【感想】占星術殺人事件 改訂完全版

島田荘司 / 講談社文庫
(278件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
64
117
69
10
5
  • 名作と呼ばれる所以は?

     現在の作家さん達がお書きになるミステリーや推理小説に慣れていると、かなりもどかしく感じられるかもしれません。なんせ解決しようとしている事件は、今から40年前という設定の昭和11年に起こった事件です。つまり、今更解決しても、なんら影響がなさそうなものなのです。その上、ストーリーは、ただただ謎解きに終始します。そして、その謎の解明にページの大半を費やしています。かなり理屈っぽいのです。しかも、本質に迫る部分は、犯人の手記という形になっています。
     勿論、推理小説の醍醐味である、犯人は誰か?また、トリックは?という点については、読者を引きつけますし、ラスト近くになると、作者からの挑戦状の様なページも何度か現れます。私自身は、バラバラ殺人の意図には気がつきましたけど、悔しいかな、犯人の特定には到りませんでした。
     で、普通に読めば、少々まどろっこしい、長編推理物といった印象なのですが、最後に掲載されている「改訂完全版あとがき」を読んで、なるほど、だから、本格ミステリーの祖と呼ばれているのかと、至極納得した次第です。
     江戸川乱歩から始まった探偵小説が、松本清張の社会派推理小説で、一つの頂点に達します。そこで原点回帰しようという動きも当然出てくるわけですね。
     乱歩から現在に到るまでの系譜、日本の推理小説の歴史をたどる上でも、本作品を読んだ上で、このあとがきを熟読することをオススメします。
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    投稿日:2015.10.19

  • 伝説の一作は案外読みやすくて好きです

    新本格というジャンルを開拓し、近代ミステリ作家に多大な影響を与えたという伝説の一作。
    …と聞いて読まずにはいかないでしょう。
    島田作品初読になります。
    占星術がモチーフというオカルト的雰囲気、絶対不可能な猟奇的犯罪という立ち上がり、鬱持ちで浮世離れした探偵役と近代ミステリを期待させる要素は十分で、かつ今読んでも新鮮。
    古き良き探偵ものにリーダビリティを加えた満足できる一作でした。
    ただ余りに有名が故かどこぞの漫画にトリックをパクられたらしく、それを先に読んでしまっていたのが僕の不運。
    ほろ苦い読書経験ともなりました。
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    投稿日:2014.05.25

  • 評判に違わぬ名作!

    トリックについてはいろいろあったようですが、とはいえ鮮やかで見事だと思う。
    幸い知らずに読めたし、ド直球の本格ミステリーという感じで読了後の爽快感は抜群でした!
    こんなこと自分がいうのはおこがましいが、噂通りの名作だと思う。
    また何年後かに再読してみたいが、今回のような衝撃はないんだろうなぁ。
    そういえば島田さん、これがデビュー作なんですね。すごいなぁ。
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    投稿日:2014.06.03

  • 島田荘司による本格推理の名作!

    実は名前は良く聞いていたものの、これが初見。古典といってもいいくらいの歴史を持つ作品だけに、どことなくトリックは聞いたことがあるようなないような。
    本作は40年間解かれなかった3つの殺人事件に主人公・御手洗潔が挑むというもの。御手洗の友人、石岡くんが読者をミスリードする役目を果たしてくれるので、読んでいる方も雑念が入り込んで本筋の推理を見失いそうになる。
    途中、ホームズをけなす場面など、本筋とは全く関係のない盛り上がりを見せるなど、脇道にそれる感があってやや中だるみするし、石岡くんの活躍も長々としていて途中でいやになってくる。本書は改訂新装版ということで、改訂前がどうなのかを読んでいないが、もう少し刈り込んでテンポを上げてあげるとより良い作品になったのではないかと思う。
    それにしても、不可解に見えた事件がこうもあっさりと説明がつけられるこの快感は本格推理の醍醐味ともいえる。このあたりはさすがに名作との呼び声高い作品だと思う。
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    投稿日:2014.04.12

  • 昔ミステリーにはまったきっかけの本です。

    10年以上前に誰かの勧めで手に取り、ミステリー本にはまったきっかけの本です。斜め屋敷と暗闇坂も好きです。
    このあと綾辻さんの館シリーズやもうちょっと軽快な森さんのミステリーを読み進めた記憶があります。

    序盤は占星術と文体の少し入りにくい感がありますが、名探偵のキテレツな御手洗さんと助手の石岡さんが登場すれば、ぐいぐいと引き込まれていって、作者からのトリック挑戦状で頭のなかをもう一回整理してみたり、、。デビュー作とはびっくりの名作だと思います。
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    投稿日:2015.05.10

  • 日本ミステリの輝ける傑作!

