
水族館ガール
木宮条太郎
実業之日本社文庫
ドラマとはかなり違います
まだ1巻目しか読んでいないのですが、ドラマの原作と言うよりも原案と思うくらい設定が異なります。 ドラマはいろいろなところで設定に無理があり、松岡茉莉の元気さだけで乗り切っていた感があります。 こちらは、設定にそんなに無理はないのと、役所からの出向なら、水族館で働くというのもあるよなぁって納得できます。 さて、小説では、水族館というところがどういうところか所々に埋め込まれています。 水中の生き物を「水族」ということも、水族の博物館だから「水族館」と呼ぶことも、この小説で知りました。 そして一番印象に残ったのは、水族たちを展示する=生育環境を再現することがいかに不自然な行為であるかということでした。 妙に納得できたところです。そういう意味では面白い本だったと思います。 それでも星3つなのは、ストーリーがあまりに薄っぺらいということろからです。 あまりここでは書けませんが、人生の大事な選択がたった2行くらいで語られるところとか、 先が見えすぎるラブストーリーとか・・・。 仕事も恋愛も水族館も色々盛り込みすぎて、どれも物語として浅い感じが否めません。 1巻は掴みだと思いますので、2巻と3巻でのストーリー展開に期待です。
1投稿日: 2016.11.03
普通に働け
常見陽平
イースト新書
著書名がミスマッチです
この本は、新卒就職者に対するメッセージとなっております。 従いまして、30代以上の方が読んでも何の役にも立たないと言って支障ない内容となっております。 そして、この本は、タイトルの付け方が間違っています。 なぜなら、普通に働けと命令形になっていながら、第1章で何が「普通」か分からないと著者が言い切ってしまうところ。 「普通」が定義できないのに、普通に働けなんて命令されても困ってしまうかもしれません。 ゆえに、根拠のない感情論を述べている本といって過言ではありません。 普通が定義できなかった後の第2章では、優秀な人は一握りで、それをみんなが目指す必要なないということを説きます。 この辺りは、若い人に対する優しさが垣間見られます。 そして第3章で、就職活動と統計の取り方のミスマッチについて延々と述べられます。読んでいて正直面白くも何ともないところです。 それらの統計から、マスコミのいい加減の記事の作り方などに触れ、それに振り回されすぎないことの重要性が説かれます。 最後の第4章は、鹿毛というエステー化学の広報担当役員との対談で、若いうちは文句ばっかりいわず、目の前のやるべきことをがむしゃらにやれ!と言います。 ただし、こんな直接的な表現ではありません。結局そうなのかよ!って言う感覚を得ることができます。何かタイトルと違うこと言っているような・・・。 結局言いたいことは、 ・マスコミが優秀な人を礼賛するような記事を鵜呑みにしない ・目の前の仕事に真摯に取り組む ということだったでしょうか。全体的に少し分かりにくい文章ですが・・・。 周りを気にせず、自分がやるべきことに真剣に取り組んでいれば、自ずと道は開ける・・・というありがちなことが述べられています。 何ら特筆することのないありふれた「普通」の本です。
1投稿日: 2016.10.30
(日本人)
橘玲
幻冬舎文庫
常識が覆される
私がまだ大学生だった頃、「日本的経営論」などという講義が行われ、日本の経営は素晴らしいと礼賛されていたものでした(年代がばれますね)。しかし、この本ではそれはばっさりと切り捨てられ、むしろ日本人ほど、会社に忠誠心がない民族はいないと言い切ります(日本的経営論は「忠誠心」を礼賛していたわけではありませんが・・・)。そして、その理由も、述べられていきます。 一事が万事この調子で、自分が持っていた日本人像がどんどん崩されていきます。そしてその理由も納得のいけるものが多く、自分が会社に対する忠誠心がないことも、かといって転職もままならないことも全てが説明されていきます。 けれども、個人にそれらが解消できる話しでもなく、橘氏が言うような「マイクロ法人」を設立するほどの技量もないとなると、面従腹背で会社にしがみつく生き方しかできないことに愕然とせざるを得ません。 他にも、様々な分野で自分が持っている日本人像が崩されます。自信を持って断言されているので、全てが正しいことのように感じてしまいます。それが面白くもあり、おぞましくもある本です。
1投稿日: 2016.10.26
残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法
橘玲
幻冬舎文庫
さぁ!フリーだっ!
