
総合評価
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powered by ブクログサラバ以来の衝撃を受けた。自己のアイデンティティとルーツへの探究。オブラートに包むところなく描写されている。スラスラと読める。
4投稿日: 2020.04.29
powered by ブクログアメリカ人の父と日本人の母のもとへ、養子としてやってきたアイ。内戦、テロ、地震、貧困・・・世界には悲しいニュースがあふれている。なのに、自分は恵まれた生活を送っている。 そのことを思うと、アイはなんだか苦しくなるが、どうしたらいいかわからない。けれど、やがてアイは、親友と出会い、愛する人と家族になり、ひとりの女性として自らの手で扉を開ける―― たとえ理解できなくても、愛することはできる。世界を変えられないとしても、想うことはできる。西加奈子の渾身の叫びに、深く心を揺さぶられる長編小説。 分かる、と思う自分と、分からない、と思う自分の両方がいて、それは多分私も遠いどこかで起きている悲劇に対して、自分でなくて良かったと思うと同時に自分が悲劇の中にいない偶然に後ろめたさを感じたり、寄付や施しに偽善を感じてしまうからだ。アイの気持ちは完全には分からないし、ファミリーツリーにこだわるのは生まれ育ちが大きいだろう。(ミナの決断の理由はよく分からなかった)だけど、血に関係なく、宗派や考え方が違ったとしても、分かり合えなくても、誰かを受け入れることやつながることは決して無理なことではない。家族や友人を愛おしく思うことに理由なんていらないのだ。
5投稿日: 2020.04.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
日本人の母、アメリカ人の父、シリア人の娘 (主人公)は養子、という三人家族。自分は生きていていいのか?という想いをずっと持って悩む主人公アイの物語。彼女が持つ孤独との葛藤を読んでいて苦しかった。けれど、彼女の苦しみに寄り添おうとしてくれる人たちがいる事で、主人公が再び歩みだした場面に温かくなった。 「目を逸らしてしまっている何か」が、救われる様な「アイ」の物語。
4投稿日: 2020.04.28
powered by ブクログ暖かくて優しくてとても切なかった。 心の奥がギュッとなって、この気持ちを忘れたくないという思いに駆られた。
2投稿日: 2020.04.28
powered by ブクログ長い長い思春期だなぁ面倒な子だなぁと思っていたのに、読み終えるとアイのことが大好きになっていた。 ままならない時世ですが、少しでも心が元気だったらみんなに読んでほしい。私も小説を読んで何かを感じられる程度には元気で良かった!! 見えない誰かに寄り添える心が大切なのはいつの時代も変わらないと思いますが、今はもしかしたら一番その時なんじゃないかと思ったり。 いや、でももっと大変な時代が今までもこれからもあるだろう!とか思ったり。 そう思える心が大事なんですよと西さんが言ってくれてるような。でもその先も考えてみようと諭されてるような。 とにかく読めて良かった! 引きこもりにも気合いが入ります! 見えない会ったこともない誰かを救うのだ!
3投稿日: 2020.04.28
powered by ブクログアメリカ人の父と日本人の母のもとに養子として迎えられたアイは自身の恵まれた環境を思うたび、祖国シリアのような恵まれない国の人々を思い苦しむ。そういった思いに苛まれながらも友人ミナとの交流やユウとの結婚、出産を通して自身の存在について考えがひらけていく。 自分の裕福さを恥じることで、遠い国で苦しむ人々が救われるわけではない。自ら困窮した生活を選択をする事で当事者になれる訳じゃない。 じゃあどうしたらいいのか。 「悲劇に思いを馳せる事自体に価値がある。」 ミナからの最後のメールは本質を捉えたとてもいい内容だった。つい泣いてしまった。 アイと同じような思いを抱えていた高校生の私に送りたい、そんな内容だった。
2投稿日: 2020.04.28
powered by ブクログ愛、孤独、幸せ、犠牲、自分、色々な事を考えさせられた。読んで良かったと思える作品。 ラストシーンがとてつもなく良い
2投稿日: 2020.04.20
powered by ブクログガーンとショックを受けました。 その渦中にいることのできない歯痒さのようなもの。 そんなこと望んではいけないことは分かっているのに、どうしようもなくて、どうしようもない。 ニュースに心を痛めたり、 ドキュメンタリーに涙を流したり、 かと思えば次の瞬間にはバラエティを見て笑っている。 そんな自分に吐け気がして、 そのくせ何もできやしない弱さに腹が立つ。 あとがきの "自分の幸せを願う気持ちと この世界の誰かを思いやる気持ちは矛盾しない" という西さんの言葉に救われる。 そう、ふがいなくて、わがままで、非力な自分に嫌気がさしても、目を逸らさずに知ること。自分の頭で考えること。 愛をもって、行動すること。 そう、世界に愛は存在するのだと。
8投稿日: 2020.04.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
主人公の葛藤がわかるようなわからないような、後半はあまりわからなかったところもあったけどアイが自分の存在の確かさを感じることができるようになっていく描写、だんだんと、そして急に感じるようになるシーンが印象的だった。主人公の気持ち全部に共感することはできなかったけれど、またもう一回読みたいと思った。
4投稿日: 2020.04.13
powered by ブクログほんわかした感じ。 アイ ミナ ユウ キャラが良い。 この世界にアイは存在しません。 素数 イラクの紛争 養子 デモ ハッピーエンドではないがハッピーエンドか?良かった 読みやすかった。
4投稿日: 2020.04.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
主人公の「ワイルド曽田アイ」は1988年にシリアで生まれ、その後アメリカ人の父ダニエルと、日本人の母綾子のもとへ養子としてやってきた。 両親は、アイが4歳の頃に世界の不均衡について教えるなど、子ども扱いせず、ひとりの人間として接した。またアイの気持ちを何よりも尊重した。アイは恵まれていた。しかし聡明なアイは、自身の恵まれた環境、選ばれた自分の命について苦しみ、その聡明さゆえに傷ついていった。 高校に入った時、数学Iの授業で聞いた虚数iの話、「この世界にアイは存在しません。」 虚な人間。自分の存在を否定するようなこの言葉は、ずっとアイの心に留まり続けた。 そんな中、同級生の「権田美菜」(ミナ)と出会う。2人はお互いの生き方に惹かれ、一定の距離を保ちながら親交を深めていく。ミナは自身が同性愛者であることを明かすが、アイはその事実を受け入れて2人は親友になる。 アイは大学院生になった頃に原発反対のデモに参加し、フリーのカメラマン佐伯裕(ユウ)と出会い、恋人になる。今まで自分の存在を否定していたアイが、ユウの存在によって自分を認めることができた。アイは幸せだった。 その後、婚約、妊娠、しかし流産。ユウとの繋がりを確かなものにしたかったアイは絶望し、あの言葉が甦った。「この世界にアイは存在しません。」そして想像した。世界中の、いわれのない悲劇に見舞われた人たちは、皆こう思っているのだろうか。「この悲劇を、一度でも体験してみろ。」 そんな状況の中、久しぶりにミナから連絡があり、思いもよらない告白があった。一緒に暮らしていた同性の恋人が出て行ったこと、恋人を裏切り男性と性交したこと(ミナは知らないが相手はアイの初恋の人)、妊娠したが中絶を考えていること。流産直後で、人の死に対して繊細な感情を抱いているアイにとって、ミナの選択は許すことができず、親友との連絡を絶った。 数日後ミナからメールがあり、今の自身の考えやアイに対しての想いが包み隠さずに綴られていた。 会いたいという気持ちと、許せないという気持ちが共存して返信できずにいたが、「理解出来なくても、愛し合うことは出来る」というユウの言葉に後押しされて直接会いに行くことに。 お互いの顔を見つけて、2人は涙を流し、お互いを許し、抱きしめ合っていた。 アイは、両親やミナやユウの愛を通じて自分の存在を理解した。「この世界にアイは、存在する。」 この物語は、道徳の教材のように思えた。小説として読むと面白味に欠けるが、読み返したり、考えさせられたりすることで、作品としての評価が上がっていくのを感じた。 世の中で悲惨な事件や災害が起こり、何人死のうが、どれだけ辛く苦しい最後だろうが、それはテレビ画面の数字でしかなく、数ある話題の1つでしかない。だけどその犠牲になった人は、自分と同じ1人の人間だということを認識させてくれる作品。 実際、作中に出てきたビン・ラディンの同時多発テロや、インドネシアのスマトラ沖地震のことは忘れていたし心を痛めたりはしないが、この物語を読んだことで情報の受け止め方は確実に変わると思う。 アイ(i)=自分 ユウ(you)=相手 ミナ(all)=皆 を登場人物としていたり、虚な主人公アイと虚数のiを絡ませてあるが、違和感はなく綺麗な作りだった。最後のミナの手紙は感動した。 個人的なことを書くと、中学か高校の頃、教育実習の先生が教壇に立って「人が生きる意味はありません。」って語っているのを思い出した。あの頃は、当たり前じゃんとか、わざわざ自慢げに話してんじゃねーよとか思ってたけど、今でも覚えているってことは少なからず影響を受けてたのかも知れない。 アイだけじゃなく人はみんな虚数みたいなもので、生きる意味も無く、だからこそお互いでお互いの存在を確かめ合う事しか出来ない。そういう事なんだと思う。