    あるミステリ漫画で本作のトリックが使われており、一時かなりの騒動になったのも懐かしいですが、それはまた別の話。
    冒頭の手記があまりに退屈で挫折する人が多いようですが、あれこそ驚愕トリックの発生源なので、がんばって乗り越えてください。
    「読者への挑戦状」が2回も付されているのは、トリックへの自信の表れでもあります。
    さあ、めくるめく本格ミステリの世界へ!
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    投稿日:2013.10.15

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  • えんがわ

    えんがわ

    このレビューはネタバレを含みます

    変わり者だが切れ者の御手洗潔と、彼に振り回される主人公の掛け合いがとても面白かったです。
    終盤では、明治村をここまで描くなら関係あるんだろう、という思い込みにしてやられました。
    普段占いには半信半疑な私ですが、この本によって西洋占星術に俄然興味が湧いてきています。

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    投稿日:2024.04.12

  • ホトケ

    ホトケ

    日本のミステリーオススメ作品で検索すると絶対ヒットする名作。
    狂ったようにしか読めないアゾート手記から始まり謎の死を遂げた画家、全国に散らばったバラバラ死体となった娘たちを始め戦前の不可解犯罪に名探偵御手洗潔が挑む!事件自体は戦前のためか長々しいくだりが怠いけどそれでも正統派ミステリーとしての価値は高いと思う。
    トリックの著作権については寡聞にして知らないが『金田一少年の事件簿』でメイントリックの剽窃がありソチラを先に読んでしまっていたのが悔やまれる。作者ならずもと読者として苦情を申し立てたいがコレについては編集者の方にも責任があるだろう。何も知らない母に勧めたところ真犯人とトリックに驚倒していたので羨ましく思った次第。
    石岡くんが迷走しているのが良い目眩しだし何より真相に気づく「お札」は秀逸。
    あとシャーロック・ホームズに対して辛辣なコメントの御手洗さんだがその鋭さは却って作者のホームズへの想いを感じた。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.08

  • 馬場豊

    馬場豊

    このレビューはネタバレを含みます

    寝る前の12時半から1時まで、コツコツ読み進めました
    今振り返ると、あの時間帯にぴったりの1冊だったと思う

    長編ミステリと言えば解決編への道筋が少し退屈なイメージもあるけど、本作は最後まで飽きなかった
    衝撃的なな情報が入ってきたり、御手洗くんのキャラクターが面白かったり、いきなり場所がかわったり、、、

    顔のない死体って聞くと明らかに怪しいのに、どうして気づかなかったんだろう?
    アゾート殺人をする動機のある人物は絞られるから、そこから導かられる所だけをずっと推理してしまった

    あと安川民雄はただの酔っ払いだったのね、、、

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    投稿日:2024.04.06

  • りんご

    りんご

    冒頭の手記で心が折れそうになりますが、是非最後まで読んでもらいたい。すべてにおいて全く隙の無い、最高のミステリーでした。

    投稿日:2024.03.31

  • べる

    べる

    このレビューはネタバレを含みます

    前半は文章が古い言葉の言い回しで読みづらかったが京都旅行のあたりから面白くなってきた。
    ホームズみがあるなとも思った。
    読者に挑戦してくる作者も面白い。
    御手洗みたいな人は苦手だなと思ったけれど最後には情が湧いてなんとも憎めない不器用な人なのだなと思う。
    謎解き解説の序盤で私もピンときてやっとトリックに気づいた。
    猟奇的な殺人犯では全くなく、非力な女性だった。
    可哀想な境遇を思うと殺人も悪いとばかりは言えないと思ってしまう。
    占星術や星の巡りについては難しく流し読みをしたけれど図解が多く分かりやすかった。
    わかってしまえばそんなに難しいトリックでもなく、まぁ普通に面白かったなと思う。
    ただ外国でも翻訳されていてかなり有名な作品だとは知らなかったので読めてよかった。

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    投稿日:2024.03.30

  • firegoby

    firegoby

    このレビューはネタバレを含みます

    絶対に読んどけっていうミステリー小説を紹介してるサイトで上位だったので読んでみた。
    中に図があり、占いとか、戦前とか、画家とか人形とか、きな臭さ満載。トリックに挑むのを楽しめるかな。重い殺人事件だけど、御手洗さん達が人間くさくて救われる。明治村のあたりは本当に無関係でなんだったのか、と拍子抜けでもある。

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    投稿日:2024.03.29

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