
亜人ちゃんは語りたい(3)
ペトス
ヤングマガジン サード
夢魔の社会適合のために結婚を促すってそれはなんていうパラダイス
亜人ちゃんの等身大の悩みと高橋先生の教育者、研究者としての真摯な考察が、世界のディティールを象っている。 土台が盛大にフィクションなのに、キャラクターも悩みも日常もそこにあるかのようなリアリティが素晴らしい。 if世界をガチで考えたり解き明かしたりするのはとても楽しいです。異種間社会があれば、こんな風かもしれません。 しかし、地味なサキュバスって実はエロい地味子みたいな感じですね。 実際は、無意識の”チャーム”で魅了されたものが真実の愛かどうかで悩む純情夢魔。かわいい。心底。
8投稿日: 2016.04.11
SOUL CATCHER(S) 11
神海英雄
少年ジャンプ+
漫画で吹奏楽を。吹奏楽でバトルを。
心が見える主人公の、指揮者としての目的と救済。 チーム競技の全体感、バラバラだったメンバーがまとまっていく感覚。 漫画上での音楽表現、能力者じみたバトル描写に加え、本来ターン制のコンテストに同時進行描写を盛り込んだ演出。 図らずとも連載舞台までもがチャレンジングになった(WJ⇒NEXT⇒J+)本作は、一貫してチャレンジ精神に溢れていたと思います。 育て上げたキャラを一気に収束させるカタルシスも、チーム競技、吹奏楽の醍醐味を表現していてよかったです。 「LIGHT WING」ラストのドライヴ感もある種、趣がありましたが、打ち切りでなければこういうことがしたかったんだなと感じました。 伝えたいこと描きたいものを見定め、掲載場所が変わってもじっくりと、最後まで描き切った神海作品を読み終えたとき、グッとくるものがありました。 次回作、また期待したいです!
4投稿日: 2016.04.11
吸血鬼すぐ死ぬ 1
盆ノ木至
週刊少年チャンピオン
dust to dust! (one more set!!)
タイトルが全てで吸血鬼がすぐ死ぬマンガ。 真祖にして無敵の吸血鬼・ドラルクが、刺されて死んだりこけて死んだり驚いて死んですぐ復活する事がギャグのテンプレートのはずなのですが、日常的に死に過ぎてだんだんギャグにもならなくなってくる点が脅威。 「死ぬ」というか塵になるだけでその後すぐ復活するので死んでる感覚が希薄になるのもやむなしか。 それを前提に踏まえたうえで、(つまらなさで自分が)死なないようにクソゲーレビューするなど、ギャグの次のステージにもう進んでいるのでそこに注目したいです。
4投稿日: 2016.03.04
翔んで埼玉
魔夜峰央
花とゆめ
3話完結 1話108円
まず、「埼玉」という響きの面白さを称賛したい。 書いても面白いし、口にしても面白いし、ひらがなにしてもカタカナにしてもキャラ名にしても面白いなんていう実地名なんてそうはないと思う。 彩の国なんていうおしゃれな二つ名つけても絶妙のギャップを生むしで、そのポテンシャルたるや他の追随を許さない力がある。 「魔都」を冠したとしてしっくりくるのは、西の名古屋に東のサイタマ。「ネオ」とか「ニュー」を付けてもハマる。 そりゃあニンジャスレイヤーにだって起用されるだろう。とにかく得体の知れない奥深さがある。 本編は、魔夜峰央ことみーちゃんが、古典をベースに得意の落語でアレンジし、その舞台を埼玉に添えた快作です。 落語でいうチャーザー村だとか大字小字谷間村のポジションにもすっぽりハマって仕事をする埼玉すごい。 そしてその組み合わせを考えたみーちゃんは自己評価通り天才です。タイトルもちょっとすごい。 それにしても、紙版はこのマンガがすごいcomicsから出てて電子版は白泉社てのは若干謎ですね。
16投稿日: 2016.03.01
銀河英雄伝説 1
田中芳樹,藤崎竜
週刊ヤングジャンプ
銀河のマンガがまた1ページ
田中芳樹原作のスペースオペラ・銀河英雄伝説が、藤崎竜によってコミカライズ化! 藤崎竜と言えば、オリジナルにしろ原作付きにしろどこか独特の透明感とリズムが特徴の漫画家さんであり、キャラクターもどこか記号的な雰囲気があるのですが、それが魅力的なキャスト溢れる銀英伝でどう展開されるのかが気になるところでしたが、なるほど藤崎作品だな、という感じでした。 この1巻では、ラインハルトとキルヒアイスの出会いとその取り巻く世界感、そして二人の志が芽生える経緯を主にキルヒアイス視点で描かれます。 自由惑星同盟のヤン側の描写は1巻ではほぼありませんでしたが、ヤンもユリアン視点で描かれるようなので、楽しみです。 1巻はカプチェランカまで。大河形式で描かれるとのことなので、外伝・本伝入り混じってのストーリー構成のようです。 気になるのはラインハルトが既に佐官になっている点。艦これかYO。艦隊戦までまっしぐらな予感がします。
6投稿日: 2016.02.25
有害都市 下
筒井哲也
となりのヤングジャンプ
”可能性”という曖昧ななにかで動く、正義・正論という名のプレス機
