【感想】ヤマケイ文庫 新編 単独行

加藤文太郎 / 山と溪谷社
(15件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
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  • 不死身と呼ばれた男

    戦前の日本では、登山は気軽に行ける庶民のものではなく、
    山岳ガイドを雇い登る高級なスポーツのようなものでした。

    裕福な限られた人々だけのものだった登山界に、ヒマラヤ征服の夢を秘め、
    社会人登山家としての道を開拓したのが、地下足袋を履き単独で登る“不死身”の加藤文太郎です。

    日本アルプスを単独行で次々と攻め、一躍有名になった文太郎でしたが、
    1936年の槍ヶ岳北鎌尾根への登山で猛吹雪に遭いわずか30歳で生涯を閉じました。

    新田次郎の『孤高の人』、そしてそれを原案としたマンガ『孤高の人』によって、その存在を知った人も多いかもしれません。

    自身の手で書かれた本書の彼は、単独行ばかりの孤独な人とという側面だけでなく暖かな交流も描かれます。

    素朴な彼の生活を含めた生き方から、苛烈な死と隣り合わせの単独行まで。その振り幅すべてが加藤文太郎なのです。
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    投稿日:2014.10.16

  • 孤高の人≠単独行者

    「単独行」を読んだのは40年近く前になります。新田次郎の「孤高の人」を読んで、こんなにすごい人がいたのかと、昭和52年第2版(だったと思う)「単独行」を買い求めました。その後、自分なりに作った加藤文太郎像を持っていましたが、昨年に偶然「単独行者」を読んで、考えが少し変わりました。この時、「単独行」の新編が出たと知り、最初は買う気が無かったのですが、加藤花子氏の追悼文が入っていることを知り、購入しました。この文は、35回忌の年とあったので、昭和46年に書かれたのではないでしょうか。でもその中には、本当に昨日のように加藤文太郎氏との思い出が描かれていて、心が動きました。そしてこの中のエピソードは新田次郎氏に伝えられていて、小説に使われたことは容易にわかります。これだけでも購入した意義がありました。
    もちろん、他の解説なども、加藤氏と吉田富久氏のことをよく知る解説が入っており、なかなか良かったと思います。
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    投稿日:2017.02.25

  • 素顔に触れる

    本作は、無料の「青空文庫」でも読めますが、原文は、なにぶん昭和10年頃までに書かれた古いものですし、このヤマケイ版には編者・福島功夫氏の詳細な解説や編注も加えられているので、お金を払ってもこっちを読んだ方がいいと思います。
    「不死身の加藤」という通り名、新田次郎の「孤高の人」のタイトル、伝説的な登攀記録を残し、わずか30才で山に死すという劇的な生涯……。それらのイメージは、本書を初めて読む人は、いったん捨て去った方がいいかもしれません。たぶん加藤文太郎は、山に出会うまでは、己の生き方も、生かす場所も分からなかった人物。そんな男が、山に生き場所を見つけ、次第に逞しく変わっていく様が、みずみずしい描写から感じられる一冊です。
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    投稿日:2019.10.17

ブクログレビュー

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  • おおきに!(smoneyb)

    おおきに!(smoneyb)

    孤高の登山家 加藤文太郎の山行記、遺稿集。

    おそらく、山をやる方が読むと、よりリアルに内容が伝わってくるのだと思うが、あいにく私は山をやらない。

    しかし、昭和の初めに、こんなにもガッツリと山に取り組んでいた登山家がいたということは伝わってきた。続きを読む

    投稿日:2023.03.20

  • FT

    FT

    そろそろ100年前にもなろうという20世紀初めに、厳冬の北アルプスなどを単独で縦横無尽に駆け巡った登山家、加藤文太郎。
    もちろん通信機器などなく、装備品の質も今とは比べるべくもない当時のこと、これだけで常人には及びもつかない離れ業であり、さらに記録によると、その速度たるやまた尋常ではない。
    さしずめ現代で言うならば、UTMFやTJARで活躍するトップトレイルランナーといった具合か。

