
総合評価
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powered by ブクログ知ってはいけないことに触れたような、でも知っておいた方がいい世界の幅に触れたような、しばらくの間、心に残像がある小説でした。 心の動きに目が離せなくなり、一気読みしてしまいたくなります。一方で、少しずつ咀嚼しながら味わいたくも。 まだ輪郭はぼやけているけど、大事なことに触れられたように感じます。
2投稿日: 2021.01.20
powered by ブクログなんとも言えない感情に支配された 少しばかし罪悪感のような、自分の情けなさみたいなのを抱いた 西加奈子さんの本を読んだら自分自身の価値観の狭さに嫌気が差すけど、価値観が広がる感じがとても楽しい
2投稿日: 2021.01.18
powered by ブクログシリア生まれ、裕福なアメリカ人の父と日本人の母の養子として育ったアイが主人公。 この世界にアイは存在しません、という衝撃的なフレーズから始まる。しかも、アイは虚数のℹ︎であることに妙に納得させられ、他にもアイ自身、または私を意味するI、と考えさせられる。 しかもアイの彼氏はユウ、ちょっとやりすぎか? さらに、アイの境遇ゆえの複雑な心情からと思われる「世界の不幸な事件の犠牲者数を記録する」という行為が重すぎる。 そこに原発の話が混ざり、アイの親友ミナがセクシャルマイノリティであったりと現代社会の問題が次から次へと溢れてくる。 作者の問題提起にいろいろと考えさせられる素晴らしい作品だと思うが、問題提起が多すぎて自分自身は消化しきれなかった。
2投稿日: 2021.01.18
powered by ブクログコロナの感染者数、重症患者数、死者数が毎日報じられる中、この本はすごくタイムリーだった。 いや、本当はいつ読んでもタイムリーなのだと思う。そこがまず良い。 自分の身の回りで起きていない死に、同じような純度で想いを馳せるのは難しい。普段より近い距離で、そして全員に限りなく等しい感覚で、その数が日々刻まれている今は、尚更目を背けたくなるが、必要なことかもしれない。 私はアイやミナほど自分のアイデンティティで苦しむことはなかったけれど、"もし自分が"と想像して読むことができ、面白かった。 西さんの真っ直ぐな文章は、自分が無知であることを恥ずかしく思わせるとともに、世界に存在する未知への興味を引き出してくれた。 自分の環境が変わったと感じた時、読み直したくなるであろう一冊。
2投稿日: 2021.01.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
お勧めされて読んだけれど私には合わなかった!最初の1/3が退屈すぎて何度も寝てしまった! 心に残ったのは「体験していないからと言って想っちゃいけないわけではない」というところぐらいかな、、、 大したことではないけれど、昔辛い事があり、「体験しなければ、同じ目に遭わなければ絶対気持ちはわからない」って当時強く想ってしまった過去のせいだと思う。そこから人に対してお互いに本当の気持ちはわからない。そういうもの。と思ってしまっている冷たい人間なのである。テレビとかのものは実感が湧かないってのもあるだろうけど。 アイもミナも出てくる人みんなみんな優しい人たちばかりだな。と思う。
2投稿日: 2021.01.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
シリア出身で、アメリカ人の父と日本人の母の裕福な家庭で養子として育てられたアイが、生きていることを自ら認められるまでの、長い道のりを描いている。 世界中でなくならない戦争、テロや天災によって失われていくたくさんの命。授かる命、なかったことにされる命。 どうして選ばれたのか、どうして選ばれなかったのか。 命について考えさせられた作品でした。読みやすかった。
2投稿日: 2020.12.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
自分と向き合って、他者の愛に気付けた時、初めて自分の存在に自信を持ち、他者に寄り添い愛すことができるようになる。 自分に向けられた愛に気づくためには、自分の悩みや苦しみと向き合うこと。 ラストシーンでミナが見守る中、海に潜るアイの姿からはとても勇気をもらった。
2投稿日: 2020.12.26
powered by ブクログ「この世界にアイは存在しません。」 濃くなり薄くなりしながら、アイの中にずっと居続けるこの言葉。 恵まれていることへの罪悪感。 そしてそんなふうに思ってしまうことへの罪悪感。 日常的な、私だけいいのかしら?とは違って、根っこの部分から、アイそのものを傷つけ苦しめる。 自分の内側を見つめる話ながらも、西さんのびやかな文体で、グイグイ物語へ引き込んでゆく。パワーがあった。 ミナやユウの存在がありがたい。 若い頃に読んでいたら、今以上に深く救われる思いがしたと思う。
2投稿日: 2020.12.11
powered by ブクログつまんない。主人公に葛藤させるために与えた、シリア人養子である設定、これ見よがしに華やかで勤め人の枠を遥かに超えて裕福な両親、レズビアンの親友、ジャズミュージシャンになった初恋の男、夫になったカメラマンの歳上の男。何もかもがあざとく、巧妙に用意された全てが主人公に葛藤させるための設定でしかない。ケレン味のみ。
2投稿日: 2020.12.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読み終わった後の余韻が残る本。 アイという主人公の半生を読み進めていく。 想像で相手の苦しみを分かち合うことができるというのは共感した。
3投稿日: 2020.12.08
powered by ブクログiは虚数。実数ではない複素数。iは代表的な虚数単位。 久しぶりに読んだ小説がこれだったので内容に少し驚いてしまった。(3h程度で読了) 養子や人種、マイノリティなどテーマ性が面白かった。 主人公が行うことの一つである、「ニュースになった死者の数を書き続けている」ということ。実際のニュースが出てくるので、とてもリアル性があった。 また、幾度となく出てくる「この世界にアイは存在しません」という文字は印象深く、思わず「アイラン・クルディ」は検索した。 自分の存在意義は誰もが疑ってしまうもの・・・主人公も幸せに生きていてほしい。 冬の朝に読みたい本。
3投稿日: 2020.12.06
powered by ブクログステレオタイプ的な幸せを得た彼女が抱えるマイノリティーの自覚と社会それだけでなく家庭での存在しづらさが嫌というほど伝わってくる。この作品で言うところの彼女の苦しみを私たちは理解しているのか分からない。しかし、その苦しみを理解しようと自分に働きかけることによって世界は良い方向に動いていくかもしれないと感じさせられた。 けれども、他人とはどこまでもいっても分かり合えることはないんだと感じさせれた。『それでも、生きていく』や『最高の離婚』のような坂元裕二作品のように。 平野啓一郎さんの分人思想のように、他人と認め合い、愛し合うことでアイデンティティーが確立されていくと思う。 一つ思ったのは、マイノリティーに愛しあうことで救いを持とうとさせるのはしんどい。
2投稿日: 2020.12.04
powered by ブクログ♥️あらすじ♥️ 「この世界にアイは存在しません。」 「二乗してマイナス1になる、そのような数はこの世界に存在しないんです。」 アイはまるで自分のことのように思った。 シリアで生まれ、アメリカ人の父と日本人の母の元に養子に行き、アメリカと日本で育つ。 両親は祖国の言葉を知ることも必要だと考え、アイにアラビア語も教えた。 私は誰?私は何人?何処にも属せない私は根無し草だ。 また、アイは自分が幸福である事を憎んだ。 世界の何処かで常に戦争が起き、死にゆく人がいる。 何で私じゃないの? 自分の境遇に戸惑いながらも向き合おうとするある女性のお話。 ♥️感想♥️ 西加奈子さんのお話は『まく子』と『さくら』に続く3作品目。 どちらの作品も衝撃でしたが、それを上回る衝撃と、また違った西加奈子さんが見れました。 今作はかなり深刻なお話です。 どこにも属せない根無し草のアイは自分のアイデンティティを追い求めると同時に「世界の不均等」について考え、自らの幸福を持て余し、自分の代わりに貰われるはずだったシリアの誰かの幸せと命を奪ってしまったのかもしれないと追い詰められ孤独になります。 私はアイがピュアで真っ直ぐだなと思いました。 そうでないと自己の幸福に戸惑わないと思います。 でも感謝や幸せは自然に思うことであり、無理に感じなくても良いと思いました。 ですが、世界の不均等に対し、想像し胸を痛めることは必要だと思うも意識しないとなかなか難しく、それを考えるきっかけになった作品でした。 それにしても、#スティーブ・ジョブズ がシリア移民の子として生まれ、やがてアメリカ人の養父母に育てられたのは、初めて知りました! 【考察】 遥か宇宙の大きな海原で地球は誕生し、やがて私たち人類が誕生した。 いつから私たちはアイデンティティを求め始めたのかー? そして、いつからそのアイデンティティを否定し争い始めたのかー? 「i」にはアイを通して比較してしまう側と比較される側が描かれていています。 そしてそれは時として、人種差別や男尊女卑、延いてはLGBTなどへの差別に発展し、政治的権力を盾に大きな紛争を起こしています。 人類みな兄弟。 どこかで起きている戦争に胸を痛め、思いを馳せたり、自分を認めて愛せたなら、その時、「この世にアイは存在する」と思います。 ♡こころの付箋♡ p49 アイは、自分が恵まれた環境の恩恵にあずかる、正当な人間ではない気がずっとしていた。 ここにいるのは私だが、私ではない他の誰かだったかもしれない。 自分はその子の権利を不当に奪ったのではないか、そう考えていた。 アイはいつも自分の幸福を持て余していた p62日本に来て驚いたことの一つに、信仰の曖昧さがあった。 信仰を持っていなくても、あるいはそれぞれの信仰を持っていても、例えば、結婚式は教会であり、初詣は神社へ行き、葬式は仏式である、何事も決められた枠内でやることが得意な日本人という印象だったが、信仰だけはこんなにも淡いのだった p79人がどうでもいいという時は、どうでもよくない時だと経験から知っていた p114iが想像上の数というのなら、自分のことを想像する誰かがいない場合、自分はこの世界に存在しないということだろうか p161感謝とか幸せって努力して思うことではないんだよ。自然にそう思うことなんだから、アイがそう思えないのなら、無理に思うことない p164その気持ちは恥じないでいいよ。 恥じる必要なんてない。 どうせ自分は被験者の気持ちがわからないんだって乱暴になるんじゃなくて、恥ずかしがりながらずっと胸を痛めていればいいんじゃないかな。 よくわからないけど、その気持ちは大切だと思うんだ。 