからない。

    2
    投稿日: 2019.12.08
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    虚数「i」の存在を久々に思い出しました。 西加奈子さんの作品は常に人間の内面を捉えていて、時に共感出来たり、時に否定したくなったりしながら読んでいます。

    1
    投稿日: 2019.12.08
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    一瞬で読み終えた。昔は、小説を読んで、泣くほどの心の動きを感じたこともある。 泣きはしなかったが、心はどのくらい動いたのか、後で何かの行動をするときに気づく気がする。 自分には、愛があるのか。 いつも自分中心に考え、自分に一番興味があり、人への主体的な働きかけは少なく、世の中のことは頑張って理解しようとしなければ頭に入ってこない。こんな自分。 少し前まで、愛こそが自分の強みだと思っていた。一番身近な人には、無性の愛を注いでいる、そのことは滅多にできることでは無いだろうと。その気持ちを疑い始めたのはここ最近。結局、自分中心なのでは無いか、思い通りにならないとイラつくじゃないか。 何を読んでも聞いてもどこに誰といても、自分への影響に一番興味がある自分には、愛があるのかと、もしかしたら愛とは一番遠い考え方をしているのではないかと、思った。 小説のメッセージの一つは、「今の自分の幸せを願う気持ちと、この世界の誰かを思いやる気持ちは矛盾しない」。 自分と世界を絡めて考えることをどれだけやっているか。やったときに、どんな考えを持つか。その考えに愛はあるか。 今までのことはわからない。 でも、この小説を読んだ今からは、考えることが出来るし、愛について意識することが出来るのではないか。 少なくとも、この小説という「世界」と「自分」をつなげて考えることは、出来ていると思いたい。

    2
    投稿日: 2019.12.07
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    西さんの小説はラストシーンでぐっと持っていかれる。 今回もそうでした。高揚感。 自分の存在を相対的ではなく、絶対的なものとして思えるようになったら、きっと、と期待してしまう。 期待するほど大きな変化じゃないかもしれない。 それでも、小さな変化はその人を強くするはず。生きていく力になるはず。

    2
    投稿日: 2019.12.03
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    世界で事件や事故、災害なとが起こって、被害に遭われた方々がいると、何故自分ではないのだろうと思う。同時に自分や自分の大切な人たちが被害に遭わなくてよかったとも思って、そう思ってしまうことが申し訳なくなってしまう。 被害に遭われた方々の苦しみはわからない。想像するけど、そんなんじゃ全然足りないことはわかっている。だから、心を寄り添わせることしかできない。 アイの苦しみは私の苦しみでもある。 そしてアイは存在していると、自分で自分を認めてあげられることが、アイの、私の救いでもある。