5投稿日: 2020.04.11
powered by ブクログ色んな人が犠牲になっているうえで、自分たちの今の幸せがあることを主人公アイが教えてくれた。 世界にはいろんな事件と共に死者が出ていることをアイの様に忘れずに生きていきたい。 これからの人生、ミナのように悩みを抱える人に出会ったとしてもそれを受け止める心の大きな人になりたい。ミナとアイの友情に感動した。
4投稿日: 2020.04.11
powered by ブクログ自分は、アイデンティティが揺さぶられていくような話が好きなのもあり、のめりこんで一気に読んだ。 アイデンティティは、周りの人間と比べたセクシャリティやナショナリズムの違いへの葛藤というのがイメージしやすいし、そういう作品が多いと思う。 本書は自己認識を揺るがすトリガーの一つとして、世界中で起こる悲惨な事件がある。「事件を免れた自分」という罪意識がアイの言動に、重みや苦しみをもう一層ずつもたらしていて、物語として読み応えがあったし、その視点は自分も大事にしたいなと思った。 話逸れるけど、人が祈る姿って美しいよね。何かに対して想像力を働かせて、良い未来を祈る姿は俺は結構好き。だからこそ、アイには終始気品を感じたし、「祈る権利は誰にだってあるでしょ?」というミナの言葉もめっちゃ好き。疲れちゃうんだけど、忘れてはダメだなって思った。
5投稿日: 2020.04.11
powered by ブクログ暗いなあ!笑 また共感できない主人公でした。 たぶん私と同じくらいに生まれてる設定。 お話に沿うように世界情勢が出てきて、あぁこんなことあったなあ、そうそうこの頃こうだった、って自分のアルバムも一緒に見てるような気持ちになりました。
4投稿日: 2020.04.10
powered by ブクログ自分の幸せが、存在が、たくさんの人の犠牲の下に成り立っているなんて考えたこともなかったけど、今、平和に暮らせているのも、何不自由なく生活できているのも、将来どうしようと未来を思って悩めるのも、幸せがあっていいと思える環境を先人たちが築き上げたおかげなんだなと。世界にはその環境をつくるためにまだまだ血が流れていて、それによって苦しむ人達が大勢いて。主人公アイの苦しみがそれを教えてくれた。 自分を愛し、許し、認め、向き合い、たまにへこたれて、他人に愛され、認められ、言葉を交わしながら進んでいくことが大切で、大切で、大切で。自分自身を愛することはこの上なく大事だけれど、やっぱり、人から愛されることは格別に素晴らしい。
5投稿日: 2020.04.09
powered by ブクログ自分という存在について主人公はずっと考え、悩んでいる。 主人公のように自分を異質な存在だと感じ悩んでいる人、そこまで大それではいないが自分について悩んでいる人、沢山いると思う。 難しいことだけれど内にしまっている感情や考えを周りの人に打ち明けてみるきっかけにもなる一冊なのではないかなと。
2投稿日: 2020.04.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
久々に読書をしました。 今まではプロットが面白い本(どんでん返しの展開があるとか)しか好きじゃなかったけど、食わず嫌いだったなと思います。面白かった!一つ一つの文章、節に目的があって、無駄なものがない、練られているなと感じました(やっと感じられるようになった)。 主人公のアイが自分の存在を肯定できるようになるまでのお話で、アイの考えや繊細さがひしひしと伝わってきました。 世界の不均一がテーマで、アイはシリアから養子として迎えられたことに、「恵まれてしまった」と感じていました。アイにとって、そのことは不公平で、恥ずべきことだったのです。しかし、ミナやユウなどに出会い、自分の存在を肯定できるようになります。世界は不公平で、その不公平さに苦しんでいる自分を、そのまま認めるのでした。 自分のことに置き換えて考えると、まず、自分は恵まれている感覚を持っていませんでした。多くの人が苦しんでいる現実はニュースとして飛び込んでくるけれど、それはあくまでもニュースで実感が伴わない。正直、この本を読むまで、世界のニュースに関して僕は全くの無関心でした。アイが持っていた悩み以前の問題ですね。 では、これからはどうすれば良いのか。これまで通りに無感心でいるのか、それとも世界の不均一に心を痛めれるようになるのか。この文を書いている今も定まっていません。無関心でいるのは、何かが違います。この本を読んで、アイの考えを認識した以上、もう無関心でいるのは不可能でしょう。それでは、心を痛めることができるのかというと、それも難しい気がします。とりあえず、今の自分にできるのは、不公平が存在することをどう捉えるのか、ということを考え続けることでしょうか。まだ、答えらは出ません。 以下、まとまってない思考。 世界の不均一は同じ時間に対して強く意識されていた。現実の問題に向き合っていた。時間的に遠いものは無視?極端な例として、石器時代の不幸は?一年前の不幸との、その線引きは? ミナが中絶をしないことが嫌だった。アイと話したことで、自分の考えを曲げてしまったように感じた。もっと説明が欲しかった。このことはもう少し考えたい。
4投稿日: 2020.04.08
powered by ブクログ"異文化"の中の独りと、 "みんな同じ"中での異質な存在。 どっちが本当に孤独なのかなんて わかんないよなぁ。 想像力って大事なんだよね、きっと。
4投稿日: 2020.04.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
社会と自分のつながりを強く感じさせる小説。たぶん、わからない人には一生わからない感覚。現代版「漠然とした不安」を描いてるとも言えるんじゃないか。 「自分は生き残ってしまった」という感覚に言及している箇所がある。これは私が小学校の一年生くらいに感じた恐怖だった。当時世界というものをほとんど理解していなかった私にとって、知らないどこかで大飢饉が起き、兵士になり、略奪し、死ぬ子供の存在を知ってしまった恐怖は大きかった。自分が生きていること、恵まれていることへの罪の意識のようなものを意識するようになり、疲弊するに至ったという事実が、アイのアイデンティティに少しだけ重ねることができた。 しかしアイは私と違い、繊細であり続けることに疲弊するのではなく、その罪の意識と世に対峙する傲慢さへの怒りを持ち続けていた。そのアイの葛藤がアイの人生であり、この話の面白いところでもある。そこに妊娠の話を入れ、アイの考え方を変えたことは、西加奈子さんからの「自分と他者」に関する強いメッセージを感じた。 以下、本作に書かれていないこと。 最近、当事者意識というものをよく聞くようになった。また、社会的貢献やボランティアという行為も広く普及するようになった。災害や貧困、社会問題があるところには、改善への希望として必ずそのワードが入り込む。 現代を生きる者にとって、非常に重要なキーワードだ。その一方で、本来の目的とはそぐわないような、自分が当事者意識を持つことによって救われている部分があるのではないか。どうしようもないやるせなさ、感じたくない優越感と、自分が置かれてる無力感。災害や何かの当事者を超越して、自分の身に起きていると感じさせることで救われる。そんな気概を感じてしまうのは私が斜に構えすぎだからか。 でもだからこそ、あくまでミナのいう「思いやる力」「想像力」が本質であり、これらに希望を持つことが重要だと、本作を通じて感じられた。