何かに繋がる気持ちだと思うから p165誰かのことを思って苦しいのなら、どれだけ自分が非力でも苦しむべきだと私は思う。その苦しみを大切にすべきだって p190命がある状態で好きな人に愛されるなんて奇跡だよ。自分の存在を肯定しないと p193交換法則の成立しない世界においては、虚数が必要ではない、数学体系になりますね p227彼らは死の直前まで自分にそれが訪れることを信じられなかっただろう。 確固たる理由もなく、でも何かに選ばれて彼らは死んだのだ p263ミナの言葉が浮かんだ。 実際そうだ。祖国で悲劇が起こった時、そのことに胸を痛める者もいれば、自分とは関係のないこととして切り捨てることができるものも、そしてその国を祖国としてではなく、ただ世界で起こっている悲劇と認識し、国際社会に生きる人間として最低限度胸を痛めるものもいるだろう p268世界の不均等を悲しんだ自分、恵まれた自分の環境に苦しんだ自分はいつだって容易く甦つた。でも、アイはそれを選んでいた。数ある思い出の中から、それを選択し、その渦中にいることを望んだのは、アイ自身なのだ p284渦中の人しか苦しみを語ってはいけないなんてことはないと思う。 もちろん、興味本位や冷やかしで彼らの気持ちを踏みにじるべきではない。 絶対に。 でも、渦中にいなくても、その人達のことを思って苦しんでいいと思う。 その苦しみが広がって、知らなかった誰かが想像する余地になるんだと思う。 家中の苦しみを。 それがどういうことなのか、想像でしかないけれど、それに実際の力はないかもしれないけれど、想像するってことは心を、想いを寄せることだと思う p286愛は思った。血の繋がりなんてなくても家族にはなれる p293私は未だに、中絶する人は誰にも謝ることはないと思ってる。 その人の体はその人のものだから、 その人の体は社会のためにあるんじゃない。 子供ができない人のためにあるんでもない。 その人の命のためにあるんだって、そう思ってる p279私達には分からないけれど、わからないからこそ悲劇に思いを馳せて考える時間が深くなる気がするよ。 その時間をきちんと過ごして向かい合ったからこそできることがあると思う。 それがどういう行動に繋がっていくのかは分からないけれど p300自分の想像力には限界がある、それは確かだ。でもだからといってその努力を放棄するのは間違っている。 p315人それぞれの痛みや苦しみって数値化して比べられない。 だから自分の痛みはきちんと痛みとして受け止めながら周りの人の気持ちも理解できるようになればいいんだけど、今逆に行ってるじゃないですか。 「もっと大変な人、おんねんぞ」って。 苦しむことすらできない人が作られている。いや、血ぃ、出てるよ?なんで痛がったらいかんねんと思う。 西さんの小説には今回もそういう人達を包む言葉が出てくる。 それも愛やなと思いました p316シリアのニュース見るの辛いですよね。 僕らの置かれている状況とは全然違うじゃないですか。 そこがなんか……だからといって、別の世界のことだと思うのは嫌やし。 ちゃんと見て、もうちょっと考えなければと思いますね。 けれど、そのことを考えすぎて、自分の周りのヤツの小さな痛みに痛みを感じることがおろそかになることも嫌なんです。 だから簡単じゃない状況も痛みもそれぞれ違うから
6投稿日: 2020.11.23
powered by ブクログ西加奈子さんの小説に頻繁に出てくるテーマ 国籍 人種 ダブルスタンダード ボーダーアイデンティティ それらが盛り込まれた青春の 一人の女性の人生の物語。 普遍的な主題、例えば戦争、貧困、人種、存在意義など、とかく重たくなりがちなテーマを描いているのにひたすら爽やかにそして鮮烈に描く様は流石です。清々しい読後感を味わえる作品。
2投稿日: 2020.11.19
powered by ブクログ感想を言語化するのがムズカシイ。 アイに共感できるところもある。自分がそんなことを考えたことがないわけではない。アイほどではないが。 部外者だなって思うことが多々ある。当事者の苦しみを分かるとか言うなんて傲慢だと思うこともある。 想像しよう。
2投稿日: 2020.11.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
アメリカ人の父と日本人の母を持つワイルド曽田アイ。彼女はシリアから迎えられた養子でした。 元々の彼女の思慮深い性格が災いしたのか、それとも彼女の両親の子供扱いをしない教育方針のせいなのか、アイは常に「申し訳ない」思いを持っていました。 もっと我儘に自分を出してもいいんだよ、と言ってあげたいぐらいです。そんなアイも高校で親友になるミナに出会い、少しずつ変わっていきます。ミナに秘密を打ち明けられ、自分が抱えている思いを話せるようになっていくのです。アイが自分自身の存在を認め、許していく過程に胸がギュッとなります
0投稿日: 2020.11.15
powered by ブクログサラバを読んだ時の感覚が蘇りました。 あのときもなんとも言えない 感情が渦を巻いてぼくの心を彷徨った。 (言葉にできなかった。) 言葉にするには 自分には稚拙すぎるというか 表現してもいいんだろうか。 伝えたいことが きちんと書けるのか… 本小説も 思春期で感じていた事 誰にも触れられてほしくない 繊細な心の部分を表現したかのような小説であったなぁー。 自分の 思春期を思い出しました。 とてもおもしろかったです。 サラバを面白いと思えた方は必読ですね。 またあのときの気持ちになれます笑
13投稿日: 2020.11.11
powered by ブクログ恵まれている自覚を持った人間が、恵まれていない人間に対して揺れている感情の描写がとてもよかったです。女性にしか共感できないような、矛盾が共存しているシーンはとても印象的でした。 ただ、あまりにも主人公がナイーブすぎるあまり、読んでいてしんどい瞬間もありましたね。 話の進行や全体の構成などの細かい評価というよりは、ザックリと読んだ結果、やんわりと抱いた印象で★3つ。 こんな人生もあるんだな、といい意味で他人のそれを覗き見したような気分でした。 また気が向いたら読み返します。
2投稿日: 2020.11.08
powered by ブクログ恵まれている人が悩んではダメ、という価値観に初めて触れた。どちらかと言えば自分も恵まれている方だと思っているが、恵まれていてごめんなさい。と考えたことはないが、いろいろな価値観考え方があり、その人毎に配慮した言動が必要となることを再認識した。 小説のメッセージとしては、自分をしっかり愛し、その上で周りの世界も愛すというメッセージかなと思う。 自分も周りを目を気にして(偽善者だと思われるなど)世の中の悲惨な出来事に胸を痛めきれないときもある。しかし、それはじぶんのこころのもんだいであり、他人が干渉できるものではないことを学んだ。
2投稿日: 2020.11.07
powered by ブクログ繊細すぎて、悲しかった。 なんでこんなに、自己否定してしまうの? 本の中とはいえ、彼女の傍にいるのが辛かった。 でも、ネガティヴではあるけど、 頑なに自分の世界で生きている彼女は、 ある意味、強い。 だから、人に流されることはないけど、 気づきの開眼は危うくもパワフルだし、 影響力もすごいのだろう。 人恋しくなる、物語です。
2投稿日: 2020.11.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
1. 主人公と、高校で出会った友達。環境が変わり、大きくすれ違っても、お互いが唯一の存在。 傷つけたことを謝るけれど、自分の意見は変わらない、と説明する。 お互いをとても大切にしている。ふたりの関係がまぶしい。 自分を省みた。 関係が悪くなりそうでも、謝らない。 気づかないふりをして、他の友人と過ごしたりする。 謝ることを避けたい。ごめんと言う自分は無能な人間。だから謝るようなことにならないように留意する。踏み込み過ぎない。 謝っても自分を見失わない強さがあれば。 何人も友人を作ってつどつど気分よく過ごすことをしないで、深く一人一人と話し合うことができる。はずだ 2. 主人公は流産による掻爬で精神的にとてもダメージを受ける。 流産または中絶で掻爬が一般的に行われているのは日本だけらしい。外国では安全な薬剤での処置が主流で、WHOも日本はそうするように勧告をしているそうだ。 タイミングよく、テレビでデヴィ夫人が掻爬をすると不妊になるのでやめるべきだと言う発言がニュースに出た。 ただ問題が ・デヴィ夫人は”ソウハ”が周りの人間に通じなかったので他の単語に言い換えようと周りに助けを求めると誰かが”堕胎”といった。 ・他のタレントやキャスターは”ソウハ”は世界では遅れた手法で、日本だけ取り残されているという知識のあるものがいなかった。 ・デヴィ夫人は堕胎(夫人は掻爬として発言)は不妊の9割の原因であると、個人的な感覚で言ってしまった。そして中絶をした人が不妊になる自業自得というニュアンスで発言してしまった。 デヴィ夫人80歳。華美な社交界を渡り歩いてきた女性。個人の感想として9割がそうだったというのは、間違っていないのかもしれない。 私はおばあちゃん子であったので、特に戦前戦中を生きた先輩方への尊敬の念は絶えない。 だが80歳の方の言うことをすべてまともに取って、上げ足をとることはないと思う。時代錯誤であったり、現役世代に受け入れられない発言をすることもあるだろう。 100点の発言でなくても、できるだけ長く語ってほしいと思う。 デヴィ夫人の上げ足をとり、炎上させることで、日本が掻爬をやめて外国のような安全な薬剤を使うべきだという意見を丸ごとを覆いつぶす。テレビは、一般人を混乱に招くのみなのか。 西加奈子さんは膨大なテーマを織り込まれているので、こんな脱線もしてしまう。 母校の高校の10年先輩。誇りに思いこれからも追いかける。
2投稿日: 2020.11.05
powered by ブクログ自分だけが恵まれてしまっていることへの違和感、不幸が他人を襲った時の「何故、私ではなくあの人が」という感覚。口に出せばどこか偉そうという印象を与えかねないあの感覚。 自分とは直接の関係など一切ない人の悲劇を自分と同じ重さで捉えられるアイの鋭すぎる想像力はかえって自分のことを傷つけてしまう訳だがそれでもなお、アイは世界の悲劇から目を背けようとはしなかった。 世界なんて大それたものじゃなくてもなにかと世間に鈍い目を向けがちな自分を戒める意味でも時間をかけて読み直していきたい作品。
5投稿日: 2020.11.03
powered by ブクログ養子ということもあり自分が幸せになることで、苦しんでしまうアイ。そのことを考えなくてすむ、勉強や数学に没頭する。しかし東日本大震災でその渦中にいることで、親友ミナに心境を打ち明け物語が進む。世界中でのあらゆる事件などを、自分なりに想像し、理解ができなくても真剣に討論する姿勢など心打たれた。罪自体だけでなく加害者の心情を考えたりといったことは大切だなと感じた。 ラストシーンで愛をもらって、生きていることを実感するのはよかった。すこしでもこのような心持ちたい!
