【感想】東京プリズン

赤坂真理 / 河出文庫
(76件のレビュー)

総合評価:

平均 3.1
5
20
20
10
8
  • 日本の近代史の身体感覚としての理解

    著者自身の体験をベースにした物語。日本の中学を卒業して米国の高校に進学した彼女は、高校の進級のために与えられた課題として日本の近代史に取り組むうち、日本ではずっと曖昧にされてきた日本という国のあり方、戦後の日米関係、そして天皇という存在について、否応なく対峙することになる。

    キーとなる母親との会話が物語を進める。現実世界をベースにしているようでありながら、しばしば彼女の意識は夢の中にあり、時間、空間、さらには個体をも超えてさまよう。その描写は精緻にして幻想的。時に懐かしく、時に痛々しい。その懐かしさ、痛々しさが、日本の近代史、もっとはっきり言えば天皇のあり方の身体感覚としての理解に収斂して行く。その過程に震撼した。
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    投稿日:2015.09.01

  • ヘビーでした

    女子高生がホームステイ先のアメリカの高校で「東京裁判」をテーマにしたディベートをさせられるという、リアルでもファンタジーでも辛かろうストーリー。それに、現実だか夢だかSFだか分からんあれこれが重層し、村上春樹的なリトルピープルまでが登場し、311の津波と原発事故にまで言及する。時空を超越した大作でした。続きを読む

    投稿日:2013.09.26

  • 小説らしい小説

    日本にとって戦後とは何だったのか、また天皇は日本人にとってどういった存在なのかといった微妙なテーマを正面から取り上げた小説。
    中盤以降、現実と夢、過去と現在が渾然と入り乱れて描かれるため、かなり読み辛かったが、ラスト近くの東京裁判を模したディベートの場面は緊迫感に溢れ、なかなか面白かった。
    登場する様々なキャラクターは結局何のメタファーだったのか等々、読後も気になる点が多く、久しぶりに小説らしい小説を読んだ気がする。
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    投稿日:2013.10.05

  • K-1小説

    大きく、容易には規定しがたいようなテーマに正面からぶつかり、とにもかくにもガチでテーマと戦っている。途中から戦い方がスピリチュアルになってきて読んでいて辛くなるが、しかし逃げも隠れもせず死力を尽くす感じには、知性以外に並々ならぬ根性を感じる。
    生きかたが半端な人間は是非襟を正して読むべき作品。ただ、ちょっとわかりにくい。
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    投稿日:2015.03.23

ブクログレビュー

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  • 本丸

    本丸

    このレビューはネタバレを含みます

    テーマに興味があり購入しました 出だしは面白くて土地勘もあり面白かったのですが幻想的なところやエピソードは苦手な部類で最後までたどり着けづ辞めました

    後半だけ読もうかとも思いましたが、それも断念

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    投稿日:2023.11.23

  • Sachi

    Sachi

    アメリカの地で、『日本の天皇には第二次世界大戦の戦争責任がある』という議題でディベートすることになったら、どう議論を展開させていきますか。

    天皇制や東京裁判、アメリカの歴史など、もっといろんなことを勉強し、もっとちゃんと考えておかなくちゃと痛切に思いました。

    こんなにスピリチュアルな作品だとは思ってなかったので面食らいましたが、日本人としてのアイデンティティを改めて考えるきっかけを与えてくれました。

    私は日本人で良かったと、心から思うのでありました。
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    投稿日:2023.11.16

  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    「太平洋戦争では多くの日本人が天皇のために戦い、死んでいった。国の「元首」は天皇だった。戦争の終結を決めたのも昭和天皇だ。だがその天皇が、戦争犯罪を裁く東京裁判の法廷に立つことは無かった。ーなぜかー。
     主人公は15歳の少女、マリ。留学したアメリカの学校で、天皇の戦争責任を論じなけれればならないはめにおちいる。「天皇は戦争犯罪人である」という論題にイエスとノーの立場で論を戦わせるのだ。
     この国の「戦後」とは何だったのか。読者は問いをのど元に突きつけられる。」
    (『いつか君に出会ってほしい本』田村文著 の紹介より)
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    投稿日:2023.11.01

  • こまる

    こまる

    若い娘にこういう事を聞くのはかなりむちゃだなあ…と思いました。
    私も同じ年頃に聞かれたらわからなかったと思う…。

    投稿日:2023.07.07

  • ブタノフ

    ブタノフ

    このレビューはネタバレを含みます

    R5.4.19~5.23

    (きっかけ)
    ・ブックオフで100円
    ・「天皇の戦争責任」がテーマの小説って面白そう

    (感想)
    ・抽象的な表現が多すぎて少し苦手でした。
    ・主人公とそれを構成する登場人物たちが、戦争責任や天皇の立ち位置などについて学び成長していくのだが、ここに描かれるほど、日本人は分かっていないものだろうか。と疑問。
    ・「ゴーマニズム宣言 戦争論」が流行る以前の日本はもしかするとこういう人が多かったのかなという印象はあるが、それにしても戦争について深掘りした名作は数々あり、多くの日本人はもっと理解しているように思う。

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    投稿日:2023.05.23

  • 43street

    43street

    いやぁ、難しい本だった。
    なもんだから、すごく時間がかかってしまった。
    いわゆる文藝作品であり、物語小説ではないので書いてある事がちんぷんかんぷんなのだ。

    内容はアメリカに留学した16歳の少女が、授業の一環で「天皇の戦争責任」を題材にしたディベートに参加するするという内容。

    そもそも日本の社会科教育では、昭和史はほとんど勉強していない。
    私自信もそうだし、今でもそうでしょ。
    そんな少女がアメリカに留学してきた訳だから、日本人はそこんとこどう考えてるんだ?と興味が沸くのも解る。
    しかし、日本人は知らないんだなぁ。。。。
    で、必死に勉強する訳ですが、まあ解らない。
    日本人の誰もがわからない事なんですから。

    東京裁判とか日本国憲法とか。
    それらはすべて英語。
    英語を訳して、日本国憲法が出来てるわけだから、そんなの成立する訳ないのであって・・・

    例えば天皇は「Emperor」と訳されてるけど、外人が感じるヨーロッパの君主としての「Emperor」と天皇は本来違うでしょ。
    また、天皇に関しては、例えば「人間宣言」のくだりでは日本人さえわからない日本語が使われてて、それを英語に訳してアメリカ人(すなわち戦勝国)が理解しようとしてるし。

    わかりやすい所で言えば、A級戦犯。
    ほとんどの人が「rankA」と思ってるけど、元々は「classA」が訳されて「A級戦犯」になっちゃって、それが誤解を招いてるし、そういう事がいっぱいある訳ですよ。

    私もまだまだ解らない事だらけで、その辺の事を少しでも知りたいなぁと思ってこの本を手にしたわけだが、ますます解らなくなってしまった。

    ただし、解らない事さえ解らない人達は日本の事を論じてはいけないと感じます。
    憲法守れ!とか言ってる連中・・・
    それちょっと違うでしょ。
    平和を守れ!なら百歩譲って理解しても良いけどね。
    日本国憲法はもともと英語なんだから、英語で理解した上で「憲法守れ!」って言ってる?

    その辺の事を考えさせられる本でした。
    ただし、最初にも書きましたが、文章が凄く難しいです。
    覚悟してください。
    この本の後では、村上春樹だって簡単な文章に感じると思います。
    続きを読む

    投稿日:2023.03.30

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