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海と毒薬(新潮文庫)
海と毒薬(新潮文庫)
遠藤周作/新潮社
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総合評価

568件)
3.9
145
212
140
13
5
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    来年のラッキーカラー(エメラルドグリーン)の背表紙で買おうと思って選んだのが遠藤周作で、その中からチョイス。 小さい頃から父親の本棚から拝借して読書をしていたけど、その中に海と毒薬が並んでいて、やけに目について気になっていたから父親にどんな話?と聞いてみたら「それは読まんくてもいいんじゃない、何か感動があるとかないと思う」とふわ〜っと遠ざけられてて、余計気になってたから、大人の今、購入。 暗い…えぐい…。遠ざけられた意味がわかった…。 けど、信仰を持たない日本人の良心と、罪と罰とは、苦しく考える物語の雰囲気に、若い頃の父親の気持ちを想像しながら自分も同じ経験をできたので、読めてよかった。 次は沈黙を読もうかな。

    1
    投稿日: 2025.12.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    良心の呵責というものについて、こんなにも深く考えさせられたことはない。 戦時中の医療現場という、自分には縁もゆかりもない世界なのに、まったく他人事とは思えなかった。 とにかく物語への没入のさせ方が巧妙だった。 プロローグでは読者の立場に近い、平凡な名無し男の視点から風変わりな開業医・勝呂を描き、第一章では勝呂の視点から事件に至るまでの経緯を描き、第二章ではとある看護師と、勝呂の同僚・戸田の過去を深掘りし、最終章ではそれらのピースが全て繋がって、全員が同じ禁忌の場に居合わせる。 それぞれのチャプターで、全く異なる切り口から善悪や良心、正しさとは何かを訴えかけてくる。 とりわけ第二章の戸田の子ども時代のエピソードが、この作品がもつメッセージ性の根幹をなしているのかもしれない。 罰さえ受けなければ何をしたって良い、という風に考えている人は実際多くいるだろうし、置かれた状況によっては自分もその中の一人になりかねない、あるいは既になっているのかも…?という底知れぬ恐ろしさを感じた。

    0
    投稿日: 2025.11.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    圧巻。素晴らしすぎる。 戦争下という特殊な環境において、善良な市民がごく一般的に倫理観を壊していく様を見事に描ききっている。 文章は平易だが情景描写に重みがあり澱んだ空気が広がっている。特に流される海音を聞き、人間として流動的に流されていく、というメタファーは怖しい。 勝呂に主眼は置かれているものの、序盤の「私」の平凡な日常の描写、上田の女性的な嫉妬の描写、戸田の人間失格に通ずるような描写、その全てが人間の愚かさを表現していて没頭した。 アーレントの「凡庸な悪」を想起しながら読んだ。 しかしこのような倫理観の欠落という問題を、単に日本人の無宗教的価値観のみと結びつけて論ずることは短絡的だと思う。つまり、人間一般として議論するに値する問題だと思う。 23 何もないこと、何も起こらないこと、平凡であることが人間にとって一番、幸福なのだと私は彼等をみながら、ぼんやりと考えた。 88 あれでもそれでも、どうでもいいことだ、考えぬこと。眠ること。考えても仕方のないこと。俺一人ではどうにもならぬ世の中なのだ。 夢の中で彼は黒い海に破片のように押し流される自分の姿を見た。 92 「神というものはあるのかなあ」「神?」「なんや、まあヘンな話やけど、こう、人間は自分を押しながすものからー運命というんやろうが、どうしても逃れられんやろ。そういうものから自由にしてくれるものを神とよぶならばや」 194 人間の良心なんて、考えよう一つで、どうにも変わるんや

    0
    投稿日: 2025.11.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    冒頭は戦後が舞台なので はて..?となるが 医師が登場して戦時中になって 読み進めていくうちに どんどん闇が深くなっていく物語だ。 登場人物の過去も描いてるが その表現がすごく良い 特に戸田の過去を読んでいると 実際に同じような境遇をしてる人がいるのではと思う 個人的にページをどんどん進めた部分がある。 それは、解剖直前の場面だ。 ''生きた人間に麻酔をかけ殺す''という状況が 文章だけでも伝わってきた。 反戦とか歴史の出来事から学んでという作品ではない。 絶対オススメしないが 時間もあってする事もなくて ネットサーフィンしてるくらいなら 200ページ未満だから 読んでみてもいいかも。

    1
    投稿日: 2025.11.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    桜庭一樹の読書日記に載ってたし『ラビリンス・サーガ』で日本軍の話が出てきていたので読んでみました。淡々と進む物語。ガソリンスタンドの主人など戦争中に人を殺していた人々が平凡に暮らすという話、戦争中の病院、読んでいて怖かった。戦争中だからあり得た話という気がしない、もしかしたらちょっとしたキッカケで今の世の中でも起きるかも知れない。遠藤周作が凄い、『沈黙』といい『海と毒薬』といい凄い。なんか色んな事を感じたけど上手く感想が書けない。

    0
    投稿日: 2025.11.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    再読、借りた本。 生体解剖に目が行きがちだが、今回は登場人物それぞれの向き合い方に引き込まれる 冒頭のマネキンを眺める勝呂、何もない生活の幸せへの言及。 海への考察は解説で深まった 作家に断罪する権利はなく、関わった人達からの抗議に苦しんだとのことだが、私にも断罪する意図は見えなかった 捉え方は立場が変われば無限にある 終わった後の教授の佇まいがそれを物語っていると思った 留学、沈黙で三部作と捉えられるようで、こちらも改めて再読しようと思った 一緒に読んだ中3娘はやはり生体解剖に焦点をあてていた

    1
    投稿日: 2025.11.09
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    帯に書かれた内容から、人体実験の部分にフォーカスしている本かと身構えたけど、そうではなかった。 戦時中の人体実験に至った背景を、特に医師や看護師の心情や性格にフォーカスして書かれた本。 皆が平凡な人間で、かつこのような異常な環境下でなければ、人体実験には至らなかったのかな。 唯一、勝呂先生だけ、正常な認知機能を保っていたということなのだろうか。

    0
    投稿日: 2025.11.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    看護婦に不妊コンプレックスがあるのはわかるけどだからといって飼い犬の生理で暴力を振るったりする描写があると知っていたなら読まなかったな、、

    0
    投稿日: 2025.10.31
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    神が運命をさだめるのではなく、運命から自由にしてくれるのが神だという考え、神は無力であれ、可能性さえ示してくれればそれで良いのだと感じた。 人間は善悪の外には立てない。 人によって罰と感じるものは違う。 ならば正義もみな形が違うのも当然で、 その混沌のなか、正しい倫理観を求められる。 私達はかなり難しいところにいるのではないか。 戦時中の命の重さ、同じでなくてはならない。 私はその中で今の価値観を貫けるのだろうか。 多く自分に問いかけながら読み進めた。 海が癒しから大きな不安にかわるその瞬間 恐ろしくて黒い黒い海が脳を絶えず侵食した。 見た事のない手術室の血を流すための 小さな川の流れを連想して苦しくなった。 そういう伏線も散りばめられているのだろう。 素晴らしい作品だった。

    8
    投稿日: 2025.10.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    海と毒薬 著者:遠藤周作 発行:1960年7月15日 (2004年6月5日 91刷) 新潮文庫 初出:1958年4月、文藝春秋新社より刊行 遠藤周作のエッセイを読みたくて、古本をまとめて購入。エッセイ2冊を読んだので、久し振りに小説。代表作が何冊もあるけど、この本はとくに有名なので読んだ人も多いかと。戦争末期に起きた九州大学医学部事件をもとに書かれている小説だけれど、事件小説やモデル小説など歴史小説的なものではない。軍部と九州のF市にある大学病院の教授や医局員たちが、計画的に行ったアメリカの捕虜達を生体解剖した事件について、あくまでフィクションで書かれたもの。したがって、関わった医師や軍部の人数なども、実際とは違っている。 学生時代、上坂冬子が書いたノンフィクション本「生体解剖」を読んだ。本棚を見ると、なんと奇跡的にその本が出て来た。帯を見ると「三十余年目に発公開された全記録」とある。こちらは1979年の本なので、それまでは事件の全貌を明らかにしたものはノンフィクションでもほとんどなかったということになる。その20年ちょっと前に書かれた「海と毒薬」の〝フィクション度合い〟が想像できる。 新宿から1時間、黄色い埃が舞う住宅街。当時だからまだまだ荒れ地のような郊外。そこに変わり者の開業医、勝呂(すぐろ)二郎。なにか事情がありそう。この街に越してきたある男が、たまたま結婚式で九州のF市を訪れたところ、勝呂を知る医師に出会う。そこから、勝呂の若き時代の出来事、すなわち生体解剖の話が始まる。 大学病院では、第一外科部長と第二外科部長が、次の医学部長の座を狙って兢兢としている。自分が有利になるように患者を利用し、手術をうまくこなしてポイン稼ぎをしようとしている。勝呂は医局員(研究生)として、第一外科で勤務している。ところが、その第一外科部長をしている教授が、手術に失敗してしまい、失脚する。助教授と助手が中心となり、勝呂たち若手や看護婦を巻き込んで生体解剖をする。 勝呂は参加を決めたものの、途中ですっかり気分が悪くなり、無気力になるが、もう一人の若手の戸田は平気でこなしていく。彼は幼い頃から、人に対して何をしても罪の意識を感じない性格だった。罪と罰でいえば、罰が与えられない限りまったく平気なのである。つまりは、バレなければいい、そんな人間だった。 参加を決めた一人の看護婦の人生も振り返る。離婚経験があり、いろんな人生を歩んでいた。 それぞれの立場で、屈折し、苦悩する。 ********* 勝呂二郎:医師 戸田:同じ研究室 橋本:勝呂たちの教授、第一外科部長 朝井:助手、橋本の姪と婚約 柴田:助教授、施療患者の手術担当 大場:看護婦長 垣下:元第一外科部長、柴田は垣下に育てられた、死亡し橋本副部長が継ぐ 坂田:看護婦 阿部ミツ:結核患者 おばはん:施療患者 義清:息子(出征兵士) 田部夫人:個室の患者、大杉部長の親戚とも言われている 大杉:医学部長 権藤:教授、第二外科部長 小堀:軍医、第二外科の講師 新島:助手 田中:軍医(手術に立ち会い) 小森少尉:送別会の主 村井:軍(将校の一人) 看護婦関連(上田ノブ) 雑賀:大連での隣人 夫:大阪出身、満鉄社員、2年で離婚 橋本:副部長→第一外科部長 フラウ・ヒルダ:橋本の妻 河野:若い看護婦(同僚) 大野フサ:施療患者 前橋トキ:大部屋の患者、死亡 医学生関連(戸田剛) アキラ:六甲小学校の同級生 木村マサル:同上 ススム:同上 若林稔:東京からの転校生 オコゼ:N中学の博物の教師 山口:N中学の同級生、盗みの疑いがかけられた、無実なのに否定せず 佐野ミツ:医学生の頃にいた女中、妊娠させて中絶 医学部長の座を争って、橋本