2投稿日: 2020.11.02
powered by ブクログ生徒: さてさて先生、虚数『i』ってなんですか? さてさて: 虚数っていうのはだな、想像上の数なんだよ。”Imaginary number”といって、目には見えない実体のないものなんだよ 生徒: じゃあ、『i』って『愛』と同じですね。『愛』だって見えないですから。 さてさて: そうだな。見えないということでは同じだが、その二つにはもうひとつ共通するものがあるな。 生徒: 読み方が同じということですか? さてさて: それもそうだがもうひとつある。 生徒: なんだろう。わからないです。 さてさて: それはだな。その存在の先にある結果を導くためには欠かせないものだということだよ。 生徒: えっ?よくわからないんですが? さてさて: そんな君には、是非このレビューを読んで欲しい。 生徒: (なんだか無理に誘導されたような...) さてさて: 何か言ったかな? 生徒: い、いえ、なんでもないです。読みま〜す!読ませていただきま〜す! 『この世界にアイは存在しません』という教師の言葉に『「え」と声を出し』、『咄嗟に口を覆った』主人公。『二乗してマイナス1になる、そのような数はこの世界に存在しないんです』と続ける教師。そんな授業を聞く『ワイルド曽田アイ』、『それがアイの名前だ』という主人公には『アメリカ人の父と、日本人の母』がいます。『父ダニエルは、アイという言葉が日本語の「愛」に相当することを』気に入り、『母綾子は、アイが英語で「I」、自身のことを指すということ』が気に入ってつけられたというその名前。『意味を限定しないために『アイ』というカタカナ表記』を用いたその名前。そんなアイは『自身が両親と血の繋がった子どもではないということ、つまり「養子」である』ということを幼い頃から知って育ちました。『1988年、シリアで生まれた』というアイは、小学校卒業までをニューヨークで過ごします。『あらゆる人種の子供たちがいた』という小学校は『白人、黒人、ヒスパニック、アジア系、そしてアラブ系』と『校内はとてもカラフルだった』というその時代。一方で『自分が「養子」であるという意識は、いつもどこかにあった』というその時代。ある時『片言の英語を使うシッターと会った』時に『一瞬で、自分が遺伝的に両親よりもこの女に似ている』ことを察します。『その頃から、自分が「不当な幸せ」を手にしていると』思うようになったアイ。そんなアイの希望を満たしてくれる優しい両親は、何かを手渡す時『ほしいものを手にすることが出来ない子どもたちのことを、考えないといけないよ』と付け加えます。『同じ時期に教えられた「世界の不均衡」の犠牲者でもある、様々な子どもたち』のことを思うアイ。『あたし知ってるよ、あんたってヨウシなんでしょ?』とある時言われ『自分の足下が揺らぐような気持ちになる』アイ。『いつまでも愛されていると思う?両親に本当の子どもが出来たらどうする?』と考え出すアイ。そんなアイは中学入学を機に日本の私立中学に移ります。ニューヨークの『あらゆる人種のあらゆる個性が集まる場所』を怖がっていたアイは『日本では「みんな同じ」だった』というその環境に安堵します。しかし、『孤独の代わりに訪れたのは、疎外感だった』という中学時代を過ごすアイ。そして自らの能力のまま『受験勉強をすること』にしたアイ。『何かに没頭出来る時間』を切望するアイは『そこには「自分」などなく、ただ何かを学ぶという大いなる波があるだけ』と邁進します。そして『この世界にアイは存在しません』という教師の言葉がいつまでも心に引っ掛かり続けるそんなアイの悩み多き人生が描かれていきます。 『高校生の時に「この世界にアイは存在しません」と数学の先生がおっしゃった、虚数のiに関する言葉がすごく残っていて、それを書こうと思いました』と語る西加奈子さん。私も”虚数は、想像上の数。つまり、実数のように、実際は大きさなどが見えない数”と説明されて意味不明?となり、数学嫌いの原因の一つにもなったこの『i』のことはよく覚えています。物語の冒頭、西さんの経験をなぞるように展開される授業の場面で教師が言った言葉、それが、 『この世界にアイは存在しません』 でした。そしてこの言葉が、この作品を読んでいく中で一つの重要なキーワードとなっていきます。あまりに数多く登場するので、こういう場合数えずにはいられない私はまた頑張って数えてみました。全編で、 『この世界にアイは存在しません』 25回登場! と結構な数になります。一方でこの作品を読み進めれば進めるほどに、この『アイ』という言葉には、象徴的に用いられる虚数『i』の他にも複数の意味が重なっているのに気づきます。それは、上記した主人公アイの命名の由来にも明らかです。私自身の『I』とラブの『愛』、そして主人公の名前アイ。『この世界にアイは存在しません』という言葉の中には、これら四つの存在を否定する意味合いが重なっていきます。 主人公のアイは『自分が恵まれた環境の恩恵にあずかる正当な人間ではない気が、ずっとしていた』という思いを抱きつつ生きてきました。それは、シリアからの養子という自らの”Identity”から湧き上がる思いでもありました。優しい両親のもと、裕福な暮らしを享受するアイ。『ここにいるのは私だが、私ではない他の誰かだったかもしれない』と考えるアイ。養子としてたまたま自分が誰かによって選ばれた結果ここにいるに過ぎないと考えるアイ。それは『自分は「その子の権利を不当に奪ったのではないか」』という考えに向かっていきます。 そして、アイはニュースで目にする世界各地の事故や災害、そして戦争の犠牲者の数をノートに記し始めます。”IS“の無差別テロにより粉々に崩れ去ってしまった国であるシリア。主人公のアイは、そんな破壊されてしまった国に出自を持ち、養子としてアメリカに渡りました。ニュースをあまり見ない人でもシリアと聞けば、その惨状を思い浮かべる、そのくらいの強いインパクトを私たちに与えた国です。そんな背景を知る以上、主人公アイのことを私たちが思う時、どうしてもその彼女の出自が持つ陰惨さを思い浮かべざるを得ません。そして、この作品ではそんな彼女のノートの中に、この15年における世界各地の事故や災害、そして戦争の記述、そしてそれによる死者の数が登場します。中には読者である私の記憶にも強く刻まれた酷い惨状の記録がある一方で、全く記憶にないものもあります。それらについて、淡々と、そして執拗に事実を記していくアイ。そんな文章を読んでいる時に、ふと、気づきました。ストーリーに直接には関係しないそれらの記事、そして死者の数に関する記述をスラスラと読み飛ばしがちに軽く読んでしまっている読者の私!『毎日人が死んでいるのは、それも数万人単位で死んでいることは間違いない』、それはアイの記述の通りです。この作品が2016年に刊行されて以降も世界では数多くの人が亡くなっています。しかし、『自分たちの近くで起こらなければ、それはなかったと同じことになる』という現実的な感情が私自身の中にもあることに気づきます。『誰かがどこかで死んでも、空が割れるわけでもなく、血の雨が降るわけでもない。世界はただ平穏だ』という我々の日常。そんなことよりも、今日の晩御飯のメニューが、明日の天気の方が重要と考えてしまう現実。一方で物語の中でアイは『何百人、何千人の死者は、かたまりではない。そのひとりひとりに人生があり、そのひとりひとりに死があった』ということに気づいていきます。このあたり、簡単に結論づけることも難しい問題だと思いますし、簡単に書くことも憚られる問題だとも思います。この作品に出会ったことで、主人公アイの様々な葛藤を通して、そんな残酷な世界が私たちの平穏な日常と紙一重に今も続いている、改めてそのことに気づかされました。 『自分が世界に、この激動する世界にいることが、信じられなかった。あるいはやはり、自分はこの世界にいないのかもしれない』と考える主人公・アイ。そんなアイが、自分自身=『I』の存在の意味を考えるこの物語。虚数『i』とは、確かに目には見えない存在ではあります。しかし、”i × i = -1”、二乗して-1になる数字、つまり、負の数の平方根を表すためにはこの『i』は欠かせません。それが虚数『i』です。一方で『愛』はどうでしょう?『愛』は確かにそれ自身目に見えるものではありません。しかし、恋が成就するためにも、結婚というゴールに至るためにも、やはり『愛』が欠かせません。それ自体は目に見えない虚数『i』と『愛』。目には見えなくても存在しないというわけでは決してなく、その解を得るためには決して欠かせないもの、欠かしてはいけないもの、それが虚数『i』と『愛』。そう、”アイ”だと思いました。 『この世界にアイは存在しません』 という命題のような言葉が25回も繰り返し登場するこの作品。その言葉の意味を常に問い続ける主人公・アイは、その『アイ』を自身のことのように受け止め、自身の存在について自問し続けました。『ずっと、誰かの幸せを不当に奪ったような気が』する、『自分が世界に、この激動する世界にいることが信じられ』ないアイ。『やはり、自分はこの世界にいないのかもしれない』と葛藤し続けるアイ。そんなアイが『私がこの世界にいていいのだ!』という自身の存在を見出す結末に、生きることの大変さと、人と人の結びつきの大切さ、そしてそれを結びつける目には見えない『愛』の存在がふっと浮かび上った、そんな西さん渾身の傑作でした。
78投稿日: 2020.10.31
powered by ブクログアイと両親、アイとミナ、アイとユウ。たくさん話をして、意見が違っても話を最後まで聞いて、理解できなくても愛し合える、なんて。それぞれの関係が素敵過ぎた。血の繋がりやアイデンティティの話で、難しい内容だけど、アイの気持ちは私にも何かを残した気がする。世界中の出来事を全て知ることは不可能だけど、せめて大きく取り上げられたニュースは、もっと想像しようと思った。現実に起きた事に我関せずではなくて、何か感じたり思うことが大切だと。またしばらくしたら再読したい。
3投稿日: 2020.10.29
