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小さいおうち
小さいおうち
中島京子/文藝春秋
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総合評価

495件)
4.0
139
196
108
7
3
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    このレビューはネタバレを含みます。

    女中奉公をしていた主人公・タキが、晩年になって、少女の頃奉公していた最も思い出深い一家との日々を綴った話。 甥の息子がノートを盗み読んでは合間合間で茶々を入れるように、戦前から戦中に至る時期を現代の私たちはともすれば一様に暗黒に塗り固められたものだと思いがちですが、そこにも様々な世相の変化があり、人々も仕事をしたり家事をしたり愛を育んだりしていたことを実感させられました。再読の時は年表作ろう。 甥の息子によって「種明かし」がされる最終章は大変に興味深くはあるけれど、美しく綴られる思い出だけに浸っていた気にもなりました。言葉にしちゃうと蛇足に感じてしまうことってあるよね。それくらい独特の雰囲気が漂う一冊でした。 絵本の『小さいおうち』、すごく好きで実家にもあるはずだけど内容が思い出せない…

    0
    投稿日: 2013.05.19
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    昭和という時代の雰囲気に満ち満ちた小説。 でも、ごく普通の人々の身に起きる出来事を、瑞々しい筆致で描いているので、時代のギャップというようなものは不思議と感じない。 山田洋次が映画化するというのも、納得です。 戦前の東京郊外に建てられた、小さな洋風建築の一軒家。 そこに暮らす夫婦と子供、そして一人の女中さん。 この女中さんが回顧する形で物語が進んでいきます。 戦前、そして戦中の時代の空気もうまく描かれつつ、何よりも、物語の中心にいる、美しくて邪気のない若奥さんの描写がいきいきとしている。 同性であり彼女に対して深い愛情を抱く女中さんの口で語られているところがポイントになっているのかも。 最後の方がややぐちゃぐちゃとまとまりのない感じになっているものの、ただのいいお話、じゃないところがとてもいい。 秀作。

    0
    投稿日: 2013.05.16
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    すごく好き。 もう少し、時子奥さまとタキちゃんの生活を覗いていたかった。それくらい、何だか居心地がよかった。 想像もできないラストに驚き!

    1
    投稿日: 2013.05.16
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    女中という目線から描かれるある家族や世界大戦という時代。 そこには、戦争の最中でも楽しいことがあったり、悲しいことがあったり、恋があったり。また別の角度の戦争を知れた気がしました。 タキちゃんの作る料理が美味しそう。

    0
    投稿日: 2013.05.13
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    昭和の初め女中タキの目から見た平井家の様子を、晩年のタキが思い出しながら綴る。戦争の影が迫りつつも、キラキラと輝いていた時代。美しい奥様、愛らしいぼっちゃま、優しい旦那様。そしてタキが綴ったノートは現代へと継がれていく。 戦前戦中の時代を描くとどうしても、「今」の目を通してしまうため、時代の悲惨さや戦争の愚かさなどが浮き彫りとなります。しかしここで描かれるのは、そんな時代の中でも普通に生きた人々。戦争がもたらす特需を無邪気に喜び、日本が負けることなど夢にも思わない人々。それを現代の若者の目を織り交ぜることにより、普通さが浮き彫りになります。自分の仕事に矜持をもち、平井家を支えるタキの姿の素敵なこと。そんなタキが慕う奥様の姿、そして奥様の秘めたる恋情。そしてタキの想い。静かにしかし真っ直ぐに胸に届きます。 戦争に関しても直接的な表現はありませんが、だから一層普通の人々が戦争に巻き込まれる様子が身にしみます。戦局が激化し田舎へと帰ったタキが奥様と再会するシーンは実に静かでした。でも静かだからこそここで交わされる言葉のひとつひとつが涙腺を刺激しました。

    1
    投稿日: 2013.05.09
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    直木賞受賞作ということで読んでみました。最後に明かされる真実。タキさんは何を後悔していたのかなあ。やっぱりあのことなのかなあ。

    0
    投稿日: 2013.05.02
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    昭和の初めの頃、今の年齢でいうと中学校に上がる年頃で、山形から上京して東京の山の手のサラリーマンのお宅に女中さんとして奉公した布宮タキさんの回想録です。タキさんが思い出多い平井家の人々と暮らしたのは赤い三角屋根の洋館でした。このお話はそのタキさんが、米寿を迎えた頃に女中しての半生を独白する形式なのですが、このお話の面白いところは、それを回顧録として綴っている彼女の傍らで、甥っこの大学生の健史が盗み読みしている設定になっているところです。ですから、老女のタキさんと少女時代のタキさんが章毎にかわるがわる登場します。 平井家の旦那様、奥様、おぼっちゃま・・奥様の時子様はタキさんとそう年が離れていないので、姉妹のような感じ(奥様が上)です。2.26事件のことや太平洋戦争が開始される前の時代背景があるとはいえ、この小説に登場する平井家を中心とした市井の人々の暮らしは開戦直前までのんびりしたものでした。 女中としてのタキさんの腕の見せどころともいうべき場面が随所にあり、祭事や家事のコツが披露されるので勉強になります。そして、かつて彼女が初めて奉公した先の小説家の小中先生に教わった女中にとっていちばんたいせつなもの、「ある種の頭の良さ」を発揮する場面が訪れるのですが、この場面は後に、ある人物によって真実が明かされることになるのでした。余韻のある結末で心に残ります。

    1
    投稿日: 2013.04.28
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    昭和初期、東京に奉公に出てきた女の子の話。冒頭は「なんだ、母が話してる事と大して変わらないなあ。。。」なんて思いながら読んでたけど、後半の文章の表現が変わったあたりからぐんぐんおもしろくなる。ああ、人ってこの世にいなくても確かにいるんだ。繋がってるんだって思った。もういない祖父母や父にも私の知らないそれはそれは深いストーリーがあったんだろうなあ・・・ちゃんと話しとけばよかったなあ・・・とちょっと後悔。

    1
    投稿日: 2013.04.26
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    いい本だった。 女中の目で見た昭和初期の風景はとても新しくてキラキラしていて。 ごはんの描写がとってもおいしそう。

    0
    投稿日: 2013.04.26
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    戦争のときだって、普通の日常を生きていた人がいたんだと感じられる。 タキちゃんの回想から現代へと繋がるラストに引き込まれた。 とってもおもしろかった。

    0
    投稿日: 2013.04.19
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    戦時中の、女中さんの体験記、みたいなストーリー。 「戦時中は、大変だったんだよ」みたいなよくある話ではなくて、素朴な話なんだけど、そこは新鮮味があって楽しく読めた。映画化するらしいけど、キャストも含めて難しいんじゃないかなぁ。そういう意味で、興味あり。

    0
    投稿日: 2013.04.09
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    時子奥さまやタキさんとのあいだにある、あったかいつながりにふれられる心安らぐ作品。品の良い、それでいてあどけなく感じる時子奥さまの話し方や、そんな奥さまを慕うタキさんの姿に心が温かくなります。