    4
    投稿日: 2019.12.02
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    自分のアイデンティティを強固に確立させるまでの、葛藤の物語。 アイはシリアで生まれ、日本人とアメリカ人の裕福で人間力の高い夫婦の元へ養子に貰われた。アメリカに住んでいる頃は、「個性を発揮せよ」という圧力に生きづらさを感じ、日本に移ってからは同族意識の高い環境において自らの容姿の特異さに悩むことになる。 だけどそれ以上にアイを苦しめたのは、「のうのうと」「苦労をせずに」「恵まれた家庭」に守られて生きている、奇跡のような事実である。この世には毎日何千、何万もの人たちが、理不尽な暴力や、戦争や、災害やらで命を落としているというに、自分が産まれたシリアでは内戦により幼い子らも陵辱され無残に亡くなっているというのに、実の両親もどうしているのかわからないというのに、なぜ私は、私だけは、何不自由のない暮らしを享受しているのか。不幸を語れないことに、申し訳なさや恥ずかしさを感じて生きていたのだ。 ミナはアイの高校時代からの親友だ。レズビアンであることをあるタイミングで告白し、アイのルーツやそれ故の繊細さを理解し、アイをアイのままで受け入れてくれる存在。 アイは自らの幸福に後ろめたさを感じながらも、愛する人とる出会い、自己受容をしていくことになる。 が、流産をしたことにより、またそのタイミングでレズビアンであるはずのミナが望まない妊娠をし中絶を考えていることを知り、言い様のない感情の波に飲み込まれてしまう。 物語の最後には、アイはミナの、ミナといるときの私の、かけがえのなさを再実感し、この世界に自分が確かに存在しているという揺るぎない事実を感じ取ることになる。 心に残ったフレーズを。 流産をしたときのアイの気持ち。 「ユウが男であるというそれだけで、彼のことを憎んでしまう一瞬があった。世界中の男たちに、一度でもあの診察台に上がってほしかった。大きく足を開かれ、器具をからだに突っ込まれて、死んだ子どもを掻きだされてほしかった。 この悲劇を、一度でも体験してみろ。」 関東大震災のあと、渡米を進める両親や親友の誘いを断り東京に残った時の気持ちを語るアイ。 「あのとき私は、残るべきだって思ったの。残ることできっと、命の危機を、その恐怖を語る権利を得たかったのだと思う。」「それってとても傲慢だった。そんなことで、被災した人たちの気持ちなんて分かるわけがない。」 「でも、渦中の人しか苦しみを語ってはいけないなんてことはないと思う。(渦中の苦しみ)それごどういうことなのか、想像でしかないけれど、それに実際の力はないかもしれないけれど、想像するってことは心を、想いを寄せることだと思う。」「私に起こったこともそう。私のからだの中で赤ん坊が死んで、その悲しみは私のものだけど、でも、その経験をしていない人たちにだって、私の悲しみを想像することは出来る。想像するというその力だけで亡くなった子どもは戻ってこないけど、でも、私の心は取り戻せる。」 ミナに会いたいという気持ちと、ミナを許せないという気持ちの狭間でどうしていいか分からず苦しむアイに、ユウが伝えた言葉。 「会いたいという気持ちと、理解できないという気持ちのふたつごあるなら、僕は会いたいという気持ちを優先させるべきだと思う。」「理解出来なくても、愛し合うことは出来ると、僕は思う。」 中絶しようと思っていることをアイに告げアイから距離をとられたが、自分の意思で最後には産むことを決意したミナ。でもそこに、アイや不妊に悩む人たちへの配慮があったわけではない。その想いはこう語られた。 「私は未だに、中絶する人は誰にも謝ることはないと思ってる。その人のからだは、その人のものだから。その人のからだは社会のためにあるんじゃない、子どもが出来ない人のためにあるんでもない。その人の命のためにあるんだって、そう思ってる。」 真剣に、真摯に、自分が大切に思っていることを自分の言葉で伝えることができる関係。いいな。

    2
    投稿日: 2019.11.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    一気に読んだ。 アイの思考は、つい、考えすぎたよ、と言いたくなってしまう。だけれども、日々恵まれた国にいて不自由のない生活をしている自分と、命さえ危ぶまれる人々を想う『矛盾』をそのまま矛盾として書いていることに多いに共感した。 西加奈子さん初めて読んだ、また読みたい。

    1
    投稿日: 2019.11.26
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    愛の話。 あなたは、ひとりしかいない。 ちゃんと、見て、ちゃんと、話したいと、理解したいと思える。 そして、こんなにもまだ、理解できないんだと気付いて、それでも、手を離したくない。と思う。 愛は、尊い。たぶん。

    1
    投稿日: 2019.11.24
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    うーん、なんとなく言わんとすることは理解できるのだけれど、終始『で?』が喉元までせり上がってくるかんじ。 この世界にアイは存在する、とみんなが思えたらいいね。 たぶんこの小説は今の時代の若者が読んだほうがいいとおもう。 大人が読んでしまうと、どうしても余計なことを言いたくなってしまうから。 (たとえば、ヒロインに対して、うだうだ言ってないで働きなさい!とか笑) 親の庇護の元にいるうちにこれを読んで何を感じ、何を想像できて何を想像できないのか、それを考えることは悪くない。

    2
    投稿日: 2019.11.24
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    2019/11/22-11/23 ほぼ一気読み。読みやすかった。 頼り、頼られ、一部グッとくるところもあったが、なんだろう、自分がその立場にないからなのか、共感が持てるほどまでは行けなかった。 もう一度読み返せば変わるのだろうか? それにしても出版社の「衝撃のラスト!」などで目を引かせるのは辞めさせてほうがいいと思うのは俺だけでしょうか…。

    1
    投稿日: 2019.11.24
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    iはアイデンティティのiでもある。一人の女性のアイデンティティの物語。つい最近の事件が出てくる。同じ立場に立つことはできないが、彼女の気持ちはわかる気がする。恵まれていれば居場所があるというものではないということ、境遇の違う他者を想うということを考えさせてくれる。