powered by ブクログ西加奈子さんの著作に目を通すのは白いしるしに加えてこれで2作目です。発売され店頭に並んだ頃から気になっていた本作ですが、人に貸してもらい、やっと読むことができました。 巻末の又吉さんとの対談で、iは私、ミナはall、ユウはyou であるとお話されていて、全てが腑に落ちた気がします。 all(社会)と噛み合わなくなってから、邂逅するまでの終盤シーンは一番好きです。「世界にアイは存在しない」という印象的なフレーズも、文章全体を詩のように見せてくれています。特にラストですね。映画のワンシーンを思わせるリズムが心地よかったです。 アイの葛藤は読んでいるこちらの胸が酷く苦しめられるものです。西さんはこういった苦しみの表現がとても巧みですね。こちらもアイの感情に流されてしまうというか、非常に深いところで気持ちが入り込んでしまいます。 周囲から無作為ではあるものの、壁を感じる。自身が養子であること。親とは全く異なった見た目を持つこと。シリアのこと。豊かな境遇。 アイが考えすぎなんて思わないです。必要な思考過程で、触れるべき痛みであり、長い月日はかかっていますが、最後にアイがあると言い切った一節にすべてが込められています。 2作はどちらも心情描写の点で通じるものがあるように思いました。サラリとした簡潔な文体なのに、心の一番痛いところを貫いてくる感じ。 次は西さんの直木賞受賞作、代表作といってもいい『サラバ!』を読んでみたいですね。
2投稿日: 2020.10.24
powered by ブクログ触れたら壊れそうなほど繊細で儚いけど、何よりも強い、そんな作品。 もし弟と血が繋がっていなかったとして、今と同じぐらい弟を愛せるだろうかとか色々考えさせられた。 「皆が悲しみ終えていい瞬間はいつ訪れたのだろう?」という言葉にハッとさせられた
2投稿日: 2020.10.21
powered by ブクログ「渦中の人しか苦しみを語ってはいけないなんてことはないと思う。 もちろん、興味本位や冷やかしで彼らの気持ちを踏みにじるべきではない。絶対に。 でも、渦中にいなくても、その人たちのことを想って苦しんでもいいと思う。」 ずっと心の奥で思ってたけど 見て見ぬふりをし続けてきたことの ひとつの答えを教えてくれた気がする 自分を存在させてくれる存在を大切にしたいし 誰かのそんな存在になれたら、いいなぁ
2投稿日: 2020.10.20
powered by ブクログ自分がいなくなるような、生きている意味が感じられなくなるような、そんな強烈な否定と、そしてすべてを包み込むような、生きることへの肯定の物語であった気がします。 アメリカ人の父と、日本人の母の元で養子として育てられたシリア人のアイ。 シリアを始めとした中東各国が内戦や紛争、貧困に喘ぐ中、シリア生まれの自分だけが恵まれた生活に安住していることに、アイは罪悪感を覚えます。 そしてその思いは徐々に大きくなり、天災や事故、戦争のニュースを聞くたびに「なぜ自分は生きているのか」思い悩むように。一方で、そうしたニュースに触れ同情する自分は「傲慢ではないか」とも考えるようになり…… そして、血のつながっていない養父母に対しても、言葉にできない遠慮の思いが常に渦巻き…… アイの繊細さがとにかくイタい。徹底される自己嫌悪と否定、そして終わりなき疑問。「なぜ私ではないのか」「なぜ私だったのか」 数学教師が授業の際、言った言葉『アイはこの世界に存在しません』 アイというのは虚数のiことで、この言葉はアイに向けられた言葉ではないのだけど、アイはこの言葉に囚われます。 血のつながらない家族。記憶にない祖国。人種的にも、境遇的にも自分と同じ人は周りにまったくいない。彼女のアイデンティティは常に揺らぎ続け、自己嫌悪と否定は、生への実感を揺るがすようにも思えてくる。 だから『アイはこの世界に存在しません』という言葉は、ことあるごとにアイの思考の中に浮かび上がり、彼女を縛ります。 そのアイの世界に差す光となりうるのが、親ではなく他人というのはとても示唆的な気がします。 学生時代に出会い、唯一無二の親友となるミナ。彼女自身も実は、あることに悩んでいてある意味アイと似た孤独を抱えていたことが分かってくる。 そして、恋人であるユウ。彼との出会いは、アイに新たな生きる意味を与える。しかし、そこで悲劇が二人を襲い…… 人の痛みというものは、感じられるようになればなるほど、自分が無力だということも思い知らされる。戦争反対と書いても、戦争はなくならない。児童虐待のニュースに心痛めても、きっとどこかで今も同じことは起こっている。 そのことに思い至るようになると、そうしたニュースに痛みは感じても、思い立ち止まることは少なくなっていく。自分の場合は、年を重ねるとなおさら、そうなっていきました。 事件や事故のニュースなんかで、生前のその人のことが語られる話をニュースや新聞で目にするたびに、「なんでこんな素晴らしい人が死んで、自分は生きているんだろう」「この人より、自分が死んだ方がいいんじゃない」と思った、小・中・高時代。 最近でも『京都アニメーション』の事件の時、それと似た思いは抱いたけど、でもその感覚は当時ほど鋭いものじゃなくなった気もします。 感性が鈍くなったのか、それなりに責任ある大人になったからかはわからないけど、素直に「自分がいなくなる方がいい」と思うほどには、なかなか立ち止まれない。 当事者意識というのもあるとは思う。作中でもアイが恵まれた自分が不幸な人を思うことは傲慢ではないか、と思い悩み、そして作中で3.11が起こった時、これで自分も不幸の当事者になれると、思ってしまう場面が描かれます。この気持ちは分からないでもなかった。 事件や事故の被害者や遺族。そうした人たちに寄り添おうとすると「当事者でもないのに、気持ちがわかるのか」「踏み込んでいいのか」と立ち止まってしまうことはあると思う。それにネットやSNSではそうした行為や想いが“偽善”と切り捨てられる場合だってある。 そうした偽善という負い目は、多くの人は少なからずあると思います。安全圏から同情するふりをしているだけではないか。日々が流れていけば、悼みは薄れ、忘れてしまうのではないか。 自分も京アニの義援金口座に、少しばかり振り込んだけど、どこかで「この想いもいつか薄れるのだろうなあ」と思った記憶もあります。 それもまたどうしようもなく事実だし、安全圏の罪悪感も怖くて、また悲劇を悼むことに臆病になる。 人はどれだけ人を想っても、真にその人も、その人が置かれた状況も理解できないし、分かり合えもしない。どれだけ悼んでも、心を痛めても、人にも世界にも真に届かない。それは絶望なのか。 西加奈子さんはこの『i』という小説で、その絶望に高らかに『NO』を突き付けます。悼むことも、想うことも無駄に見えるけど、無駄じゃない。悼むから、痛めるから、想うから、悲劇も人も現象ではなく、確かに実態のあるものとして世界に刻まれる。 それはあらゆる世界の出来事も、生きる実感を持てない人にも同じ。誰かを想うこと、想われるということ。寄りかかるものがなくても、どれだけ頼りなくても、人は想い、想われるから、世界も個人もここに確かに「在る」 だから自分たちは、誰かを想う感性も、悲劇を悼む感性も完全に失ってはいけない。それが世界で、そしてまぎれもない自分なのです。 世界の悲劇、アイ個人の悲劇、そして親友との決定的な対立。その果てに、最後にアイがたどり着いた真理は、そういうことなのだと思います。 『この世界にアイは、存在する』 この“アイ”は、物語の中のアイだけでなくて、私たちすべてのことなのだと、そう思います。 第14回本屋大賞7位
26投稿日: 2020.10.17
powered by ブクログ自分も天災や人災の渦中にいる見ず知らずの人たちに対する気持ちに悩みを持つことがあったので、感慨深かった。導入が読みづらかったが、引き込まれる内容でとても面白かった。
3投稿日: 2020.10.17
powered by ブクログ選ばれた存在というのは良い意味でばかり使うものと思っていた。 選ばれたことによって与えられた存在を誰かの幸せを奪ってしまったかもしれないと考え続け、自分が幸せと感じることと世界の惨状に胸を痛めているという自分の偽善、傲慢さに苦しむ主人公。 何処かでおきている災害、戦争、殺戮、事件、事故、目にして耳にすれば悲しくて苦しくてもどかしくて、どうしてこんなことが起きるのだろうと考えて沈み込む。 当事者ではないのだから、自分の生活は守られているのに、日常を送っているのに、こんなことを感じ沈み混んでいるのはただの偽善か?ずっと何処かで感じていたことが、優しくほどかれた気がする。 そういう思いも苦しみも自分は自分で良いということなんだなぁと、しみじみ本を閉じました。
4投稿日: 2020.10.11
powered by ブクログ世界中で起きている戦争、災害などで死んでいく人たちと、比較して物心ついた時から自分の置かれている恵まれた環境に思い悩むアイ。この悩みをずーっと引きずっていく。一番大きなところは、親友ミナとの出会い。ラストもこの二人が有ることで成立するエピソードで、アイが自身を受け入れられる感動的なシーンであった。
8投稿日: 2020.10.10
powered by ブクログアイデンティティとか世界のあり方、生命の不安定さを数学と結びつけて考えさせる所が面白い。 最後は、割とさらっと終わった感じがする。
2投稿日: 2020.10.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
自分がもっと成長した時にも読みたい 私の中で言葉にするのが難しい感情を、この本は言語化してくれている 自身の無力さを感じること、苦しい状況の人に寄り添う気持ち想像する気持ちを、意味のあるものとして肯定してくれる また恵まれた環境の中であっても苦しむことも肯定してくれる 文庫本最後の西加奈子と又吉との対談も良かった
2投稿日: 2020.10.08
powered by ブクログ浅くて深い不思議な感覚。マクロとミクロ、色んな捉え方ができる作品だと思った。観察者意識のアイ・アム、それが個人として苦しむためのエピソード、とも思えて、「何て深い」とも思ったけれど、筆者が伝えたいのはそんなことでは無いとも思えて。うーん、読み継がれる作品と言われて期待しすぎた感が否めない。
2投稿日: 2020.10.07
powered by ブクログ今までいかに自分が何かの枠だったり型だったりに囚われていたのかに気がついた。 主人公ほどの繊細さは持ち合わせていなくても誰しもがどこかで感じる自分の醜い部分やずるい部分で嫌になる瞬間がありながら見て見ぬふりをして隠している部分を全て丸裸にされる感じがして著者の哲学的な人間観察が鋭いなと感じた。 世界には様々な境遇の人がいて、その背景も人それぞれだが、どこかで無意識のうちに偏見を持ってしまっていることや当事者にならないと真の痛みなど分からないということに苦しむ姿に葛藤しながらも自分としっかり向き合い最後には自分の芯となる考え方を見出す主人公はとにかく素敵でかっこよく思えた。
2投稿日: 2020.10.07
powered by ブクログ世界情勢の問題定義から主人公らの心理まで、韻を踏みながらの展開に、ついていけない自分がありましたが、中盤以降から作者の意図も見えてきて最後まで読み切りました。女性の心理について勉強になりました!
