
教場
長岡弘樹
小学館
続編にも期待。
とある警察学校が舞台の短編集だが、非常に良く出来た話だった。最初は理不尽ともいえる教官と生徒の関係に戸惑いもしたが、風間という教官が登場してからはグングンと話に魅了された。 評価が高かったからこそ買って読んだのだが、それは正解だった。警察学校でこんなに問題が起こるのか?という問いをしなければ満足して最後まで読めるだろう。 決して警察学校が舞台ではなくとも極上のミステリーが書けたと思うのだが、風間公親という存在を浮き上がらせるには警察学校がベストだったと思う。続編があるようなので是非読んでみたい。
0投稿日: 2017.12.25
チョコレートコスモス
恩田陸
角川文庫
演劇版「蜜蜂と遠雷」
「蜜蜂と遠雷」の演劇版ともいえる作品。天才たちがひしめく演劇界で演劇を始めたばかりという少女が嵐を巻き起こす。 「蜜蜂と遠雷」でもそうだが、自分がくわしくない業界の話を興味津々で読めるというのは著者の力量によるものだろう、その情報収集能力は圧倒的だと思える。それだけでなく、読者を作中に引き込むようなストーリ設定で、一見地味で普通の女の子である佐々木飛鳥に強く感情移入してしまう。それが最後まで続き、これで終わってしまうのは悲しすぎると思っていたらあとがきで続編を執筆中とあり歓喜してしまう。もっとも連載していた雑誌が廃刊になり中断してしまったようだが…。 恋愛沙汰などはないが間違いなく青春ものである。かといって若者しか楽しめないという内容ではない。老若男女がアツくなれる傑作と言っていい。
0投稿日: 2017.12.13
空想オルガン
初野晴
角川文庫
満足させる話上手。
「退出ゲーム」「初恋ソムリエ」に続くハルチカシリーズ第三作目だ。前二作で得た評価通りに面白かった。ここまで数珠ぞろいの短編集はなかなかないだろう、早くもこのシリーズが終わることによるロスを心配している。 短編集と言っても清水南校吹奏楽部を中心としたエピソードの数々が時系列に進められているので、話が終わるたびに頭を切り替えるといった煩わしさはない。そしてあまりの面白さに次は次はと一気読みしてしまうこともある。 そして作者の頭の中を見たくなるほど話作りが上手い。それは謎だったり人間関係だったりするが、特に最後の「空想オルガン」の仕掛けには唖然とさせられた。思わず「そう来たか!」とうなってしまった。 このハルチカシリーズは多くの人に読んでもらえるといいと思う。そのほとんどを満足させるポテンシャルがある。話の終わりに近づくのが怖いが、私は次の作品に進もうと思う。
0投稿日: 2017.11.28
初恋ソムリエ
初野晴
角川文庫
依存症になる面白さ。
ハルチカシリーズ2冊目となる本作だが、期待に反せず相変わらず面白い。コメディタッチでありながら最後は深い感動を味わえる傑作短編ぞろいだ。 ハルタやチカをはじめとするキャラクター作りのうまさもさることながら、謎を作り出すこともそれを解決に導くまでの主人公たちの活躍ぶりを書くのはもはや秀逸と言える。そして最後は感動を与えてくれるのだから最高だ。 あくまでも短編集だからそこまで深く没入するということもないが気軽に読んで楽しめる作品だ。注意することと言えば「ハルチカ依存症」にかからないようにするということくらいだ。それほど癖になる面白さだ。
0投稿日: 2017.11.27
むかしのはなし
三浦しをん
幻冬舎文庫
刺激的で刹那的な短編集。
全く関係のないようで次第に繋がってくる日本の有名な昔ばなしから想起される7つの短編集。 それぞれの話が短いだけにグッとのめり込むようなものはないけれど、あいまあいまの隙間時間に読むにはうってつけの本だ。最高傑作とは言えないにしろそれなりに面白いし、読んで損はないだろう。 多くの個性的な人物が登場するが、やはり一番のMVPは最後の話に出てくる「モモちゃん」だろう。彼を主人公にしていくつものストーリーが作れるのではと思うほど面白いキャラだ。 ちょっと刺激的であり、刹那的でもある面白くもあり物悲しくもある短編集だった。
0投稿日: 2017.11.08
株価暴落
池井戸潤
文春文庫
週末におススメ。
池井戸潤はもう巨匠の領域に達しているのだろう、読む本読む本ことごとくハズレがない。そんな中でもこの「株価暴落」は傑作といっていい。最初から最後まで飽きることがなかった。 ある大手スーパーで起こった爆破事件を巡って当事者や取引先の銀行員や警察関係者たちのとる行動がアツく、ページを繰る手が止まらなかった。とにかく先が気になっておちおち眠ることも出来なかった。そういった意味では時間に余裕のある週末などに読むといいだろう。
0投稿日: 2017.10.15
土漠の花
月村了衛
幻冬舎文庫
勇士たちの活躍劇。
息もつかせぬとはこういうことかた序盤から最後まで緊迫した戦闘シーンが続く。途中で「もういいから、無事に帰らせてあげて!」と悲鳴を上げてしまうのは私だけではないだろう。 ソマリアに派遣された自衛官たちが部族紛争に巻き込まれ、持てる技術の限りを尽くして戦い、そして基地への帰還を目指す物語だ。 自衛官たちもそれぞれ個人的な葛藤や苦悩を持ち合わせているが、それを乗り越えて共闘するという話は大義があって面白い。 ただあまりにドンパチシーンが多くて、そういうのが好きでない人には刺激が強すぎるだろう。私も得意ではないのでひやひやしながら読み進めた。決してのんびり読める作品ではないが、読了後に熱いものがこみ上げてきた。
0投稿日: 2017.10.08
大誘拐
天藤真
創元推理文庫
親しみの湧く人物像。
日本有数の資産家であり、誰からも敬愛されるお婆さんを誘拐することにした刑務所で知り合った三人組。だけどやはりこのお婆さんは只者ではなかった。 大分前に書かれた本で、今の常識では通じないことも多いけど、その頭脳ゲームは決して古びてなく、読者を夢中にさせることだろう。 どうしても犯罪者である三人組に肩を入れたくなるが、他にも魅力的なキャラクターがたくさん出てくる。そのなかでもお婆ちゃんの人格には圧倒されるものがある。 読み応えもあるのでじっくり読書したいときに読むべき本だと思う。
0投稿日: 2017.09.14
退出ゲーム
初野晴
角川文庫
読み手を選ばない傑作。
「この作者は何もんだ?」というくらいに話の展開が上手かった。推理小説なのだが、コメディタッチでもあり、かと思えば深い人間ドラマも絡んできてまるまる飽きない一冊だった。 続編があるようなのでそっちもぜひ読んでみたい。舞台は高校だが、決して読み手を選ばない傑作作品であり、短編集で読書初心者でも十分楽しめる作品だ。
0投稿日: 2017.09.02
資産運用の教科書 ──銘柄選びより大切な投資の基本
角山智
パンローリング
半額ならばゲット。
まず、この本はかなり前に書かれた本である。私はそれを知らずに買ってしまい痛い思いをした。 資産運用はその時その時のトレンドも大事だが、基本的なものは不変なのかもしれない。だとしたらちょっと古いこの本でも十分勉強することができる。ただ10年近く経ってしまうと参考事例として提供されるものも古びてしまいピンとこないものがある。 この類の本は書店に行けば最新のものがいくらでもあるし、値段が変わらないのであればそっちをお勧めする。もしキャンペーンなどで半額くらいになるのならこの本を買っても後悔することはないだろう。
0投稿日: 2017.08.25