    0
    投稿日: 2013.04.08
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    戦前・戦中・戦後の東京。女中タキちゃんと時子奥様の生活が美しければ美しいほど、現実はつらくて、現実が厳しければ厳しいほど、小さいおうちの風景が輝いて見えて、幸せで切ない、愛の物語です。 厳しい時代の、華やかな東京。戦地も、銀座も鎌倉も、郊外に建つ小さいおうちも、どれもこの時代の真実だったのかな、と思いながら読みました。 タキさんの、敬意のこもった言葉はとても美しいです。敬意というのか愛というのか。 最終章まで読んで、またタキちゃんの想いを追って最初から読みたくなりました。 2014年、山田洋次監督で映画化。絶対観る! それでまたたくさん読まれるといいなぁ。 同名の絵本も、名作ですよね。

    2
    投稿日: 2013.04.07
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    中島京子の小さいおうちを読みました。 戦前から戦後にかけて女中をしていたタキが懐かしく思い出す、赤い三角屋根の洋館での生活が描かれています。 玩具会社で仕事をしていた旦那様、美人の奥様、足が不自由なぼっちゃんとの生活が思い出の中で描かれています。 そして旦那様の部下の板倉さんとの思い出も描かれています。 敗戦前の時期で暗い世相だったはずですが、タキは懐かしく思い出すのでした。 タキの甥の次男健史はそれを読んで批判的な意見を述べるのでしたが。 最終章では、タキが亡くなった後、健史がイタクラ・ショージという漫画家の記念館を訪れます。 健史は板倉さんが赤い三角屋根の洋館をずっと心にとどめていたことを知るのでした。

    0
    投稿日: 2013.04.07
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    面白かった。 時代も流れている空気も、すごく好み。 戦争が激化する前の話、だけど。 坂の上にある赤い屋根の小さいおうちはきっとすごく可愛かっただろうし、時子奥様はきっとすごく可愛らしくて綺麗だっただろうし。 鎌倉に出掛ける感じとか、銀座に行く感じとか。 すごく好き。 それでもやっぱり、戦争は残酷。 赤い屋根の小さいおうちとは遠いところで始まって続いて、でもそれは赤い屋根の小さいおうちの中にも入りこんでくる。 戦争さえなければ、と何度も思う。 数々の悲しい事実を知って、かつてのやさしく穏やかな日々を思う。 戦争さえなければ。 正直、物語終盤はあまり好きじゃないです。 でもそれは、作品として好きじゃないわけじゃなくて、好きだからこそ。 好きだからこそハッピーエンドを願ってしまう、それだけ。 最終章、目線が変わるだけでなく合わせて空気もガラリと変わります。 小説としては、そこも面白いです。

    0
    投稿日: 2013.04.06
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    時子奥様とタキの相互の信頼関係がすごい。  ましてこの二人の場合、10年以上も一緒に生活してるのだ。戦争が激化したとき、故郷よりも平井家の面々を心配するタキさんの気持ちもわかります。 より長く暮らした場所の方が故郷になってしまうのかもしれない、と思った。 しかし家族でも恋人でもない独特のスタンス「女中」さんのいる暮らしって、どんなだろうか。

    0
    投稿日: 2013.04.06
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    多分好きだと思うよ、と。17冊目にお借りした本。 戦争の前後の、普通の生活をも書いた話。 映画になると聞いたけれどこれをどうやって映画にするのか全然想像がつかなかった。 女中さんとしてのお仕事への意気込みだとか逞しさが面白かったです出入りのお店屋さんと懇意にしていざという時に融通してもらったりとか、なんでもバンバン自分で縫って作ってしまうところもうわさには聞いていたけれど昭和の時代の人の素敵なところがたくさん感じられる話でした。 祖母から戦争中は、お父さんが軍人さんだったから女中さんもたくさんいて湖のほとりの豪邸に住んで、室内には卓球のお部屋もあって・・・というはなしを聞いたことがあって、不思議な気がしたのを思い出しました。 今日マチ子さんのcocoonのように、戦争と並行して暮らしが続く、その暮らしが次第に変異して戦争が侵食し尽すことは、この小説の中ではなかったけれど。

    1
    投稿日: 2013.04.05
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    戦争の物語といえば、戦地や戦闘の話が多いが、本作は庶民の目線でその時代を感じられる。都内に住む小洒落た一家と、その家をこよなく愛する若い女中。最初は、女中タキの回想録かと思いきや、最後に気づかされる真実…読後はずっしりと重たい。直木賞作品で、山田洋次監督で映画化も決定。キャストはことごとく私のイメージと違うが、映画は映画で楽しみ。

    0
    投稿日: 2013.04.05
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    最終章があって救われたな、と。 タキちゃんもぼっちゃんも板倉さんも旦那様も みんな奥様のことが好きだったんだなあと思うことにします。 - - - みんな丸いものの中にいて そこから出るか出されるか、出さないでおくか 「おもいで」という丸みと生きていくということ

    0
    投稿日: 2013.04.04
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    女中として生きたタキさんの視点で昭和という時代をふりかえる物語。さすが歴史を専攻してきた人ならではのお話だと思い、夢中になってページをめくった。歴史の出来事で見ると、戦争まっしぐらの暗いイメージがつい先行してしまうけれど、実際にその時代を生きていた人たちはタキさんが語るように、どこか遠いところで起きていることで、自分たちの暮らしは、平凡なものだったのだというのが本当なのだろうと思う。 ただ単に回顧録として終わるのではないラストもいいなと思った。

    1
    投稿日: 2013.03.30
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    家政婦さんとは違う、戦前戦後の女中さんとして 人生を歩んだ女の子と、その奥様との日々。 最初はちょっと退屈かな?と思いましたが、 戦時中の国内での日常や、思わぬ繋がりなどもあり、 ワクワクできました。

    0
    投稿日: 2013.03.29
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    小さいおうちの女中さんの話。 絵本とは違う傾向だけど 日本のその時代はこうだったのかという感じ。 最終章まで読んで ようやくいろいろ思う。

    0
    投稿日: 2013.03.24
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    戦争の話としては読みやすいのかなと思った。 反戦を全面に押し出した感じや、ただ悲しい•むごいだけという話ではないので、こういう見方もあるんだなぁと少し新鮮な気持ちで読める。 割と上流の家庭なんだけど、「小さい」お家ということでアットホームな雰囲気が全体にあるところがこのお話に暖かみを与えているのかなと思う。

    0
    投稿日: 2013.03.23
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    面白かった!のひと言です。そして上手い!!こんなに面白かったなんて…もっと早く読めばよかったです。女中の語る、ある家の歴史というのは方々で言われていることですが、それだけではありません。読まないと分からないことがたくさんありました。ここで書いてしまうと面白くないので、ぜひ一読をおすすめします!