    0
    投稿日: 2025.10.27
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    読者の私が高校生のときに、この本は絶対に読んでおくべき本だと言われた本です。当時の衝撃は、とてつもなくて言葉を失ったことを覚えています。少し前にNSFMさんのレビューを読んで、続編を読みたいと思いました。まずはこの本をもう一度読んでからと思い、再読しました。 新宿でひっそりと開業医をする勝呂。彼の過去へと話が進みます。戦時中、大学病院の研究生の時、空襲か病気でいずれ皆死ぬんだという希望のない日々を過ごします。そして彼が生かしたかった女性の死後、大学病院の勢力争いに巻き込まれ、アメリカの捕虜の生体実験に参加します···。 時代が起こした罪なのか、本当にそれだけなのか。平和な時代の感覚では考えられないことが現実にあり、それを元にした小説だということが、やはり衝撃的でした。 生体実験に参加した看護師、医学生がどういう敬意を経てその場に立ったのかを読んでも、複雑な思いはぬぐえませんでした。 心のなかで葛藤し、ただそこにいただけの人と、実験後でも呵責も後悔も感じない人の違いは何なのだろうと考えました。 戦時中に起きたこの事実を知ることはもちろん、人間の倫理観について考えさせられる小説でした。 決して赦されない過去を背負った勝呂のその後を知るために、続編を読もうと思います。

    57
    投稿日: 2025.10.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    戸田ターン、途中いきなり読み手側に問いかけてくるからびっくりした 戸田らだけではなく、私だって、世間や社会に絡まなくとも罰だって罪だって意識できるのか 良心による罪と罰を知らないかもしくは無視してしまわないか 自分に正直でありたいと強く感じた 戸田ターンで出てくる首に包帯を巻いた少年、君、太宰治の人間失格にもいなかった....?

    0
    投稿日: 2025.10.14
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    倫理観は、個人の中に生まれるものではなく、世間が作り出すものだと再認識した。それでも私は人が悪魔なのではなく、戦争が人を悪魔に変えてしまうだけと信じたい。 最初は利己的な戸田は純粋で不器用な勝呂のことを馬鹿にしてると思っていたが、生い立ちを知って見方が変わった。小説のセリフを用いるなら、勝呂にとってのおばちゃんのように、戸田にとっては勝呂が運命から自由にしてくれる神に見えていたんだと思う。それは、残された「良心」の部分であったに違いない。 後味の悪さが残る話だったが、読むことができてよかった。本書はあくまで創作なので「九州大学病院解剖事件」の経験者が書いた本も読み、もっと事実を確かめたい。

    22
    投稿日: 2025.10.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ちょうどよい厚みの本。 昔中学生あたりで一度読んだときは全く理解できずに終わったのだが、大人になってから読むと色々考えさせられる本だった。 わかりやすい起承転結を求める人には向かないが、人それぞれの感情の機微について考えたい人に薦めたい作品。 第一部での勝呂の最後の一言が、最後まで読み終えると違う意味だったことに気が付いて胸が苦しくなった。

    2
    投稿日: 2025.10.03
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    終戦前の九州大学生体解剖事件をモチーフにし、登場人物の出生や罪の意識の感じ方の違いを良く表現していた。個人個人の罪の意識の違いは勿論、当該事件の当事者になった際にもその罪の意識の違いによる心情の違いを垣間見え、読者にも正義感や罪の意識の感じ方を問い直す作品になっていた。事件について表面的にしか分からなかったが、当事者目線のように事件を体感できたし終戦直後の福岡の様子も垣間見えたのが面白かった。

    1
    投稿日: 2025.09.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    調度良い長さ、かつ文体も読みやすかった 勝呂医師の非情な過去が明らかになるかと思ったが彼は年老いても良心の呵責に苦しんでいて、本当の化け物は戸田だった 誰もが戸田のような一面と勝呂のような道徳を持ち合わせているものだと思う。2人ともに共感できる部分があった。

    1
    投稿日: 2025.09.25
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    【2025年112冊目】 戦争の最中の日本で行われた医師による米軍捕虜の生体実験。世間は衝撃を受けながらもどこか他人事のように捉えていた。ある日、夫婦ともに田舎に引っ越してきた私は、気胸の処置をしてもらうため、町の小さな医院を訪れる。どこか陰のある医者、勝呂を奇妙に思いながらも、同時に適切な処置に感服する私。だが、勝呂が件の生体実験に関わっていたことを知って――人間の善悪はどこにあるのか、問をかけ続ける一作。 この作品、いろんな出版社から出されているんですね、それほどまでに主題がセンセーショナルだとも言えるのですが、「生体実験」というキーワードからおどろおどろしいものを想像していると全く違った衝撃に殴られることになります。 最初は第三者である「私」が語り部となり、その後事件に関わった医師や看護師の視点で物語は少しずつ進んでいきます。実験のシーンは物語全体の僅かを占めているに過ぎませんが、そこにたどり着くまでの過程で見る、「一見して平凡な人々」の心の動きを考えると、まるで実験が日常の一コマとして行われたことに読了後もじめりとした余韻を残してきます。 人体実験下のみならず、戦争下の人々は心のどこかが常に脅かされていて、感情が麻痺している部分があると言っても過言ではありません。 昭和の時代に書かれた小説ですが、読みにくさはほとんどないので、日本人として一度は読んでおくべきかもしれないな、なんて思いました。

    2
    投稿日: 2025.09.16
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    捕虜の生態解剖がテーマと聞いていたからどれほど解剖や付随した描写があるのかと思ったけど、そういうわけじゃなかった 海のように寄せては引いていく非人道的な事柄や勝呂自身ではどうしようもない患者の容体云々に対する勝呂の葛藤が見てとれた 生態解剖は医学的な観点からは正に傾くし、人道的な観点からは負に傾くが、、、という感じ 25.09.0.9-10

    5
    投稿日: 2025.09.11
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    良心とは社会的な恥からこそ生まれるものなかのか。本当は、罪の意識や道徳的なものから生まれてくるのが良心ではないのか。人は社会的な評価がもしなくなってしまえば良心はなくなるのか。そういったことを考えさせられるほんだった。

    2
    投稿日: 2025.09.11
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    「盛大な反省文」 それぞれの登場人物、 特に生きたまま捕虜を殺す手術に関わった男女は各々が過去に反省しなければならない出来事を経験している。 彼らだけに限らず、生きてる人間に等しくある『罪悪感』であり、これをどう感じ、どう消化していくかが肝心だと感じた。 残された手記のように記録され、 過ちを犯した己を自らが叱るような書き方もされていたりと、人間の反省をさまざまな角度から描いたストーリー。 中でも上田看護師の話が一番、ぐっときた。 もう感情を失ってしまうような辛い出来事を 彼女なりに消化し、罪悪感を捕虜の手術で混乱させ、 嫉妬や悔しさを理解していく姿勢に 同情をする人も少なくない気がする。 戦時中という時代を感じる部分がほとんどであるので まだ読書歴の浅い自分にとっては、理解しにくい場所もあるが、比較的時代ものが得意ではなくても、読める作品だった。

    9
    投稿日: 2025.09.08
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    「沈黙」からの流れで。人の残虐さと、そうなれなかった勝呂の良心はじつに良心だったのか、あるいは冷徹に見える戸田にほんとうに良心はなかったのか、まざまざと考えさせられる。 佐伯彰一が解説ですべて書いてしまっているけれど、導入部の計算され尽くしっぷりに感嘆する。 黒い海が引き込んだのだ、みんな死ぬ世の中なんだから、一人くらい生きたまま殺したって自然死とどうちがうんだよ、と、ああ呵責さえ感じられない戸田を思う。(黒い)海が自然死で、毒薬が実験死だったのかもしれない。

    3
    投稿日: 2025.09.05
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    全体的に暗めの色調で描かれていて 明るさをイメージするタイミングがなかった 佐伯彰一の解説を読むこと作者の伝えたいテーマがハッキリ分かった。 当時のことについて全く詳しくないけど 登場人物それぞれが秘めるココロの声や言動に 理解できるものもあった。 良い人でありたいっていう自分の理想とはまた別に一皮剥いたら別の自分もいる気がするのも理解できた。良心というのは地盤が緩んだ状態というのはブレブレになる。 登場人物がそれぞれが自分という人間に翻弄されているような感じが面白かった。 シンプルに話の流れが良くてめちゃくちゃ没入できたし、全体的に暗いイメージなのに「西陽が白い埃を浮かせながら誰もいない机や椅子の上に流れ落ちている」とか陽の描写もたまにあって、別に柔らかさや明るさを想起させる描写ではないんだけど 明るさを感じて素敵だなと思った。

