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渡辺一史 / 文春文庫 (108件のレビュー)
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総合評価:
ペンギンず
7
おもしろいタイトルだが非常に中身の濃いノンフィクション。
筋ジストロフィーにより寝たきり、動くのは指先が少しという重度身体障害者である鹿野靖明氏と、彼を支えるボランティア達、そして介護・福祉に関わる今日の問題点を伝える著者・渡辺一史氏による渾身のノンフィクシ…ョン。 おもしろい。 何がおもしろいかというと、鹿野氏の強烈なキャラクター。自らが「生きる」ためにボランティアたちを集め、教育し、時には「帰れ!」と怒鳴る。そこに一般の人間が抱く、「介護をしてもらう」という障害者像はない。普通は入院してケアを受けるべきところを自宅で暮らし、人工呼吸器をつけた状態での発声を可能にした鹿野氏のパワーに圧倒される。 そしてボランティア達。本書は鹿野氏だけにとどまらず、彼の生活をサポートしてきた通称「鹿ボラ」の活動・心情に大きく内容を割いている。鹿野氏と彼らは「介助ノート」と呼ばれる交換日記的なノートによって意見を交換し、それを元に著者が個々のボランティアにインタビュー。そのことによって名も無きボランティアではなく、一人の人間としての彼らの人生が浮かび上がり、非常に興味深い。 24時間の介助を必要とするということ。そのために全てをさらけ出すということ。障害者が自立するということ。ボランティアをするということ。何故鹿野邸に集うかということ。そして生きるということ。こう書くととても重たいテーマだが、誤解を恐れずに書くと鹿野氏のキャラクターによってとても楽しく読める。気楽に読み始めてOK、そして一気読み必至。「生きる」ことの意味を考えさせられる素晴らしいノンフィクション。続きを読む
投稿日:2014.11.22
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Reader Store オフィシャル
3
人間と人間のぶつかり合い
「進行性筋ジストロフィー」という障害を抱える鹿野靖明。 本書は、彼と周りのボランティアたちとのやり取りや生活を、ライターの渡辺一史がまとめ上げた1冊です。 このようなテーマだと、いわゆる"障害者とボ…ランティアの間に生まれる暖かい絆”というイメージを抱きがちですが、ここでは驚くほどヒリヒリとした、人間同士のぶつかり合いによるコミュニケーションが描かれます。 鹿野は、ボランティアに遠慮しません。 ジュースが飲みたい、テレビが見たい、しまいにはもらったプレゼントが気に入らずもっといいのと交換してきて、と言い出す始末。 そこには、僕たちが想像しがちな控えめな世話をしてもらっているというだけの障害者はいません。 “あつかましい”鹿野の行動に始めは少し反発を覚えるものの、読み進めていく内にこれが”普通の人間”の姿だと気づいていきます。 そして、ボランティアもひとりの人間。喫煙したがる鹿野にタバコを吸わせる人もいれば、体に悪いからとタバコを渡さず、鹿野と言い合いを繰り広げる人も。 人に支えられて、人を支えて生きていくとはどういうことなのか。 徹底的な生臭さと一緒に、その問いに真正面からぶち当たっていきます。続きを読む
投稿日:2015.01.30
naotan
1
当たり前を手に入れる
人口呼吸器と24時間の介護なしでは息をすることすらままならない――そんな重度の障害を背負いながら、生涯必要とされていた入院生活を抜け出し、自活の道へと歩み出す。本書は「当たり前の生活」を手に入れたいと…強く願った障害者・鹿野氏の生活と、彼の周りに集まった多数のボランティアを取材したルポタージュです。 とにかく鹿野氏の強烈な個性に圧倒されつつも、障害があるからといって特別扱いはせず、共に笑い、悩み、怒り、時にはケンカもしながら生きてゆく。そんな彼らがまぶしく見えました。 本書を読んでいて思い出したのは、同じように対等な障害者と介護者の関係を描いた映画『最強のふたり』。こちらもおススメです。続きを読む
投稿日:2015.01.23
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ISSP Library
物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。 東大OPACには登録されていません。 貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください 返却:物性研図書室へ返却してください
投稿日:2024.02.09
ただよし