    1
    投稿日: 2013.03.19
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    久しぶりに、心から満足できる小説を読んだ。小説好きを自認する者は避けて通ってはならぬ程の、見事な出来栄えの小説だと思う。その理由は…勿体無くて書けない。この先、幾度となく読み返すことだろう。

    1
    投稿日: 2013.03.16
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    友人から借りました。 国のことより、自分のこと。何処にいようと、どんな情勢下だろうと、自分の人生を一生懸命生きればそれでいいんですよ。 昭和の初めから、戦争の前後を生きていたとしても、「女中」として、奥様に仕えることが幸せだと思って生きることができた女の話。 そういえば、今の自分だって、政治や経済のことより「自分のこと」だもんね。

    0
    投稿日: 2013.03.11
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    あまり手にしないタイプの小説ですが、ちょっと参考資料にと購入しました。面白かったです。 戦前、戦中の東京が舞台の中心。これまで暗黒世界のように描かれてきた戦前、戦中ですが、ハイカラで明るく描かれています。そこにまず興趣をそそられました。 そういえば、山本夏彦さんも著書で、戦中は決して暗いことばかりではなかった、という趣旨のことを書いていたのを思い出しました。 最後はミステリの趣もあり、読みどころが多い作品となっています。 中島京子さんは本作で直木賞を受賞しています。

    0
    投稿日: 2013.03.10
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    嫌いだ。戦争の話が嫌い。 明治維新の話も、その後の事変や大戦の話も。なんでだろう?単にイメージの問題かもしれない。 これがヨーロッパ中世などの話なら逆に好きなんだが…。自分でもハッキリとは、よくわからない。 この本も、時代は昭和で、世界大戦前後の女中さんの話だ。会社の後輩が貸してくれたので、この時代は苦手だなあと思いつつもページをめくってみたら、意外と一気に読めた。面白かった。 ミステリーって言っていいのかなあ。昭和のモダンな雰囲気を淡々と綴っているようで、結構ドキドキする展開だった。謎解きのクライマックスもあって、でも…な感じがよかったかも。 なんか女ってやっぱりちょっとよくわからん。で、ちょっとこわいなあ。

    0
    投稿日: 2013.03.09
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    第二次大戦前後を舞台としたある家族の物語り。これまで読んだ本とは異なる視点で、戦争中の日本が描かれていて新鮮でした。物語りとしても楽しめました。

    0
    投稿日: 2013.03.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

    昭和初期から平成に生きた女中タキちゃんの、戦前に仕えた「小さなおうち」での物語。 「女中さん」=「召使い」=「大変な苦労」というイメージが覆りました。また戦前の東京がこんなに豊かで栄えていたなんていうのも知らなかったです。 戦争ものの作品ってどうしても悲惨な目に遭った人の話がメインに描かれることが多いですが、タキちゃんの戦争や御国への興味よりも、女中として毎日の暮らしを考えるのに精一杯だったという姿に、戦時中でも意外とそういう人が多かったのかもなと少し安心しました。 物語の進み方が面白かったし、最後の章が素敵でした。 大好きな絵本「ちいさなおうち」とタイトルが一緒だな~と思っていたら、少し関連も出てきてなんだか嬉しかったです。

    0
    投稿日: 2013.03.08
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    ときどき挟まれる、教科書やテレビの隙間やインターネットの端からの情報だけで世界をわかった気になっている甥っこの差し出口にイライラさせられたが、それはそのまま、新聞や雑誌の報道だけで世界をわかった気になっていた旦那様や恭一ぼっちゃんと同じだとも思わされた。 田舎から出てきた年若い娘の目に映る、東京の、モダンなおうちの、そこに住む奥様のなんと美しいことか。 なんとはなしに、『枕草子』の、中宮定子と清少納言の関係を思ったりもした。 ところで文庫本の編集者に苦言をひとつ。 本編が終わった余韻もないままに巻末対談が始まるレイアウトはいかがなものか。 次ページは白紙にするくらいの気配りはできなかったのか。

    0
    投稿日: 2013.03.06
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    昭和の歴史が、歴史家が語るのではなく、生活の流れの中で語られてる。一気に読める。山田洋次の創る作品が待ち遠しい、

    1
    投稿日: 2013.03.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    戦争の話とか歴史の話とか年号とか、苦手で読んでこなかったのだけど。この本はすんなりと「戦争」というものが私に入ってきた。 文中にそういう本当か話とかのことを「それは戦争の話じゃなくて、兵隊さんとかの話だ」というように主人公が言っていて、まさにその通りだと思った。 リアルな「戦争」の話を読めた気がする。 とても面白かった。女性は特に「戦争」がどういうものだったのかをリアルに入り込める本だと思った。

    1
    投稿日: 2013.03.06
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    中島 京子さん”小さいおうち”読了。第143回直木賞受賞作。戦前、戦後を女中として生きた「タキさん」の物語。素晴らしいの一言です。おすすめ!

    1
    投稿日: 2013.03.03
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    自分の感性を刺激したくて、近年売れている小説を読むようにしています。 何を参考にすべきか試行錯誤しているのですが、文学賞受賞作を読むというのを、その手段のひとつにしています。 この小説は、2010年の直木賞受賞作。 舞台は主に、昭和10年代の東京です。 東北から上京して女中奉公をする、タキ。 自らの青春時代に仕事・生活の場として過ごした一家での出来事を、老女となったタキが回想するという形で、綴られています。 21世紀の現在から想像する戦前戦中の東京は、悲壮で暗いイメージがあります。 しかしこの小説には、開戦前は好景気に沸き、そして戦争が始まった当初も、一般家庭の中にはまだ、明るさがあった東京の生活が、描かれています。 もちろん、フィクションであること、そして舞台が裕福な家庭であることを踏まえて読む必要はありますが、戦前戦後の時代の生活というものについて、イメージを変えたほうが良いかな?と、考えました。 そしてもうひとつの読みどころは、タキが仕える”奥様”を中心とした、登場人物たちそれぞれの感情と行動。 さらには、小説全体にも大きな技巧が施されていて、読者を驚かせそして納得させるという構成になっています。 これだけの要素を一つの作品の中に埋め込むとは、力量のある作家さんなのですね。 初めてこの方の作品を手にとったので、読む前は「どうかな」と思ったのですが、期待以上の内容でした。 他にも文庫化されている作品を探して、読んでみたいと思います。

    0
    投稿日: 2013.02.25
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    昭和初期、東京の平井家に女中奉公していたタキちゃん回顧録。 この時代の本を読まないせいか、どんどん戦争が進んでくのにタキちゃんの周辺の東京はまだまだ暗い気配はなく、そんなにも明るい華やかな時代だったことに驚いた。 時子さんのお洒落な様子や銀座の様子が微笑ましかった。 決して暗い話でもなく、戦争話でもないんだけど、タキちゃんの平和な穏やかな日々が戦争により少しずつ壊されていくことが切なかった

