
死刑執行人サンソン――国王ルイ十六世の首を刎ねた男
安達正勝
集英社新書
イノサンで再注目
ジョジョ第七部SBRのジャイロ・ツェペリのモデルともなった、シャルル-アンリ・サンソンの物語。 最近ではYJ連載中のイノサンでも注目されています。 死刑執行人という、現代先進国において馴染みのない職業について、時代背景や宗教、倫理感が併せて解説されており、また”尊厳ある死”を確実に、安らかにもらたす発明がその意図を変えシステムとなっていくさまは興味深いです。 なのですが、前半は人物像の解析であったのに、後半のほうが死刑制度廃止に対する著者自身の主張となっており、これが甚だ残念でした。
4投稿日: 2015.10.01
ワールドトリガー 12
葦原大介
週刊少年ジャンプ
諏訪隊の作戦室に押しかけ隊
病弱な深窓の令嬢はトリオン体を得て、高機動砲台と化しました。それなんてアバター?4対1なのに屠りまくる那須さんステキ。こさじは那須隊推しであります。 橋爆破用のメテオラを即興でトラップにしたり弾幕にしたりする応変さに伸びしろを感じましたね。伸びしろ。 茜ちゃんの抜けた穴を埋める新人追加、茜ちゃん自身が成長して戻ってくる まであり、想像が尽きません。 いよいよB級上位戦。なかなかの戦力だったろう?、と思わせるB級中位組が乗り越えられない壁は確かに存在しました。 訳ありのA級崩れが犇めくB級上位で、玉狛第二は遠征チームに選出されるA級まで上がれるのか。 このB級ランク戦で闘ってもいないA級組の株がダダ上がり中。遊真にしてやられた三輪隊や勝ってない印象の風間隊、宣伝色の強い嵐山隊など、オメーらホントにツエーのかチクショーッ的なチームの実力が相対的に感じとれて素晴らしい。 特に嵐山隊は、特別なサイドエフェクト、スペシャルなトリガーなど(今のところ)ナシの、通常火器を使いこなす兵士チームというアイドル面とはかけ離れた玄人面が表れてきており興奮冷めやらない次第。 だからこそ広報面として露出しているのかなと。特殊なサイドエフェクトがないとボーダーに入れない印象持たれるといけないものね。よくできてます。 追加ページに載っていたチーム構成のネタが尽きたのか、各チームの作戦室設定が公開されました。特色も出ており、部室を覗いているようで興味深いです。 諏訪隊の作戦室が実に居心地よさそうで押しかけたい。太刀川さん冬島さん東さんが夜な夜な来るとか楽しそうすぎる。ちょっと煙たそうだけども。
2投稿日: 2015.09.07
亜人ちゃんは語りたい(2)
ペトス
ヤングマガジン サード
亜人ちゃんはかわいいのだ
女子高生のお悩みを、教師が懇切丁寧に解決していくお話し2巻。 ややもすれば、高橋先生のお悩み相談は、ただの亜人興味による研究の一環ととれなくもなかった問題にカッチリとしたアンサーが出されて読者側も落ち着いたというか、結果論からいうと、高橋先生のハーレム体質に説得力が増して、彼なら仕方ないね感の域に到達した。デレマス武内Pスタイル的な。 ルーツ(特質)を理解して謎(悩み)を解く、というのは、ダンジョン飯に近いものがあります。 正直、タイトル、著者名の調子から「ああ、ラノベのコミカライズくずれかな」と最初思っていたのですが、そんな私の固定概念など素晴らしい1話でひっくり返し、見事にヤンマガサードの看板とも言えるタイトルになりましたね。今後も楽しみであります。
6投稿日: 2015.09.07
荒木飛呂彦の漫画術【帯カラーイラスト付】
荒木飛呂彦
集英社新書
「感謝」と「地図」を
表現の心構えから物語の構造論など、ご自身の作品をサンプルにわかりやすく解説されていて、作劇のハウツーになったり、また枠組みにはあまり興味のなかった人にも関心を持たせるような内容です。 一見ハウツー本なのかと思いますが、この書籍に書かれていることは、荒木先生が執筆25周年を迎えた頃より、各地で行われた講演会やテレビなどでファンに向けて発信されていたメッセージの集大成ともいえるものとなっています。 そもそも講演会などに登壇しメッセージを発信するようになったのも、節目を迎えて振り返り、作品だけでなく直に感謝を伝えたいという気持ちになったからだと仰られておられました。 この本もまた、初代の担当編集・椛島さんが定年退職を迎え、その感謝を示すために二人で作り始めてきたものを形にしたいと思われたからだそうです。 そんなこの本はとてつもないお宝にも見えるのですが、同時に奇妙な寂しさを感じずにはいられません。 荒木作品を胸に抱く者にとっては、その意味も為すべきことももうわかっているはずです。 より前に一歩を踏み出すために。 これまでの道を肯定していただけたからこそ、この先の道も見えています。見えるはず。 聖書に星を付けるとかナンセンスなことはしたくないのですが、★8。 紙書籍を購入していましたが、いつも持ち歩いていたのでヨレヨレです。 電子書籍で買い直し。帯の露伴&荒木先生のイラスト画像がページで入っていました。ご参考までに。