私達は常に「不安」という怪物に支配されている。 そして、常に生き残りを賭けた戦いをして、「幸福」という得体の知れない天使を捕まえる必要がある。 それはまさしく残酷な世界だ。 我々は、「幸福」なのだろうか。 一流の学校の教育を受け、一流といわれる大学に通い、一流といわれる企業に就職し、それなりの高級を受け生活をする。 一流の会社で、約40年間を過ごすことを余儀なくされ、自分の子に自分と同じような道を歩ませるというのは「幸福」なのだろうか。 我々は今、急速な技術の進歩の真っ只中にいる。これを頭を使って駆使すれば、「幸福」をつかみ取ることができるという提言だ。 そしてそれが自分がフリー(自由)になることであり、自分がフリー(自由)になる仕組みは、名だたるIT企業達がフリー(無料)で提供している。 さぁ、頭を使い、この残酷な世界を、誰からもフリー(自由)を目指して生きていこう! という本。・・・・僕はしばらく「不幸」な人生を送ることになりそうだ。この現実を知らされることに星マイナス1。 けれども、すでにフリー(自由)な人、フリーになりたい人、いやいやオレ(私)は無理だよと思う人、誰が読んでも説得力のある文章に圧倒されると思います。 そして、少しの勇気を与えてくれる本でもあります。しばらく、この著者の本を漁ってみようかと思える本でした。
2投稿日: 2016.10.12
知的幸福の技術 自由な人生のための40の物語
橘玲
幻冬舎単行本
経済合理的に生きる
著者の生き方である「経済合理的に生きる」ということを、「保険」「年金」「医療」「教育」「不動産」「投資」といった視点から述べている。 この考え方からすると、私は典型的な日本人で、無駄な生命保険と医療保険に保険金を払い、自宅を購入しそのローンに追われ、 子どもを設けている。これらは、将来豊かな資産形成ができない要因で、自分の将来に禍根を残す可能性があることになる。 なるほど!自分のお金が足りないということは、こういうことだったか!という納得ができてしまう本です。 資産運用の方法にも言及されていますが、投資を躊躇される方はとにかく「収入を増やし、支出を少なくする」を意識することで、 かなり「幸福になる」術を駆使していると言えると述べるあたり、投資をあおるだけといった投資本が多い中、非常に好感が持てます。 そういった様々な経済=お金にまつわることをわかりやすくまた、誰に媚びることなく記述された良書です。 ただ、人間は、経済合理性だけに生きられないからこそ人間らしいと感じる部分もあります。 特に、それを感じるのは不動産投資で、自宅購入か賃貸かは意見が分かれるところと思います。 ここは、経済合理性だけで説明できないところがあると思うし、夢とか経済合理性以外の考え方があって当然だと思います。 この本に対して一番言ってはいけない言葉が頭に浮かびます。「お金だけが幸せの基準ですか?」 (だからこそ、私は、老後ちょっと困ることになるのだろうな・・・。)
3投稿日: 2016.09.25
言ってはいけない―残酷すぎる真実―(新潮新書)
橘玲
新潮新書
まさしく「言ってはいけない」
前書きに「これは不愉快は本です」とあるが、全く不愉快には感じなかった。むしろ、納得できる部分も多く、吸い込まれてしまいました。 前半部は、頭の良さは遺伝するかといったことから始まります。実は、子育てをしていて、「鳶が鷹を生む」ってないなぁと感じていたけれど、それは進化論から仕方が無いことの一つのようです・・・そして、妙に納得できたりします。 また、後半部は、性(性行為だけでなく性差や発育)についてが描かれます。 