    0
    投稿日: 2013.02.18
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    昭和初期、世はまさに軍国主義台頭、隣の国々に戦争を仕掛け、景気も良く、人々が浮かれていた時期から第二次世界大戦の敗戦に至る迄を中心にした、女中さんの回想録形式の物語。 この時代を扱うと、もっと思想的だったり、反体制的な物だったりすると思うのだが、これはそういう思想論争的なことは殆ど無い。国が非常時体制下でも、如何に美味しい料理を一家のために作るか、とか、少ない物資でもお洒落を楽しみたい奥様のために如何に工夫を凝らすか、とか、そういうことに、自分の全てを捧げた女性の視点で当時の世相が描かれていることが新鮮。 当時の流行り歌とか、軍歌とか、やたら、懐かしいので、主人公の年令設定を確認したら、母の歳と四つ違いの設定。父も健康に難があったが、結局徴兵された。それでも母たちはそこまで危機感を持ってなかったようだから、女中さんでなくても、また、女中さんを置いておけるような恵まれた家庭の奥様にしても、歴史の教科書で習うよりも、ドラマや映画で観るよりも、庶民は呑気だったのだろう。情報量が半端ではない現代では信じられないことだ。 最後はちょっぴり情念を感じさせる話になっているが、さもありなん、というところ。 じんわりと良さが巡ってくる感じの本。

    2
    投稿日: 2013.02.18
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    昭和初期、とある邸宅の家事を取り仕切った女中さんが、晩年近くになって当時を回想し記憶を書き付けていく、という物語。 少し複雑な構造だが、読み終えれば納得。 彼女は日本が成長するにつれ戦禍へ足を踏み入れていく時代、明るさが次第に薄れていく中でも、仕える一家を愛し、忠実に支えていく。 ただ、それがどんな時代でも、時勢に関わらず人々がそれぞれに抱えた生活があり、苦しみがあり、喜びがある。 だからこそ、いつでも状況を見極め、知恵を絞り、乗りきらねばならない。 それはとても難しい。失敗も後悔もするだろう。理解しようにも分からないままかも知れない。でも何もかも飲み込んで先へ。 生き抜くのはいつの時代も大変だけど、それが人生ってものなのかも。誰の物語も、簡単にひとことで説明がつくはずがないのです。

    2
    投稿日: 2013.02.16
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    時代は昭和初期。女中をしていたタキちゃんが晩年その頃を回想しながら記録に残す物語。 可愛らしいお家なんだろうな〜。 おばあちゃんが語り口だけあって穏やかで、ときどきクスリとできるユーモアも素敵。甥の次男の健史とのやりとりも小気味良い。おばぁちゃん好きな私としては、もう少し優しく接してあげてよねって思ってたけど、あとになってその健史の行動力がなんとも頼もしい。ぶっきらぼうながらも、ちゃんと通じていたんだね。よいよい。 『ある種の頭の良さ』……か…。

    0
    投稿日: 2013.02.16
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    この本については「おもしろいか否か」ではなく読んだ方がいいと思う。女中タキの視点でみた昭和初期。描かれる大部分は奉公にあがっていた平井家(とりわけ時子奥様)であり、第二次世界大戦前後の社会の気風や人々のくらしがみえる。 戦中も過酷さや貧しさよりタキと時子の間にあるあたたかいものにスポットがあたる。故に切ないラストを迎えるも読後はいい。良作。

    4
    投稿日: 2013.02.14
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    昭和初期、戦前戦後の裕福な家庭に女中奉公するタキちゃんの手記。 その時代の暮らしがリアルでよくわかる。 戦争のことを庶民はどういうふうに感じてたか。 戦争になんの疑問も持たず、教えられたままを信じてる民衆が怖い。

    4
    投稿日: 2013.02.12
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    山田洋二監督が映画にすると聞き、読んでみた。昭和初期の裕福な家庭の様子が見える。お手伝いさんの目を通して語らせるところがおもしろい。

    0
    投稿日: 2013.02.11
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    直木受賞作。映画化。 で、購入。 昭和初期の東京市民の暮らしがよくわかる。 市民といっても、女中がいる家だから「裕福な市民」ということになるが。 女中の手記という形。とても読みやすくリアルである。 最終章は予想外であった。 久々の星5つ。

    3
    投稿日: 2013.02.11
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    昭和初期に若い女中だったタキちゃんが、今は米寿を過ぎた老女になって、ノートに思い出をつづっていく。 すでに色々な書評に書かれているけれど、昭和初期の東京の裕福な家庭が、どれだけ豊かな生活を享受していて、暗い時代がもうやってきているなんて実感がどれだけなかったか、逆に言えばどれだけ今の私たちと同じような「普通の」人たちだったか、ということが描かれているのが新鮮。 直木賞受賞作ではありますが、東野圭吾みたいな「エンタメ!」っていう感じよりはもう少し端正で文学寄りな印象。Small Island、Atonement、「本格小説」などをちょっと連想しました。 唯一無二の新しさがあるわけではないけれど、とても面白く、切なく、心に残りました。映画化されるそうですが、変に話を変えたりしないできちんと映画にしてほしいなあ。

    0
    投稿日: 2013.02.10
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    女中奉公をしていたタキさんの回顧を中心に進む小説。 タキさんとタキさんの甥の次男、健史が、それぞれの価値観の違いをベースにそれぞれの言葉を紡いでいくところでなんとなくいろいろと思うところがあった。 いわゆる少年・少女の「反抗期」とでも呼ばれるものが世には存在する。それは例えば「「自我」が芽生えるから」、といったように若い方の側の問題として言葉を費やされることが多いように思う。でもそれはひょっとすると若い側の単なる思い上がりでしかないのかもしれない、なんてことを思ったのである。 私自身、祖父母と話していると、祖父母の口から今では使われなくなったような言葉や、時には現在それを使ってしまうと「差別用語」として弾劾されるような言葉も出てきたりする。そのたびに心がざわつくのだけれど、話している側には、そうとでも言うしかないような切実さや郷愁のようなものが含まれているのかもしれないと「小さいおうち」を読んでいて思ったのだ。 タキさんの譲れないものが「小さいおうち」に集約されている。タキさんが過ごした年月はタキさんの気高さと相まってとても美しい。 個人的には最終章がなくても十分成立する小説だと思った。タキさんが大切にしていた日々のことは十分書かれていたと思うし、こちらも想像を好きに巡らせることができるから。でもこの方がしっくりする人も多いだろうと思う。

    3
    投稿日: 2013.02.10
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    戦時中、比較的裕福な家の女中だったタキさんの回想録。ご奉公している家の奥様と坊っちゃんと旦那様と旦那様の部下の板倉さんとの思い出が綴られている。 皆とても良い人たちで、強い信頼関係で結ばれていて、タキさんは家事と子守のエキスパートとして思う存分に能力を発揮する。 戦時中というと悲惨なイメージだが、戦争が酷くなり物語の要の事件が起こるまでは、タキさんもご奉公先の奥様たちも、ゆったりと幸せな時間を過ごしていて、豊かな楽しい気分になる。 物語の終盤、タキさんの死後に明かされる秘密が切ない。