小説とは違って、ノンフィクションは読むのに時間がかかる。生き生きと書かれていて面白い分、読む間、その人の人生や事件が重くのし掛かってくる感じ。今回もそう。 鹿野氏を始め、いちごの会、鹿ボラの行動力のあ…る登場人物たちに驚く。悩んでるけど常に動いていて、とてもギラギラ(あくまでもキラキラではなくギラギラ。)していて優しくて。 羨ましくもあり、私にはできないなぁとも思ってしまって。。読み終わったあと、どっと疲れてしまった。続きを読む
投稿日:2024.01.11
chika-books
衝撃的な本でした。実体験にもとづいたありのままの内容に、読んでいるこっちが冷や冷やするようなこともありました。現場で体験した人にしか分からない世界がそこにはあって、すごく勉強になりました。 ただ、映画…のポスターを見かけたことがあったので、ご本人の写真が載っているのに、大泉洋さんしかイメージできず困りました。続きを読む
投稿日:2023.08.23
はるた
2007年09月17日 19:14 どうしてもこういった本は、お涙頂戴になりがちな傾向にあるが本書は全くもってそうではない。 まず、作者が鹿野氏自身ではなく、フリーライター渡辺氏だということに一目置…きたい。 作者自身、鹿野氏のボランティアに入り、他のボランティアに徹底的に取材し、ボランティア達が思っていることを書き綴ったところが良い。 また、鹿野氏のわがままとも言わざるを得ない性格がにじみ出ているところも、この本の良いところなのかもしれない。 ただ、いきなり鹿野氏の過去の話になって、小山内氏や「いちご会」が出てきたところなどは困惑する人もいるだろうし、全体的に少し長すぎる。 特にこの過去の部分なんかは削っても良いところがあるような気がした。 後日、この本に感銘を受けた僕は、作者の渡辺氏にメールを出したところ、 お忙しいのにも関わらず丁寧なお返事をいただきました。続きを読む
投稿日:2023.06.25
ぷーさん
このレビューはネタバレを含みます
これまで、「障害者」と触れ合う機会がなかった私にとって、いい意味で固定観念が覆される本であったと感じた。 鹿野さんのボランティア(鹿ボラ)として働く人々にもその人たちなりの悩みがあり、いわゆる健常者と障害者が密接に関わるシカノ邸は様々な葛藤や価値観のすれ違いが生じながらも精神的にも身体的にも他のどこよりも"前進"ができる場所であったと確信できた。人によって"普通"の基準は異なるが、障害者と健常者の間のそれは著しく異なる。鹿ボラの1人である斎藤さんはその"普通"境界を均すことが障害者を理解するということであるとした。長年ボランティアとして鹿野さんを支えてきた者でもそれを理解するだけでも長い年月を要してきたのに、ベテランと新米の入れ替わりが激しいこの地でのすれ違いを阻止する術はない。 ボランティアとして取り上げてきた幾人の人々の中でも考え方が異なる。国枝さんと斎藤さんがその両極端に位置するならば、その間にそれぞれのボランティアの考え方があるというのには強く同感した。 障害者を神聖な者として扱ったり捉えたりする人は少なくない。現に私もそう捉えてきた人の1人である。遠藤さんにはその考え方がなく常に鹿野さんを1人の人として付き合ってきた。例えば、鹿野さんが口にするわがままを全て受け止めずに拒否をする時は拒否をする。こうした遠藤さんらの態度は鹿野さんにとっても嬉しいものなのではないか。これまで健常者が享受してきた一般的な教育を受けてこなかった障害者にとって、どこでどのように自分の気持ちを制するのか、どこでこのように接すると人間関係が上手くいくという私たちにとってのいわゆる"普通"は通じない。それをどこまで教えるのかというラインは非常に難しいものであるが、壁を感じさせないようにする試みは必ずしなければならないものではないか。 思いのままに綴ったが文章がまとまらないので、推敲はまた別の機会にしようと思う。
投稿日:2023.03.15
どんぐり
壮絶な生き様だと思った そういう人生を選んで生まれてきて、他人の心を美しくするために生まれてきたような人 私にはそんな感じがするけど、美化してはいけないと、シカボラのメンバーさんが言っていたのでそうなのかなぁ 著者のあとがきにも、堂々めぐりと書かれていたけど、けっこう堂々めぐりだなーとは思いながら読んだ 実際答えがなくて、重度身体障害者福祉の考え方や社会としてのあり方、人としてどう生きるか、人としての主体性をどこに保つか、など考えはじめたら、無数の答えがあると思う だからノンフィクションとはいえいろいろ堂々めぐりだった 知らないことだらけど、普通に知ることからはじめればいいのだと思う 知らせないから、海外のようになれない日本がいるのではないかとも思う 本人も、家族も、知らせて助けを求めて、そして助け合っていけたらいいなと思う きれいごとみたいだけど 鹿野さんの生き様通り、そんなに日本人は悪い人たちではないと感じるから 最後まさか旅立つと思っていなかったからだいぶ泣いてしまった ボコボコにされただろうと思うけど会ってみたかった
投稿日:2023.03.01
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