4投稿日: 2020.04.04
powered by ブクログこれでもかと言うくらい思慮深い主人公アイの心情を常に自分と照らし合わせながら読み進めました。 思慮深すぎるが故、なかなかに切ない展開もあったりしますが、共感できる場面とか、過去の辛かった自分を思い出せたりもして、泣ける物語やなと感じました。
4投稿日: 2020.03.29
powered by ブクログ繊細な主人公の内向の日々。 私も内向的だが、彼女とは違うタイプだなと思いながら読んでいた。 世界中のたくさんの悲劇に独りで向き合う姿勢は素晴らしいけれど、真似するのは難しい。 でも傲慢な罪悪感については、少し分かる。 登場人物のキャラクターやそれぞれの関係性が皆あまりにドラマチックすぎて、リアリティに欠ける気がした。 この作品の扱うトピックを考えると、デフォルメされた人物像は合わないのではないかと思う。
4投稿日: 2020.03.26
powered by ブクログアイの不妊と、ミナの特に望んでいなかった妊娠(最後は産む決意をしてくれて良かったです。)が、人生って本当にこういうものだよなあ、と 思ってしまいました。 面白かった。何でも言い合える女友達って最高だなあ。
4投稿日: 2020.03.24
powered by ブクログ自分は自身を利己的で冷酷な人間と判断していたつもりだつた。 けれども恐らく自分の不幸よりも不幸な人達が世界中にいることで自分の苦しみを否定しまうことが嫌でそのような人達に想いを寄せることを拒絶し、その想いを無意識に頭から締め出していたので自身を冷酷な人間だと評価していたのだとこの小説を読んで気づいた。 そして、そのような人たちの不幸を完璧には理解できないし、周りからは偽善的だと思われるかもしれないけれども、その人達のことを想って悲しんでもいいのだということを学んだ。 自分の生き方を少し変えることができたのではないかと思わせてくれる小説。読み物としては良くも悪くも読みやすかったかなという印象。
5投稿日: 2020.03.24
powered by ブクログ少し長く表現されすぎている。 世界で起きてる理不尽な死に心痛める主人公。 自分は裕福な家庭の養子として育ったことに悩む。 自分だけがこの幸福に浸っていていいのか。 なぜ自分は死なずに生きているのか。 世界での不幸や悲しみを思ってて嘆く権利すら 持ち合わせていないのではないかと。 恋人、親友、義理の両親との関わり、 自分だけの世界に浸れる数学を通し、 自分の存在を肯定できるよう成長していけるストーリー。 社会的な不条理や不平等さ、 世界で起きてる戦争や災害について 考えさせようとしているのだろうか。 表現が正しいか分からないが、 押しつけのようなものを感じ、 あまり響くことがなかった。
2投稿日: 2020.03.23
powered by ブクログ「この世界にアイは存在しません」 主人公のワイルド曽田アイはこの言葉にずっと振り回される。 自分はこんなに恵まれた環境にいていいのだろうか? 自分と向き合い、自分とは何者かと考え続けるアイの生き方はとても生きづらい。 どれだけ裕福で幸せであっても心は満たされないものなのか? 自分、幸せとは何かを考えさせられる作品。
2投稿日: 2020.03.22
powered by ブクログ人の悲しみに寄り添う事。人の苦しみを想像する事の何と難しいことか。たとえ親子であっても、同じ環境の中にあっても立場が違えば受け取りかたは全く異なってくるし、ましてや個々人のバックグラウンドすら異なる中で、もしかしたら悲しみに思いあたりもしないかもしれない。アイデンティティに深く悩んだ主人公アイ。彼女の思考を通して、世の中の事故、事件に意図せず被害を被った人々の心情を想像する事が、もしかしたら事件、事故の背景に怒りをぶつけるより、また知ったかぶりをして批判するより先にするべき事なのかもしれないと思うました。
4投稿日: 2020.03.20
powered by ブクログ虚数の存在を久々に思い出しました。存在しないと言われれば、確かに3次元の世界ではその通りかもしれない。そんな想像の類の数値と、退避した少女の半生が重なる物語。居ない様にも思えるが、存在が強く感じられるときも確実にある。
2投稿日: 2020.03.17
powered by ブクログ読んだ後自分の中で何かが変わった気がした。 ちっぽけな「私」でも、存在するし世界で何が起きているかもっと意識的に情報を取り入れていこうと思えた。 「想像は限界があるけれど想うこと」は積極的にしていくべき。 特に最後のシーンは、綺麗で儚く想像できる素敵なシーンだった。 又吉さんとの対談含め全てが素敵な作品でした。 多くの人の手に届くといいな..
2投稿日: 2020.03.16
powered by ブクログ「サラバ!」を読み終わって関連した小説を探したらこちらの小説に出会いました。 読んでいる中で、今まで気づかなかったり、見たこと、考えたことのないことを新たに認知することのできるきっかけの本でした(自分にとっては) 自分は大学一年生なのですが、今、これからより多くの問題(社会的、人間関係的etc...)を抱えながら日本の中心となる同じような年代の方にこそこの小説を読んでもらいたいと思いました。 大きな理由としては自分たちが生まれる前、もしくはまだ幼いころの出来事を題材にしているからです。 自分は高校で日本史を勉強していました。しかしながら、この本に書かれているようなことを耳に入れる機会はありませんでした。(当たり前ですが) だからこそ自分が何の事件にも巻き込まれず、安全に暮らせていることが当たり前ではなく、恵まれていることなのだと知ったときに、とても、驚きました。 また、この時代、自己の存在意義というものがとても薄れていると感じることが多くあります。 だから、一度この本を手に取ってみてまず何を思えばいいのか、どう行動するのか、自分とは、といろいろなことを考えてみる時間になればいいのかなと思います。
2投稿日: 2020.03.16
powered by ブクログ本屋大賞2017年7位。アメリカ人の父と日本人の母の養女となったシリア生まれの女性が自分の存在意義を問い続ける物語。この人の本はどれも切口が鮮やかでみずみずしい感性にあふれてる。ほいで、ぐいぐい心に迫る力強さがあって話の展開が凄いわけでもないけど一気に読まされてしまう。他の本では意図的に違和感が埋め込まれて物語も美しさを追求しない姿があんま好きじゃなかったけど、この本は自然な展開で、この人の本では一番良かった気がす。最後は主人公の長年の悩みが解けた感じがあるけど、人生ってそんなものなのかってのは良くわからんし、迫力は感じるけど共感するものではない。文庫は最後に作者と又吉との対談があるんだけど、自分にはあんまり理解できなくて、作者と又吉の会話が成立しているのかさえよくわからんかった。 あと、山田詠美の本読んだときも思ったんだけど幼少期の自分の心の動きを克明に再現できるのが作家としての一つの才能ですよね。あれって、成長の途中で何度も思いだして反芻するんですかね。まあ、その他の物事に対する感性というか細やかな心の動きがやっぱ作家の人は繊細ですね。結構生きるのが大変なのじゃないかと思ったりする。
3投稿日: 2020.03.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
鳥肌が立つ程度の感動が最後にあった。ずっと内向的で繊細な主人公に共感した。ちょっと自分からしたら繊細すぎたけど。それが綺麗に昇華された。誕生する人への純粋な祝福の気持ち、逆に悲劇に遭って死ぬ人への苦しみの気持ち。他人事で大袈裟なはずなんだけど、共感させてもらえた。素敵ですね。
2投稿日: 2020.03.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
シリアで生まれ、アメリカ人の父と日本人の母に養子として育てられた女の子の話。 裕福な家庭で愛情をたくさん受けて育てられるが、世界には貧困に苦しむ子供達や、戦争やテロで無くなる人が沢山おり、何故自分がそうではなかったのか、自分の置かれた幸せな環境に疑問を抱き、自問自答しながら生きる。 私はここまで深く考え込んだ事はないため、共感はあまりできなかったが、主人公の感情の変化がよく読み取れる作品だった。 家族や親友、恋人など、自分の存在を認めてくれる人が周りにいてくれることが素晴らし事だと感じた。 また、自分の存在を認めて貰えるように、周りの人を大切にして、愛を持って接しようと思う。