    1
    投稿日: 2013.02.07
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    語り手のタキちゃん。小さいおうちや奥様、ご家族を想う気持ちであふれていて、とても愛おしい。 最終章で急に視点が変わって、温度のちがいに戸惑ったけれど、読み進めていくうちにどんどん小さいおうちに巻きこまれていく甥がおもしろく、本当にタキちゃんが操っているのだと思える。 その時代を知らなくても、情景が浮かぶような細やかな描写で、頭の中に小さいおうちを想い描いては、タキちゃんのように大好きになってしまいます。

    2
    投稿日: 2013.02.06
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    とても読みやすかった。女中タキの生活回顧録。 ほのぼのとしていた話は昭和21年という終戦に向かうに連れ、黒く苦しくなる。 友達の様に親しい奥様、手のかかる坊ちゃんの世話等、満ち足りた生活があるからこそ感じる幸せの終わり。 タキの生涯を通して一番の幸せ、そして思い出深い時期は、この小さいおうちの中にある。

    2
    投稿日: 2013.02.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    単行本で図書館で借りて読んだときに、「これは文庫化されたら絶対買う!」と思っていて、文庫化されたその日に買いに行きました。 表紙が単行本と変わってなくてよかった。 相変わらず(って当たり前だけど)、私が読みたい、と思う時代の話。 3.11の後、みんなが買いだめに走ってカップラーメンとかティッシュとかが お店から消えた時期があったけど、戦争中って、その状態がずーっと 続いてるってことなんだな。 もちろん、他のものも手に入らなくて。 怖い。 単行本を読んだときと違う感想というと、タキさん好きだけど、 こんな人がお姑さんだったら、とてもプレッシャーだな、ということ(笑) なんでもできちゃうんだもの。 恭一ぼっちゃんとタキさん、会えてたらなあ。

    2
    投稿日: 2013.02.05
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    「イトウの恋」「FUTON」のほんのりユーモアが漂いながらも、ちょっと古めかしい感じが大好きなので期待していたが、ちょっと違った…。 前半の平井家での女中時代はやや退屈だったが、エンディングが見えてきた頃、主人公のタキが亡くなってからの急展開にはひき込まれた。

    0
    投稿日: 2013.02.03
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    あんまり期待しないで読んだのですが、かなり面白いです。 戦前戦中の悲惨さではなく豊かさを描いた作品。構成も主人公の手記で現在と未来が交互になっていて読みやすい。ラストも結構感動的でした。

    0
    投稿日: 2013.02.01
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    この小さな物語を眩しいと感じるのは、私のなかにある戦争の暗くて重いイメージが、タキちゃんや時子奥様の明るさやお茶目さ、上品さを鮮やかに際立ててくれるからだろう。そのコントラストは板倉さんが残した紙芝居の内側と外側そのもののようにも感じた。

    1
    投稿日: 2013.01.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    昭和初期、小さなおうちの家族のできごと。 美しい奥様、かわいらしいぼっちゃんに優しい旦那様。 女中タキの手記で綴られるお話。 過去から現在へ。 構成が巧妙。 最終章まで読むと心が軽くなる。 謎がすべてクリアになるわけではないが、それでいい。

    0
    投稿日: 2013.01.29
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    小さい頃よく読んでいた、バージニアリーバートンのちいさいおうち。赤い三角屋根のおうちは、私にとっても懐かしい想い出。今となっては、どんな話かもう覚えてないんだけれど。 タキちゃんが奥様に誠実に従順に賢く仕える様子は、日本人ならではの気遣いと謙虚さが現れていて、そんな心を忘れかけていた自分を反省した。あるいは、奥様のように、心から憧れ、従順に仕えられる相手がいることはある意味得難い幸せなのかもしれない。 タキちゃんも、奥様も、旦那様も、板倉さんも、そして健史も、さらには80歳になった恭ちゃんも皆、口にしてはいけない事実をちゃんと心に留めるという奥ゆかしさを持ち合わせていた。そこが、この物語の温かみとねじれる秘密を作り出しているのだろう。 心温まる作品に出会えて良かった。

    2
    投稿日: 2013.01.28
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    様々な時代を背景に魅力的なストーリーを展開する著者が、戦前・戦中を舞台に描く手の込んだ恋愛劇。当時を知るすべもない読者にでさえ、時代の息吹がうまく取り込まれていると感じさせる。戦中・戦後については苦労話や重たい話ばかりに触れる機会が多いが、ここでいきいきと描かれた当時の様子はとても魅力的にさえ思えてくる。

    2
    投稿日: 2013.01.27
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    家付きの女中として東京で働いていたタキが、年老いてからノートに書き綴った当事の日々の生活のこと、働いていた家のこと、年が近くキレイで可憐だった奥さまのこと、ご主人の会社の若きデザイナ―青年のことなど、昭和のヒトケタの時代から戦争が始り終るまでの激動の時代に生きた普通の人々の生活を描いたお話。大きなストーリーこそないものの、時代のうねりに翻弄されながらもその中でそれぞれが懸命に生きてきた様がジワジワと迫って来ます。今江祥智の「ぼんぼん」から始まる三部作を読み返したくなりました。タキのー人称の語りのような文体に馴染みすっかりその世界に浸ったところで、最終章ではガラリと鮮やかな展開が。読後もジンワリとした余韻の残るお話でした。大変面白かったです。装丁も素敵。

    3
    投稿日: 2013.01.27
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    大河ドラマを読み終えた満足感、最後の一章は駆け抜けるように読みました。 東北から東京へ、女中奉公にやってきたタキの素直な目線から語られていく、戦争へ入る前の日本の、ささやかでいて豊かで希望にあふれた時代感にハッとさせられる。 それはこれまで思っていた戦争のイメージとは違う、今ある日常とさして変わらない、家族のありよう、暮らしのありようで。驚きながらも、腑に落ちる気がした。ふつうの家庭から見れば、こんなふうに、いつのまにか、戦争が始まっていったのかもしれないなと。 時にどうしようもないことが人生には起こる。 どれほど大切にしようと壊れること、失われることがある。 その儚い人生を、生き抜いていく人の力が タキの人生を通して、圧倒的な力をもって描かれていく。 最後はタキの甥と共に、強い風に煽られて立ち尽くすような、そんな気分になった。

    2
    投稿日: 2013.01.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    女中さんというと主からはいじめられるイメージが強いけれど、女中さんと奥さんが親友みたいな関係を築くことはどれくらいあったのだろう。 タキちゃんは10代20代を平井家の女中をしているのに、おばあちゃんが女中をしている感じがしちゃう。 語りがおばあちゃんになったタキちゃんだからなのか。 奥さんと若い漫画家板倉さんの一目を忍ぶ恋。不倫なんだけど、若者の初恋のように見える。 現実離れした時子さんが戦時中でも浮世離れしていた。生々しいものではなくて、奥様に惚れ込んでいるタキさんが一途で可愛らしくて、本当に周りでどれだけいろいろなことが起ころうと赤い家の中では穏やかな空気が流れたであろう想像もリアルにできました。