    2
    投稿日: 2025.09.04
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    捕虜への生体実験という実際の事件をベースにした作品。ここでは、人間を押し流す運命に抗い自由を与える存在として神が捉えられていた。しかし、そのような神が存在せず、ただ海にのまれるように罪を犯してしまう登場人物たち。そして、彼らは、その罪に対して「良心」の問題ではなく、あくまでも一時的な世間的な罰のみの問題として考えている。文章としては大分読みやすく、それぞれが印象的であり面白い。また、解説もとてもわかりやすく面白い。

    6
    投稿日: 2025.08.25
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    遠藤周作さん著「海と毒薬」 ヒポさんのレビューを読んで自分も再読してみるに至った。この作品を読んだのは中学生の時、計算してみれば約35年振りの再読となる。中学生の時に読んだ時はストーリーを読んだだけの読書だったが、今回は流石に違うものも感じとれたし、考えさせられながらの読書となった。 改めて読んでみて、この作品、戦時中が舞台なので戦争文学として位置付けされる事が多いが、それ以外にも色んな側面を持った作品に感じられる。 人としての倫理観や道義が時代背景を背に投げ掛けられている作品だと感じた。 物語は太平洋戦争末期の九州のある大学病院が舞台、終始不穏の空気感が漂う作風。大くの民間人が空襲、そして病気にも苦しみ命を落としていた時代。 医者の数も足らず、食料も足らず、手当てをする薬すらも足らない。貧困状態も末期な状況下。 主人公の一人である戸田、そんな状況下ならばと、彼自身の良心の呵責を測る為に生体解剖への参加を申し受ける。言い方を強く変換すれば殺人に参加する事に同意。 作家遠藤周作による「罪と罰」と謳われているが正にその通りの内容。 この戸田、太宰治「人間失格」の主人公「大庭葉蔵」のように感じる。自分自身の内面の奥底の部分を繊細に探るような一面も持ちながら、その意識とは裏腹に思考行動言動は大胆で、罪に対しての呵責の念は限りなく薄い。 感情の欠陥やサイコパスとも違い、御都合主義の延長のようにも感じるが、私見や所感がストイックに尖っており、そこに対しては黒い瞳の持ち主のように感じられる。 その戸田のその人間らしさに自分は妙に共感、魅力を感じてしまった。 勿論、社会や人としての倫理や道義を否定するわけでは全くないが、自分の心の中にも戸田がいるような気がするからだ。気がするのではなく間違いなく存在している。 そして戸田は誰の心の中にも存在していると感じる。 それが人間なのだろうと思う。 著者が戸田という登場人物を描くこと、それは人間の奥底を描いているのではないだろうか?とさえ感じられた。 そして今回、再読してみてこの「海と毒薬」というタイトル、正に海の深さのように感じさせられる。 読了後に調べてみて、このタイトルに関して、様々な方々が様々な解釈をしている。しかし著者自身はこのタイトルの意味の解説はしてはいないらしい。 自分も自分なりに色々と考えてみたが、その様々な方々の解釈が全部あっているようにも感じられるし、全部違うようにも感じられる。作品を捉える視点や重点でその意味がだいぶ変化して感じられるからだ。 作品を介して読者各々が感じた「海」の解釈と読者各々が感じた「毒薬」の解釈でいいのだろう。それを望んで著者はあえて明言しなかったのだろう。 そう考えれば、自分以外の他の人の考えの全てを「海」と比喩していて、その中での自分の個人の考えが「毒薬」なのかもしれないって思えてきた。 もしそうならば少し怖い。 深く潜考させられる作品だった。

    131
    投稿日: 2025.08.23
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    遠藤周作さん「海と毒薬」読了しました。 古い作品なので、読みづらい文章表記もありましたが、大筋は理解できました。勝呂先生の葛藤や心情の変化を読み取りながら、読み進めました。

    39
    投稿日: 2025.08.13
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    戦争末期の米軍捕虜生体解剖実験という、残酷惨虐な題材であったけれど、その事実を過大に脚色するのではなく、平坦と語るのが心に重く残った。関わった人間それぞれの思惑と感情と、無感情が、不気味で怖かった。

    12
    投稿日: 2025.08.11
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    何かでこの事件を知った。 snsか。 それは後に役に立つ事だったのかな。 小説を読んだだけで、真実は知らないから何とも言えない。小説内では麻酔を使われていたけど実際はどうだったのか。 そもそも日本でこんな事があるんだから、海外でも同じような事件はありますよね絶対。遠藤周作さん、他にも読んでみようかな。

    0
    投稿日: 2025.08.11
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    様々なテーマが折り重なった傑作。ちなみに僕はこの話を読んだ後、菊と刀、新渡戸稲造の武士道を読み返した。議論のきっかけになるし、比較すべき作品も非常に多岐にわたる。人の原罪や組織内での正義などを深く考えさせられる。短い作品ながらまさに文学を体現した素晴らしい名作ということで総括したいと思います。

    7
    投稿日: 2025.07.20
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    「俺が恐ろしいのはこれではない。自分の殺した人間の一部を見ても、ほとんど何も感ぜず、何も苦しまないこの不気味な心なのだ」 「罪と罰」を主題に取り扱った小説。 人を殺した良心の呵責よりも、世間、社会的に罰される事を恐れる心しか持たない登場人物の内面を捉えた作品。

    5
    投稿日: 2025.06.20
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    おすすめポイント ・正しさとは何か、すごく考えさせられる ・遠藤周作はキリスト教信者なので、キリスト教のマインドが根底に流れてる。でも全然押し付けがましくないし、むしろ人とはどうあるべきかという彼のメッセージには納得する。サイコパスでもない限りは、きっと多くの人は。 残念ポイント ・なし!ほんとに好きな作品です

    3
    投稿日: 2025.06.19
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    わからないことが多い 解説を読んで、少し理解が深まったゆりちゃんやナツミートが薦めたこの本をわかりたかった

    0
    投稿日: 2025.06.19
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    九州で凄惨な事件が起きた。 米兵を生きたまま解剖した、という事件が。 九州の大学病院で学ぶ主人公、勝呂と同僚の戸田は病院内の政治が活発化するのを横目に日々を過ごしていた。毎日戦闘機が飛び回り人々が命を落としていく中、2人は生きたままの米兵を解剖してみないか、という誘いに乗ることになる。 初めて遠藤周作作品を読んでみました。本当に練り込まれた作品でした。中でも感情移入を強くしたキャラクターは勝呂の友人、戸田でした。悪事をしても罪悪感がそれほど湧かず、一番恐ろしいと感じるのはそのことによる社会的な制裁というキャラクター。どこか自分と重なる部分があります。米兵の殺害の片棒を担いでしまったことに強い罪悪感を感じている勝呂に対し、「なんでお前は罪悪感を感じられるんや」という風に感じている戸田の描写は強く胸を締め付けられました。罪とは何か。そして彼らに待ち受ける罰とは…。 文庫の後書きを見るとどうやらこの作品には続編の構想があったようです。それも読んでみたかったな、と思うほど考えさせられる小説でした。

    0
    投稿日: 2025.06.15
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    2025.6.4 一瞬だけ出てくるヒルダという登場人物が重要であり、この人だけが唯一罪という感情を持ち合わせる。それは絶対的な神の前での罪、それによる裁き、つまり絶対的な罰を備えるのに対し、日本人は社会的罰を感じ、それは絶対的ではないことが描かれている。

    1
    投稿日: 2025.06.07
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    人体実験、と言うとマッドサイエンティストをイメージしてしまう。しかし、この本の登場人物は、私たちと変わりがない普通の人たち(軍人は除く)。戦時下という状況でなくても、様々な要因から誰もが当事者となり得る怖さを感じた。

    0
    投稿日: 2025.06.06
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    医学と倫理。人を救う仁術が人の命を犠牲にする。この矛盾が精神を蝕む時、人は自省するのか、それとも後付けの自己正当化によって誤魔化すのか。社会が悪い、職場が悪い、過去が悪い、しかしその瞬間行動したのは己である。その責任を負うのか、それとも逃げるのか。そこに僅かな理性が宿ってほしい。状況に翻弄される私たちに課される主題であろう。

    1
    投稿日: 2025.05.31
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    作中に何か答えがあるわけではなく、ただ、読者はどの登場人物かに自分の中に何か共感のようなものを感じて深く考える…そうなるように描かれているように感じた。 人間の本質に良心は存在するのか、戸田の苦しみがわかる気がする… 第二次世界大戦末期の日本、弱くささやかな良心が踏み躙られるような荒廃した舞台は羅生門の世界観と似ている。かも。

    1
    投稿日: 2025.05.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    まさか実際に存在した事件だったとは、思っても居らず。解剖のシーンは、文字だけで映像も何も無いのに、想像されてなかなか読むのがきついものがあったが、故に現実を知らされる。 日本もなかなかの戦争犯罪を犯してきたと初めて知れた本。 日本人の思考は、きっとそのような罪を犯してしまった彼らを庇護してしまうところにあるのでは無いか。ヒルダの「神様がこわいとは思わないのか」という一言は核心をついている。彼らは神という絶対存在が自分の上にある。自分の一挙一動を監視し、裁判を下す神という存在が。なので悪には容赦なく敵意を向けるし、善にはとことん慕う。しかし日本人には基本服従の対象がない。故に悪意を見せられても、ある程度時が経ってしまえば「時代だったから仕方ない」「彼らにだって本気でそうしてやろうと言う気持ちはなかったかもしれない」と庇護し、片付けてしまう傾向にさえある。 これは、私たちが結局日本人で、自分にとっての絶対的存在がないからでは無いだろうか。私の神が許さない、神はそれを認めないから、私も認めない、という思考が、私たちにはないことをこの小説は皮肉にも物語っている…ように、私は思うが。