例えば、女性は、社会的(経済的)成功よりも、子育てなどの人とかかわる仕事(どちらかというと社会的成功とは言い難い)仕事を望んでいるといった女性も活躍する社会を目指している日本では「タブー」と思われ内容を論じています。これなどは、社会的要因によって女性は貶められてきたと主張するフェミニストなら噴飯物でしょう。 しかしながら、この本から得た知見は、他人に安易に話さない方がいいと思います。なぜなら、様々な研究を援用している所々で、著者の推論がほどよく隠されているからです。その推論の根拠は、どこにも示されておらず、また、この手の話しは、読んだ著書の偏りによっていくらでも都合のいい部分だけを寄せ集めることができる可能性があります。 原典にあたって、さらにその反論を読み、理解して納得ができるなら、他人に話しても問題ないでしょう。それは、この本が危険というわけではなく、他人のいうことを鵜呑みにして、自分の意見のように語ることはその人の底が見えて危険だからです。 また、子育てに関していえば、親の思うように子は育たないという夢も希望もない話しを正当化してしまうと、世の中の親は、「自分の思うような人に子を育てたいと思っている」ということになってしますが、私は全くそんなことはなく、むしろ、親のいうことに反発して欲しいと思っています。 私達は「進化論」だけが、正しい学問ではないことを認識しておく必要はあります。
6投稿日: 2016.09.08
寺院消滅 失われる「地方」と「宗教」
鵜飼秀徳
日経BP
消滅してもいい
もし、あなたが人生に躓いた時、誰に相談しますか? もし、あなたが自分以外の近親者が亡くなり、葬式をしなければならなくなった時、誰に相談しますか? これらの答えに、寺や近所のお坊さんなどという答えが出てくるならば、あなたにとって寺は必要で、今後護持していかねばならない存在だ。 しかし、私は、日本の寺院は、これらに全く応えていないと思っている。 ゆえに、包括宗教法人である「本山」とか「大本山」だけを残して、維持できないところはさっさと消滅すればいいと思っている。 日本の寺と坊主は、権力と結びつき、自堕落な生活を送ってきた。権力者自体が仏教を成立させてきた経緯があるから幾分仕方がないとも言えるが、 それに反発した僧侶達が鎌倉新仏教を形成したのだ。その反骨精神があった鎌倉新仏教も、江戸時代に幕府に取り込まれ、すっかり牙が抜かれてしまい、 権力の傘に安住してしまったおかげで、現在の凋落へと向かっている。まさに、自己責任だ。各宗派は反省すればいいのだ。 江戸時代の権力に取り込まれたおかげで、現代でも「家の宗旨」が重要で、個人が寺と向き合い、個人で僧侶を信頼し、個人が宗教を信じるという構図を描けていない。 私はある仏教宗派で、信徒となる儀式を本山で受けたが、本山の職員に、「所属寺はどこか?」と聞かれ、「ない」と答えると、「早く見つけてください」と言われてしまう。 しかも、どうすれば、所属寺を見つけるのかも教えてもらえずにだ・・・。なぜ、本山の所属ではダメなのだろうか。 別に、本山の住職に葬式をしてくれとも思っていないが・・・全く理解不能だ。 また日本は、仏教というよりも、 ・先祖崇拝 ・空海、法然、親鸞、日蓮といった宗派の祖師崇拝 ・禅、護摩炊き、高野山、比叡山といった儀式やお山信仰 が強すぎて、仏教なのか土着宗教なのかよく分からないのが実情だ(それがいいという方もいるのだろうけど・・・)。 著者は僧侶資格(これは民間資格で、宗派が定めた規則に基づき与えられるもの)を持つらしいが、先祖崇拝を言い過ぎで、 先祖崇拝ばかりを言う僧侶なら私は、全く不要だと思ってしまう。(大体、「僧侶」も、妻帯者であれば「僧侶」ではないのだが・・・。) なぜなら、私は、仏教という宗教のフィルター(それは、「永遠の真理(真如)」だと思う)を通して、日常おこる様々な出来事を乗り越えるバックボーンとしたいのだ。 