
黒き英雄の一撃無双 1.受難の女騎士
望公太,夕薙
HJ文庫
本当に一撃で終わってしまう
もうアホらしくて笑ってしまうレベルの最強。おかげで主人公のバトルシーンは数行で終わったりして。 でも筋金入りのフェミニストなので、女性相手には苦労する。 作者いわく、「最強主人公が男女差別パンチで敵をぶっ飛ばす話」。 そんな主人公の悠理の性格が、まるでまっすぐな子供なのが、この作品のいちばんの魅力。 とんでもない力を持ちながら、世のため人のためなどという義務に縛られず、かといって私欲に使うこともなく、自分のルールで生きる。 大切なら護る。 攻撃してくるなら殴り返す。 人を悲しませたら反省する。 下ネタは好きだが、それもませガキレベル。 周囲のキャラも含め、いろいろと深刻なところもあるのだが、明るい部分も重い部分もバランスよく濃い。 面白いです。
0投稿日: 2014.06.01
スクランブル・ウィザード
すえばしけん,かぼちゃ
HJ文庫
ハードだけど優しい
ヒロインが小学生というのがアレだが、だからこそ素直に教師と教え子のまっすぐな関係が成立するのかなとも思う。 教える側も、上級生が指導というパターンでなく、ちゃんとした(というには仕事の内容上微妙だが)プロの社会人だし。 この作者はいつも、教師らしい教師の描写がいい。 それに、設定の割に、人間の善いところを忘れない優しさのある作風も。 一見好青年だが戦闘狂の気がある能勢が唯一認めているのが、 無愛想で普通なら特殊執行官になれるのも不思議なDランクの十郎だったり。 すてきな作品です。
0投稿日: 2014.05.31
百錬の覇王と聖約の戦乙女
鷹山誠一,ゆきさん
HJ文庫
スマホと家族愛で覇王になる
現代にスマホが通じる世界というのが独特。 第1巻はすでに2年が経過し宗主の地位を確立しているが、 もともと特殊な力があるとか何か傑出した得意分野があるとかではない(父親が刀鍛冶というのはあるが)ただの中学生。 現代知識と言ってもいきなり実用になるレベルのものはない。 そこを、異世界に来て必要に迫られてから、ネットで調べ電子書籍を読んで勉強して、現場に役立てようと努力している。 このあたりの現実感が良い。 ついでに読者も古今東西の知恵を学べたりして。 世界についても現代からの客観的な視点で見ていて、「読者には北欧神話を下敷きに作られたとわかる架空の舞台」で物語が進んでいるのではなく、 主人公自身が「紀元前の北欧のようだが完全には現代知識と一致しない世界」と分析し認識している。 だが、チート知識だけで宗主になったわけではなく、身内は絶対に護るという強い意志があってこそ、というのがいちばんの魅力。 美少女たちに慕われ戸惑う硬派な少年であり、民の暮らしを良くしようと努力する優れたリーダーであり、敵味方を瞠目させる気迫を持った獅子でもある。 様々な顔を見せる勇斗が興味深い。
3投稿日: 2014.05.29
見習い神官レベル1(2) ~放課後は朝まで砂漠で~
佐々原史緒,せんむ
ファミ通文庫
レベルアップ
タイトルはレベル1のままだが、ちゃんと嫁さん以外の神魔を得るところまで達成。ナタルちゃん、ええ子や。 理解者も増えるし、神官修業はまずまず順調。 ヨシュア自身はそれ以外にあまり活躍する印象はなく、 最終的にみると星紺の塔の設立にまつわるサイドストーリーの巻という感じだが、 物語としては1巻よりバランスよく面白いと思う。 今回の注目株は「沈黙の暴虐王」アフェク先輩。 性格は少々・・・だが、平民出身の超秀才、形式やルールより実効重視なので、案外ヨシュアと相性がいい。 今後も活躍してくれそう。
0投稿日: 2014.05.28
銃皇無尽のファフニール1 ドラゴンズ・エデン
ツカサ,梱枝りこ
講談社ラノベ文庫
バトルより、人間、そしてドラゴンの物語
北欧神話のイメージや、喪失と引き換えの能力、異能者たちの中にあっても異質な存在など、 やっぱり『RIGHT×LIGHT』の作者だなと感じる作風。 「D」とドラゴンの関係が独特。 「ドラゴン」というのも、普通に言うものとは違って、もっと広い神話的存在を指している。 主人公は別組織で特殊訓練を受けた隊長クラスで、今も組織とつながりがあったり(上司の名前はロキ!)、 さらに特殊な事情があったりと、唯一の男の能力者というパターンにとどまらないところが興味深い。 バトル自体はお約束のクライマックスという感じで、 物語全体としては、人間関係や人の在り方の問題がメインという印象。