    1
    投稿日: 2025.05.05
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    当事者の心情が細く描かれてる 解説に、創作だから実際に関与してた方からの批評があったと言及されていて そう考えると本作とか 実話ベースのフィクションとか 歴史の教科書やらなんやら みんな思うことあるよねーって 当事者にしか分からないこととか 色々あるから このタイミングでこの本から 自分の得た教訓としては 人の意見は参考程度に取捨選択していくことが改めて大事(話飛躍しすぎてごめんなさい) 戦争医学に興味が湧いたので 多少調べてみました。

    0
    投稿日: 2025.05.04
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    神なき日本人の「罪と罰」とは。 終戦時の大学病院で起きた外国人捕虜の生体解剖事件。 生きた人間を生きたまま殺すという、目を背けたくなるような残虐的な行為。 これは、個人の問題なのだろうか。 …いや、彼らだけの問題とはとても思えない。 では、なにが彼らをそこまでさせてしまったのか。 人間の良心を蝕んだもの。それは、もちろん信仰の有無もあるかもしれない。戦争という異常事態が心を麻痺させたのかもしれない。未来に希望が持てない状況が投げやりな気持ちにさせたのかもしれない。 事件を起こした後でさえ、良心の呵責に苛まれる者とその気持ちすら抱けない者がいた。 自分を見失ってしまったら、信じるものがなくなってしまったら、時代の波にのまれてしまう可能性は誰にでもある。 私は彼らであったかもしれない。ただ、生きる時代が違った、それだけのこと。そう考えると恐ろしい。

    61
    投稿日: 2025.04.24
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    戦争という人の命が簡単になくなってしまう状況において人間の良心は機能するのか。そもそも、良心ってなに。 米軍捕虜を人体実験した実話をもとにしているが、実験の内容も丁寧に描かれていた。死というものにもう慣れてしまった人間の行く末を突き付けられ、心に重く響いた。 200ページないぐらいの本なのにこの読了感は遠藤周作さんの小説の構成や表現が卓越しているとしか言いようがない。 ただ、重く心にのしかかる。

    0
    投稿日: 2025.04.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    惹き込まれた。 同じものを見たり経験したりしても、考え方は人それぞれだと気付かされた。 最後に過去の回想から戻るかと思った。

    0
    投稿日: 2025.04.11
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    約20年ぶりに読みました。 いつ終わるかも分からない戦争の中で、空襲や病気で人がどんどん亡くなっていっても何も思わなくなってしまう感覚があまりにも生々しい。 もし今再び戦争が起こってしまったとして、生き延びていたら同じような感覚に陥ってしまうのではないのかと思ってしまう…。 生きたまま捕虜の解剖することで医療の進歩に繋がる。そんなのは正当化でしかない!酷すぎる!と思うけれど、戦争により感覚が麻痺してしまったら、そうとも思えなくなってしまうのか… これも宗教観が薄い日本人故なのか、個人の性質なのか。でも今と当時で考え方自体もだいぶ違う気もする。 病院内の様子、情景がめちゃくちゃリアルに想像出来る文章…。 この医療が発達してる現代だって、私は手術台に上がるのすごく怖かった。麻酔だって今より全然精度低いしだろうし、手術受けるのめちゃくちゃ怖いと思う。 20年前に読んだ時は戦争って怖い、ダメだとしか思わなかったな。今はいつ戦争が再び起きてもおかしくないような時代になってるということなんて思ってもいなかった。 と、小説の本質とズレてる感想になってしまった…

    14
    投稿日: 2025.04.10
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    終始重い作品だったけど、しっかり考えさせられる作品だった。勝呂と周りの人間の考え方のズレに怖さを感じた。 「どうせ死刑になるような人間を1人殺したところで別に。」という考え方が、「広い海に一滴の毒薬を垂らしたところで別に。」という解釈をタイトルから読み取れた。

    2
    投稿日: 2025.04.09
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    不穏な話だけど、どんどん引き込まれてしまう。 それぞれの立場の手記で話が進んでいき、救いようのないことがたくさんおき、それでも普通は立ち上がって行くけど、この人達はそうではなくさらに暗い淵に落ちていく。 でも、罪を感じることができないのは悪いことなのか?と言われると生まれ持った性質だから仕方ないとも言える。 他人の眼や社会の罰だけにしか恐れを感ぜず、それが除かれれば恐れも消える。という言葉がささり、今はのほほんと生きていけるけど、日々の選択って何なんだろうと思う。 迷いを消せるのは、ただ好きになること、いかに他の人の評価は気にせず、自分のためになるか指標で生きて行くのがいいんじゃないかなぁ。人間に優劣はないし。と思ったのでした。

    2
    投稿日: 2025.03.02
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    終始暗い雰囲気の小説でした。読んだ後に、どんよりとした心苦しい気持ちになりました。 たった160ページ程度で、読者をこんな沈んだ気持ちにさせる表現力、構成力はさすがとしか言いようがないように思います。特に手術のシーンですが、心拍数が上がるのがわかるほどの恐怖でした。 終盤に「俺たちを罰する連中かて同じ立場におかれたら、どうなったかわからんぜ。世間の罰など、まずまず、そんなもんや。」という一文がありました。 この一文から、日本人って、よくも悪くも他人指向的なところがあるなと考えさせられました。見栄とか、他人からの評価を気にして、作中のような残虐なことが、あたかも正義かのように行われてしまうのですから。自分は医者でも何でもないですが、仮に自分がこの時代に生まれ、勝呂と同じ環境に置かれていたら、この生体解剖に参加してしまうのだろうなと思い、人ごとではないような気がしてなりませんでした。 あまり文学作品と触れてこなかった人生でしたが、これを機に他の文学作品も読んでみようと思わせてくれる良著でした。 ✳︎読み終わって、1ヶ月経過したのですが、この作品が脳裏に焼きついて離れないので、星を4つから5つに変更します。(R7.3.13追記)

    2
    投稿日: 2025.02.14
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    戦時中に捕虜の人体実験に参加した医師のお話 課題本読書会のために再読 スポットの当たっている登場人物それぞれの苦悩や葛藤 良心はあるが、流されるままに実験に参加した勝呂の無力感 子を成せなくなった上に夫に捨てられた看護婦の上田 参加を断らなかったのは、聖女のように振る舞う部長夫人のヒルダへの歪んだ優越感のため 罪の意識のない功利主義の戸田 最初に読んだときには、「沈黙」からの流れでキリスト教の「罪」と日本人の「罪の意識」について注目したけど 今回はそもそも、この行為が罪なのか?という視点で考えた この人体実験何が問題なのか? 裁判なしで殺したことなのか? 人体実験に使った事なのか? 本人に告知していないことか? 肝を食すという行為か? さらに言えば 死刑囚ならば人体実験は許されるのか? という事まで考えが及ぶ 罪を犯した人に、社会貢献に繋がる罰を科す事の是非 応報刑を元にするのであれば、人を殺したならば同じだけ救わなければいけない 一人の死が他の生命を救う糧になるのは戸田の言葉で示されている 軍事裁判の正当性は置いておいて 死刑になる人間を社会のために役立てるという行為はどこまで咎められるんだろう? 人権とは人の何を保証するものなのでしょうね 村田沙耶香の「殺人出産」では産刑というものが実現された社会が描かれているわけだけれども 個人の意志を無視して何かを行わせるのはどこまで社会が許容するのかという、変容する倫理観でしか語れないのではなかろうか 人体実験は当時も今も咎められる行為ではある ただ、未来永劫変わらない倫理観ではなく もしかしたら、「遺体をただ燃やす埋めるだなんて、当時は何て勿体ないことを!」という価値観の社会ができてもおかしくないわけで 倫理って何なんだろうな?と思った それにしても、小説を読んでて様々な要因で自分の価値観を叩きのめされてきたからか、私の倫理観も結構ぶっ壊れているなぁ

    5
    投稿日: 2025.02.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    戦時中に捕虜に対して生体解剖を行った事件について。 文章自体は思っていたより全然読みやすかったけれど、内容が難しかった... 私の読解力が足りず、結局何が言いたいのか分からない部分が多かったです 結末も結局何だったのだろう?冒頭の戦後の部分はなんだったのだろう?と纏まりのないまま終わってしまって、びっくりしました 解説を読んで漸く少し理解できた気がしました 生体解剖というあってはならない異常な事件を、平常な次元に還元することで罪責意識を問おうとしていたという解説になるほど...と納得しました 罰を恐れながら罪を恐れない日本人の習性というのは確かに一理あると感じました 解説が個人的にとても刺さりました 続編があるようなので読もうと思います

    6
    投稿日: 2025.02.05
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    学生の時には古めかしくて読み続けられなかったので、リトライ。 しかし医師となった今では、戦前に建てられた母校の廊下などを思い出してしまうと場面の描写があまりに生々しく、読み進めるのが辛かった。 戦争という異常な時代背景の中でおかしくなっていく倫理観の波に飲まれ、無力感に苛まれながら人間性を保とうとする者、開き直る者、正当化する者、それら全てが人間だということ。社会に認められる罪だけを問題にすれば良いのか?自分の中にしっかりとした価値観と倫理観を持たねばならぬこの分断の時代に、とても考えさせられた。

    2
    投稿日: 2025.02.01
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    遠藤周作を読むたびに、こんなに巧みで良いんですかと驚いてしまう。こんなに効いてる導入ってあるんですか。構造もキーワードも考えられた上で作られていると分かるから、分析してみたくなる。分析した後に辿り着くのは主題なんだと思う。 生体解剖という恐ろしい事件を、絶対的なものではなく相対的な日常の中に潜むものとして特殊性を取り除きながら書くっていうのが面白いと思った。

