【感想】蜜蜂と遠雷(上)

恩田陸 / 幻冬舎文庫
(512件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
253
170
53
7
2
  • 直木賞と本屋大賞、W受賞はダテじゃない。

     前から読みたい読みたいと思っていた小説でありますが、映画化されると聞き及び、見る前に読んでおこうと手に取った次第であります。
     正直とんでもない小説でありました。ピアノや音楽、コンペティションに関する話やマンガ、映画は、これまでも数多くありました。いずれも、それに参加するコンテスタント(このような呼称も初めて知りました)の生き様や心情等が興味深く描かれていました。勿論、この物語も、とあるピアノコンクールに参加した、とても個性的な面々の音楽に対する思いが中心なのですが、それ以上に、一つ一つの楽曲そのものから受けるインスピレーションのイメージ描写が普通ではないのであります。
     当然、作曲者の意図するところを慮って演奏するのが本来だとは思いますが、その作曲者の意図よりも、演奏者個人の心象風景の描写がとんでなく素晴らしいのです。これはもう読んでもらうしかありませんが、たとえて言うならば、ディズニーの名作映画「ファンタジア」の世界観とでも言いましょうか。無論、カバやキノコがワルツを踊ったり、ミッキーが登場したりするわけではありません。たぶん一つ一つの記述が恩田陸さんの曲に対するイメージに繋がっているのでしょう。
     また著者の音楽に対する思い、特にクラシック音楽に対する思いが、この上巻には反映された部分がありました。曰く、「二つの大戦を挟み、多くの人材がアメリカに亡命、豊かで巨大な音楽市場は、クラシック音楽をより大衆化し、よりわかりやすくショーアップされたものが求められるようになった。」う~ん、なるほど。また、CDの普及も、これに拍車をかけたというのは、そのとおりだと思います。確かにあのデジタル化された音は微妙な情感に欠けるのかもしれません。
     実は私も、音楽に関しては英才教育?を受けております(笑)。幼き頃は公団住宅に住んでおりましたから、ピアノ等ではなく、幼稚園からエレクトーンを習っておりました。普通のサラリーマン家庭にとって、当時、発表されたばかりのエレクトーンは、親父の月給の3倍したとのことです。その後小学四年生の時、算盤教室に行くのが友人間で流行し、私は5年間で止めさせられましたが、妹は中学2年まで続けておりました。私自身は、小学校時代の部活の鼓笛隊、学生時代のフォルクローレ同好会を経て、就職後自分の給料でエレクトーンを購入して、再開してから30年以上が経ちます。
     当然、コンクール等と言うものの参加経験はありませんけど、発表会、定期演奏会、各種イベントでの演奏披露等の経験はあります。だから人前で演奏する際の逃げ出したくなるような緊張感、その一方での高揚感、終わった後の脱力感みたいなものは少なからず理解できます。恩田さんは経験があるのかな?そのあたりの描写も、よく書かれていました。一方、ステージマネージャーなる方がコンクールにおいては、重要な役割を果たしていることも、初めて知りました。これは結構キーパーソンですね。映画には出てくるのかな?
     以上、とりあえず感じたことを書いてみました。続きは下巻の方にて。。。。
    続きを読む

    投稿日:2019.09.09

  • さあ音楽を連れ出そう

    浜松国際ピアノコンクールをモデルにしたピアノコンクールのお話。コンクールで出会った3人の若い天才ピアニストが、ライバル同士なのに仲良くなって互いにリスペクトしながら一次予選から本選まで駆けあがっていく姿が微笑ましいです。クラシック音楽がよくわかっていない私にも、文章で表現されることで演奏の違いや凄さが伝わります。

    生活者の音楽を奏でる参加者最年長の高島明石や、ステージマネージャー田久保さんなども含め登場人物がみんな魅力的で、気持ちのよい読書体験でした。
    続きを読む

    投稿日:2021.02.23

ブクログレビュー

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  • まろ

    まろ

    このレビューはネタバレを含みます

    上巻下巻を通して
    話が面白く最初とても引き込まれて、音の表現も目の前で聴いているかなように伝わってきた
    が、なぜか後半までは勢いが持たず?最後は読み疲れてしまった
    4人ともすごい奏者なので、誰かの演奏が終わった後にこれ以上の演奏が聴けるのか?と感じ、その後の別の誰かの演奏でまた別ベクトルの素晴らしい演奏が聴けて放心…と、文章をみてるだけなのにまるでコンサートホールの聴衆になったように読んでいた
    風間塵の本選のバルトークのピアノ協奏曲3番はもともと好きで聴いていた曲で、本に出てきた時はこのキャラにぴったりすぎる!と感動した

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.04.16

  • ぴこ

    ぴこ

    透明感のある緻密な文章に圧倒された。ピアノの弾き手によって音色が変わる様をこんなに豊かに表現できることに感動。映画も観た。映像は実際にピアノの音があるので、わかりやすいが、本の方が、いくらでも自分で想像ができるので面白い。続きを読む

    投稿日:2024.04.10

  • とが

    とが

    すごい。まさか興奮で涙が出ると思わなかった。
    臨場感を感じるような間や、程よい細かさの心理描写、音が聞こえてくるような演奏の描写、、
    映画を見ている感覚。
    全員に感情移入してしまう。。
    ずっと絶対面白いと思いながら積読していたが、パリ左岸のピアノ工房を読み終えた今読めたのも良かったかも。
    このお話のピアノ全集がサブスクでも聴けるのもありがたい。
    下巻も楽しみ。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.09

  • kスケ

    kスケ

    面白い!
    コンテストという音楽のジャンフの中でも特に独特な空間を描いててすごい。
    さらに、登場人物が多いのに読者を置いてけぼりにしないのが面白い要因の一つなんだなと感じた。

    投稿日:2024.03.30

  • ナズ

    ナズ

    ほんとうに、読んでて鳥肌が止まらない。
    上下巻の小説って時として上巻で伏線ばかりなのに飽きてしまったりする(ことが個人的に屡々ある)のに、これは初手読んだ瞬間からずっとおもしろい。常に興味と関心と衝撃と興奮でたまらない気持ちになってる。15年以上前にちょこっとピアノを習っただけの私でさえ演奏の情景がありありと脳内に浮かぶし彼らの感情が色濃く鮮明に伝わってくる。今こうして感じたことを言語化するのも億劫だと感じるくらいに夢中になってる。心が震えてる。凄い。続きを読む

    投稿日:2024.03.27

  • だい

    だい

    音楽(ピアノ)天才の物語である。コンクールで競うことには、実際から、着想を得た。
    4人のコンテスタント、技術はみな高度。
    それぞれの個性があり、心理描写が読ませる。大会中にも、変化成長していく。

    場人物が若いのでエネルギッシュ、 音楽用語がよく出てきているし、曲名も 登場するので、それが分かるか、分から ないかでも、感想がちがってくるだろう。続きを読む

    投稿日:2024.03.27

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