    0
    投稿日: 2013.01.27
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    最後の方で物語は一気に意外な展開を見せる。よく考えられた構成。 戦前は豊かな生活をしていた、と伯母に聞いていたが、そんなことあるかな、と実は半信半疑だった私だが、この本を読んでみて、なるほど豊かで楽しい日々があったのだな、と感じられた。

    1
    投稿日: 2013.01.22
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    昭和初期から戦後までの東京郊外の女中と主人一家の物語。女中の手記のかたちで語られる昭和初期東京の小春日和のようなひと時の豊かさが切ない。この本の舞台と同じ、玄関の次の間が洋風の応接間になっている家は、30年位前までは世田谷あたりで普通に見られた。今はどうだろうか。

    0
    投稿日: 2013.01.21
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    ハードカバーの頃、装丁に惹かれて買いました。 昭和初期、古きよき時代のお手伝いさんのお話。 戦争が始まってから、奥様と再会するシーンはジーンと来ました。 作中、ちょっとだけ庄司薫の「赤頭巾ちゃん気をつけて」をリスペクトしてます。 最後にどんでん返しが…みたいな書評を見たことあるけど、そういう話ではないような。 そのときのタキさんの立場なら、その判断もアリだったと思います。

    0
    投稿日: 2013.01.21
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    自慢調の書きぶりが気にさわる。。 戦時中の、中流階級がいかにのんびり構えてたか、と知るにはいいのかもしれないけれど、、 中途半端な小説。

    1
    投稿日: 2013.01.20
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    とても素敵だった。読み終わった翌日、また読んだ。時間をおいて、同じ本を読むことはあるけれど、すぐに読みたくなる本には久しぶりに出会った。

    1
    投稿日: 2013.01.20
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    はああ。 なんとまあ、泣けてくるお話なのでしょうか。いくらなんでも通勤電車で落涙はまずかろう、となんとかこらえましたが。 北村薫のベッキーさんシリーズ、山中恒の少国民シリーズ、そして斎藤美奈子の「戦下のレシピ」を思い出しつつ読みました。 今更どうにもできないが、亡くなった祖母や伯母ともっと話をしておけばよかった。 ああ、また泣けてきた。

    0
    投稿日: 2013.01.19
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    1930年頃から人生の大半を女中として過ごしたおばあさんの手記。 という体で進むなんだか切ないおはなし。 第143回 直木賞受賞作。 根底には戦争へと突き進む当時の日本社会の変貌があるのだけど、 そこを家庭を主戦場とする女中の視点から眺めていくのが面白い。 日本が仕掛けた戦争は事変であり、 そこでの勝利はデパートが安くなる日だった。という。 家庭の中心にありながら決して主役にはなり得ない女中さんの 主人家族へ向けられる暖かい気遣いと忠誠。 それをちょっと超えた所にある特殊な愛情。 昭和を生きたおばあさん特有の殊勝さとすっとぼけ具合もうまく出ていて 終盤までほっこり読めます。 ただ最終章は手記ではなくなって、全く別の角度から語られるので ここで改めて「小さいおうち」の物語が始まると言ってもいいくらい。 だから目次の書体もここだけ違っていたのか。 おばあさんが手記として書けた事、書けなかった事、 それらと現代をつなぐ、切ない答え合わせの物語。 田舎から体ひとつで東京へやってきた若い女中が 終の棲家と決め、何よりも愛した2畳の小部屋と、 赤い屋根のおうちが戦後どうなったのか。 知りたいような。知りたくないような。

    0
    投稿日: 2013.01.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    西武にて購入 直木賞受賞作品・映画化決定 昭和初期から戦争前後に女中奉公に出た少女タキの思い出から現代へと続くお話。 大きな事件は起こらない。 当時の庶民の戦争時における「日常生活」。 好みとしては、後半部分、もう少し 話が膨らむと良いなと思ったが どうだろう?

    0
    投稿日: 2013.01.17
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    女中時代の思い出を書いた大伯母の手記を譲り受けた甥の息子が、不思議な偶然にあいながら、大伯母の知人に会っていく。 ほんわかと優しい気持ちになります。

    0
    投稿日: 2013.01.14
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    昭和初期 戦争の影濃くなる中、山形から女中奉公に出てきたタキさんが晩年、回想録を書き綴るという形式で、当時の東京と家庭の風景、そして奥様を廻る人々の想いが綴られる。 回想ノートに書かなかった部分を感じさせながら、最終章でタキさんの秘密が明らかになるが、最後まで読者の推理を促す。 すべてを白日の下にさらすことない、電球色の景色がそこにある。

    0
    投稿日: 2013.01.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    昭和初期、モダンな赤屋根のお宅で女中奉公に出たタキという少女が味わった、上流家庭の生活が半分以上。戦局が進んでも、いまひとつピンとこないフワフワとした甘く鈍感な小さなおうちの日々。 タキが実家に帰り、疎開児童の世話をするあたりで一気に文章がゴタゴタと暗く重く窮屈になり、それがそのまま生活に色がなくなったことを表しているようだった。 時子との束の間の再会から、また現代の甥の視点へ一気に跳ぶ。ここでまた終始自省的だったタキの思いがけない一面が強く心を掴んだ。小さいおうちの秘めた激情。 いいものを読んだ。よかった。

    2
    投稿日: 2013.01.11
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    昭和初期の東京で、山形から出てきた女中さんの目を通して、間少女のような奥様との日々が描かれています。第二次世界大戦へと突入するちょっと前の日本は、暗いイメージがありましたが、ちょっとイメージが変わるような内容でした。

    0
    投稿日: 2013.01.11
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    途中までは、タキの語りでどこか引き付けられるもあった。このまま終わるのかなと思っていたけど、最終章で舞台が現代へと移ったことで、曖昧だった事柄がすべてつながり、目から鱗でした。 タキの語りでは、主人(奥様)に対して、賢くて機転の利く女中であろうとする姿が頻繁に出てきます。最終章を読み、文庫表紙イラストをながめながら、タキの忠誠心の強さを感じました。

    2
    投稿日: 2013.01.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    働き者の女中さんが語る、戦前から戦後にかけての山の手のおうちでの物語。 あとがき?にもあったけれど、まず語り手が「おばあちゃん」であること、おばあちゃん特有の視点による小さいユーモアや強さが好き。 そして戦時中の話につきものの悲壮なイメージとは別の、情勢に巻き込まれていきながらも生き生きとした日常。 昭和の台所の工夫はやっぱりなごむ。 子どもを、ぼっちゃん、って呼ぶ、のどかさ。 結局手紙は読まれたかった人に読まれなかったわけだしおばあちゃんの真意もわからないけれども、 おばあちゃんにとって全てだったおうちが、作品の最後にある一作家の中にあった「守られるべきもの」として、また違った意味合いを持たされていることに・・ひとつすっきりとおおきな気持ちになって読み終えられた。 ぼっちゃんも素敵なおじいさんになって幸せのようで、 よかったよかった。 でも最後になって作家の存在が重く興味深くなってくるのは、すごいとも、ずるいとも思った。