    1
    投稿日: 2025.01.25
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    かまいたちラジオで、どこかの書店員さんがオススメしていた本! 書店員さん曰く、この本を小学生の頃に読み、読了後数日は考えさせられたと言っていたので興味を持ち購入。 最近本を読み始めたので、昔の人が書いた作品を初めて読んだ。読んでみたら予想よりめちゃくちゃ読みやすい…! 時代的な風景とか考え方は理解できないこともあったけど、現代でも通用するというか興味をそそる内容だった。

    2
    投稿日: 2025.01.18
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    生きた人間を解剖するといったおぞましい事件の当事者それぞれの胸の内を開けていく話。 現実味が無さすぎて、うまく感想がまとまらないというのが正直な感想。 無宗教の僕ら日本人にとっての良心や罪の意識は、いつ、どこで、どのように養われるのだろうか。神様のような絶対的な存在が決めた絶対的な基準を持たない僕らが、物事の善悪を判断する基準はなんだろうか。それは、法と社会がもつ基準だと思う。 法や社会が認識していない悪事は、それがどれだけ卑劣なものであろうと、誰も知らないし、誰にも咎められない。

    1
    投稿日: 2025.01.17
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    学生の頃、夢中になって一気読みしたけど内容すっかり忘れてて再読。 こんな重い話だったんだ…よう読んだな昔の我…。 罪の意識とは…? 人が毎日死んでいくのが当たり前の戦争末期の環境で、果たして人間は良心を保ち続けられるか? そもそも人間は最初からそんなものを持ち合わせているのだろうか? 戸田のような人間は決して少数派ではないと思う。 歴史を見ても、人間は多分、環境とかに流されて簡単に残虐になれる生き物なのだろうと思う。 そういうことをみぞおちに叩きつけられたような、重い気持ちになった。

    1
    投稿日: 2025.01.16
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    戦中の九大捕虜生体解剖事件 描写が生々しくリアリティーがある。 良心の呵責はどこから感じるのか。無宗教の日本人だと、絶対的な基準がなく、個人の解釈次第。

    0
    投稿日: 2024.12.27
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    スラスラ読める作品。 人間の尊厳とは何か、どこからが罪でどこまでが許されるのか、あらためて捉え直す必要性を感じた。

    0
    投稿日: 2024.12.26
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    『海と毒薬』遠藤周作 あなたは、周りからどう思われるかを基準に選択をしているでしょうか? 仮に場や時代の流れで倫理的に誤ったことをしても何も追及されなかったら、そのことに良心の呵責を感じるでしょうか。 「いいこと」をするのは、大人や社会から褒められる、認められる、そういう目を意識してのことでそれが全てなのでしょうか。 良心とはつまり、社会性や他者からの評価が内面化された産物なのでしょうか? 私の場合、もちろん悪いことや人を傷つけたことがバレて明るみにだされ裁かれることは非常に恐ろしいことですが、 それらしいな理由や仕方のない理由でやった「悪いこと」「人を傷つけたこと」で、誰からも咎めを受けずにもう時効だろうと思うようなものでも「罪」の意識をもってそれがグルグルと自分の中でリフレインしてしまったり、 もしくは、その罪をまるで覚醒剤のように好んでしまうという傾向性があるようです。 それが世間から「悪」とみなされた、「あっち側」に属するものでかつ自分の気に入らないものを、 「正義」の名の下に、利害関係が一致する人々と非難する行為、 もしくは、「正義」の名のもとに自分の傲慢さを押し付けている人々を皮肉って、その正義を信じている人々の出鼻をくじくというそういうことだったりします。 これは、多くの日本人がいうように「考えすぎ」なのでしょうか? 「罪意識」を「持たない」「許す」ことと「感じない」ことは、似て非なるもののように思います。 戦争末期に、大学附属病院で米軍捕虜を生きたまま生体解剖をした事件があったことを初めて知りました。 本作は、そこに関わった医師や看護師たちの内面の告白とも言えるべきものですが、みんな、 それを拒絶する機会はあったはずなのに、 「大きな流れ」に逆らえずに、唯々諾々とそれに従い、 淡々と普通に捕虜を解剖していくだけ。 いじめに加担して、自分は全てを忘れて有耶無耶にする人々。 袴田さんの冤罪に際して逃げる、死刑判決を出した判事たち。 前時代には、仕方がないと空気のように認められていた、セクハラに体罰にタバコにあれやこれやが、 時代が変われば、逆の全体主義のように、何事もなかったかのように、あれもこれも悪になっていく現象。 それに「時代だから」「流れだから」という接頭辞すらつけず、 あたかも「世間」イコールそれが普遍の真理であるかのように、 そこに同化することのみしか考えていないような「いい」人々は、 そうじゃない人たちをごくごく普通に排除していく。 現象と評価だけが自然に変わっていく。 そこに「責任」も「振り返り」もない。 なんなんでしょう、なんなんでしょうか、と思います。 そんな私も、そう考えることがしんどくて、 というか、そもそも、そんなこねくり回さなくても、 この「海」こそが正直な正解なんだと思いそうになる。 気がついたらその「海」に引き込まれたら楽かなあ、と思うことが多々あります。

    1
    投稿日: 2024.12.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    私がこの本を手にしたのを見て、父親が「海とは何なのか、毒薬とは何なのか、を考えて読んでみたら」と言ってくれた。 この話には海がたくさん描かれていて、特に海の音が恐ろしさを孕んでるようだった。 海に毒薬が一滴落とされたとしても、海の中で毒薬は紛れてしまう。大部屋で体が弱り死んでいく患者たちと生体解剖によって死んだ白人の捕虜、社会的地位の獲得に奔走する医師たちと良心の呵責を感じれない戸田、戦争で人を殺したことがある一般市民と生体解剖に関わった勝呂医師……。うまく言えないけど、「海と毒薬」はそういう対比を表してるのかなぁ、と考えてる……。

    2
    投稿日: 2024.11.06
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    人体実験は科学の進歩に大きく寄与している必要悪である、しかし正当化して良い理由にはならない。関わったものが皆何かしらの罪を背負い生き続けていくことに意味がある。

    0
    投稿日: 2024.10.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    過去に九州大学で起こった捕虜による生体実験が行われた事件をもとに描かれた小説。 九州で戦時中アメリカ兵が数人つかまり、その処遇を国にもとめたところ捕虜収容所がいっぱいなため、そちらで処分?してくれと言われる。 そのため、その捕虜たちは近々九州で処刑される予定だったが、 大学病院が「生体実験を行うため数名ほしい」と手を挙げた。 捕虜たちは「健康診断をしてもらえる」と喜んで病院にはいるが、彼らは生きながらにそれぞれの実験により死亡することとなった。 勝呂はその実験に参加することとなった。断れなかった。 その実験に至る葛藤、 ある看護師がそこにいくまでの人生、 ある若い医師もその大学病院にいくまでのいろいろがあり。 その日はやってきた。 だが勝呂は怖くなって手術室の端っこでふるえているしかなかった。 若い医師は終わってから、自分に罪悪感のないことに戸惑う。 実験を見学した日本軍の隊員たち(そこそこ偉い人たち)を含めて、病院の偉い人たちはその実験のすぐあと、 ある医師の送別会で宴会を開く。 そこに、さっき亡くなった捕虜の肝が運ばれていく・・・ っていうものすっごい胸糞悪い小説でした。 古くて保存状態のわるいモノクロフィルムの映画をみているよう。 それがなおさら不気味でした。 冒頭、戦争が終わって、勝呂はある都会から外れた町で町医者をっしている様子がうかがえます。 気胸で針を打ってもらいに行くが、こんな田舎の暗い医者がうまくできるのかと不安ながらも、妹の結婚式に行かねばならないのでかかってみると、 この医者がとんでもなくうまく針を打つので、びっりする・・ ってところからはじまるんですが、 この都会から離れた町、のんびりして平和で人々は穏やかなように見えて 実はあっちの店の主人も、こっちの店の主人も、出兵して幾人もの人を殺していたりするんですよね。 でも戦争ではそれはよしとされ、罪にもならず、平和にすごせる。 勝呂は医者として、生きてる人の命を自ら断つことができなかった。 が、彼はずっとそれを引きずって生きている。 その感じもおも~~~~く感じられて、 読み終わってから、もう一回、冒頭の町の様子を読み返しました

    0
    投稿日: 2024.10.11
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    終始鳥肌が出るほど衝撃的な内容でした。 時代背景もあるかもしれませんが、人間ってどうなんだろ? 日本人って周りに流されて酷いことしてしまう人種多いと考えてしまいました。 勝呂だけが普通っぽく、、続編が気になります。

    0
    投稿日: 2024.10.06
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    衝撃的な内容だった。人間にがっかりする話だった。 今までの経験に重ね合わせて、たしかにって納得する部分があった。 続編があるらしいから、そちらに救いがあることを期待する。

    6
    投稿日: 2024.10.04
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    これは凄かった。正統派の倫理観を「人間の尊厳とは何か」を突き詰められたような小説だ。 私は意外とサイコパスな戸田という人間の方が人としての黒さが無いように感じる部分もあるなと思った。 勝呂があの手術の後から、最初の主人公に出会うまでのところも読んでみたかった。