正直、オチは意表を突かれた。 危機感の煽り方としては相当なものだったように思う。 投げかけられたのは我々自身だ。 有害図書。有害作家。害とはなんなのか。 創作を、創作物を愛する人は是非読んでみて欲しい。 すでに現状としてレールに乗っているようにも感じた。この先は一本道なんだろうか。 意見としてどちらが善悪というわけではないけれど、現在進行形として危機感を感じる人がいることを願わずにはいられません。
4投稿日: 2016.02.10
有害都市 上
筒井哲也
ジャンプ改
この話はちょっと未来?フィクション?いや…
表現規制について、今よりちょっと明確なレッドカードがある世界で、若手漫画家が抗い苦悩するお話です。 面白ければ何やってもいい、なんていうようなことは思わないけど、創作物を愛する一人として表現者の苦悩には畏敬の念を抱いております。 ほんの些細な規制であっても、発行の責任を負う出版元はそれを意識し、明確なラインはなくても安全であろうを想定し作家にそれを促す。 全部が全部そうではないと思いますが、そういった「傾向」が産まれるのは必然で、この”流れ”自体に作家さんたちは危機感を感じています。 倫理感や正論に根差す問題であればあるほど、民主主義はほんとうの正しさとは違う方向を向くこともある側面があります。 曖昧なものをYES/NOで両断すると、感じている肌感覚と違う結果が出たりするのはよくあること。どちらが真実なのか。 エンタメなんて、なくなってもだれも死なない。所詮娯楽なのかもしれないけれど、少なくとも自分の人生の彩りはひどく色褪せるに違いない。 2015年の話題作です。
5投稿日: 2016.02.10
トクサツガガガ(5)
丹羽庭
ビッグスピリッツ
特撮脳は本当に爆発なのか
日々のトラブルを、大人の特撮視点から解析するマンガ、それがトクサツガガガ。 一般人との視点の違い、子どもとの視点の違い、幾多のカルチャーギャップを超えた先にある理解が、人の距離を縮めてくれる。 生きにくいと感じたあなたにこの一冊。 ------------------------------------------------------- 「当たり前」と思い込むと道はすぐに行き止まりになってしまう。 違う世界を認識した時、二つの世界をつなぐ、道が見つかる ------------------------------------------------------- なにげに育児漫画でもある気がします。
4投稿日: 2016.02.10
左門くんはサモナー 1
沼駿
週刊少年ジャンプ
悪魔召喚士と天使少女のギャグコメディ
モノアイっ娘でギャグコメをするという「モロモノの事情」にて誌面デビュー、からのWJ新連載「左門くんはサモナー」。 内容はというと、悪魔召喚術を使う左門くんと天使と称される天使ヶ原さん(以下てっしー)で織りなされるギャグコメディ。 召喚士である点を隠すわけでもなく、1話の自己紹介でカミングアウトし、ストーリー面の制約を外してゆるみを作り、ギャグの切れ味を研ぐのはいいと思います。 左門くんがアンチてっしーなのは召喚士という立場が関係した人間観がありそうですが、ぱっと見はかわいい女の子を意味なくいびる嫌な奴に見えるのでジャンプという土壌ではどうかなと心配するところです。 ネウロのような認め合う展開が想定されますが、異種族でもなく独自の価値観を持っているという描写もはっきり展開されてないので、想像力補完がないと嫌がる人はでそう。 絵はわかりやすく、線も濃淡くっきり。セリフの掛け合いも軽快でとても読みやすい漫画。 個性的なキャラが増えるにつれて、厚みを増していくと思います。ジャンプ誌上ではベヒモス先輩がもはや準レギュラー。 これが残るかどうかでジャンプ土壌の性質の一端が見えそうです。 リリエンタールもあれだけの出来でありながらジャンプの土では育ちませんでした。はてさて。 作者の沼先生はニコマス界隈で名をはせたPのお一人で、そのテンポや切れ味はこのころから健在です。
3投稿日: 2016.01.22
夜見の国から~残虐村綺譚~上
池辺かつみ
漫画ゴラク
津山三十人殺しコミカライズ
書誌説明にもある通り、本作は日本事件史に名を刻む「津山事件」のコミカライズである。 戦時中とはいえ20世紀、世代的にもそれほど隔たりを感じない時代でありながら、その時代背景、価値観は現代とは大分違う。 wikiの情報では測りかねる時代背景、風習を踏まえた心情描写が本作の肝で、推察ではあろうが、主人公・都居睦男の心がどう動き、行動に駆り立てていったかが描かれている。 事件史の中でも伝説化した理由のひとつに睦男のビジュアルがあるであろうが、懐中電灯を頭につけ、日本刀、散弾銃で武装という出で立ちは本作でも健在。 凄惨、というよりは風土、民俗、精神世界の描写が強く、wikiのように事件部分だけではないので狂気や残酷さはそれほどでないと思います。コミカライズものとしては貴重な一作です。
7投稿日: 2016.01.13