9投稿日: 2020.03.10
powered by ブクログ物事について深く考えることや自分の感情を表現することが面倒くさくなっていた。 この本を読んで、世の中の出来事にもっと関心を持とうと思った。自分の力ではどうにもならないからと考えるのはやめ、少しでもその事実、歴史的背景、当時者の気持ちを知ろうとしよう。 そしてそれを誰かと共有しよう。
2投稿日: 2020.03.08
powered by ブクログ一人の人間のアイデンティティと世界の不均衡についてフィクションを通じて書かれている一冊。私自身もその昔自分はこの世界に存在していていいのだろうか、何か意味があるのだろうかと生きていくことに苦しんでいた時期があったので、読んでいてとても感情移入してしまいました。若干隠喩的な要素もあるのですが、特に若年層の方が読むといろいろな解釈の仕方があるのかなと思いました。(個人的な意見です。)
2投稿日: 2020.03.06
powered by ブクログ生きる。現実の過酷さ。想像力。人間の孤独さ、そうでなさ。 この小説には色々なものが詰まっていて、簡単に感想をまとめることは難しいし、読むその時時において、受け取り方も変わってくるのだろう。 人が誰かの辛さを辛いものとして想像できる社会、もっとミニマムに、そういう関係があれば、きっとそこにいる人たちは幸せだろう。私はそのように、優しい人間たり得ているだろうか…と思った。月並みですが。しかし、けして、そういった「優しくあれ」というメッセージで終わるだけの作品ではない。繰り返しになるが。そこに至るまでには、人間の負の感情とか、過酷な現実が立ち塞がる。想像力をもち、優しくあるのは、難しい。
5投稿日: 2020.03.05
powered by ブクログ誰かのことを思って苦しいのなら、どれだけ自分が非力でも苦しむべきだと、わたしは思う。その苦しみを、大切にすべきだって。 理解できなくても、愛し合うことは出来ると、僕は思う。
2投稿日: 2020.03.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
初めての西加奈子作品。文庫本が出るのを心待ちにしていた作品であり、他のインタビューでも、西さんがどれほど本作に熱を込められているか伝わってきたので、読む前から心待ちにしていました。 実際読みはじめてみると、、あれ? 「この世界にアイは存在しません。」 この言葉に戸惑い、深く悩み、自己とは何ぞやと自身を追い詰めていく主人公アイ。 そこから、幼少期からの描写も4歳児とは思えない観察力と描写、、違和感。 そして各文章が短文のため、なんだか単調に読めてしまう。。 結局淡々と話が進んでいく(ように読めてしまった)前半分のおかげで、主人公アイは、途中いろんなきっかけがあって、自己を見出していく(=この世界にアイは存在する!)のだな、、と、妙に冷めてしまった私。。 言葉が紡ぐ細かい心情描写モノを好む傾向もあり、ちょっとこれは次はないかな、、と思っていましたが、後半から一気に西さんの熱に打たれ、時間を忘れて読み耽ってしまいました。 自身を受け入れること、幸せと感じる状況を素直に見つめ直し、他を想う感情を否定しないこと、閉ざさないこと、熱い言葉たちが並べられる中、心臓をぐっと掴まれて語りかけられているような、そんな感情を覚えました。 文章や言葉が綺麗、うまいとは正直そこまで思わないけれど、メッセージを物語へ乗せる術が巧みだなと感じました。 読後は、その他の西加奈子作品にも触れてみたいなと、素直に思えた本作品でした。
2投稿日: 2020.03.05
powered by ブクログ何とも感想が言い難い作品。共感できる部分もあるけど。 もう少し奥が深い展開と結末があるかと思っていたが、そうでもなかった。
2投稿日: 2020.03.04
powered by ブクログ読書できなかった私が、親友に「考え方っていうか感じ方が似てるよ」っておすすめされて読みました 西加奈子さんの作品初めて読んだけど、わたし絶対西加奈子さんすきだぁってなったし、これをすきな作品にしてる友人も好きだし、人間らしいところ感じれる映画やお話がすきなので一気にファンになりました 何度も読みたいとおもうとおもいます!
2投稿日: 2020.03.03
powered by ブクログ「想像するってことは心を、想いを寄せることだと思う。」 「いつの間にか、体温だけでその人がどんな風に思っているのか分かるようになった。」
3投稿日: 2020.03.02
powered by ブクログやはりこの人の小説は中東をからめた話が多いが、この小説も主人公のアイデンティティという形でからめてある。やや社会派てきなテーマと言ってもいいか。
2投稿日: 2020.02.29
powered by ブクログ西加奈子さんの文章では、一つ一つの感情が、自分のものであるかのように強烈に、鮮明に表されていて驚く。どれだけの思いやりや想像力を持って生きたらこんな文章が書けるようになるのだろうと思う。色んな人が、他人には想像もつかないようなことで悩んで、苦しんで生きているのだろうか。恥ずべき苦しみなんてないのかもしれない。本当に、愛に溢れた小説だと思う。 2回め読了。重量感のある作品。やっぱりすごい。
3投稿日: 2020.02.28
powered by ブクログ最初はすごくストンってきたけど、ラストに向けては離れていってしまった。自分の今の考え方とか捉え方が、この本を通して再認識できた。
2投稿日: 2020.02.28
powered by ブクログわたしには合わなかった! 悩んでることが贅沢すぎて、話に入り込めない。 でもさらさら読めるし、なんだろうなと思いつつ ハッとする言葉とか考えが溢れている。 面白かった、共感はまったくできなかったけども。
2投稿日: 2020.02.27
powered by ブクログタイトルと帯に惹かれて購入しました。 アイは、自身がシリアという貧しい国で生まれながら、養子として裕福な両親のもとに産まれたことにずっと引け目を感じていたようですが、僕は彼女が、とても共感能力に長けている女性のように感じました。 自分のことばかり考えてしまうのは多くの人間の特徴であることはもちろん、近年では、アメリカ・ファースト、イギリスのEU離脱のような、自国中心主義が世界規模で蔓延しています。 このような風潮が続くとますます、先進国と途上国、ひいては地域における人々の格差が広がっていき、それこそ、アイが感じていたような悲壮がこの世界から消えることはないでしょう。 大切なのは「愛を持った想像」であり、そうした心遣いこそが、一人一人に生命の息吹を与えてくれる。 国同士の分断が熾烈化している世界を生きる我々にとって、今一度その意味を考える必要があると思いました。
2投稿日: 2020.02.27
powered by ブクログ主人公のアイは恵まれた人間なんだろうけど、恵まれた環境ゆえの、アイだからこその悩みがあっていい。それが許される世の中になってほしい。世界の不幸は想像することしか出来ないけど、想像することで寄り添う事が出来る。アイの事も、世界中で死んでいく人達の事も、遠い世界の話ではなくて境界線を無くすことで身近な話になるかなって思いました。共感でなくとも、想像することで新しい価値観が生まれるといいなぁ、個人的には最近イスラムのノンフィクションを読んだのでより身近に感じました。読んでる最中は某CMのそこにアイはあるんか?が頭から離れなくてめっちゃ邪魔でした。
2投稿日: 2020.02.26
powered by ブクログ複雑で恵まれた境遇の主人公アイは最初は自分自身を認めることができずに生きづらさを感じている。 ありのままの自分を認めることができないいわゆる自己肯定感が低い人物設定。 一見すると「なんでこんなめんどくさい考え方してるの???」と思ってしまいがちだが、そこは心理描写と状況説明の巧みさで、「なるほど、アイはそういう事情や解釈のもとで苦しんでいるのか!」と大変納得させられる。 他者には自分とは全然異な色々な事情や価値観があり、 そこには実は今の自分では想像をつかないようなストーリーがあるのかもしれない。 そんなことを考えさせられる作品だった。