    0
    投稿日: 2024.10.02
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    第二次世界大戦下、大学病院で起こった米軍捕虜の生体解剖事件を描く作品。 タイトルに『海と毒薬』とあるように、海が登場人物の心理と絡めて描かれていている。特に生体解剖参加の打診を受けた勝呂が自分の意思で決めるのではなく、流れに流されていく様と暗い海が迫ってくる様子が重要な表現になっている。 解剖に参加した看護師上田と助手の戸田の内面がそれまでに至る経緯と共に、かなりの字数で描かれており、共感はできないが理解できるという感じ。上田の嫉妬というか、自分の失ったものを違う形で埋めたいというかもリアルな内面だと感じる。戸田の罪悪感がない自分が不思議で怖いという感情は、特にこの小説の肝になっている。自分が流され、何もできないことに罪悪感を感じる勝呂と戸田が対比的に描かれているのも明らか。 勝呂は冒頭に後日談の形で姿が出てくることで、余計に印象に残りやすいが、罪悪感に苛まれつつも、結局医者を続けているあたり勝呂の方が戸田よりも面の皮が厚いのではと思う…。戸田の後日談がないので、どうなったかはわからないけれども。 上田、勝呂、戸田の内面がかなり細かく描かれている分、橋本部長の内面が一切出てこないので、橋本部長が最後どういうつもりで手術室前に立っていたのかを読み取りたい。

    1
    投稿日: 2024.09.09
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    「どうせ死刑にきまっていた連中だもの。医学の進歩にも役だつわけだよ」 太平洋戦争末期の1945年5月、九州帝国大学(現・九州大学病院)医学部の医師らが、米軍爆撃機B29の乗員で捕虜となった米兵8人を人体実験に利用した事件が基となっている作品。 作中では罪悪感に苛まれる者、未来の医学のためだと信じる者、現実から目を背ける者、様々な人物の思考が入り乱れて実験が進んでいく。この実験によって大勢の命を救ったとも言えるし、そのために一人の命を軽視したとも考えることができる。個人的には例え相手が米軍だったとしても、人間である以上命の重さは平等だという気持ちが強かったし、その場にいる以上誰もが悪人であることには変わりないと思った。 それに実験の内容が内容なだけに擁護はしづらい。血管の中に食塩水や空気を注入したり、肺の片方だけを切り取って何秒生き延びられるのかを計測したり等々。いくら医学のための実験だとしても結構惨いことをしているし、半ば実験を楽しんでいたのだろうとも感じる。手術の描写も映像が鮮明に浮かぶから、尚更ページをめくる手が重かった。 ただ、戦時中という極限状態の中で、日々多くの命が失われ、死が間近にある環境で過ごしていると判断が鈍ってしまうのも理解はできる。そこに至るまでの描写も丁寧で巧かったし、決して登場人物たちを完全な悪人にしなかったのも良かった。宗教的な要素も強くて、無宗教が多い日本ならではの話でもあるなと感じた。安易な言い方になってしまうけれど、「善とは、悪とは」について考えさせられたし、倫理観にずしんと響いてきた。 要所要所で挟まれる立原道造の『雲の祭日』から引用された一節「羊の雲の過ぎるとき 蒸気の雲が飛ぶ毎に 空よ おまえの散らすのは 白い しいろい 綿の列」という詩がとても良い味を出していた。本編のどんよりとした暗さに相反して、その詩の美しさが際立っていた。戦時中という極限状態の中で、この詩を思い返せばそりゃ涙も溢れてくるはずである。自分の中でもとても好きな詩になった。 あとこれは余談なのだが、九州大学病院のすぐ近くには海があり、著者の遠藤周作はそこの屋上で手すりにもたれて雨にけぶる町と海を見つめて『海と毒薬』という題名を思い付いたという。この美しいエピソードが、さらに本書の魅力を引き立てていた。

    13
    投稿日: 2024.09.02
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    表現が具体的すぎて特に手術シーン、情景はありありと浮かんだのですが残酷過ぎると感じました。 その中でも現実をしっかり見せてくれる書き方が好きです。

    13
    投稿日: 2024.08.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    苦しい状況と自分も手術の現場に居合わせたような居心地の悪さを感じた。文章のリズムが良く、死体解剖など気が進まないような内容の場面でもするすると読めてしまい罪の意識を考えさせる内容にも関わらず読後の後味は気持ち良いものになっている。遠藤周作は宗教観をわかりやすく、荘厳だけど日常に潜んでいるよ的なメッセージで小説を書いているイメージだけど、海と毒薬に関してはアイデンティティの宗教が薄めで個人的には彼の作品で一番好きかもしれない。 好きなシーン 汚いメス犬が孕んだのを嫉妬して石を投げるところ 女中を孕ませてしまい暑さの中避妊具を借りて自らの手で堕胎させるところ おばはんの痰の描写、死

    0
    投稿日: 2024.08.01
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    罪を犯した「人間」が悪いのか?そう単純なものではないと思う。その時の社会情勢、置かれた環境、精神状態。そういうものを全て知らなければ簡単にあいつは悪人だと言いきれないと思う。罪を犯すか犯さないかの判断の際に「神はあるのかな」のセリフのように自分を律するものが(神でなくても)あれば流されることもなかったのか。

    1
    投稿日: 2024.07.14
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    遠藤周作さんは楽しいダメ親父的なエッセイもありながら、これほどに重い作品も残す。人間の深さを感じる。戦争の中のこととはいえ、罪深い行為だ。日本人だけが蛮行をしたとは言えないだろうが、とても遠い過去ではない時代に、確かになされていたことと認識していきたい。

    1
    投稿日: 2024.07.04
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    仮に自分がこの医師や看護師たちと同じ立場だったら、自分も同じ罪を犯しかねない、自分にも彼らと同じ弱さがあるなと思った。 出世に目が眩んで自分の正義に背くことは自分はない、、、気がする。でも、無意識に出世を考慮して自分の中で正義の定義が変わってしまうことはあるかもしれない。保身のために自分の正義を曲げてしまうことも抗える、、、気がする。でも、自分だけの保身ならまだしも、仮に妻や子どもも含めた保身となると、どう判断するか自信はない。個人としてそのような程度である上に、戦争など世の中の混乱の中で所属するコミュニティに共通の「敵」が形成されている場合に、その「敵」の尊厳にも気を配れる強さが自分にあるか、自信はない。 そのような自分の弱さを常に自覚して生きていかないと、と思った。 読み終わってから、事件のこととか、著者のことなどをWikipediaで読んでみたりしたけど、この小説をどう受け止めれば良いのかなかなか定まらない。 著者はキリスト教の教えと日本人の特性の矛盾に苦しんだようだけど、さすがにWikipediaを読んでみた程度では全然理解できていない。このような罪を犯してしまう人間の弱さは別に日本人だからというものでもなくキリスト教を信仰している人にもありうるのではないかなと思えてしまう。他の著者も読んで遠藤周作さんの感じた矛盾への理解を深めてみたいと思った。

    2
    投稿日: 2024.06.18
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    宗教のない日本の罪の意識はどこからくるか興味を持った。 この話はただ戦時中で倫理観が崩壊したから起こったのか関係なく起こってしまうようなことなのか感慨深い 実際、宗教があろうが無かろうが、罪の意識の有無は個々人によるものだと感じた。ヒトラーのホロコーストも人体実験を行っていたが、無宗教ではなくキリスト教を信仰していたわけだし、、、

    7
    投稿日: 2024.06.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    職場の人に勧められて。 遠藤周作先生の著作を読むのはこれが初めて。 何というか、とにかく凄いものを読んだという語彙力皆無の言葉しか出てきません。 実在の事件を下敷きにしたお話。 ただ事件の残虐さや非道さを描いたものではない。 「戦中」という今のわたしたちの価値観では量れない時代の話ではすませない。 特殊な人たちによる特殊な話、ではないのだ。 日常と非日常、日本人と外国人、医者と患者、男と女、人を殺したことのあるものないもの、知るもの知らざるもの、相対する様々なことの比較を交えながら、淡々と物語は進む。 「神なき日本人の罪の意識の不在」その不気味さを描くと粗筋にあるが、この作中の不気味さを今のわたしたちは笑ってはいけないし、フィクションだからと切り捨ててもいけない。 それは今を生きるわたしたちにも言えることなのだから。 わたしたちは、果たして同じことを体験したときに「罪の意識」を覚えるだろうか。 自問せずにはいられない。

    2
    投稿日: 2024.06.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    海の描写が印象的。最初のシーンの時系列に最後戻ってこないことにも興味が湧いた。葛藤や、日本人とは何なのか、神とは何なのか、向き合うこと、考えることが増える作品。この本に思い出があることも重なって、面白かった。

    0
    投稿日: 2024.04.26
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    ・罪の価値観 「俺もお前もこんな時代のこんな医学部にいたから捕虜を解剖しただけや。──(本文より)」 世間の罪というのは、時代によって異なるとだな思った。例えば、平安時代では一夫多妻が当たり前だったが、今は不埒なこととして世間から見られている。 ・本文の心情描写 さすが遠藤周作。色々な背景を持つ人物それぞれの思惑を見事に描き出されている。『沈黙』のようなダイナミックな文体ではなかったが、このような心情描写が精緻な文体も味わい深い。