    0
    投稿日: 2013.01.09
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    聞かなかった問いの答えを求めて、ひとつの物語を辿っていく健史が羨ましく思えた。物語の最後に奥さんと女中ではないもう一つの関係が見えてくる。 当時の戦争に対する楽観的な世論も感じることができる一冊。

    0
    投稿日: 2013.01.07
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    戦争を知らない世代が抱く戦中のイメージと現実がいかに解離しているのか、を知る事の出来る作品です。 確かにフィクションのお話ですが、戦時中とはいえどそこには庶民の生活があり、その庶民は自分達の祖父母でもある事に気づかされます。

    1
    投稿日: 2013.01.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    直木賞受賞も納得の傑作。 山田洋次監督で映画化されるそうだが、どのように映像化されるのか楽しみだ。

    1
    投稿日: 2013.01.05
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    タキの時子奥様を慕う気持ちが伝わってきた。自分もタキになって時子奥様や恭一坊ちゃんを見ているような気持ちになった。

    3
    投稿日: 2013.01.04
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    タキおばあちゃんの一人語りで物語はすすむ。 昭和初期の良き時代から戦時中へ… その中での、家政婦タキの日常がつづられる。 なんだか作品に流れてる空気感が好きだったなぁ。

    0
    投稿日: 2013.01.03
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    「男女相愛の道程をたどるのは人類の第一の本道であるにちがいない,けれどもなお第二の路はあるはずだ。そしてまた同時に第三の路も許されていいはずだ。相愛の人を得ずして寂しいながらも何か力いっぱいの仕事をして生きてゆく人たちのためにこの路はやはり開かれてあるわけだ。第一の路をゆく人も第二も路をゆく人も第三の路をゆく人も,各々その路を一心に辿ってそれによって己を生かし切り善く美しく成長させて宇宙へ何か捧げ物をしたい気持ちで歩めばいいのだ。この三つの形をとって人間は生涯を送るより方法はないのだと思う」 不思議な世界観で,謎は残るのに読後感がとても良かった。直木賞を取るのも納得する。良い小説だった。

    0
    投稿日: 2013.01.01
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    面白かった。惹きこまれた。 昭和初期の、古き良きというと薄っぺらくなってしまうけど、とにかく素敵な日本人の生活が垣間見られる。 最終章の意味するところは私にはまだちゃんと理解できないけど、大切にしたい1冊。

    1
    投稿日: 2012.12.31
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    惹きこまれて、ただただ面白かった。ある幸せな家庭で起こっていた秘密。謎は明かされないけど、いくつかの伏線から色々と想像できるとこが面白い。そして時代の変遷が、昔のことなのに今の時代にも重なる気がして、平和の尊さみたいなことも感じられた気がする。

    1
    投稿日: 2012.12.31
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    「戦争に塗りつぶされた暗い時代」という単一のイメージで語られがちな昭和初期の東京における家庭や日常の風景を、女中・タキの目線から描き出す『小さいおうち』、とはあとがきを引用したものであるが、物語を綴るその視点に、確かに目新しさを感じはした。賄いの女中がいる家庭を経済的に一般的であるかと問われると否である。割と裕福な家庭を描いたのが本作品ということになるだろうか。 仮に同時代を、一般庶民的な家庭をモチーフに描いていたら、どんな作品になっていたのだろうか。 戦前、戦中、戦後を、その時代では特異であるだろう富裕家庭の日常とリンクしづらい部分に、この作品の減点要素がある。 つまりは、その時代とミスマッチな視点で描かれていることに、大いに違和感を抱かずにはいられないのだ。

    0
    投稿日: 2012.12.30
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    昭和初期、田舎から東京へ出て来て、中流家庭に女中として奉公した女性の半生。 暗くなる一方の世相ではあっても、直接の戦火に曝されなければ、人々はさして深刻にもならず日々の暮らしを生きていたのだろうか。 彼女の記憶や思い出が綴られた回想録には、戦前から戦中にかけて、日本人が貧しくても無邪気に前向きに慎ましやかに生きた頃の街の風景や人々の暮らし振りが克明に且つ淡々と描かれる。 最終章があって物語は深みを増したものと思うが、話の後味としては、私は無い方が好きだったかも。

    2
    投稿日: 2012.12.29
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    「たった二畳の板の間を私がどれだけ愛したか、そのことを書いても、人はおそらくわかってはくれないだろう」という一文が出てくるけれど、自分の居場所を愛する気持ちは十分に伝わりました。読んだあと、こういう気持ちを持った主人公を、すごく愛しく思えました。

    1
    投稿日: 2012.12.28
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    タキちゃんの作る料理はおいしそう。そしてタキちゃんみたいな女性になりたいとも思った。女中の仕事に関しては誰にも負けないという感じがかっこいい。十分キャリアウーマンだと思う。でも結末はえっ終わり?という感じで私には物足りなかった。もう少し大人になってからもう一度読みたいと思った。

    0
    投稿日: 2012.12.28
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    最終章のポンポンと色んな事が分かって行くのがすごく楽しかった。 だけど本当に最後の最後で胸が「ぎゅうっ」というか何と言うか不思議な言い表せないような気持ちになる。 読後はすっきりはしないけど、こういう物語は嫌いじゃないです。 赤い屋根のお家に行ってタキちゃんの部屋をみてみたいなぁ・・・。と思いました。

    0
    投稿日: 2012.12.27
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    待ちに待った文庫化。友人にハードのときに借りて再読したかった本。昭和モダンから戦後にかけての話。女中と奥様という近くて遠い二人。奥様の明るい人柄に癒される。こんな家に憧れる。映画化されるんだね。楽しみ。

    1
    投稿日: 2012.12.26
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    いい作品なんだろうな。でもちょっと退屈だったかな。戦時中の裕福な家庭の生活にリアリティーがあり、現代と戦争も常に地続きにあることが再認識させられました。

    0
    投稿日: 2012.12.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    昭和初期、今の私達にとっては戦争の足音が次第に近づいてくる重苦しい空気、暗い時代というイメージだが、タキという天性の女中さんの目を通して語られる人々の日常や感情はいまの私たちのそれとさほど違いはない。震災や国際的な緊張を経てちょうど選挙の最中に読みはじめ、私たちのこの時代も60年、70年後の人から見たら昭和初期と同じようにみえるのかもしれないと背筋が寒くなった。 ノンフィクションさながらの細々とした時代を写すできごとや人物の描写、女中の仕事のディテールも読ませるし、登場人物それぞれの秘めたる思い、ミステリめいた展開も読み手をひっぱる。晩年のタキが覚え書を綴る、それもときどき訪ねてくる年若い縁者を読者として意識しつつ、という構成と、最終章での視点の変化からぱっと視界が広がっていき、小説の醍醐味もたっぷり楽しめた。が、この小説の主題はそれらではなく、ささやかなよいものがいつのまにか損なわれてしまったとりかえしのつかないかなしみややりきれなさ、かな。多少時勢が変わっても敏腕女中が「まだだいじょうぶ」「なんとかなる」と創意工夫で切り盛りして保たれてきたささやかな暮らし、どんな嵐からもまもられていた「おうち」がいつのまにか永遠に失われてしまったことに気がつくのは戦争が終わってしばらくしてからのこと。客観的には愚かしいことだけれど、いまの自分も同じ道をたどりうるのではないかと思えてならない。