3投稿日: 2020.02.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
自分の養子としての生い立ち・裕福な生活の狭間と、世界中で起こる悲惨な事件との中で「自分とは何か」という事へ葛藤を繰り返す主人公の話。結構重いテーマなはずなのにすごく読みやすく一気に読んでしまったのは西加奈子さんさすが…! ラスト、あれ、これで終わりかっていう感じも少しあったけど、今後は読者に想像させるようなこの終わり方でいいんだろうな。
2投稿日: 2020.02.20
powered by ブクログ「自分」を見つめるということは他者との比較でしかなし得ないのか。メッセージ性の強さに引き込まれたが、風呂敷を広げた割に最後があっけなかった印象。テーマは面白かった。
2投稿日: 2020.02.20
powered by ブクログ「この世界にアイは存在する。」 主人公のアイ(I)と、親友のミナ(ALL)、そして恋人のユウ(YOU)。 アイちゃんは2人と交わることで自分を表現できるようになり、愛を信じられるようになったんだなと。 あったかいお話でした。
2投稿日: 2020.02.17
powered by ブクログ西加奈子の著作は初めて読んだ。 三人称で書かれているのに、一貫してアイの主観から書かれている。アイの自己評価の低さが伝わってくる気がした。 アイの自己評価の低さに「付き合いにくそうなヤツだなあ」と思いつつ、自分が恵まれていることに対する劣等感に思春期の頃の気持ちを思い出したり、両親やミナやユウの(特にミナの)優しさに泣けてきたり。 仮に惚れた男がDV夫だったら、アイはどうなってたんだろう? 読んでる最中はとても感動していたのに、その感動をうまく言葉にできない。
2投稿日: 2020.02.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
この世界にアイは存在しない。 その言葉がアイを縛っていたのは、アイ自身が誰よりも愛があると信じたかったんだなぁと 読み終えてから気づけばもう一度読み返していました。 途中友人から送られてきた本の内容、私達のことを想像すらしなければ私達は0になる。という言葉が深く突き刺さりました。 本当は少しズレてしまいますが、ニュースを見ると気分が悪くなるので普段見るのは避けています。気分が落ちて迷惑をかけることがあるからです。 間違ってはいないけれど、その人達がいる事を知りさえしなければ、悲劇を短くすることは出来ないよな、と考えさせられました。 同時にアイはすごく良い友人を持ったなと思いました。 否定する訳じゃなく、アイが後ろめたいと思っていた事を肯定する。認める。 だからこそアイは多分自分らしくいられたのではないかな。 幼少期の記憶はその後に大きく影響されると思います。 元々聡明だった彼女が引目を感じてしまうのは、しょうがなかったと思うし、それでもアイはあると叫んだ彼女がとても輝いて見えた。 アイはあると言いたくなる作品。
3投稿日: 2020.02.15
powered by ブクログアイはシリアで生まれ、アメリカ人の父と日本人の母のもとに養子としてやって来ました。 アイは、恵まれた部屋、恵まれた環境、恵まれた自分の命のことを思い苦しむ、聡明で、もどかしいほどに繊細な子どもでした。いつも自分の幸福を、そして存在を持て余していました。 「この世界にアイは存在しません。」という数学教師の言葉は、そんなアイの胸に居座り続けました。 他人の悲劇に想いを馳せて、考えることに意味はあるのか?―そんな問いへの答えが、この小説にはありました。 そういう時間を過ごして、向かい合ったからこそ出来ることがある。それは、生きている人間にしか出来ないこと。 「この世界にアイは、存在する。」 だから私は、アイの気持ちを想像します。そのために小説を読みます。 アイは、西さんは、そのことに気付かせてくれました。
4投稿日: 2020.02.15
powered by ブクログ「命を脅かされることのない人生を送ってきた」という自覚さえなかった自分を恥じる。その自覚の上で堂々と命を肯定するのが、この作品。あらゆるものが飽和した日本にいると、自分を「持たざる者」のように思いがちだけれど、明らかに「持つ者」であることを自覚したい。口だけでなく。 後半は涙が止まらなかった。「読み終わるのがもったいない」という感覚をおぼえることはよくあるけれど、その感情に従ってゆっくり細切れに読んでもこんなにボロボロ泣ける小説は、珍しい。
2投稿日: 2020.02.11
powered by ブクログシリア生まれの少女が主人公。幼い頃にアメリカ人男性と日本人女性の夫婦に養子として引き取られ、幼少期はアメリカで過ごし、中学から日本で過ごす。 両親は惜しみなく愛情を彼女に注ぎ金銭的にもなに不自由なく過ごしていたが、なぜ自分はこんなに恵まれているのだろうか、毎日沢山の死者が出ているのにこんなに幸せで良いのだろうかと思い悩み、それは呪いのように彼女に付きまとう。 親友や配偶者を得て一時は自分の存在をポジティブに受け入れることができたが、あることがきっかけで自分を見失いかけ親友とも気まずくなる。しかしそこから抜け出した時に改めて自分と向き合う。一言で言えば、自分探しの物語。 主人公は恵まれた悩みにひとり悶々としているなぁという印象。確かに自分自身の存在価値が自分の中で納得できないと悩むことはあると思うが、これほど長い期間よく悩み続けられるなぁと。両親がいて親友がいて配偶者がいる時点で存在価値はあると思ってほしい。養子として選ばれたことに引け目を感じてしまうほどの繊細さを持つ必要はないし、もしそう感じてしまうのならば、選ばれなかった人たちになにができるのかということを考えることもできるのではないか。 自分の中だけで悩み続け内向していく主人公にイラッとするし、まわりに頼ってばかりで自分から与えることをしないのにもイラッとするが、そういうところが人間味がある感じなんだろうか。
3投稿日: 2020.02.11
powered by ブクログ読後、普段は自分でレビューを書いてから他の方のレビューを見るようにしているが、今回はいろんな感情がごちゃまぜになって書きたいことが全くまとまらず、先に皆さんのレビューを読ませていただいた。それくらい、この作品を読んで心が揺さぶられた。皆さん、きちんとこの作品を自分で昇華されていて尊敬します。 未だにまとまりませんが心の中にあるもやもやしたものを記録します。 シリアで生まれたのち、アメリカ人と日本人の夫妻に養子縁組されたアイは、幼い頃はアメリカ、思春期以降は日本で恵まれた生活を送るも、自分のアイデンティティやその恵まれた境遇に疑問を感じ悩み続ける。 アイの悩みを日本生まれ日本育ちの私が自分のものとして抱くことはできない。できないけれど、なんとかアイの気持ちを理解できないかと自分なりにもがいた時間こそが、もしかしたら今後誰かの力になるかもしれない。これまで、世界で起こる様々な不幸な出来事を新聞で読むたびに、苦しい気持ちになるのと同時に、思うだけで何もできないのなら、いっそ知らない方がいいのでは、と思うことも多々あった。でも、そういう情報に対してきちんとアンテナを張って、少しでもできそうなことはないか考えること、直接は世界を変えることが出来なくても、せめて自分の周りにいる人が笑顔でいられるように行動することを心がけて生きていけたらいいのかなという心境になった。 後半の妊娠にまつわる出来事は、今まさに自分が二人目を妊娠していることもあって辛すぎた。実際周りを見ても、子宝に恵まれている人もいれば、不妊治療を行っている人もいる。子どもは授かりものだと頭では分かっていても、境遇の違いは時として友人関係を変えてしまうことも理解できる。 アイとその親友ミナの場合はこの出来事を乗り越えて、お互いの想いを受け止め合って以前よりももっともっと強い絆で結ばれた。そんな二人を本当にすごいと思う。相当なエネルギーを要したはずだ。この二人を見ていて、人間はお互いの様々な違いを乗り越えて、本当に繋がる、通じ合うことができるんだという希望を持つことができた。 一人ひとりの「I」=「私」が他者と「愛」を分かち合って生きることができれば、この世界はもっともっと幸せになるんじゃないか。そう思わせてくれた筆者に感謝です。
19投稿日: 2020.02.09