    1
    投稿日: 2019.11.23
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    読み終えた後、作ってくれて有難うと言いたくなる小説。 旅に出かけるよりも、世界を知ることができる小説。自分とは何かを問い続けるよりも、自分を知ることができる小説。

    1
    投稿日: 2019.11.23
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    生きていると誰もが、つまづく時がある。 でも、ひとそれぞれにつまづく場所が違って、周りは軽々とそれを超えていく。 主人公であるアイにとって、つまづいたのは、「この世にはアイは存在しません」という言葉だった。 養子として育てられ、本当の親も知らない。 ただの数学の定理である、2乗するとマイナス1になる、iが存在しないことは、育て親と血のつながりのないアイにとっては、ものすごく衝撃的で、それは成長しても、耳について離れることはなかった。 世界中で犠牲になる人と、そうならなかった自分は何が違うのか。アイは常にそればかり考え続け、苦しめられていた。 平等ってなんだろうって。でも、そんなことを考えられるのは、アイがとても繊細で頭がいいからなんだよね。 不確実であるにも関わらず、当たり前のように毎日は続いているように思えるし、嬉しいことがあったり、でもその一方で死んでいく人もいる。 目を覆いたくなるような、世界中で起こり続ける悲劇に、当事者でなければ、分かち合うことはできないのか。 いつまで経っても部外者にしかなれないのか。 その答えを、西加奈子さんは教えてくれているように思える。 西さんの作品を、はじめて読んだが、現実の冷たさ、人の温かさ、そして、叫び。 それらが丁寧に、起伏が混じりながら力強くまとまっているように感じられた。 この熱量が一気に駆け抜ける快感を、また味わいたく、西加奈子ワールドハマってしまいそうな自分。

    15
    投稿日: 2019.11.20
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    自分は◯◯なのにも関わらず恵まれてる…だから幸せになるべきじゃないと無意識に思い込んで、なかなか他者と思いを共有できず、孤独を感じてしまう。罪悪感で被害者側に立つことを望んでしまう。 ハッとさせられます。でも自分が単に望んで被害者側の立場に立とうとしたところで、痛みを味わおうと思ったところで、それは傲慢であり矮小な自己満足なだけ。なんですよね。 主人公は周りの愛情によって心情の変化が起こります。その過程の中で共感したり一緒に成長したり…いい小説です。終わり方もよかった。

    3
    投稿日: 2019.11.19
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    さすが。参りました、って感じ。乱暴に言うと、かの『サラバ!』をギュッと濃縮して一冊にまとめてみました、的内容。移民、トランスジェンダー、出産などなどについて、読者それぞれが自分なりに考えられるよう、上手い具合に導かれている。お仕着せがましい訳でなく、かといって全てを受け手に放り投げる訳でなく、絶妙のバランスで描き切る。凄い筆力。

    3
    投稿日: 2019.11.18
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    アメリカ人の父と、日本人の母の元に養子として育ったシリア人のアイ。 老舗の昆布屋で跡取りとして望まれ自由を求めようと生きるLGBTの少女、ミナ。 デモの中で出会った写真家の男性、ユウ。 「この世界にアイは存在しません」 というフレーズが繰り返され、主人公アイの繊細な内声とともに物語が進んでいく。 自分が恵まれているという認識に酷く苦しみながら生きるアイの姿が、読んでいても酷く苦しい。 他者との比較、自分自身のルーツについて何度も問いかけてくる作品。 メッセージ性が強く、読み手側の余裕がないと受け止めるのに力を使うだろう。

    1
    投稿日: 2019.11.18
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    難しいところは読んでるようで頭に入ってこない。 自分は無知だと思う。 でも西加奈子さんの作品が大好きです。 またしばらくしてから読み直したい。

    1
    投稿日: 2019.11.17
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    こころ揺さぶられる本でした。 自分の存在価値がわからなくなった時にぜひ手にてって欲しい。 世界はi(愛)に満ちている

    1
    投稿日: 2019.11.16
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    自分がどこにも存在しないし、してはいけないという思いから、愛すること愛されることを知って自分は存在してもいいという思いになり、最後には、存在している自分を人は愛してくれた、になるという心の移り変わりが鮮やかだった。 人の痛みを想像して苦しむことは傲慢でありながら時にそれが苦しむ人を救うという話には私も救われた気がする

    3
    投稿日: 2019.11.11