2投稿日: 2020.10.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
また読みたくなると思う。 いろんな世界の問題が出てきたけれど、自分はどれにも目を瞑っていた。というか知っているようで全然知らないし、知ろうともしてこなかった。 僕が今安全な環境の中の机の上で本を読んでいるこの瞬間にも、人が人を殺していて、その状況から逃れようとしている人々が海を渡ろうとして海に呑まれて、まだ歳が自分よりもひとまわり小さい痩せこけた少年少女が学校にも行けず家の仕事をしている。そんなことが信じられなかった。 アイは自分がのうのうと生きていることに罪悪感を覚えていたが僕も同じだったし、罪悪感を感じること自体が恥ずかしいという気持ちもおんなじだった。 最後の方、後半はより面白かった。アイとミナとの衝突、でもやっぱりお互いがとても大事だということに気づける2人の友情に感動した。
2投稿日: 2020.09.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2020年、34冊目です。 シリアから来た少女が、アメリカ人と日本人の夫婦の養子として成長していく軌跡を描いた作品です。 作者の西加奈子さんの作品を読むのは、これが初めてでした。 主人公の名前はワイルド曽田アイ。「この世にアイは存在しません」という言葉から物語は始まります。 主人公のアイは、自分が今の境遇にいることに、罪悪感を持っている。 彼女は、世界中で起こった、事故、災害、テロなどで、亡くなった人の数をノートに記録し続けている。自分もその中の一人になっていたのではないか? 何故、自分がここにいるのか?いてもいいのか?そう考えてしまう。 故郷のシリアで、テロや戦火に巻き込まれて、死んでいたのではないのか? 自分がこの恵まれた環境にいるのは、許されないことなのでは? 自分の存在を否定的に常に考えてながら、生きてきた。 そのことを想う主人公の心境が、とても精緻に綴られている。 同年代の日本人の若者が決して抱えることのないことを、抱え込みながら生きてきている。でも高校時代に親友となるミナと、人生で初めて自分の悩ましい心情を吐露することができた。この二人の友情の中で、いくつもの出来事を乗り越えていくことで、精神的に自分で自分の中に作っていた矩を超えることができる。 そして、「この世にアイは存在する」ことを、強く実感できるようになる。 自己肯定感という言葉も思い浮かぶが、何かを成し遂げたというより、何かを乗り越えたという感覚に近い。 私たちは、日本にずっと住んでいて、戦争、難民、移民、養子、テロなどということに、かなり鈍感な暮らしをしている。そこを下地にして物語が書けるのは、著者自身の生い立ちによるものだと思います。
2投稿日: 2020.09.21
powered by ブクログ2020.9 私は私でここにいる、それしかない。私は私として今ここで生きるだけなんだと思う。今の私は養子でもなければ被災もしていないし戦争の中にもいないし難民でもなくLGBTでもないし不妊治療もしていない。でも孤独や苦しみはないわけないし、苦しみや命の危険にある人だって楽しいことや笑えることはある。私もこれからもしかしたら被災したり戦争の中にいる可能性はなくない。それでもその時の自分を生きることなんだと思う。呪い苦しみながらも今を生きるしかできない。ひとりひとりに世界がある。みんなそれぞれを生きている。くくれない。ひとりひとり。
3投稿日: 2020.09.13
powered by ブクログ紛争地のドキュメンタリーとか、貧困地域の話とかを観たり聞いたりするたび、ショックや悲しみで涙を流しても、この感情自体が偽善なのだろうかという気持ちをずっとモヤモヤと持ってきた。 当事者じゃなくても祈るということや想像をし続けること、悲しみや苦しみを理解(想像)する努力をし続けることは、直接的な行動にならなくても次へと繋がる何かになるはずだ、という考えは私にとっても希望であるし、これからも想像し続けることやめない、そしてこの気持ちは偽善や単なる好奇心などではなく苦しみなのだと言える自分でいたいと思った
4投稿日: 2020.09.12
powered by ブクログ読み進めていく上で、訳もわからず、悲しみとは全く別の涙を流すことになる。そんな作品です。 主人公のアイは、自身が養子であること、それ故に選ばれた存在であること、セクシュアリティ等、賢いが故に様々なことを考えては理解をし、あるべき姿と自身の気持ちの乖離に悩み続けます。 最後、悩み続けた末に彼女がどう言う結論に至ったのか。 私個人として、彼女が考えて悩みついたうちの1つ、「あるべき姿」(周囲から望まれる姿)に非常に共感しました。 周囲を気にして、恐らくこれが1番望まれる選択肢であろうと自分の考えを二の次にしてきた方には是非読んで頂きたい作品です。
2投稿日: 2020.09.10
powered by ブクログお金持ちの子で、養子であるシリア人の繊細な心を描いた作品。 想像もできないほど繊細な心が丁寧に描写されていた。
2投稿日: 2020.09.09
powered by ブクログたまたま家にあったので読んだ本。 西加奈子さんの本は初めて読んだ。 とっても繊細で、言葉にできない、誰も触れてこれなかったような感情をすごく上手に表していると思う。 世界では想像もできないような悲惨な出来事で溢れているけれど、それと同時に素晴らしい幸せなことも存在している。 他人の悲しみと自分の悲しみって、比べることなんかできない。 だから正解はないけれど、文中にあった 「自分がその渦中にいなくても、その人たちのことを想って苦しんでいいと思う。想像するってことは心を、想いを寄せることだと思う。」 にすごく共感した。 偽善だと言われたって、相手のために何もできなくたって、自分の中にその想いがたしかにあるのなら、それは紛れもない真実だから。 私たちは、お互いに想って想われて、ここに存在しているんだ。 個人的には、 自分は不妊治療していて子供がなかなかできないのに、親友が望まない妊娠をして堕ろすと言うのを聞いたときのアイの複雑な感情にリアルさを感じた。 自分と自分以外の人間は、違う。 だけど、相手の悲しみを想像して、苦しんで、想いを寄せることはできる。
2投稿日: 2020.09.03
powered by ブクログこの世界にアイは存在します。ユウもミナも存在します。 2011年の地震も、2015年の夏の国会議事堂前も描かれている。
6投稿日: 2020.09.03
powered by ブクログ「この世界にアイは存在しません」 心に孤独を巣食わす少女の成長を通じ、アイデンティティとは?なぜ今ここにいる?誰かを想い悩む事に意味はあるか?カラフルな規模感で示唆してくれる愛深き一冊。 ただ言えるのは、『i』を読んだ「私」がいる事。そして世界は続く。
11投稿日: 2020.09.03
powered by ブクログ初めて西加奈子さんの著書を読みましたが、大変面白く一気読みしてしまいました。 一つ一つの世界の惨劇に想いを馳せる感受性を有するが故に、自らの幸福を素直に喜ぶことができない主人公の気持ちに同感する部分が私にもあります。 また主人公が、親友であるミナと喧嘩?した際には、「ミナを愛している」という想いと「みなを許せない」という矛盾した感情に苦しんでいました。こうした矛盾というのは私たちが生活している上で必ず経験することだと思います。その際、その矛盾に苦しみどちらか一方のみを選択するのではなく、両方を受け入れても良いのではないでしょうか。そう感じさせられました。
4投稿日: 2020.09.01
powered by ブクログ主人公のアイが、偶然にも養子に「選ばれる」かそうでないかというだけで、自分の人生がこんなにも大きく変わってしまったことを気にすることや、自分のせいで「選ばれなかった」子がシリアで直面している現状に心を痛め続け、自分に何ができるのか、自分に生きる価値があるのかを問い続けながら、幼少期を過ごす様子から、目が離せなくなっていった。 私が思うに、生い立ち、環境、家族の価値観は自分で選ぶことはできないが、それらを超えて自らに人生を創っていくことができる。その力は他者との出会い、化学反応によって生まれることが多かったな、とアイの物語と私のこれまでの人生を重ねて読みすすめていった。 今を大事に、私に正直に行きたい。
2投稿日: 2020.08.31
powered by ブクログ迷いながらも寄り添って、優しく肯定してくれる物語。 偽善者とか自分らしさという言葉の解釈で迷ったらまた読みたい。
4投稿日: 2020.08.31
powered by ブクログ自分の志望校(中学校)で出題された文章でした。 小学校6年生には難しい文章でしたが、中学1年生になってやっと意味が分かり始めたと思います。 あの頃が懐かしい
3投稿日: 2020.08.31
powered by ブクログう~ん、なんか、どうだかなぁ。 『恵まれた環境、恵まれた自分の命のことを思うと、感謝するより先に苦しんだ』みたいなところにそこそこ共感できないと辛いな。私はダメでした。 如何せん自分のアイデンティティを気にする歳でもなく、今がどんな生活であろうとも上にはもっと上があり下にはさらに下があると思っているし、“選ばれた”とか“免れた”とかピンと来ないんだよね。 筋立ては変化もあってテンポも良く倦まずにスイスイ読めたけど、そんなこんなで「サラバ!」を読んだ時と殆ど同じ感想しか思い浮かばなかったのでした。
4投稿日: 2020.08.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
手首折れ曲がる程の掌返ししました。 なんて美しい終盤の展開。うだうだ悩み周りにも気を遣わせるアイが最後に突き詰めた考えがただただ美しい。 『想像するってことは心を、想いを寄せることだと思う。』 『理解出来なくても、愛し合うことは出来ると、僕は思う。』 この言葉って、ハッとさせられる人が多いんじゃないでしょうか。遠い国での戦争や悲惨な事故、自然災害で亡くなる人間を、アイが数で認識してたのを咎めるわけではないですが、そこには甘さが残っていた。中途半端に周りの世界に同情して、そして自分自身への申し訳なさに起因するループは序盤・中盤と読んでてしんどい部分がありました。覚悟がない。西さんは愛と捉えていましたが、自分自身の信念があれば揺るがない、という考えは私も持っている部分です。 今年、コロナ情勢の中blacklivesmatterが世界中に広がりました。日本人も、私の知り合いも多くがsnsに投稿したりと参加をしていました。 だがそこに愛はあったのか?覚悟はあったのか?揺るがないものがあったのか? 手前満足のために、片手間に、投稿をしてないか?問題に真摯に向かい合ったのか?という一抹の疑念が私にはありました。 まるで、終盤までのアイを見ているようでした。 巻末の又吉さんとの対談も込みでこの高評価です。 『私はこう思います』と提示する以上の可能性をこの小説は生み出している。 この一言に尽きる作品でした。
2投稿日: 2020.08.25
powered by ブクログ胸が抉られっぱなしで、動悸が止まらないまま読んでいた。いったいテーマが幾つあるのだろう。iは確かに存在している、という文には、いくつかの意味があるように思える。 私はこの小説を、死のうと思ったらもう一度読もうと思う。
4投稿日: 2020.08.20
powered by ブクログ読み終えた後、帯の言っていることがすんなりと理解できる。現代を生きる強さ。 ミステリーだと思って読み始めたが違うことに気づいた。だが止まることなく読み進められた。この人の文体が好きなのかもしれない。よくもこんな分厚い本を1?2?週間(実際読んだのはたぶん3.4日)で読み切ることができたな、と思う。映画に飽きたから読書が進んだ。 この本を通して世界の悲劇を知ったし、登場人物と自分が重なっていると感じる点もいくつかあった。胸が苦しくなる時もあった。しみじみを感じる。存在。哲学。数学。美しい小説だった。 表紙がロスアンゼルスの海なんだね。
3投稿日: 2020.08.18