1投稿日: 2014.05.24
S.I.R.E.N. ―次世代新生物統合研究特区―
細音啓,蒼崎律
富士見ファンタジア文庫
細音啓らしいファンタスティックなSF
新作だが、『エデン』や『イリス』と通じる雰囲気も。 SF的設定のファンタジーとファンタスティックなSFは似て非なるものだと思っているのだが、この作品は後者だろう。 伝説の生物をモチーフに生命工学で造られたバイオテスタ。 基本的に人間の役に立つための存在だが、暴走して鎮圧が必要になることもある。 主人公のミソラは、世界最高のバイオテスタ研究者アナスタシアの弟子であり、 バイオテスタと人間の共存共生を体現すると同時に、その成果である「方程式」を身に宿す。 そんなミソラが助けた天使型バイオテスタの少女は、アナスタシアが言っていた「本物」の天使なのか? 通常のバイオテスタの力を超えた幻獣たちはどこから現れたのか? やや説明が多くて、科学用語が苦手な人は、もしかしたら少ししんどいかも。 ちゃんと理屈があるらしい、程度に読み流しても構わないとは思うが。 キャラではレイレイが面白い。 最初は『エデン』のレオンみたいな位置づけかと思ったら、もっといろいろと、設定の本質にかかわる立場。
3投稿日: 2014.05.20
コータローまかりとおる!(1)
蛭田達也
週刊少年マガジン
非常識でもまっすぐ、最強
男なのに膝まである長髪をなびかせて、学園を駆け抜けるお騒がせ男、新堂功太郎。 でも、ただのアホではない。その名も極端流なる空手の達人、たぐいまれなる身体能力の持ち主。 好敵手に髪のない(「ハゲではない、剃っているのだ!」)風紀委員長、天光寺。 そして、ガールフレンド(?)の麻由美も風紀委員として功太郎と追いかけっこ。 常識には縛られないが、常に全力、まっすぐな功太郎のキャラが魅力的。 それに、闘いの場面がかなり本格的で迫力がある。 一見ギャグ漫画だが、本質は格闘漫画に近い。
4投稿日: 2014.05.16
見習い神官レベル1 ~でも最凶の嫁がいる~
佐々原史緒,せんむ
ファミ通文庫
わりといい奴。嫁も可愛い。
意外にまともなヨシュア。基本的に真面目で親切。 必要ならさらっと人は殺せるし、愛想がいいのは多分に演技だろうが。 16歳でおっさん呼ばわりされるのは、さすがに気の毒。 この歳で「妻」がいて子作りを迫られるってのも・・・(アダルト作品ではないので生殺し) 最初のほうはストーリー描写が平凡な感じだったが、最後はけっこう面白くなった。 周囲の面々もいい子たち。 ただ、イラストは女の子の区別がつきにくい。 状況は『破妖の剣』に似ている気がした。 凄すぎて下手に明かせないレベルの神魔に好かれてくっつかれて、 そのおかげで普通の神魔が近寄らなくて落ちこぼれている。 でも本人も実はかなりすごい能力を持っていて。 社交性はラエスリールとは全然違うけど。
2投稿日: 2014.05.09
それがるうるの支配魔術 Game1:ルールズ・ルール
土屋つかさ
角川スニーカー文庫
ルールを見破れ
Rule's rule・・・解答者以外の全員が、出題者が決めたルールに従う。そのルールを解答者が発見するゲーム。 物の理(ことわり)を変えれば、本来なら有り得ないことが起こる。 場の理を変えれば、それがおかしいとは認識されなくなる。 つまり、理を改変し維持する力があれば、術者は何でもやり放題。 そして、ひとりだけ、その「場」に取り込まれない丸(たまき)には、改変された「理」=ルールを発見して解除する力が・・・ けっこう理屈っぽいし、内容もよく考えれば重いのだが、作風は軽やかな印象で、意外に読みやすい。少女漫画っぽいイラストも可愛い。
0投稿日: 2014.05.07
恋する王子と受難の姫君 1
小椋春歌,加藤絵理子
ビーズログ文庫
BLじゃないですよ
いつの間にかアダルトに分類されていたけど、解除されたみたい。元々そういうシーンは皆無なのに。「変態王子」という煽り文句が悪いのか。 実際には、魔法と歴史と政治が絡む本格的なファンタジー世界を舞台にした、「愛は勝つ!」的な純愛ストーリー。 アレクがミラにつきまとうのは、かつての片思いの相手モニカを発見したと思ったからで、決して少年愛の性癖があるわけではない。次の巻からはちゃんとモニカがヒロイン。 一度はモニカを喪ったことを反省して、相手の気持ちも考えようとしているし。 愛情が有り余って「暴走王子」気味ではあるけれど、変態と呼ぶのはかわいそう。
3投稿日: 2014.05.02