    0
    投稿日: 2024.04.14
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    みなさんには、自分の生き方を変えた1冊はありますか? ぼくは、子供のころから本を読むのが好きでした 高校生くらいまでは、推理もの、いわるるミステリ、というジャンルのものを手に取ることが多かったです 大学生になり、友達がこの本を勧めてくれました 今まで手にすることがなかった種類の本 読むうちに物語の中にどんどん引きずり込まれていきます 読み終わった時、自分の中の倫理観というものが根底から覆されていました 若かったのもあるのでしょう、自分の今までの考え方が全て変わってしまうほどの衝撃でした 今も時々読み返す本作はぼくにとって特別な存在です テーマは、神なき日本人の罪の意識 遠藤周作さんは、カトリックでもあり、「日本人でありながらキリスト教徒である矛盾」をテーマに創作活動をされた作家だとぼくは思っています 晩年の作品「深い河」は、宇多田ヒカルさんもインスパイアされ、「Deep River」という楽曲を製作されています、本作もお好きだそうですね 太平洋戦争末期、九州の大学付属病院で米軍捕虜の生体解剖実験が行われた 参加者たちはなぜ解剖に参加したのか? 実際の事件をモチーフにしたフィクションです 悪いことをしてはいけません、いいことをたくさんしましょう 悪いことって何だろう、いいことって何ですか? それは誰が決めることですか? 日本は法治国家なので、法の下に善悪は判断されるのだと思います では、個人の倫理観というものは、どうやって形作られるのでしょうか 法ですら解釈により判断が変わるのに、倫理観とは何とあいまいなものなのか 疑うことなくそのあいまいな倫理観を全ての善悪の判断基準としていた大学生のぼくは、慄然としたのです 解剖に参加した主人公の勝呂医師を責めることができませんでした もし自分が勝呂医師だったらそれに参加しなかったのだろうか ぼくが勝呂医師になることなんてないのだから、そんなことを考えても無意味なのだろうか なら、人の気持ちを想像したり慮ったりすることも無意味なのか ぼくはこの本を読んだ後、本当にずっと考えています 読んだ後数年間は本当に苦しみました、罪を犯した人の気持ちを過度に慮る行為をやめることができずに 最近のSNSなどを見ていても、個人的には思います 切り取られた情報から、判事でもないのに自分のものさしで善悪を判断し、匿名で、不特定多数が自由に閲覧できる場で、人を批評することが恐ろしくないのかな 必ず傷つけることになるのに、知らない誰かを 本というのは、誰かの人生を変えてしまうくらいの力を持つ それを知ってから様々な本と出会い、様々な考えに触れ、あれから数十年生きた先に自分の心が豊かになった気がしています そんな、ぼくにとって新たな読書人生のスタートとなった大切な1冊です 実質上の続編となる「悲しみの歌」は、年を重ねて読むとまた味わいが全く異なる本です、こちらもよかったら あの日ぼくの中に生まれた「海」と「毒薬」は、生きていくなかで少しずつ変容しています

    11
    投稿日: 2024.04.12
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    ヒーーーー、えぐい話 激ヤバ人体実験に関わる人たちの罪の意識を描いた作品 "闇の中で眼をあけていると、海鳴りの音が遠く聞こえてくる。その海は黒くうねりながら浜に押し寄せ、また黒くうねりながら退いていくようだ。" 動揺の感情表現の比喩やばすぎる "恨み悲しみ、悲歎、呪詛、そうしたものをすべてこめて人々が呻いているならば、それはきっと、こんな音になるにちがいなかった。" 遠藤周作の言葉選びが凄すぎるんだけど…… 色んな人の視点からオペという一つのシーンに収束していくのが面白かった 勝呂パートから戸田のアンニュイで影のある人間性を感じていたけど戸田パートでおまえ………………!!!!!!好きだ……………!!!!としか言えなくなった こういう男が好きなんです………………… 自分に良心があるかを確かめるためにしっかりとオペに参加してしっかりと己の非人道性を感じているね! もはや平成生まれのガキ(21歳)からすると戦争の話なんて本当にSFというか残酷な作り話のように感じてしまって、良くないなと思うんだけどもオペシーンの迫力たるや……百数十ページを息も瞬きもせずひたすら捲る時間があった もうほんとに戦争やめようね

    0
    投稿日: 2024.03.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    戸田ぁぁぁぁ…..。 勝呂には簡単に感情移入できたけど、やっぱり中盤であった戸田の昔話ゾーンで、完全に心惹かれた… もちろん戸田は間違っているんだけど、嫌なやつだけど、わたしは標本盗んだりはもちろんしないけど、それでも惹き込まれるキャラクターでした。 「沈黙」を読んでからこの本を読んだけど、「沈黙」同様に一気に読めてしまう面白さがあって、さすが代表作という感じがあったように思います。 ダメなことって分かるけど、わたしもあの時代に同じ状況になったら、絶対に断りきれなくてあの場にいたと思う。 何が正しいのか。もちろん正義や正しさについて真正面から考えるのは大事なんだけど、真正面から考えられない時代や状況について、思いを巡らせることの大切さを改めて実感した本でした。

    1
    投稿日: 2024.02.24
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    おばはん、息子に会いたかったろうに。この人と米国人捕虜の死はちょっと辛かった。犬のマスもどうなったのか…

    0
    投稿日: 2024.01.28
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    11冊目『海と毒薬』(遠藤周作 著、1960年7月、2003年4月 改版、新潮社) 太平洋戦争中に起きた戦争犯罪「九州大学生体解剖事件」を題材にした名著。 戦争に歪められる医師の姿が描かれるが、本作が追及しているのは現代にも通じる人間の本質。出世欲や絶望、孤独、嫉妬、傲慢、恋慕、そのような欲望や感情が罪の意識を鈍らせることを示し、責任を転嫁することで罰から逃れんとすることの浅ましさを我々に突き付ける。 本作が描く悪に、無関係ではいられない。 〈夢の中で彼は黒い海に破片のように押し流される自分の姿を見た〉

    25
    投稿日: 2024.01.23
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    海と毒薬。この本が課題読書だと知り合いが話していたので興味があり、読んでみたのですが、罪と罰、日本人とは何か。 戦争中はこんなにも人を変えてしまうのか。 という強い衝撃を受けました。 また、実際の事件があった場所がとても身近な場所であったため、改めて様々なことを考えさせられる1冊となりました。

    1
    投稿日: 2023.12.19
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    和風「少年の日の思い出」ハードモード 心のなかに罪の意識を抱えながら、変わらぬ日常を送る人々の不気味さが際立つ内容でした。 冒頭の十数ページでそんな罪を抱えながらも変わらぬ日々を送る人々の恐ろしさを感じられるのも本書の魅力でした。また、印象的なのはp144の戸田の独白。 『ぼくはあなた達にもききたい。あなた達もやはり、ぼくと同じように一皮むけば、他人の死、他人の苦しみに無感動なのだろうか。多少の悪ならば社会から罰せられない以上はそれほどの後ろめたさ、恥ずかしさもなく今日まで通してきたのだろうか。そしてある日、そんな自分がふしぎだと感じたことがあるだろうか。』 罪に対して罰や赦しを与える神を持たないから、罪悪感を持ってもそれをどうすることもできない。もっと言えば社会や世間から罰せられなければ悪にすらならない。だから日常を過ごすこともできてしまう。匿名の名のもとに口撃を行いながら平素では善良な人など、今でもこうした姿は感じられるのでこの独白は印象的でした。 こうした罪悪感に対して良心の呵責が働くのか。そもそも良心の罰とは存在するのか。そんな問いがあるという解説を読んで、たしかにな…どうなんだろ…ととても考え込んでしまう読後感でした。

    31
    投稿日: 2023.12.08
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    終始引き込まれ続ける。 人体実験という、人間としてのタブーを犯した医師たちの話。 初めから終わりまで、とにかく重い空気感が漂う。 本からここまでの重圧を感じた事は今までほとんどなく、何か心の奥を抉られ続けるような感情で読み進めるという新しい読書体験になった。 遠藤周作の本はこれが初めてだったのだけど、凄まじい没入体験だった。 映画が好きだったので、沈黙も読んでみようと思った。

    1
    投稿日: 2023.11.23
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    「日本人とは?」という問いを投げかけ続ける作家。 戦争というものがこのような出来事を起こすきっかけとなっただけなのか、それとも日本人がそのような人種なのか。 僕らにはどういう血が流れ、どういう社会が長きに渡って築かれてきたのか。 罪と罰について、歴史上の事実を、小説を通して再考させられる。 暗くどんよりとした重い課題が、読了後も頭の中でこだまし続ける。

    12
    投稿日: 2023.10.25
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    白眉はその構成、特に導入部と戸田の回想だろう。程度の差はあれど、戸田の青年期に似た経験がある自分が、これを読んでまたホッとするという最大の皮肉。 神なき世界で、黒い海のうねりのある波に押し流されながら、われわれは自己を罰することはできるのだろうか

    3
    投稿日: 2023.09.26
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     戦争末期に九州の大学附属病院で実際に行われた米軍捕虜の生体解剖事件を小説化し、新潮社文学賞を受賞した作品。  その事件の当事者たちは、感情も何もないサイコパスのような人達ではなく、ごく一般的な感情を持ち得た日本人ということがわかる。ただその時代、その場所に生きていたがために、そうした残虐的な行為に手を染めてしまった。時代が作り上げた事件とも言えるのかもしれない。  読後感も非常に重く沈鬱な気持ちになるが、日本人として向き合わなければならない歴史の断片である。

    1
    投稿日: 2023.08.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「やがて罰せられる日が来ても、彼等の恐怖は世間や社会の罰にたいしてだけだ。自分の良心にたいしてではないのだ。」 果たして自分は彼等と違うのか? もし自分が、その時代、その場所にいたとして、良心に従った行動できるのか? 砂埃、海、灯の灯らない街。ひたすら暗い風景描写とともに、良心の輪郭がじわじわとぼやけていくような感覚に陥る。 おそらく自分もこの登場人物たちと同じ道を辿ることになるだろうと思った。 神のように何か縋るものや、深い信仰があったとしても、結局なにも変わらないような気もする。西洋でだって同じようなことは起きてたわけだし。 救いがない、ただひたすら暗い気持ちになる。