    1
    投稿日: 2012.12.23
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    最終章『小さいおうち』の頁をめくって数行に目を通す。 「この物語を読み続けてよかった」読書の悦び。 読了。 本を閉じて表紙をじっと見る。じーっと見る。 「ああ」 ため息とも感嘆ともつかない、こみ上げてくる何か。 なんとなく、女優の故・高峰秀子さんのエッセイを思わせる「タキおばあちゃん」の手記から始まる導入。 そして、尋常小学校を卒業して「女中」として東京に出た、昭和五年から始まる「タキちゃん」の物語。 現代に生きる僕らが想像する「女中」よりも、どちらかというと「お手伝いさん」と呼んだ方がイメージにしっくりくる。 赤い三角屋根の文化住宅、桃の缶詰を使ったムースババロア。 鎌倉の大仏に、翡翠色のワンピースと麻の日傘。 資生堂の花椿ビスケットと『みづゑ』の特集記事。 明るく利発なタキちゃんと、元気でお洒落でユーモアもある時子奥様との日々は、銀の器にのったフルーツの盛り合わせのように総天然色できらきらと眩しい。 「戦争に塗りつぶされた暗い時代」という単一のイメージで語られがちな昭和初期の東京における家庭や日常の風景を、女中・タキの目線から描き出す、とは巻末の言葉。 そしてひそやかな愛の記憶、とは帯の文言。 「頭のいい女中」の話。 読み終わった僕の頭のなかでは、いろんなことがぐるぐる回る。 再び表紙に目を落とす。 秘密のノートとタキちゃんも『小さいおうち』の内と外、だったのかもしれない。

    15
    投稿日: 2012.12.22
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    戦前・戦中の東京を舞台に、女中タキの目を通して物語は語られていく。タキは終始読者を物語へ誘う「目」として、タキの奉公先の一家に起る事件を語っていく。読者はタキと一体になって、タキの目を通して小説を読み進めていくが、最終章で物語の語り手が、タキからその甥に移った時、始めて他者として物語上語られる「タキ」という他者に出会う。 人は誰しも秘密がある、そのことを思い知らされるのだ。

    1
    投稿日: 2012.12.21
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    おもしろかった。ミーハーなので昭和初期のお金持ち家庭の暮らしぶりとかが楽しい。賢い女中さんの、賢いプライドをもった仕事ぶりとかも読んでてわくわくする。工夫を凝らしたおいしそうな料理とか。 さらっとした落ち着いた文章で、ユーモアがありつつ淡々とした感じがすごくよくて。 で、ちょっとした奥さんの恋愛事件とかも淡々と時の流れのように流れていくのだろうなあと思っていたらば。 ラストにサプライズが。 うーん、ほんとにまったくただの個人的な好みなんだけど、こんなにこのラストのサプライズをしっかり書かなくてもよかったような気も。それまでのタキさんが書いたものとがらっと雰囲気が変わった感じで、まあ、そこがこの小説のすばらしさなんだろうけれど、わたしとしては、平凡でいいからタキさんが書いたものの穏やかな雰囲気のなかで終わってほしかったかも。 さらっと未開封の手紙の存在を示すだけとかでよかった気も。 これもほんとにまったくただの個人的な好みなんだけど、タキさんが奥さんに恋していたってのはちょっといやかも。あくまでもどこまでも女中さんとして奥さんの立場を守ったってことであってほしい。でも、それをちょっと後悔したってことであってほしい。……とか思ったり。

    0
    投稿日: 2012.12.17
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    ストーリーの巧者、中島京子の本領発揮といったところ。著者のテクニックに酔いながら、80年後の今振り返る戦後と、その中にいて見た昭和初期のギャップを楽しむ。 すると、最終章でビックリ。もう一枚幕が開く。 直木賞も納得のエンターテイメント。

    0
    投稿日: 2012.12.16
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    かつて昭和の人々が〝大正ロマン〟と名づけ、ひとつ前の時代を懐かしんだように、いまや昭和も懐かしがられる時代になってしまったのですネ。本書に漂う古き良き時代の空気感に、ついつい惹きこまれてしまいます。戦争についても声高に何かを伝えようとするのではなく、あくまで市井の人の視点で描かれ、わたしたちの知らない日本の姿がここにありました。 この小説の大半は、女中という職業に誇りを持って、昭和という時代を生きたタキという女性の、最晩年に書き綴った手記〝心覚えの記〟からなっています。戦前から戦中にかけて奉公した、東京郊外のある家庭の様子が、女中の目を通して綴られているのですが、当然彼女ひとりの視点で書かれたものなので、随所に散りばめられた小さな謎は、最後まで解き明かされることなく、すべて読者の心に委ねられます。それどころか手記を綴ったタキさんの心情さえ、最後まで明かされることはありません。このあたりの構成がとても巧みで、読後に深い余韻が残ります。赤い三角屋根の家で女中として過ごした日々が、60年以上の時を経て、美しくも哀しい物語として甦ります。第143回直木賞受賞作。

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    投稿日: 2012.12.15
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    始めは読み難かったのです。 戦前の、ちょっと我儘な所はあるけれど善良で若い美人の奥さんと、主人公の少女の女中の交流の思い出が淡々と綴られて行きます。いったいこの話はどこに向かおうとしているのかと。。。 半分を過ぎたころから物語が動き始めます。戦局の悪化に伴い崩れて行く小さな家で過ごす幸せな日々。善良な人々の、愛情にあふれる交流の中で起こる様々な齟齬。そうしたものが浮き出してきて、俄然ページのめくりが順調になります。例によって電車の中で読んでいたのですが、最後の10ページほどで悩みました。急げば降車駅までに間に合うが。。。。その先で、何かが起こるのは判っていたので、一旦ページを止め、家に帰ってゆっくり読み切ることにしました。 最後は驚くほどの切り返しではなかったけど、それはむしろこの物語に似合っているように思いました。

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    投稿日: 2012.12.14
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    淡々と読める本。 長年に渡って家政婦をしていた語り手が、家政婦になりたての頃から振り返りながら半生を綴っていく、というスタイルで進んでいく。 語り手の性格を表すかのように、静かに、淡々と進んでいく物語だけど、語り手が移った最終章、最後の最後でどんでん返しされた気分でした。 読み終わったあのときの気持ちを、なんて言ったらいいかわからない気分。 答えはない、というかたぶん想像するしかなくって、本人にもわかってはなかったんじゃないかと。 映画化が決まったそうで、あの静かな世界をどう表現してくれるかがひそかな楽しみ。

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    投稿日: 2012.12.06