6投稿日: 2015.08.04
大斬―オオギリ― 西尾維新原作読切集
西尾維新,暁月あきら,小畑健,池田晃久,福島鉄平,山川あいじ,中山敦支,中村光,河下水希,金田一蓮十郎
ジャンプSQ.
西尾短編をまとめて読むと見えてくる凄さ
原作・西尾維新、作画は各雑誌の作家陣というタッグで描かれ、各誌で掲載された読み切り作品を一冊にまとめた短編集。 設定や切り口、登場人物名などから一見奇抜に見えるのですが、ストーリーとしてはオチまで読めるものが殆どであり、それが読みやすさに繋がっていると感じます。 そのような中、途中の作劇で独自の風味を持たせながら面白おかしくしてしまうところが、西尾先生のスゴイところですね。 どの短編もしっかり西尾作品であり、また作画担当のテイストも十二分に出ている、素晴らしい短編集です。 その内容は以下9篇。個人的な一番は「友達いない同盟」。 1.娘入り箱(画・暁月あきら「めだかボックス」) 2.RKD-EK9(画・小畑健「DEATH NOTE」) 3.何までなら殺せる?(画・池田晃久「ロザリオとバンパイア」) 4.ハンガーストライキ(画・福島鉄平「サムライうさぎ」) 5.恋ある道具屋(画・山川あいじ「Stand Up!」) 6.オフサイドを教えて(画・中山敦支「ねじまきカギュー」) 7.どうしても叶えたいたったひとつの願いと割とそうでもない99の願い(画・中村光「聖☆おにいさん」) 8.僕らは雑には学ばない(画・河下水希「いちご100%」) 9.友達いない同盟(画・金田一蓮十郎「ライアー×ライアー」) お題を設定しての大喜利風になったのは途中からだそうで、そういった各話についての逸話が読める西尾先生のあとがき小噺も大変興味深いものとなっています。
4投稿日: 2015.07.10
Sporting Salt 1
久保田ゆうと
週刊少年ジャンプ
そして伝説へ
ジャンプ誌上で連載が始まるにあたり、コンセプト、プロット共に興味深い内容であったもの一見して立ち昇る地雷臭からスルーの構えをとった読者は賢明であったと後に語られるほどの作品。 話数が進むにつれ謎が深まる世界観、理論よりも流れで押し切られるスポーツ医学論、登場人物たちの不可解な行動原理など、スルーできなかった者達が囚われる闇は「塩の魔」とも呼ばれ、これに立ち向かうべくWeb上に解析班が発足するも、解決しては生み出される難問に沈んでいった逸話は今もクソマンガ愛好家の間で語り草となっている。 今読み返すと一コマ目に新国立競技場完成版が描かれているあたり、その醸し出される幻臭に拍車がかかっており、伝説に残る要素が散りばめられているなと感じました。ある意味、時代に愛された作品と言えるかもしれない。 のちに理論破綻しているクソマンガを表す指標として、『塩分濃度』などと称される言葉を生み出した点など、爪痕は確実に残したと言えるでしょう。
1投稿日: 2015.07.10
少女ファイト(12)
日本橋ヨヲコ,木内亨
イブニング
黒曜谷の外面ヒールはもはやお家芸
このシリーズはずっと実本の特装版で購入していたのですが、特装版のおまけグッズと価格をにらめっこして、この巻より電子版を購入していく決意を固めました。 日本橋先生の絵、というか線は、よくあるマンガ作品に較べかなりビビットなので、電子書籍に於いても問題なく、いやむしろくっきりはっきりと読むことができました。 表紙書影が電子書籍にも向いてるなあ巧いなあと感じたのは暗殺教室のそれでしたが、中身でも作品により差がでてくる時代になったなぁとしみじみと思います。 内容としては、鏡子さんの女の顔が、すごくかわいかったです。それはもう、ものすごく。
0投稿日: 2015.07.10
CHERRY TEACHER 佐倉直生 1
立花和三
ジャンプSQ.19
理由?大きいからだよ!