powered by ブクログ人生に行き詰っていて、なおかつ自分の苦痛を肯定できない状態で読むにはキツい本。主人公に自分を重ね合わせてしまった。主人公の人生をなぞることで今までの苦しみを追体験するような気持ちになった。物語の結びでは、世界と自分の人生の距離の取り方について一つの結論に達していて、読後感はすっきりとしていた。 世界中に悲惨な体験を強いられている人がいるのに、比較的恵まれた環境にいるはずの自分が今苦しみを感じることは甘えなのか?というのは意外とコモンな問いなのかもしれない。
2投稿日: 2020.02.06
powered by ブクログ仕事の多忙を言い訳に、2ヶ月ほど読書をサボっていた自分を恥じるところから始めたいと思います。でも、久しぶりに読んだ小説がこの一冊で本当に良かった。 こういうのを人間賛歌と言っていいんだろうか。安定と信頼の西さんの小説ってことですぐさま手に取ったけど、タイトルの通り愛に溢れた物語だった。生まれてきてくれたこと、ただそれだけの事実に無償の感謝を捧げるという人が本来持っている優しさをどうしても表現したくてたまらなくて、それを全身全霊で言葉にしたのがこの作品なんだと思う。サラバ!を読み終えた時にも感じたけど、自分には受け止めきれないくらいの大きなパワーに押し潰されるような気持ちになった。さながら元気玉で潰される魔神ブウのような。 内戦とか紛争とか、自分はそれでも大人かよってくらい世界情勢に疎くて、テレビやネットでニュースが目に入ってくる度に「うーん…」とは思うもののそれは悲しいかな他人事でしかなくて、「胸が痛くなる」と形容されるような出来事が地球の裏側で起こったとしても、食事中に思いっきり唇を噛んで出来た口内炎の方をきっと痛がってしまう。「貧困や戦争といった世界の悲劇を心の底から悲しいと思うのなら行動すればいい。そうじゃないなら本気じゃないってことだ」って、自分の中でよく折り合いをつけながら生きてる。生きてしまっている。でも、そういう0か100かで割り切れる考え方だけじゃないんだよってことを言ってもらえたような気がしたというか……。 ラストシーンの疾走感、サビに向けて盛り上がっていく音楽を聴いているようで心が揺さぶられました。ありがとうございました。
2投稿日: 2020.02.04
powered by ブクログ思っていたのと全く違うストーリー。 全く考えたことのない観点から描かれた、自分の価値観や考えの狭さ薄さに愕然とするお話。 シリア生まれで、アメリカ人の父と日本人の母のもとに養子としてやってきたアイが主人公。 考えざるを得ない環境にあるとはいえ、自分の存在や世界の問題に孤高に向き合おうとするアイの、その賢さとそれゆえの孤独と不安が真っ直ぐに伝わってくる。 ラストシーンで救われる気がした。 また間を置いて読みたい小説。
2投稿日: 2020.02.03
powered by ブクログ「この世界にアイは存在しない」 アイはこの言葉の呪詛を抱えながら生きて、もがきながら答えを探して行くけれど、私はそんなアイを通して、生きる事の意味を考えさせられた。
2投稿日: 2020.02.01
powered by ブクログ人の世に、不条理と格差はつきもの。そして、メディアのおかげで、人の世に起きる殺戮や飢餓や惨事を、すぐそこにあるもののように見ることができる。だけど、次の瞬間、私たちは、暖かい飲み物を飲み、お風呂に入り、ほかほか布団にくるまって眠る。 この物語の主人公は、その親友が語るとおり、敏感で物をよく考える人なのだろう。だけど、彼女の出自が、より一層、意識せざるを得ないものとして、世の矛盾を突きつけてきたのも事実だろう。 この物語は、その彼女が、全身で命を抱きしめるようになるまでを描いたものかも知れない。だから、これは青春小説で、刻々と変わる世界情勢に触れていても、どこか寓話のような味わいがある。 そして、この物語は命の賛歌でもある。原初の海で、命は羊水の中の胎児のように育まれたと聞いたことがある。西さんの小説からは、こういう風合いをよく感じる。
2投稿日: 2020.02.01
powered by ブクログだれしもかけがえのないものは、他でもない自分。自分を認めることが周りの者を認めることなんだよなぁ。 そして自分の血を通わせることの出来る部分に、なんらかの境界線はあるかも分からないけれど、想像してみる、それが「愛」であり、「i」をみつける旅(人生)なんだなぁ。
3投稿日: 2020.02.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
多国籍の家庭、養子、LGBTなどアイデンティティの話かと思いきや、震災やシリア内戦を舞台に、当事者でない人間が人の痛みを想像し、共感することの意味を考えさせられた。とてもよい言葉が散りばめられた素敵なお話です。
2投稿日: 2020.01.29
powered by ブクログ遠い世界の無数の恵まれない人たちに対して、常に罪悪感を感じ続けて毎日を送るって、人生ハードモードじゃないですかね。
2投稿日: 2020.01.29
powered by ブクログとにかく私たちは世界を知らない。 そして、世界を知ろうとしない。 胸を痛めることから避けている。 この瞬間に、自分自身が生きている。 そう強く考えることができる本であった。 この奇跡の重なりのさきに、自分というアイデンティティが存在している。 筆者の西加奈子さんの思い、そして主人公アイを襲う数々の出来事に、共感し、思考を辿り、自分を確かめ合うことができた。
2投稿日: 2020.01.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
自分もアイのように考えていた時期があったなーと思った。弱いこと、虐げられていることはある文脈では絶対的に強さがある。特別に不幸な経験をした人は力強い発言権を得る。自分がその発言権を持っている恐怖もあるし、一方で震災を一度も経験したことのなく、語ることのない寂しさもある。 アイ=自分、ミナ=社会とあとがきに書いてあった。 ミナは社会なので同性愛者であり、パートナーがいるのに異性の元同級生と避妊もせずにセックスをする。社会にはそういう軸のなさやブレがあると思う。 しかしアイは孤独な自分なのでそれがない。生まれたときからずっと存在しており、何があっても何がなくてもアイはアイである。 社会と自分の交わり合いで成長したり慰め合ったりするけれども、そういう違いがあると思った。
2投稿日: 2020.01.24
powered by ブクログ孤独とか、死とか、セクシャリティとか、自分のルーツとか。いろんなものに対して、考えるためのヒントをググーッと手繰り寄せてくれる作品だった。 ところどころで、「あ、私もそういうこと考えてた」と、日々の生活のなかで人に言ったことのない、話題にものぼらない、通り過ぎていく程度の気持ちすら、生々しいまでに書いてあって、見透かされてしまった気すらした。 次に再読したときには、また今とは違う感想を持つのかもしれない。それでも、きっと再読しても「この本、好き」という率直な、でも一番根底に残るであろう思いだけは抱くに違いない。
2投稿日: 2020.01.24
powered by ブクログずっと興味があった本。 読んでいてアイが乗り移ったみたいに色々考え過ぎて辛い部分が多かったけれど、アイが自分のいる世界に幸せを感じてくれた事がすごく嬉しくて涙が出た。 こんなに登場人物の心の痛みや喜びが伝わってきた話は今までなかった。興味を持って読んでよかったし、もちろんまた読みたいし、この話の続きも出て欲しい。
2投稿日: 2020.01.23
powered by ブクログ今まで読んできた著者の作品の中でも重く、正直今回はいつもほど楽しめないなあと思って読んでいた。 ハッピーな場面が本当に数えるほどしかなく(主人公の主観だが)基本的には孤独と後悔などの描写が多い。 それだけにラストシーンがすごい。 ほぼ全編を覆っていた空気感を昇華するこのラストを読めたからこその良い読後感。
2投稿日: 2020.01.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
世界で起きている悲惨なニュースはまともに向き合うと恐らく耐えきれない。それでも今起きている出来事として無関心でいられない。考え続ける、悩み続けることは無意味ではないと思いたい。人の心のうちを、自分自身の心でもうまく言葉に出来な微妙な違和感、嫌悪感を上手に掬ってくれる作家さん。
2投稿日: 2020.01.19