powered by ブクログ『 ℹ︎ 』 西加奈子さん 「この世界にアイは存在しません。」 高校生初の数学の授業で虚数iの説明の際に教師が放った一言。この言葉に、主人公アイは縛られます。 身の回り、そして世界各地で起こる様々な出来事に対して、自分が関与しているか否か、日々悩み続けるアイ。虚数「i」は実在せず、「愛」の形も明確でない。自分(=" I " →アイ)は何なのか? 読んでいて苦しくなることも度々ありました。でも、自分の存在意義を明確に口にできる人って、実は少ないんじゃないか…と思います。みんなあちこち揺れるんですよね。 また、たくさんの「読み」に属す漢字「生」に対する憧れは、私も近いものを感じたことがあります。 1つ1つの出来事に苦しむアイ、世界情勢、理解が難しいこともありましたが、なかなかおもしろかったです。私は「サラバ!」より読みやすいと思いました。 カラフルな表紙が印象的ですよね。でも、中は青一色でシンプル。そういうところも好き。時間があれば、ぜひ。
2投稿日: 2020.08.02
powered by ブクログ(サラバ!と概念はつながっていた。) 「アイデンティティの模索」というテーマに対する一貫した作者の信念を感じるとともに、小説というものの可能性というか使命を痛感した。 主人公がずっと葛藤していたこと。 想像されないと存在しない 愛されないと存在しない 血を残さないと存在しない わけではない。
3投稿日: 2020.07.29
powered by ブクログ親の愛、友の愛、恋人の愛それら真っ当な愛を受けてもなを孤独に引きづられ、答えの出ない自己の深みにはまって行く。掘り下げた底からようやく光が射して、周囲の愛に気づき、社会の心配事に目を向け、愛へと繋がる。 私も何か自分事で悩み抜け出せない時は、敢えて他者への気遣いを意識して行動していけば、結果答えが見つかるのだと思った。
2投稿日: 2020.07.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
日頃から思っていた、考えられない幸せと、考えることが出来る不幸を主人公を通して、改めて考えさせてくれる作品だった。 人はいずれ絶対壁、困難に打ち当たる。その時にどう自分を立て直していけるか、その時に他の人に助けられるか、支えてくれた人をどう支えるか、その時々に価値を問われる様に感じる。
2投稿日: 2020.07.26
powered by ブクログ読んでいると辛いところがあった。大切な人と離れたばかりで辛さが心に重く沈んだし、もともとの自分の繊細さを思い出す感じがした。 本としては、希望を感じつつ終わるが、個人的には「自分の繊細さに向かい合いたい時」、「繊細な自己の世界に沈み込みたい時」に読むことをおすすめする。
2投稿日: 2020.07.24
powered by ブクログ始めから終わりまで苦しかった。 西加奈子作品「サラバ」「おまじない」、「ふる」についで4番目 ↑のレビューを書いた時、理解できない、わからないとーすると ブクログのnaonaonao16g様から ぜひ「i」をと勧めていただき、挑戦しました。 確かに素晴らしい作品です。 「この世界にiは存在しません」 繰り返されるこのフレーズ。シリア生まれ adopted child 養子として 日本人綾子、アメリカ人ダニエルという父に引き取られる yes.noをはっきり言え自分のことをしっかり持った愛のある子に育ってほしいと アイとつけられた もどかしいほど、繊細でその自分の心を持て余してた、 親の願いとは裏腹に、自分を出さず 絶えず周りを思いやってた。 恵まれていることに、喜び反面苦しみ、 このアイの心がわかりすぎるほどわかり ホント苦しかった、 ナイーブであり こういう神経は 自分で自分を持て余し、勉学に逃げた「?」 恵まれていることに対する罪悪感に苦しみー 世界ではアフガニスタンの爆撃 カンボジアのポルポトの虐殺 シリアの中東戦争 阪神大震災 ワールドトレードセンターの2機の飛行機激突 毎日のように人が死んでいる アイは人が亡くなった数「事故、事件」、をノートに書き記していく 本文よりー 毎日のように多かれ少なかれ人が死んでいっても 自分の近くで起こらなければ、なかったことと同じ 世界はただ平穏だ 空が割れるわけでもなく血の雨が降るわけでもない ここまで読んでいても辛くてたまらなかったが これで容赦はなくまだまだー ダニエルと綾子両親から愛されれば愛されるほど 自分でいいのか 自分だけ安穏幸せで良いのかと まあこんな単純な分析ではないのですが ルーツの分からなさ、 一族の写真の中で、自分だけ似てないー ファミリーツリーのこと、 不満ではなく厳然とした事実、 有り難く喜んでいるのだけど理屈ではない感情 この作品は西加奈子しかかけない! 世界中での災い、内戦、紛争、テロ、人種問題、他にももっと根の深い問題 また西加奈子だからこそ書くべきものでしょう。 自分は、キャパを超え 受け取りきらない、苦しい 読みながら苦しみ、逃げたいと思う 「同苦できない、したくない」 逃げたい、 目を背けてはいけないのはわかっているが しかし正面切って対峙したくない 今の世の中は世界全体で、地獄にあっている。 コロナという、 戦争からも人間は生き返った、またみんなで明るい世の中にできるのでしょう 今をみんなで乗り越えていけば また道が見えて来る 最後のフレーズ 「この世界にアイは」
22投稿日: 2020.07.21
powered by ブクログアイのアイデンティティの複雑さ故なのか、心の繊細さ、その大きく揺れ動く心情に共感する部分もあれば、理解できない部分もあったが心惹かれた。 ただ、理解できないところがあっても、相手の悩みが想像するのもおこがましいと思えるような大きなことであっても、それでも想像することは大切なことであると思った。想像して良いんだと。 大きな悩みに心打たれ小さい悩みはちっぽけだと投げ捨てるような感情と、でもやはり自分にとっては避けられない悩みで辛く重いものであるという感情は、両立する。
3投稿日: 2020.07.20
powered by ブクログ間違いなく、私のナンバーワンの本。 多くの人に読んでもらいたい素晴らしい作品。 メッセージ性の強い西加奈子さんの作品の中でも、ピカイチだと思う。 ボロボロと泣きながら、読了。
8投稿日: 2020.07.18
powered by ブクログ偽善者だと思われたくないから自分を出すことを躊躇してしまうが、世界中の不幸なことに想いを馳せることは、相手のためを思い寄り添うことになる。 何事も無関心にならず、たくさんの人と向き合いたいと思わせられた。 親友のミナはフワちゃんのイメージで脳内再生された。
7投稿日: 2020.07.13
powered by ブクログ死と生、血の繋がりと心の繋がり、人種や性のマイノリティ。主人公の繊細で複雑な心を、丁寧に言語化しようとしている素敵な文章だった。 世界中のどこかで起こった悲惨な事件と、亡くなった沢山の犠牲者。深刻なことだと頭では理解しようとしても、面識もなく名前も知らない人々の死を実感することは難しい。 莫大な数の人間よりも、名前や年齢を明かされた一人の人間の方が、人の死の実感が一気に増す。 アイラン・クルディの写真を見た。心が痛んだ。グロテスクでもない、顔をこちらに向けているわけでもない。それでも、愛らしいフォームをした幼児が海辺に横たわる姿と、「死んでいる」という事実が心に突き刺さる。 心を痛めることは辛い。だけど、世界のどこかで起きている現実に目を背け続けてはいけない。"変化の渦中"にいる人の苦しみを完全に理解することはできなくても、その命の重みを少しでも実感するため、私は本を読み続けようと思う。 『ℹ︎』を読む前に『最初に父が殺された』を読んでいて良かったと思う。"変化の渦中"にいた人が書いた生の言葉を、これからも読み続けよう。それが楽しいことではなくても、辛くて苦しいことでも、当事者の気持ちに完全に寄り添うことができなくても、読み続けよう。 最後に、この本の中で印象に残った部分。 「子どものことで、私がアイに謝ることはない。 社会に対しても、不妊で苦しむ人に対しても、謝る必要はないと思っている。 私の決意と、みんなのからだのことは別のことだから。私のからだは、私のものだから。」 「私は未だに、中絶する人は誰にも謝ることはないと思っている。その人のからだは、その人のものだから。その人のからだは社会のためにあるんじゃない、子どもが出来ない人のためにあるんでもない。その人の命のためにあるんだって、そう思ってる。」 子どもを産むか産まないかを決定する権利は、命を宿した身体を持つ人自身にのみあるのだと再認識した。
8投稿日: 2020.07.12
powered by ブクログ想像すること、って私たちの義務だと思う。 いつ私の身に何が起こるかわからない、「他人事」なんてこの世にないと思いました。
2投稿日: 2020.07.12
powered by ブクログどこかで毎日自分の意思とは反してこの世を去る人たちがいる。 自分たちの生きているこの日常が日常ではない人たちがいる。 この人たちのことを真剣に考え、行動に移せる人はどれくらいいるだろうか、少なくとも私は今まで生きてきて思いを馳せても行動にすることはなかった。 国籍、セクシュアリティ、血の繋がり、妊娠中絶、原発、現代の抱える問題が描かれている
2投稿日: 2020.07.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
1人の人間と、世界の話。 世間には様々な悲劇がある。身近な人の死、近所での強盗、見知らぬ田舎の殺人事件、そして見聞きしたことすらないような、どこかの国の戦争。それら全てが自分にとって関係のあるものではないかもしれない。一生縁のない話かもしれない。 しかしだからといって、その事実に思いを馳せることを咎める権利は誰にもないし、偽善だ、単なる恵まれた人間の慰みだと、非難される理由はどこにもないだろう。 私自身、テレビに映される悲劇を、特に感情のない目で流してしまうことがある。そして、当事者でないにも関わらず、SNSでまるで自分のことのように熱い弁論を繰り広げる人間に疑問を抱いてしまうことすらあった。でもそれは、そこにある愛を知ろうとしていなかった。権利だとか義務だとか関係だとか、理由は何一つ必要ない。ただ思いを寄せることが、その人にとっての愛なのだ。それでたとえ相手を救えないとしても、そこに間違いなくある。 ラストの海のシーンが印象深い。まさに母なる海だ。水中で膝を抱え丸くなって波に揺られるのって、わけもなくとても気持ちが良いんだろうなあ。
3投稿日: 2020.07.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
恵まれた環境だから幸せなわけじゃない、だけどこんなに恵まれてるのに幸せを感じられないなんて失礼だ、そんな心の葛藤が感じられた。ミナを通して感じたことは、レズビアンだから絶対に男性を愛さないってことはないし、自分が思う型にはまって生きていくだけのほうが楽かもしれないけど、変わっていくということも含めての「私」なんだということ。アイのように、自分の生まれやどの国に感情移入して生きていったらいいのか悩むことがわたしにはないけど、悲惨な事件や環境下で生きている人のことを想像して心を痛めることへの疑問はわたしも感じたことがある。実際、日本に生まれてきたというだけですごく恵まれていて、両親に大切に育てられてきた私が、高いところからかわいそうだ、と思うことの傲慢さ。だけど、だからってわたしに悩みがないわけではないし、もしかしたら過酷な環境で生きている人の方が幸せを感じて生きているかもしれない。〇〇だから幸せだろう、って、幸せは人が決めることじゃないんだ。自分のこと、友達、家族、恋愛、世界のこと。たくさんのことを考えさせてくれる1冊だった。そして私にとっては好きな人が教えてくれたという大切な1冊。
2投稿日: 2020.07.03
powered by ブクログ僕が西加奈子さんを知ったのは動画サイトで彼女の家を紹介する動画を見た時だ。彼女の人間性を見てこの人の本を読んでみたいと思った。 結論から言うと、登り切った階段が眩しくて先が見えないような気分。文章や言いたいことは理解できる。しかし最後になるにつれてアイの周りがどんどん加速した。僕はそれにあと少しのところでついていけなかった。 でも本の面白さはそこにあると思う。分からなかった。それが大切。次にそれを読む時に違う何かを見つける自分が待ち遠しい。
2投稿日: 2020.07.02