新米熱血高校教師・佐倉直生の半生を描いた(主観)お色気ギャグ漫画。 ツンデレをはき違えた被害妄想の強いうっかり女子高生(ラッキースケベガール)がメインに添えらえているが、脇を固めるのが人妻クラスの色気を持つ黒髪変態眼鏡女子高生と圧倒的な”暴”を備えた貧乳空手少女という二人であり、ぶっちゃけこいつらのキャラが強すぎてさしものラッキースケベも影を潜め気味。だが面白い。 ギャグはテンポが大きな要素ですがこれが緩急交えてキレッキレであり、また高い画力を全力でバカの方向に振り切っていて、読んでいて清々しささえ感じるありさま。 このスガスガしさは主人公の描き方にも繋がっており、男性として共感できるものとなっています。 余談ですが、10話あたりからCKB券が発行され、以降惜しみなく発券されるのもとても良いと思いました。まる
1投稿日: 2015.06.25
テキサスレディオギャング
榎屋克優
ミラクルジャンプ
友よ
ラジオというガジェットを用いて男たちの青春を描いた学園モノ。 ラジオの魅力、ことさらラジオドラマの深さを描いていて興味深くもあるのですが、背景に紡がれた「いじめによる友人の死」という要素がどうにも重く感じられて、ややもやっとした読後感でした。 その動機がゆえに執念じみたラジオドラマ制作に繋がり、キャラクターの感情に深みを作っているのはわかるのですが、制作部分だけでも青春ものにできたかなーという思いが残ってしまいます。 制作部分がリアルだっただけに、ラジオ制作に懸けたサワヤカ青春モノというのも、少し見たかったなと感じた次第。
2投稿日: 2015.06.25
死役所 1巻
あずみきし
コミックバンチKai
お客様は仏様
人が死んだあと、天国や地獄へと成仏する前に必ず立ち寄って手続しなければならないお役所のマンガです。 読み切り作品などでよく見るプロットですが、これで連載しているのはなにげにすごいんでは。 人に歴史ありの言葉どおり人生にはそれぞれのドラマがあり、その最後ともなればことさらです。 それを書類作成という形でひも解いていくのですが、巧いのは死因によって部署が分かれているところと、死んだときの状態で動いているというところ。これで読者は「何があったんだろう」と否応なしに惹きつけられます。 ひも解かれる真実はさまざまですが、事務的に映る「お役所仕事」がそれを引き立たせてもいて、巧いなあと唸らされます。 エピソードの最後は、その人の写真を散りばめたページで締めくくられるのが定型なのですが、写真というアイテムを使ったのがまた巧い。 写真というものにはワンシーンで人生を語るに足る説得力があり、またそれを撮った人がいるという事実からも背景を想像することを促されるので、いつも最後のページでこみあげてきてしまいます。 題材となるテーマは、ワイドショーなどで見かける事件が多いです。 重い話や辛い話、はたまたほっこりする話まで色々ですが、見え隠れするリアリティがインパクトとなり心に強く残る作品です。 見た目穏やかで良識人が集う死役所所員ですが、ここにも仕掛けがあるのがステキ。 名前の一部がカタカナ化するのにも理由がありそうです。
4投稿日: 2015.06.25