powered by ブクログラストのシーンがグッときました。悩みに悩んだ主人公が、悲しみの絶えない世界と繋がり、世界を抱きしめて、抱きしめられる。そんな描写が素敵でした。。
5投稿日: 2020.01.19
powered by ブクログ20200117 作者の思いが痛いくらい感じられた。たまに読むのが辛くなるところもあったが生き方の問題とぶつかるところだった。逃げてきた自分も肯定してもらえるような気がして読後感はスッキリではなくズッシリかな。少しは世界に目を向けようと思う。
2投稿日: 2020.01.17
powered by ブクログ西加奈子さんの思いがぎゅっと詰まった作品。 移民、セクシャリティ、出産などの問題が一人の女性の中で、揺れ動く。 重たい問題も苦痛でなく、読み続けられる。 その中には数学の美しさも。 巻末の又吉さんとの対談も含めて、とてもよい作品でした。
33投稿日: 2020.01.17
powered by ブクログ1988年生まれの「アイ」が主人公な時点で「あい」という名を付けられたわたしは他人事では読めないし、わたしがパリに留学していたときに起こった東日本大震災、そしてパリに滞在していたときに起きたシャルリエブドのテロでわたしが感じたあらゆる感情が蘇るようで、読んでるあいだじゅう動悸が止まらなかった。 映画『ROMA』の海辺のシーンのような苦しさと解放感のあるラストシーンは鮮烈。個としての人間の生命力と、社会の中で他人とつながり生きることを思いました。 「アイ」は「I」であり「愛」なわけでいよいよ「あい」と名付けられた自分の人生を思わずにはいられないな。2020年一発目の読書がこの本っていうところにも、勝手に巡り合わせの妙を覚えてしまう!というわけでこのアプリで読書記録をつけていくことに決めたのでした。
2投稿日: 2020.01.13
powered by ブクログ周りと比べて満たされているはずの自分を苦しめているものは何か、満たされているはずなのに苦しいという気持ちに共感できました。
2投稿日: 2020.01.13
powered by ブクログ米国人の父と日本人の母のもと養子に入ったシリア出身のアイ。数学ではiは虚数。普通ではなく奇妙な数とアイの成長を重ねてゆく、無関心こそが最大の敵であると西さんの苛立ちを感じました。混沌とした世界と血縁を考えさせられる一冊。
2投稿日: 2020.01.13
powered by ブクログその人それぞれの、生い立ちや資質によって身についた考え方や悩み、苦しみを聞く時 分かるよ、と言って一緒に苦しむ資格は、同じ経験や環境を持たない自分には無いのではないか、と感じ言葉を探して何も言えなくなってしまうことがある。 人の話を聞いて、どんなに苦しくても悲しくても、自分自身の経験や環境から想像することしかできないから。自分以外の誰かの感情を、完全に共有することはできないから。 多くの人の気持ちを理解するために、辛い経験をたくさんするべきなのではないか、と考えたこともあり、そんな考えを持つ自分が恥ずかしかった。 この本を読み、ずっと共にしてきたこの感情の、落としどころを見つけたように感じる。 理解できなくても、愛し合うことはできる。 人の気持ちを完全に理解したくてもできないことが苦しかったのは、自分がその人たちのことを愛しているからだ。 これからは、理解したいと感じた相手には、ありったけの愛を伝えたいと思う。
2投稿日: 2020.01.12
powered by ブクログ私自身はニュースも見ないし世界の情勢も全く知らないから、世界の人の現状に想像を巡らせて胸を痛めることができてない自分ってすごくダメな人間のような気がしてしまった。
2投稿日: 2020.01.12
powered by ブクログ父が亡くなった時、自分自身のDNAとか命のバトンを意識しました。父母や祖父母、ずっとずっと遡ったところから受け継がれているバトン。自分の存在が神秘的で、ここにいることも奇跡なんだなと感じました。 自分のアイデンティティ、自分が繋がっているものについて考えてしまう本です。
2投稿日: 2020.01.11
powered by ブクログ最初は違和感があった。 世界の惨状にこんなに胸を痛める人って 本当にいる?って堅苦しさを感じた うそっぽさも感じてしまった でも、作家の西さんも、 主人公のアイと近しい気持ちを持つ一人 なんだろうなあと思った 主人公の愛をはじめ、著者の西さんも自分よりもっとそういったことにアンテナが高くて、日常的に、胸を痛めているんだろうなあと思った 花束を持って、ビーチに行った のフレーズが好きだった
4投稿日: 2020.01.10
powered by ブクログカフェにて一気読み。 幸せな環境に生まれ育って、 幸せだと思って生きてきた私と、 アイの考え方は似てない なのに何回も泣いちゃう どんな自分でも自分は自分でいいんだよ っていうメッセージが好きなのかな ————— この世界にアイは存在しません アイはいつも、私のことをジャッジしない。 私がどんな人間か、アイの目でしっかり見て認めてくれるから、好き。 べき、ではないよ。感謝とか幸せって、努力して思うことではないんだよ。自然にそう思うことなんだから。アイがそう思えないのなら、無理に思う必要はない。 アイは存在する。ぼんやりあったもの、あったほうがいいものを形にするのが数学なんだよ。 ゆうは知りたがった、理解できないことでも、話し合うことを怠らなかった。 あなたたちの人生から、私は、私たちは、とっくにいなかなっていたはずです。 妊娠したの。してたの。でも流産した、 12週目で心拍が止まった。私の子供は死んだの。 すぐに、本当にすぐに、自分が一週多く伝えたことを恥じた。 会いたいという気持ちと、理解できないという気持ちのふたつがあるなら、僕は会いたいという気持ちを優先させるべきだと思う。
2投稿日: 2020.01.09
powered by ブクログ世界が動くこの今の瞬間に、この本に出会えてよかった。 世界レベルで起こること、ようやく取り上げられ始めたマイノリティのこと、経糸と緯糸が複雑に絡まる中で浮き彫りにされる主人公。 ごく普通の家庭でごく普通の日本人として生まれ育った私。マジョリティ側でぬくぬく生きてきたからこそ、主人公の繊細な感性が刺さった。 自分の幸せを願い、世の中に想像力を持って接する。 この手で幸せにできる世界は限られているだろうけど、無限に広げられる想像の世界で、もう少しずつ世の中に想いを馳せる瞬間を作って、大切にしていきたいと思った。
2投稿日: 2020.01.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
シリアで生まれ、日本人の母親とアメリカ人の父親の養子として育てられたアイ。 コンプレックスを持ちながら自身の立場の葛藤や自身の存在の意味を苦しみながら親友ミナ、彼氏のユウ、育ての親に支えられて成長していく。 呑気に流れるまま生きている私はこんなにも自身の人生と向き合いながら生きるのは辛いだろうなと思った。心から自分を肯定できたアイにすっきりした。
2投稿日: 2020.01.08
powered by ブクログ事情によって少しだけ異質な主人公のアイデンティティの成長を、大親友と彼氏・両親を組み込んで育み、果てに大事なことを見つける半生記。 主人公の思いに寄り添えれば感動もするし、何度も読みたいと思える作品。
2投稿日: 2020.01.06
powered by ブクログ西加奈子作品を手にするのは「サラバ!」に次いで二度目。 「サラバ!」は上巻の数ページで読むのを止めて積読状態。 本屋で表紙が気になり、西加奈子にもう一度チャレンジしようと購入した。 直木賞を受賞している作家なのでエンタメだろうと読み始めたが、 拡がりのある僕にとっては純文学だった。 シリアで生まれた女の子が、 アメリカ人男性と日本人女性の夫婦に養子として3歳前にやってくる。 その女の子の半生が描かれていく。 女の子は、国籍が異なる親や、見た目が異なる友人と 共に生きながら悩みながら、 これでいいのだというアイデンティティを獲得していく。 淡々とストーリーは進行していく。 その淡々のリズムが心地よく、純文学を感じさせた。 当たり前だが純文学が偉いとかダメとか エンタメだからすごいということではない。 個々の作品のテイストとしてエンタメよりは純文学よりと感じ、 そのテイストが私にマッチした。 女性作家特有の心の細やかな描写が積み重ねられ淡々と進行していく。 悩みながら自分を獲得する作品(多くの作品がそうかもしれないが)が 好きな方におススメ。