powered by ブクログ正直自分で読んでもよく分からなくて、巻末の又吉直樹氏との対談を読んでそういうことか…と思いました。世界と自分、アイデンティティの話。
2投稿日: 2020.07.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ネタばれあり。 主人公アイが自分にすごく似ていた。幼いころから自分の意見がなくて 自分が存在することの証明のようなものを探していた。 恵まれた環境(片親や貧困家庭などと比べたら)にいることが罪なのではないかと思っていたりもした。 アイが出生のことだったりミナとの関係だったり自分の存在証明を乗り越えていて、今自分が悩んでいることを自分も乗り越えられる気がした。
5投稿日: 2020.06.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
多感な年頃の女の子のアイデンティティ探しかと思いきや、とても壮大なお話だった。自分の存在について考えるには社会の存在が不可欠なんだと気づかされる。 巻末の対談も素晴らしかった。「自分の幸せを願う気持ちとこの世界の誰かを思いやる気持ちは矛盾しない」。この考え方を忘れたくないと思った。こう思える人が増えたら少し世界は優しくなるんじゃないだろうか。 難しく辛い問題から目を逸らさず向き合って考えて考えて...そんな物語。ラストが爽快で感情が揺さぶられる。何度も読み返したいと思える作品でした。
4投稿日: 2020.06.27
powered by ブクログきめ細やか、ナイーブ、繊細、そんな特性を持ち合わせていないざっくりな自分としては、そんなに苦しまないでよって思うような主人公でした。でも、彼女を取り巻く人たちが本当にまっすぐで、なんていい人たちばかりなんだと。 (でもそこが崩れたりしないかハラハラしながら読みました。) 自分の立ち位置が安定している側からすると全く見えないものが彼女たちには見えていて、羨ましくもなりました。
4投稿日: 2020.06.24
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抽象的なテーマだが、それをなんとか書ききったという印象。人の存在価値を真摯に紡いだ作品。 アイという名前がまず秀逸。そこから様々なサイドストーリーが作られていく。そのすべてが繊細で、感情のすべてを理解するのは難しい。でも、読みごたえのあるものだった。 ラストシーンは川村元気の作品と通じるものがある。海や朝日というのは人を引き付けるものだ。海はすべてのものの母。朝日はすべてのものの始まり。本にはうってつけなのだろう。 かなり調べて書かれた作品だとわかる。シリア情勢や震災について。実際に起こった世界の天災・人災をひとつひとつ汲み取りながら、主人公の繊細な心情を描いていく。これはこの人にしか描けない書き方なのだろう。このテーマを湊かなえに書かせたら、きっと全く違う大きな事件を巻き起こす展開になっていたに違いない。 自分の存在価値、世界との関わり、他者との干渉。それはとても難しく、正解などないのだろうけど、自分が自分であっていいのだと認めること。これは何よりも正解なのだと教えてくれる作品。
2投稿日: 2020.06.20
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シリアで生まれ、アメリカ人と日本人の夫婦に養子として迎えられたアイの、20代までを綴った壮大な物語。多くのメッセージが含まれている為、読み終わっても未だ噛み砕くのに時間がかかっている。 アイは裕福な両親の養子であるからこそ、なぜ自分が選ばれたんだろう、私の代わりに選ばれるべきだった子の自由を奪ってしまったのではないか、と世界の不均等に幼少期から常に思いを巡らせてきた。 高校で初めて受けた授業で聞いた「この世界にアイは存在しません。」という言葉がずっと忘れられず、自分で選択するのが苦手で、誰かに決めてもらう人生を生きたがった。 世界で起こった災害や事故、事件などのニュースに触れる度、やはりアイはどうして犠牲者は自分では無いのだろうと深く考えてしまう。 私は何となく、アイに似ているところがあると思った。自分の思いをうまく伝えられなかったり、親に甘えてしまっていたり。 また、自分の存在を確かめるために「この世界にアイは存在しません。」という言葉を誰かの言葉で明確に否定してもらう場面は、とても共感できた。自分ではない誰かに言ってもらうことで、自分の意見が揺るぎないものになる。承認欲求に近いものを感じた。 アイの両親、親友のミナ、結婚したユウと、アイの周りの人々は思いやりのある素敵な人たちだらけだ。だからこそ世界の不均等に目がいってしまうのかもしれないが、最終的にはアイが自分の存在を受け入れることができ、温かい気持ちになった。 又吉さんと西さんの対談もとても良い。災害や事故があれば、被災者や被害者にスポットが当たるのは言うまでもない。しかし遠くの世界に住む誰かも、その件について思い悩んでいるかもしれない。何も関係ない、ではなく、非力でも自分なりに想像し考えて苦しんでいいし、その苦しみを受け止め、祈ることも大切なんだと教えてくれた。 この本は表紙に惹かれて手に取った。波のようなデザインが最後の場面と重なった。あなたは様々な色が混ざったこの世界で生きているんだよ、と教えてくれているようだ。
4投稿日: 2020.06.12
powered by ブクログ世界で起こる事件が文中にいくつも出てくるからこそ、"今"読むべき作品であり、時代毎に感じ方が異なるとする意見にも納得がいった。 勝手にAIの話かと思っていたけれど、見当違いでした この本で主軸となる、"当事者性の問題"は、私にとっても身近なテーマで、だからこそアイの考えに共感する部分も多かった。 自分語りになるが、私は大学1年生のとき、友人らと当時の財政破綻真っ只中のギリシャに旅行に行った。私の周りは国際問題について関心がある人が多く、当然財政破綻の状況も頭に入れた中での旅行だった。 ある朝、友人らとテラスでパンケーキなどを楽しんでいた私の前に、ふと子供が近付き、金銭を要求する仕草を見せた。その子供の後ろには、ベビーカーを引きずり、虚ろな目をした男性が見守っていた。 私が初めて物乞いに直面した瞬間であった。 その時、私は子供の思いに応えるでもなく、ただ驚きおののいていた。 私が金銭を渡した所で、この子達の住む社会構造は変革出来ないことの無力さ。 国際問題を知り、当事者の視点でそれを語る行為に見え隠れする、私たちの偽善性。 整理できないこれらの思いが一気に降り注ぎ、私は友人らの前で泣きじゃくっていた。 それから早4年。 この本を手に取ったことで、このような過去に感じていた思いたちが甦った。著者である西加奈子さんも、同じ思いを抱えていたことに少しの親近感と嬉しさを感じた。 しかし、西加奈子さん(アイやミナに扮した)は私とは違い、その思いを受け入れようとしていた。 "当事者へ思いを馳せる行為はあっていいのではないか"、と。 私も4年たち、思いを馳せるだけでなく、もっと踏み込んだ活動をする人への勇気を感じるようになった。 例えば寄付だ。 今までは寄付を募る側で、寄付を行う側の思いをあまり考えずに募ってきた面が多かった。 自覚を持った自発的行動として、自分のお金を実際に使うことの勇気が、そこにはあると感じる。 私も大人になり、自分で自分のお金を稼ぐようになる年頃だ。 これからは自己選択のひとつとして、寄付をすることで思いを馳せていきたい。
9投稿日: 2020.06.11
powered by ブクログ難しい本。 文体は簡単なんだけど。 私はこの世界に存在している。 なんのために?だれのために? 自分のために。 私も良い親のもとに生まれて、恵まれてるなぁと思う ちょっといろんな問題扱われすぎてて頭がついていかない。笑
3投稿日: 2020.06.07
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自分に問いかけられる場面の多い小説だった。また、優しさとは、アイデンティティとはなど様々なことの深掘りを読み進めながら一緒に考えられた。自分の考えも引き出してくれるような、読みながら対話をしているような楽しい時間のような小説。 タイトルのiは、主人公のアイでもあり、アイデンティティのアイでもある。 また、アイの最愛の人がユウというのも粋だなと。 ミナがALLで、皆んなとはわからなかった。 西さんの作品は初めてだったが、優しさもある温かい作品でした。
4投稿日: 2020.06.07
powered by ブクログ西加奈子の長編ほんとにいいなあ 読みやすいのに感情がすごく動かされる。 生きているって最高で、誰かに愛されたり誰かを愛したりしなくても自分は存在してていいしそれを誇りに思っていい。 それと、想像することの大切さ。自分の知らない世界のこと考えて日々を生きるのに支障きたしてたら意味ない。けどそんな世界も存在してて、それを時折想像する。それくらいでいいんじゃないの?
5投稿日: 2020.06.06
powered by ブクログのめり込むように読み終えた。 「想像」すること、「想像」することで見えてくる自分の思いを直視することが苦しかった。 でもとても必要なことだと思う。
5投稿日: 2020.06.05
powered by ブクログ「この世界にアイは存在しません。」 印象的なこの文章から始まるお話。 作中で何度も何度も繰り返されるこの文章。 ここでのアイは虚数の「i」だが、主人公の「アイ」にはそれこそ呪いのように枷になる。 導入はこんな感じで、ここからお話が進んでいくのだが、ネタバレを含みそうなので感想だけ。 帯POPの西加奈子の新たなる代表作という内容に偽りはなく、本当におもしろかった。(恥ずかしながら他の作品は読んだことがないのだけれど) タイトルの「i」もこれ以上のタイトルはないように思う。 終盤にかけての展開はボロ泣きだった。 アイという読みは「I」「愛」などたくさんの素晴らしいものがある。(これ以上は書きたいが、書かない)
6投稿日: 2020.05.31
powered by ブクログとても読みやすかった 世界で起きていること、自分自身の家庭環境、等 感情移入していろんなシーンで 辛かったり、苦しかったり、潰れそうなったりと びりびりといろんな刺激を受けました
5投稿日: 2020.05.30
powered by ブクログ今そこに在る、"私"と"世界"についての話。 物語の主軸からは少し逸れるとは思うけれど、私は幼少期のある一時期、肉が食べられなくなったことを思い出した。 その日、家族で大きな公園に出かけた私は、敷地内を通る国道で初めて肉牛の運搬車を見た。 目の前で止まった大きな車、すし詰めにされた牛たちの鳴き声、母親に聞かされた牛が出荷されていくという事実、かち合ったまま遠ざかっていく牛の瞳。 今でも忘れられない。 それまで平然と口にしていたものが、その瞬間から酷く罪深いものに思えた。 自分の命が、ほかの命の上に成り立つものだと自覚した。 その事実を知ったのにこれまで通り牛肉を、豚肉を、鶏肉を口にすることが恐ろしかった。 割り切ったのか忘れたのか、いつの間にか元のように普通に食事をできるようになったが、『i』を読んで真っ先にこの思い出が蘇った。 誰かの犠牲の上に平然と生きている"私"と、 私の預かり知らぬ所で命が失われている"世界" その関係に気づき、私は"私"がいることに罪悪感や疑問を感じた。 そんなところにアイとの共通点を見つけたのだろうか。 この小説は、自分の幸せを喜ぶ自分と世界の悲劇を嘆く自分は、決して矛盾するものではないと教えてくれる。 もっと世界のことを知りたいと思った。 自分の目で世界を見極め、世界の悲劇に心を傾け、見知らぬ誰かのために祈りたいと。 偽善だと言われようと、 そこにアイがあるならば、 それは私の意志なのだと、そう教えてもらった。
5投稿日: 2020.05.28
