【感想】幼年期の終わり

クラーク, 池田真紀子 / 光文社古典新訳文庫
(188件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
63
66
33
3
0
  • 不朽の名作、旧訳よりは読みやすかったです。が。。。

    もちろん、訳の差分の問題もありますが、むしろ2015年という今、この物語をどう読むか?SFの古典として読むか、はたまた今の社会情勢や文化背景を思い浮かべながら読むか、の立ち位置が問題となるくらい古典になっています。今やこの物語が最初に語られてから社会状況は大きく変わり、予想もつかなかった社会的、政治的パワー不均衡が存在してます。私としては残念ながら旧訳を読んだ時の恐ろしく感動的な感覚は戻ってきませんでした。むしろ人間至上主義的なちょっと鼻につく感じが後味として残ってしまったことが意外でした。まあもっとも新訳「ソラリス」を読んだ後だったので、特にその感覚が強調されたのかもしれません。逆に「ソラリス」の普遍的な問題提起が改めて評価したくなりました。ん?何の読後感想書いてるんだっけ?続きを読む

    投稿日:2015.09.05

  • 新訳版と早川の旧版との違い

    J・ディーヴァーやP・コーンウェルのミステリー作品の翻訳を多く手がけた池田真紀子氏による新訳版「幼年期の終わり」
    原書の出版が1953年でしたが、1989年にアーサー・C・クラーク本人によって改稿されたものがこの新訳版の元となっています。本人による改定部分はまえがきの追加と第1章を変更したのみで、第2、第3章のストーリー自体はそのままでした。東西ドイツ統一や冷戦終結など、国際政治の状況が時代にそぐわなくなった事が理由だったようです。
    第1章冒頭の比較は以下の状況です。
    ・早川の旧版(訳:福島正実)
    →1970年代後半、米ソの宇宙開発競争の背景のもと、米のロケット発射直前に宇宙からオーバーロード(上帝)達が飛来。米人視点で語られる。
    ・新訳版
    →2000年代初頭、世界各国が協調し宇宙開発を行うようになっている中、露人の女性宇宙飛行士による火星探査ミッション直前にオーヴァーロード(最高君主)達が飛来。露人視点。

    大きな違いは冒頭の宇宙船の飛来シーンの時代設定についてですが、固有名詞の表記(カレルレン⇒カレラン)の変更や登場人物の口調の変化などの細かい所でもいろいろと相違点があります。
    早川版の「カレルレン」に慣れ親しんでいると読んでて違和感を覚えますが、全体的には自然で読みやすい文章ですし、21世紀となった今読むには、こちらの新訳版のほうが同時代性を感じられます。新訳版と旧版のどちらを選ぶか、あとは好みの問題かな…。
    その他、巻末にアーサー・C・クラークの年譜、巽孝之氏による解説、訳者あとがきが収録されていて、クラーク作品やSFというジャンルを考える上で参考になるのでは、と思います。
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    投稿日:2014.08.24

  • その問題の解決は、本当に未来のあなたのためになっているか。

    1953年にイギリスで発行された本書。

    未来を予測するように人類の進化の未来予想図を描き、
    これから起こるであろう様々な問題をSFという手法で取り上げた作品になっています。

    世界各地の首都上空に突如として宇宙船が現れ、
    カレランと名乗る宇宙人代表は姿を表わすこと無く地球を管理下に置くことを宣言。

    カレランはオーバーロード(上帝)と呼ばれ、地球を統治していくのですが、
    その指導力や知恵は人類を圧倒し、解決策が見えなかった問題を解決していくのです。

    声のみの存在だった宇宙人は、50年後に姿を見せることを約束。
    そして約束が果たされ現れたのは、人間が想像する悪魔の姿そのままでした。

    侵入者であった宇宙人は悪魔のような姿をしながら、優れた知能で地球を導き、物語の結末へ。

    結末をハッピーととるかバッドととるか。どんな未来なら自分がワクワクできるか、考えながらご一読を。
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    投稿日:2014.10.16

ブクログレビュー

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  • まっちんぐ町子

    まっちんぐ町子

    このレビューはネタバレを含みます

    人間の終焉をディストピアとして描く映画や小説は多い。人間が進化し、統合体という新たな上位の存在に生まれ変わるのはわたしにとって目新しかったし、美しいとさえ思えた。
    オーバーロードの最後の演説は、忘れ去られる人間に敬意もあり、素敵だった。

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    投稿日:2024.04.14

  • 地面の底

    地面の底

    第二部で描かれている、合理性を信奉し自ら家畜になっていく人類の様子はまさしく生権力の話そのもので興味深かった。ラストについてはまだあまり頭の整理ができていない。

    投稿日:2024.04.03

  • ワンbooks

    ワンbooks

    SFを超えた哲学小説
    という帯と、SFの古典ということで
    ぜひ読みたいと思い手に取りました。

    とりあえず、面白い!哲学的!でもわかりやすく
    難しい知識も必要ないのに深い!
    最後の展開、よく考えつくなーー
    素晴らしい創造力です。

    今のSFではもっと科学的なものを発展して
    創造されたものが多い気がしますが、
    根底に、平和を愛する気持ちや
    哲学があり
    今のSFを読みなれてる人は、ところどころ
    古いと思うかもしれないけれど
    私は本当に大好きです。

    途中平和になりすぎたことが退屈にならないか?
    ってとこで
    最近読んだ 暇と退屈の倫理学 という本のことを
    思ってました。
    なので、それをどう捉えてるのかも興味深かったし
    それでどうなるの?先が読みたくて
    どんどん進みます。

    最後の展開は、もう少し咀嚼したいとこです。

    また再読をぜひしたい本に出会いました!
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    投稿日:2024.03.21

  • tas

    tas

    最高。壮大で、美しく、暖かく、切ない。読み終えたあと、「幼年期の終わり」というタイトルが示す意味が、じんわりと心に沁みた。不思議な読み味の名作SF。ハヤカワから出ているものよりこちらの訳のほうが読みやすかった。
    三島由紀夫がこの小説に触発され「美しい星」を書いたというエピソードはどこに書いてあったんだっけな…
    続きを読む

    投稿日:2024.03.05

  • daisuket

    daisuket

    SFの古典的名作。クラークは『2001年宇宙の旅』が全然ハマらなくて遠ざかっていたんですがこちらは非常に面白かった。地球に宇宙人がやってきて…という邂逅物なんですが、いわゆる侵略ではない出会い。人類の進化や宇宙全体の広がりについてあれこれと考えさせる魅力がありますし、地球文明のあり方や行く末が「人類のみ」から描かれている辺りを時代を感じさせる記述のあり方と読むか、それ自体も上位存在の視点を問いかけるクラークの仕掛けと読むか、色々な読み方ができる名作ですね。続きを読む

    投稿日:2023.09.05

  • yappinkun

    yappinkun

    SFの傑作、アメリカで1952年に刊行されたものとは思われない。
    一種、観念的ではある。

    多数の巨大な円盤状の宇宙船が、世界各国の大都市上空に出現、異星人達は、人類を進化させ、地球上から争いは、なくなり、進化を始めていく。
    果たして、人類は、どう進化していくのか。
    続きを読む

    投稿日:2023.08.13

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