2投稿日: 2020.01.05
powered by ブクログ久しぶりに小説という小説を最初から最後まで読んだ。 悲劇の対象に選ばれなかった主人公の罪悪感、葛藤を描いた物語。内面の心理描写がものすごく丁寧に綴られていて、その感覚わからんなあというものの見方も読めば分かるように書かれているのは、ひとえに西加奈子さんの筆力の高さなんだろう。 養子として迎えられた人の葛藤という観点では映画「LION」を思い起こされた(もちろん「養子をひとくくりにはできない」のだけれど)。LGBTというテーマでは漫画「青のフラッグ」で描かれた性自認の多様性とそれを受け入れることの難しさ(価値観の多様性)が想起された。難解で、それゆえに多くの人が正面から向き合うことを避けたがるような(社会)問題について、主人公と周りの人達を通して、西さんが伝えたいメッセージがありありと伝わってきた(あとがきにも触れられている)。 西加奈子さんの作品はこれが初だったけど、なるほどここまで人の内面や人と世界とのつながり方を掘り下げる作品を書ける人が他にどんな作品を書かれているのか興味がわいたので、次はなにを読もうか。
2投稿日: 2020.01.05
powered by ブクログ「この世界にアイは存在しません。」シリア生まれ、日本人の母とアメリカ人の父に養子として引き取られた主人公アイは高校生以来、常にこの言葉と向き合うことになる。両親からの愛は充分すぎるほどに受けている、生活も満たされている。にもかかわらずこの思い、周りに感じる違和感とは何だ。ミナ、ユウとの出会い、様々な経験を経て深まる疑問。「この世界にアイはー」果たして最後にアイがたどり着く結論とは。
2投稿日: 2020.01.04
powered by ブクログ「この世界にアイは存在しません。」 この言葉を軸にして 主人公の心の葛藤や心の変化が描かれている。 他者と関わることで、苦しむこともあるが、 存在意義を見出し、自分は存在していいんだという 心の安らぎを求めているのかもしれない。 主人公の苦しみに共感するところがあり、 没頭して読み進められました。
2投稿日: 2020.01.03
powered by ブクログこの世界にiは存在しません。 シリア生まれでアメリカ人と日本人の養子として育ったアイのアイデンティティとは。
2投稿日: 2020.01.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
誰かに必要とされることで、自分の存在を確認する。でも自分が存在しているからこそ、誰かに必要とされる。つまり、存在価値のない人はいない。
5投稿日: 2020.01.03
powered by ブクログ『答えをくれるわけじゃない、変わるわけじゃない、終わるわけじゃない』 宣伝用の帯を読まずに読んで欲しい。似た苦しみを抱える人にとって、この小説は旧友のような存在だろう。出口はそれぞれ、万人を癒す薬もない。生きることが辛い人へ。ただ、なにかつたわるものがある。
10投稿日: 2020.01.01
powered by ブクログ西加奈子さんの書くことには、共感することが本当に多いのですワタシ。 今回は、震えた。 自分以外の誰かのことで心を痛めたり、 遠い国で起こった悲惨な戦争や事件をまるっきり遠い国のこととして受け止めて、自分の幸せを願うことを優先させる自分に吐き気を感じることを 「偽善だ」 と思ってしまうこの気持ち。 でも、見ず知らずの誰かの幸せを願ったり かと思うと自分の幸福のことしか頭になかったり 誰かの不幸に心を痛めたりすることは止められなくて その不安定でモヤモヤした気持ちを、 この「i」は昇華させてくれました。 又吉さんとの対談も、本当に読んでよかった。 かなり個人的なことにリンクしていたから かなーり心に響いたから ☆5!!!!
3投稿日: 2020.01.01
powered by ブクログ「この世界にアイは存在しません」 高校に入ってすぐに、数学の教師に言われた言葉。虚数の i(imagnaryの頭文字から、とは知らなかった…)のことを述べた言葉だが、主人公のワイルド曽田アイは、世界と自分との関係性について言われていると捉える。 シリアで生まれ、アメリカ人の父と日本人の母の養子として育ったアイが、揺れ動くアイデンティティと格闘しながら、自分がこの世界に絶対的に存在していることを実感することができるようになるまでを描く。 この小説、ラストが西加奈子さんの心の叫びが聴こえてくるくらい圧倒的な力がある。感動! さて、翻って自分について考えると、若い頃は、世界で起きている悲しいニュースに心を寄せて考えることは、人としての当然の嗜みと考えていた。でも、世界に対する自らのあまりの無力さに、いつからか考えることを諦めるようになっていたような気がする。 つまり、「アイ(=僕)の中に世界は存在しません」という状態。危険だな、と思った。 世界を変えられないとしても「想うこと」ぐらいはもう少し自覚的にしたいな、と思った。2020年はオリンピック・イヤーだし。 「理解できなくても愛し合うことはできる」 この小説の大きなテーマであり、言葉として何を言わんとしているかはすぐ理解できるが、実際それが可能なのかどうかは、読者それぞれに突きつけられる課題だと思う。 僕自身にはかなりの難題だな。
33投稿日: 2019.12.31
powered by ブクログたった今、読み終わりました。 ラストの又吉さんとの対談部分も全部。 この小説は、「さくら」に続く、私が一生ずっと繰り返し読み返していく作品になりそう。
2投稿日: 2019.12.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
西加奈子らしい作品でした。 結末はあれでいいのか? あんなに悩んで苦労してきたけど、友人の言葉で救われるというオチってことでしょうか。
2投稿日: 2019.12.22
powered by ブクログ「この世界にはアイは存在しません」 と、インパクトのある文から始まり、主人公アイの生い立ち、日常が最初は淡々と描写されています。 生い立ち故に、自分が幸せであることを受け入れることができない…そんな人が世界にはいるのだと、知らされました。 この本を読むまで考えたこともない思考で物事が描かれていて、そして主人公のアイにより世界中の様々な人の立場で世界をとらえることを教えられたような気がします。
2投稿日: 2019.12.18
powered by ブクログ学生の頃は自殺者の報道が出るたびに何で気付いてあげられなかったんだろうと思ってた。 今はニュースを眺めてるだけだ…
2投稿日: 2019.12.18
powered by ブクログ「この世界にiは存在しません」 この13文字の中に、主人公のアイの苦悩が詰め込まれている。養子として両親のもとにやって来たアイ。両親はアイを実の子の様に育てながらも、アイは家族としてのあり方に悩む。一方で世界の不幸をニュースの中で数字として見る。自分が幸せになるほど、まるで世界は不幸になるかのように。 ニュースを見てひとの不幸に心を痛める。でも、次の瞬間にニュースは、ハッピーな話題に移る。 世界は不幸と幸福でできている。世界の不幸に心を痛めながら、ファミレスでごはんを食べる。みんなアイと変わらないと思う。 幸せだからこそ、ひとの不幸にも敏感になれる。 不幸な境遇にあるひとは、それ以上の世界を想像できない。ひとが幸せになることは、権利と不幸に対する義務の様な気がしました。
2投稿日: 2019.12.16
powered by ブクログサラバ同様にグローバルである。アイとミナの感情がとても丁寧に書かれている。 個人的には前半の高校生くらいが読んでいて面白かった。
3投稿日: 2019.12.15
powered by ブクログ渦中にいないものが悲しんだり語る傲慢について私も考えたことがありました。 チャリティチャリティってこぞって言っている姿がなんか恥ずかしく見えて。でもそう思いながら何も行動していない自分の方が恥ずかしかったりもして。 そのことを思い出しました。 私は、突出したいけれど、そこまで頑張ることもできず、それなら埋れたいと思いながらも埋もれることができずに日々を過ごしていて、誰かが発言してからじゃないと中々意見が言えなかったりする自分が嫌です。 私もいつか自分は自分だと相対的ではなく絶対的に考えられるようになりたいなと思いました。
1投稿日: 2019.12.14