powered by ブクログ「悲劇を免れてしまった」という自分の相対的な幸福と、それに対する引け目、そしてその圧倒的な傲慢からくる自己嫌悪のスパイラルは、自分がもともと考えていたことだった。 まずそれの確認が自分の外部からできただけでも非常に価値があった。 加えて、その傲慢さに改めて注意を払いつつ(この悲劇を一度でも体験してみろ!)、それでもそう思ってしまうことへの肯定、承認は、救われる。自分にとって優しい小説になった。 あとがきにて、自分の幸せを願う気持ちと、この世界の誰かを思いやること気持ちは矛盾しない。との言及。 自分自身に当て嵌めると、世界の誰かへの思いやりは、サボってきた。矛盾しないという安心感の支えを得て、もう少し思いやって、それによって自分が傲慢にも苦しんでも「いい」のかも。 序盤〜中盤にかけては、自分の経験や考えとマッチして没入感があった。 結婚するあたりから、おそらくは小説の展開に対して自身の経験不足から、少し没入感は減。あとがきの、「世界と個人を愛し合える世界でありたい、いくら歳を取っても、知識を得ても、恵まれていても、抱きしめられたいし、抱きしめたいという思い」は自分には掴みきれず。 それでも、アイとミナのドラマから、力強い小説だと思った。また読み返すことになるかもしれない小説。
4投稿日: 2020.05.24
powered by ブクログ自分の考え方、生き方、物の捉え方、漠然とこれでいいのだろうかと悩むときがある。 そんなときの教科書になる本。
3投稿日: 2020.05.23
powered by ブクログ世界史が大好きだった私にとって他の国に思いを馳せることができた旅をするような作品。 ピンとこない言葉が出てくる度に調べて、自分の中で積み重ねる感覚が心地よかった。 最近は直線になりたかった私。仕事とかお金とか、いかに効率よく、最速でできるかを目指してた。 休日は曲線のように、答えのない問いを頭に巡らせたいなと思った。
4投稿日: 2020.05.18
powered by ブクログ「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる。ある「奇跡」が起こるまでは―。「想うこと」で生まれる圧倒的な強さと優しさ―直木賞作家・西加奈子の渾身の「叫び」に心揺さぶられる傑作長編。 パワフルで濃い!向き合うのに体力と心力が必要な作品だった。感動とも違うし、衝撃とも違う。この感じをどう表現したら良いのだろか。 割と淡々とした表現が緻密に組み合わさって、妙な説得力がある。ガツンときた。 「この世界にアイは」というフレーズが何度も何度も登場するのだけど、それの重みがどんどん増していって、最後のあのシーンに繋がっていくのが見事だ〜。勢いが流石。 きっとアイが感じている違和感とか不安って、大小はあれど誰もが感じていることなんだろうな。そのモヤモヤと真正面から向き合うのは怖いし、何もできない自分が惨めになってしまうこともある。 けど、この本を読んで、自分を大切にすることが他人を想うことにつながるのだと思うことができた。想像することしかできないと思うのではなく、想像することならできると捉える。自分一人ができることもあるのかもしれないと思えた。 そういえば、一昨日聴いたラジオである人が「人の為と書いて偽り」と言っていたな…。 付録の西さんと又吉さんの対談で “自分の幸せを願う気持ちと この世界の誰かを思いやる気持ちは矛盾しない” という言葉に出会った。少し救われた気がした。
4投稿日: 2020.05.18
powered by ブクログ自分がいつまでもウジウジしていること、悩んでいることが周りにとってはなんてことないことだったり、自分が楽になるためにそれっぽい理由を見つけて考えること、行動することから逃げてみたりする主人公アイに自分を重ねた。 それから、いろんな考え方や捉え方があるからこそ、断定的なものの言い方、伝え方ではなくて、相手の気持ちを分かり切ることはできなくても考えながら話していく癖をつけたいと思った。
5投稿日: 2020.05.17
powered by ブクログ西加奈子作品初挑戦。作者の生い立ちも作品に影響しているのだなと推測される物語。 簡潔に。扱っているテーマは目を逸しす意識すらせず自分の生活から隔たりがあるものだと認識したことが驚愕を覚えた。逆にこの作品に出会えたことで世界で絶えず発生している悲惨な出来事を意識するきっかけになったし、自分の立場からそれらの出来事に関心を持っても良い、思いを発しても咎められる謂れはないんだと勇気づけられた。 後、又吉との対談後書きが作品の理解をより深めてくれるし、又吉ってやっぱり作家先生なんだなぁと貫禄のあるコメントしてる。おすすめ。
4投稿日: 2020.05.16
powered by ブクログこの世界では、途切れることなく常にどこかで戦争が行われています。戦争以外にも飢えや貧困、いわれのない差別、水さえ満足に飲めない、落ち着いて眠る場所もない環境等々、海外に目を向けなくても、回りを見渡せばすぐ身近に世界に踏みにじられた人たちがたくさんいます。 食べるものがあって、雨風をしのげる場所があって、身に纏うものがある。それだけで充分に恵まれた環境にあるといえます。悲惨で苦痛に満ちたこの世界で、自分だけが幸せを求めるのは罪なことだという意識は、子供のころからありました。できれば太陽の光と水だけで生きていければどんなにいいだろうと、いまも考えます。 人間は生きているだけで罪深い生きものなのですから、幸福なんて求めてはいけないんだと思えてなりません。世の中にはそんな風に思わない人が大勢いることに、むしろ驚かされます。 この世界で生き抜くには、世界の在りようを真摯に受けとめて、耐えていくしかないように思います。 本書の主人公はシリアで生まれた孤児なのですが、裕福な家庭に養子として引き取られ、アメリカ人の父親と日本人の母親のもとで、なに不自由なく育てられます。 故郷では争いが絶えず、多くの人が命を落としているのに、なぜ自分だけが選ばれたのかという、後ろめたさが常につきまとい、その忸怩たる思いは切実です。 しかし、そんな風に考えてしまうこと自体が、傲慢で身勝手な思いあがりなんだということにも気づき、さらに傷ついていきます。 主人公は日常の苦悩から逃れるように、数学という整然とした美しい学問の世界にのめりこむのですが、心の中では、かつて教師が発言した言葉が繰り返し木霊しています。〝この世界にiは存在しません〟 〝i〟とは虚数のことですが、主人公の名前〝アイ〟にも〝自分〟という意味や〝愛〟にも通じます。 この小説の中では、そのほかにもさまざまな問題が提示されます。 はたしてこの世界には、愛は存在しないのでしょうか? べそかきアルルカンの詩的日常 http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/ べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え” http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
4投稿日: 2020.05.15
powered by ブクログミナとアイの友情が眩しかった。 女同士が疎遠になるような事柄をちゃんと向き合ってる。 お互いが周りに流されずに自分の思考を持っているからだと思う。 環境問題や政治についてSNSで意見している人を見てなんだかなと思っていた自分が恥ずかしい。 現に小説に出てきた悲しい出来事を私はあまり知らなかった。 世界の為にも自分の為にも今どんなのことが起きているのか知りたいと思った。 愛って聞くと恋愛が連続されがちだけど、どんな間柄だったとしても、愛を持つことはできるのだと思った。
5投稿日: 2020.05.11
powered by ブクログ自分が心の奥底にしまいこんでいたはずのものを抉るように掴んで離さない。途中感情が揺さぶられて少し読むのが苦しかったです。 自分の苦しみを他人と比較する必要はなくて、受け入れていいんだと、そう思えました。 主人公アイと同じ境遇でなくとも、家庭環境だったり、苦しい環境で生きてきた人はたくさんいると思います。特にそういう人に読んで欲しい。きっと救われる何かがあると思います。 今後、人生の節目節目で読み返したい作品です。
3投稿日: 2020.05.11
powered by ブクログ世の中、時の流れ以外平等に存在するものはない。 世界の不均衡を理解して生きた方がいいのかどうか。 恵まれた者も、そうでない者も 今手の中に無いものではなく、手に入ったものを見つめて、大切にして生きていくことが大事なのではないか と思いました。 比べない、自分は自分。 しがらみなくシンプルに生きる。
4投稿日: 2020.05.10
powered by ブクログ恵まれた家庭で生まれ育った、シリアで生まれた養子の女の子が、シリアや世界中で起こる自然災害やテロなどの悲しい事件を通して、心を痛めている。 彼女は、なぜそれらの不幸な出来事は、自分には起きなかったんだろうと考え、悩む。 わたしは日本に生まれて、何不自由なく生きてきたけれど、それを当たり前としか感じていなくて、他の国の人と比べたこともなかった。 それはそれで幸せなことだと思うけど、誰かが辛い思いをしているというこの社会のことを考えていかないと、という西さんのメッセージに心を打たれた。 また西さんの本が、わたしにとって大切な物語になった。
4投稿日: 2020.05.09
powered by ブクログ読み終わった後の充実感は他の小説よりあった。 後半のミナと内海くんとかのドロドロした人間関係の部分はちょっと辟易した。 日本は個性を押しつぶし、同じもの、決まったものを好んでレールに沿った人生を歩ませようとするが、それが心地よい・悪くないと感じる人もいる。 何がなんでも欧米スタイルの自己主張型があっているわけではない。 学生では抑圧され、社会に出て急に自己表現,主張型へ転換するのが問題。 アイの心の闇も、養子によるものではなく、きっと本人の性質によるもの。 何事も決めつけは良くないと思った。
4投稿日: 2020.05.06
powered by ブクログシリア孤児のアイが、米国・日本人の父母の養子となって…。非常に読み易く、共感を覚えながら読むことができたが、アイの思考が生まれつきの日本人のように感じざるを得なかった!そうなのだろうか!?「虚数のアイがこの世に存在しない」との高校数学の授業から、自分自身の存在への後ろめたさというところが伏線として繋がっていく興味深い展開である。アイとミナの女性同士の友情、アイとユウの相互の信頼関係が美しく、感動的。
2投稿日: 2020.05.03
powered by ブクログ倦怠した心に、生きてく力をもらえる物語でした。西さんの、暖かい包むような表現が本当に好き。この世界に、アイは存在します。存在していい、でも、存在すべき、でも、存在せねば、でもなく。その温度感がとてもよかった。
5投稿日: 2020.05.01
powered by ブクログ備忘録 ・世界と個人を愛し合える世界でいたい ・自分の幸せと、世界の誰かを思いやる気持ちは矛盾していない、どちらかだけじゃない、両方あっていいんだ ・苦しみとか辛さも、今自分が感じてる辛さを辛さとしてきちんと受けとめていきたい そして、世界の誰かに目を背けないでいたい、比べる必要はない わかっているようで、忘れていたこと。数値化して、比較する必要はない 今の世の中でもそうかもしれない 死を数値で捉えることは絶対にできないし、その一人一人に家族と友達と数え切れないほどの大切なことがあることから目を逸らしてはいけない、でも、 そこに思いを馳せすぎると、自分自身の苦しみを苦しみとして受け入れてあげられなくなる 背反するもの、どちらか片方を選ぶのではなく、それでもやっぱりわたしは私の人生を生きていきたいし、誰かのことを思うという行為から逃げたくない
6投稿日: 2020.05.01
powered by ブクログどうにも西加奈子とは相性が良くないようだ。 出自のコンプレックスから自分のアイデンティティーを探し求めるところまではわからなくもないが、執拗に繰り返される「この世界にiは存在しません」のフレーズが偏執狂じみていて萎えるし、いつの間にか個人の問題が普遍的なテーマに拡張されているのも気に入らない。 男子女子の感覚の違いなのか、単純に僕の感受性が未熟なだけなのか、特に大学進学以降の話がまるでつまらなかった。。。
2投稿日: 2020.04.30
powered by ブクログ私は根っからの日本人なので、自分は日本人だと当たり前に思っているけど、主人公のように自分のアイデンティティはどこだろう?と考えて悩んでる人間もいるんだと改めて知った。 両親に愛されることが苦痛に思う、という主人公の感情にあまり共感はできないけどそう思うのはものすごく主人公が純粋な人間なんだなと思う。
4投稿日: 2020.04.29