    本書は、加藤氏自身による山行の記述の他、親しい人が見た加藤氏の在りし日の姿が織り交ぜられたものだが、興味深いのは、他者が語る加藤氏のイメージと、本人が綴る文章との間に小さからぬギャップが見られること。
    特に活動期前半の著述にはそれが顕著に感じられるが、他から見ればまったくもって超人的な脚力と胆力、そして生命力を持った卓越した山男という像である一方、自身の表現はどこまでも謙虚、控えめであり、どこにもでいそうな山歩きを愛する平凡な男…という印象を受けてしまう。
    よくよく精読すると、常識からかけ離れた、シヴィアな条件下における長距離かつ短時間の縦走記録が、なんでもないことのようにさらりと書かれていたりするが…!
    ただ、表現は謙虚でありながらも、心根の芯の部分は非常に強靭であり、特に単独で山岳を往くことに関しては人後に落ちぬという揺るぎない自負を抱いていたであろうこともまた、彼の文章からは窺い知ることができる。
    単独行こそが至上である、というピュアで狂信的なポリシーに従っていたわけでは決してなく、むしろ他人と交わりたいのだけれどもそれがスムーズにいかない…といった複雑な心情すら読者に想像させる吐露はまさしく、"単独行の文学"であろう。
    また、加藤氏は当時から高名な登山家でありながら、本職は企業に所属する勤め人であり、上司に気を遣いつつ限られた休暇を駆使して山行に宛がう苦心は、サラリーマンの悲哀でもある。
    まさに生き急ぐかのように20代のうちに数々の偉業を成し遂げ、最期は31歳の若さで、槍の北鎌尾根で生涯を閉じることになるが、今生の別れとなった山行は、単独行ではなかった。

    加藤文太郎氏の記録としては無論だが、残された夫人を始めとする身近な人たちによる解説、後記にとても価値がある、そんな編著であるように思う。
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    投稿日:2022.08.28

  • ゾウガメ

    ゾウガメ

    一章読んだけど合わなかった
    偉業を遂げた人なんだとは思うけど無謀と紙一重と言ってしまえばそれっきりだと思う
    自虐的な書き方も笑えなくてむしろ哀れんでしまった

    投稿日:2022.04.23

  • captain

    captain

    読了後、タイトル「単独行」の重さに唖然とする。孤独と生きた男の軌跡。山には弱さを持って入り、引き換えに剛と柔を得るのか。

    投稿日:2019.02.06

  • razy.c

    razy.c

    単独登山者「加藤文太郎」の遺稿集

    決して 面白い本じゃないです
    でも 登山が好きな人 特に日本アルプスを登った人は 文太郎が登ったところが目に浮かんでくると思うので 面白く読めるのではないでしょうか
    (自分は登ったことがないので まったく分かりませんでした ^_^;)

    ただ 文章が古いので 多少 読みづらいのは 否めないです ^_^;

    よほど 興味がなければ 読めないと思います
    興味がある方は ぜひ 読んでみてください ^_^
    続きを読む

    投稿日:2019.02.05

  • saga-ref

    saga-ref

    『孤高の人』を読了後に積読。そして植村直己『青春を山に賭けて』を読んで本書を読みたいと気持ちが昂った。登山を趣味とすることなく、なので日本アルプスには詳しくはないので、加藤の山行の凄さは実感できないが、単独行者としての凄みは感じられた。彼が山を征服するということに言及する文章に、その後の遭難を想いを馳せてしまう。現代に比べて装備の貧弱な時代に、冬山を次々に縦走していく加藤。しかし、彼の記録でも思いもよらないビバークや雪庇を踏み抜いて滑落という経験をしている。新妻や幼子を残して遭難死してしまった加藤の無念は如何許りか!続きを読む

    投稿日:2017.12.30

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