【感想】犯罪者【上下 合本版】

太田愛 / 角川文庫
(5件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
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  • 警察の闇を描くだけで終わっていない点が素晴らしい。

    【上巻】
    通り魔事件でただひとり生き残った修司は何故か再度命を狙われる。
    警察官の相馬とその友人の鑓水が修司を助け共に謎に迫っていく。
    シリーズ2作目の「幻夏」を先に読んでしまったため相馬の左遷の理由は何だったのか気になっていた。その問題も1作目の本書を読んで無事解決。
    相馬の一本気すぎる性格に苦笑する場面もあるが警察の闇を描くだけで終わっていない点が素晴らしい。
    食の安全、産業廃棄物の問題点、子供の病気、政治家と大手企業の癒着など沢山のテーマが入り込んでいる。しかしその割に雰囲気が明るく、修司・相馬・鑓水の強い個性が光っている。
    構成が上手で、話が何度も前後したり場面が急に変わったりするが読みづらさは余り感じない。
    新事実が次々と出てくるので謎解きというよりは良い具合に予測しながら読み進められる楽しさでありスリルだと感じた。
    だが、まだまだ事件は解決していない・・とにかく先に進まなければ・・・
    【下巻】
    そもそもの発端は通り魔だった。
    下巻に入って舞台は高知県に飛び次々犯罪が上乗せされていく。高知での出来事だけでも一冊の小説に値する面白さ。若い男女の悲しい恋物語に一時通り魔のことを忘れてしまいそうになった。
    相馬・鑓水とその仲間たちは自分と直接関係のない出来事に命がけで飛び込んで行くわけで、なぜこんなにも読者はこの展開に共感するのか・・・冷静に考えると不思議だが止まらない面白さだった。
    大企業の傲慢さ、政治家の尊大な態度、成功には犠牲は付き物という自分勝手な解釈に対する反感が共感を呼ぶという一面もあるのだろう。
    読み終わってみるとやはり3人のキャラが、とくに鑓水が強烈に印象に残りすぐ次を読まなければと前のめりになっている。
    ただ事件決着後の後日談が余りに長すぎたのではないかという感じもしている。派手な演出のあとの謎解きはお金の行方だけわかれば疑問が残る程度が丁度良いのではないだろうか。
    次作を読む前に冷静に一つだけ不満を考えだしてみた。
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    投稿日:2017.10.23

  • すごいすごいすごい!

    ミステリ全般読み漁り、大抵の謎もどんでん返しも驚かないが、この作者の力量には驚かされた。
    謎もスリルも社会の闇も人間も青春も友情も家族も、とにかくてんこ盛り。だけど全部描ききってる。
    こんなに詰め込んでるのに、テンポはいいし凭れない。安易なご都合主義を感じる暇もなく、一筋縄ではいなかい展開。嫌味のない、飾りすぎない文体、しっかりとした文章力。
    とにかくストーリーが面白いし、人間も魅力的。エンターテイメントだけじゃなく、つらくとも生きよう、と思わせてくれる。
    とにかく、この作品と作者に出会えて良かったと久々に感じた。
    シリーズ化されてるとのことなので、次を読むのが楽しみで堪らない。
    忘れた頃、再読したい。
    続きを読む

    投稿日:2021.02.09

  • 面白かったです。

    内容は楽しめましたが、なんとなくすっきりとしない終わり方でした。でも勧善懲悪でないところがまた味があるのかもしれません。

    投稿日:2018.09.11

  • 展開が読めない楽しさ

    巨大企業の不正や、それに絡む政治家といった社会派的な背景はあるものの、魅力的な主人公達の活躍によって、とてもスリングに物語が展開するので、先が読めない楽しさを堪能。ちょっと(私にとって)要らないと思う描写が時々あるのが気になったが、全体的に読みやすくて、最初から最後までハラハラドキドキして面白かった。先にシリーズ3作目の「天上の葦」を読んでいたので、3人の過去を知ることが出来たのも良かった。続きを読む

    投稿日:2019.01.03

  • 次から次へとドラマチックに展開するストーリー。文句なく面白い

     かなりの長編であります。そしてかなり話は込み入ってます。
     物語の発端は通り魔事件。最近、何の意味もなく人を殺傷する事件が多いですよね。ところがこの事件には裏がある。そして幼児に発生した奇病。それを隠蔽しようとする巨大企業。これについても、欠陥商品を隠し通そうとする事件がよくあります。公と企業との持ちつ持たれつの関係は、どこぞのオリンピックでもあったようですし、警察内部の闇にしても、巨大な組織の中ではキャリア組とノンキャリア組の確執はどこでもあるでしょう。
     ストーリーとしてはかなり込み入っていて登場人物も多いわけですが、事件究明を目指す3人を軸に、流石はTVドラマを多数手がけてこられた作者らしく、グイグイ読者を引っ張っていく力量は大したものです。
     兎に角、次の展開が全く読めず、さてどうなる!と一気読み必至です。
     と、こう書くとストーリー展開だけで読者を魅了する小説のように見えてしまいますが、そんなことはありません。それぞれの人物の背景なども詳細に記載され、また事件後の後日談などもあり、やりきれない事件ではありますが、どこかスッキリいたします。本当の巨悪には結局手が届かないのも、今の世の中を象徴しているのかもしれませんね。
    続きを読む

    投稿日:2022.10.02

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