    1
    投稿日: 2023.07.23
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    太平洋戦争のさなかに九州の大学病院でおこなわれた、アメリカ軍の捕虜に対する生体解剖事件にかかわった者たちの心理をえがいた作品です。 勝呂二郎は、「おばはん」と呼ばれていた女性患者の死が近いことを憂えており、そんな彼の感傷的な態度を、彼とおなじ研究生の戸田はからかっていました。しかし、大学病院内での出世争いのために一人の患者の手術をおこなった橋本教授をはじめとする、彼のまわりの人びとの態度に虚無的な思いをかかえるようになります。そんななかで、「おばはん」が死を迎え、勝呂は橋本教授たちに求められるまま、捕虜の生体解剖に参加することになります。 看護師の上田ノブは、橋本教授の妻で、ヴォランティア精神から患者たちの世話を引き受けているヒルダが、みずからの善意を疑いもしないようすに反発をおぼえます。彼女は捕虜の生体解剖のサポートを引き受け、ヒルダが知らない橋本の罪を自分が知っていることに、ある種の満足感をおぼえます。 少年時代から、大人たちが求める優秀な生徒を演じることに慣れていた戸田は、自分のなかに他者のことを心から思いやる気持ちが欠如していることを知っていました。彼は、捕虜の生体解剖に参加することで、あるいは自分が罪の意識に苦しむことになるのかもしれないという期待をいだきます。 これほどの非人道的な罪を犯しながらも、罪の意識を人びとがいだくことのない、日本という風土にせまるという著者の問題意識にもとづいて構成された作品です。こうしたテーマをあつかいたいという著者の意図が先行している印象はありますが、考えさせられる問題であることもたしかだと感じました。

    1
    投稿日: 2023.07.14
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    高校以後、数十年ぶりに再読。 話のあらすじは覚えていたが、数人の独白で構成されていたことすら忘れていた。 各人の独白の際、心理描写は緻密で、罪を犯す人の心情はこのようなものなのだろうかと疑似体験した気分になる。 また、誰しも犯してしまう軽微な悪事に対しての良心の呵責は自分自身もこんなものかもしれないとも思わされる。 人の底深い闇から自身の心の薄暗い所を垣間見る作品。 解説にある「日本人とは?」という問いかけよりも、「人とは?」と問われている気がする。  戦争時の無法状態の中では人の本性が顕になるのか、権力に抗えないときは無力になるのか、その状況に陥らないとわからないのかもしれないけれど、いろいろ考えさせられた。 映画「生きてこそ」をまた見たくもなった。

    2
    投稿日: 2023.05.24
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    あの人たちは単なる異常者なのかその場にいたら誰でもそうなってしまうのか本気で頭を悩ました てかいうか後者なのかもしれないと思ってしまってズーンてしてる けど事件が起こるまでのそれぞれの生い立ちが描かれてるのはせめてもの救いやなあて思ったしあの事件を現実にするような日常を生み出してしまう戦争が恐ろしいね あとがきが良い

    2
    投稿日: 2023.04.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    色々と考えさせられる内容だった。解説を読むことでより理解が深まるのは良かった。 印象に残ったの場面は事件前、蒼く光る海を見てある詩を心に浮かべると涙が出てきた勝呂医師。 事件後、闇の中に光る白い波をを見て詩をつぶやこうとして、できなかった勝呂医師。見慣れていた波を見て同じことをしようとしたのにできなかった彼の苦悩は計り知れない。

    10
    投稿日: 2023.03.30
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    太平洋戦争中に捕虜になったアメリカ兵に対し、生体実験が行われた事件をモチーフにした小説。 犯罪行為に加担することを拒否できるか、日本人の同調圧力への弱さ、日本人の道徳規範とはどういったものか。 深く考えさせられる。

    1
    投稿日: 2023.03.11
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    ボリュームは200pにも満たないが、非常に重い。 取り扱う主題は宗教と異なれど、当時の閉塞感・救いようの無い疲労感は健在で、読後は充足と虚脱をしっかり味わえる。

    1
    投稿日: 2023.01.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    遠藤周作といえばキリスト教。とはいえ西洋的な発想に終始するかと思えばそうではなく、僕にも馴染みやすいような文脈。僕は好き、三浦綾子よりもすき 九州熊本のF市、気だるく土埃の舞うというような表記

    0
    投稿日: 2022.11.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    『人の心の弱さか、時代背景か、そうさせたものは…』 終戦間際、米軍捕虜の生体解剖事件を元にした作品。 なぜ、こんな事件が? 人の心と当時の雰囲気を丁寧に描き、問いかける。 何が正しいのかわからない、混沌とした今だからこそ読みたい一冊!ん〜、考えさせられる… ウクライナでの残虐行為。 決して許されるものではないが、似たような心理が働くのだろうか?

    0
    投稿日: 2022.10.26
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    海は自分の気持ち?世間の目?運命? 毒薬は医者?人間? 罪と罰。罪ってなんだろう。罰ってなんだろう。 ドストを読んだら、解決するのか。 「沈黙」がおもろしくて、読んでみました。

    1
    投稿日: 2022.08.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    想像力の旅に出たくて読んでみた! (新潮文庫の100冊参照) うん。普通にキュンタのしおりが欲しかった…笑! 遠藤周作、なんとなく名前は知ってて 以前、蚤と爆弾を読んだこともあって 戦争の小説に興味あったから読んでみることに。 なんだろう、このどろっとした感じ。 登場人物みんなどろっとしてる。 夏場に読んだからなのか、なんだか気持ち悪い。 グロいのかなって思ったけど、案外そうでもない。 戦争中の悪いところがしっかり描かれてた。 それにしても、戸田が本当に苦手で怖かった。 平気でそういうことができちゃう。 わたしにはまだ理解できない。 この小説だけじゃなくて実際にもいるんだよね、 こういう人。ちゃんと読んだことはないんだけど、彼女は頭が悪いからを思い出しちゃった。

    3
    投稿日: 2022.08.10
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    正直に言うと今年のキュンタしおりが欲しくて、「新潮文庫でまだ読んだことなくて持ってないやつ」と平積みされた中からとっさに買った1冊だった。これを読んだのは偶然だったけれど、この時代、この季節に読んで本当に良かったと思う。 第二次世界大戦末期の、実際に起こった事件を元にした小説。戦後のある街に越してきた「私」が日常をつむぐターンと、例の事件が起きた病棟でのシーンと、時の流れが逆転して描写される。だが、それによって、より仄暗い人間の動きに引き込まれた。 残虐な行いをした者が、当たり前のように日常を送る。平凡な毎日の隙間に潜む薄暗い気配。全編を通して、勝呂という人間はある意味、日本人の定形パターンとして表れていたのかもしれない。様々な表情を見せる、海鳴りがずっと心に残る。 この小説を再読するなら、またお盆前の時期にしたいと感じた。

    5
    投稿日: 2022.07.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    その事件に携わった人の一人一人の"今まで"が鮮明に描かれる。そしてそれを全て把握した上で事件が進む。 私たちはどの目線でこの作品を追うのか。一個人として教訓として追うのか。それとも感情を育む為に追うのか。 難題を押し掛けられる作品だった。

    0
    投稿日: 2022.07.27
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    他人の眼、社会の罰と対比するように神さまの罰が書かれているように見えるが、どちらも判断軸が外にあるという点では似ているのではないだろうか。良心の呵責とは、もっと内からくるものな気がする。しかし、その「内」にも社会=外は影響を及ぼしている。つまり、良心は個人ではなく集団が作っている面もある。どこまでが個人の罪でどこからが集団の罪なのかと考えた。

    1
    投稿日: 2022.07.25
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    純粋に患者に向き合う医者ほど常に 罪と罰の狭間に揺れうごめき、葛藤し 反面 功名心、出世欲の渦中に誘われるのだろう。戦争がそれを正当化し、擁護する。 倫理観などは、平和の時代だから問われるのかも知れない。

    0
    投稿日: 2022.07.12
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    遠藤周作の代表作として著名な作品。 太平洋戦争下で捕虜として捉えられた米国兵が、臨床実験の被験者として使用されるという、実在の事件が元となって書かれています。 遠藤周作らしい「人間の価値観、倫理観」に問いかける内容で、ショッキングな展開ですが、目をそらすことができないものがあります。 「あなたならどうするか」、倫理的には誤っていることはわかっていても拒否することができるのか、拒否できるなら根拠はどこにあるのか、考えさせる内容となっています。 実在の事件を題材にしていますが、ノンフィクション作品ではなく、題材となった事件と本書内の出来事に関連は無いです。 話は、西松原の住宅地に引っ越してきた男が語り部となって始まります。 持病の治療のため、近所の医師の元を訪れたその男性は、腕が非常に良い医師「勝呂」の指に恐怖感を覚える。 やがて男性は、勝呂がかつて、ある事件の関連人物であることを知ります。 以降は医師・勝呂が主人公となって、過去の事件について語ります。 その事件こそが、戦時中に行われた人を人として扱わない生体解剖事件で、彼はその手術に参加することとなってしまいます。 勝呂という人間は特殊な価値観を持っているわけではない一般的な人物で、その手術が非人道的であることを知っていながら参加してしまったのは"流れ"によるものでした。 彼の行動は、優柔不断と言えなくもないのですが、戦時中という特殊な状況下でそれが反道徳的であると断言する確固たる何かを持たない日本人は、その行動を批判することはできないのではないかと考えます。 遠藤周作氏が本作に込めたテーマはまさにそこで、宗教を持たない日本人は自責の念に駆られながらも、手術室に立つのではないかとしています。 キリスト教徒である遠藤周作の目線で、宗教を持たない国民性を見て感じた疑問がきっかけとなった作品で、鋭く心を射抜き、おぞましささえ感じる一作です。

    1
    投稿日: 2022.06.26
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    戦時中のアメリカ人捕虜の生体解剖というセンセーショナルな事件を背景に、良心の呵責を感じない戸田と極度に感じる勝呂が対比によって社会的な罰を恐ども内心の罪を感じることのない人間の心理が強調されて詳細に描かれていた。日本人の性質に近いのは戸田と勝呂どっちだろうか。 田部夫人やアメリカ人捕虜を死なせてしまう場面での臨場感と緊迫感は凄まじく、偏差値と安泰だけを求めて何となく医者をめざしている安易な医学部受験生は志望を辞めてしまうんじゃないの…とすら思った

    0
    投稿日: 2022.06.09