お盆で「おじいちゃん(もっと古い人でも良いのだが)が還ってくるよ~。」とか言って、茄子やキュウリで馬を作ったりすようなことは、どうでもいいのだ。 著者は宗教的意味がなければ、京都の五山の送り火がただの山焼きになってしまうというが、先祖崇拝が仏教なら、送り火は、私にとっては、ただの山焼きに他ならない。 私は著者とは全く意見が合わない。著者はおそらく、現在寺院は、青息吐息の状況だが、宗教(仏教)は必要とされており、決して寺院は死なないと言いたいのだろうが・・・。 私は、現在の寺院で維持できないところは一旦消滅させ、現代社会にマッチした宗派構造を構築した方がいいのではないかと思う。 いっそ、包括宗教法人が「株式会社」を設立し、葬式や回忌法要をビジネスとして成立させ、集めた利益を包括宗教法人に配当という形で回し、 一定の数の地方寺院を維持するとか、大胆な発想が必要なのだと思うのだが・・・。これも坊主丸儲けと言われる要因になるか・・・。 私にとっては、読めば読むほど、著者の主張に真っ向反対する意見になってしまう不思議な本でした。
1投稿日: 2016.09.04
気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている
村瀬秀信
講談社文庫
なぜかホッとする
チェーン店・・・私もよく使います。 回転寿司、ファミリーレストラン、ハンバーガー、イタリアン、牛丼、ピザ・・・・。「安い」が売りだったり、外食という「ちょっとした贅沢」だったり、食べ慣れない料理がそこそこの値段で食べられたり、総じて「旨い!」というものは無いかもしれないけれども、不味くもない。 知らない土地で昼食というときに、「孤独のグルメ」よろしく店に飛び込む勇気も無い私は、いつもチェーン店で済ませてしまいます。 なぜか安心できるんですね。お袋の味とかいう懐かしさや安心感ではなく、多分、勝手が分かっているという安心・・・。お値段も大体これくらい(地域によって多少の違いはあるらしいですが)という安心・・・。 故郷に帰ってくるような安心感が、なぜかチェーン店にはあります。そんなチェーン店愛が感じられる本です。ただ、紹介されるチェーン店は、地域限定(主に関東)なものも多く、知らないチェーン店も結構ありました。
1投稿日: 2016.08.29
部長の資格 アセスメントから見たマネジメント能力の正体
米田巖
講談社現代新書
部長の方に
「課長」に関する本はよく目にするのだが、「部長」に関しての本はあまりお目にかかれないのではなかろうか。 そしてこの本はどちらかといえば、既に「部長」の人が、どのような能力が必要とされ、どのように能力開発を行えばよいのかが描かれている。 また、人事部門に対しても、部長や取締役登用の際には、必要な能力を明示する必要があると説いている。 しかし、この手の本は難しい。「部長」もいろいろな部門があり、それによって求められる能力も違うからだ。 本の内容は、どの部門の部長がどういう能力を身につけるべきかを明確に示しているものではない。 また、企業規模や業種によっても求められるものが異なるだろう。社会科学の難しさは、実証研究のため、万人に向けたモデル化が 難しいところだ。そのため、「部長」としてのある程度の必要な能力を示してはいるが、当然、業種、部門の全てに当てはまるわけはなく、 中途半端な感は否めない。また、この本を読んで、こんなアセスメントと研修をぜひ我が社の「部長」にも行って欲しいと思っても、 自分が人事部門以外の平社員である限り実現不可能だ。 最初から3分の2ほどは誰に向けて書かれた本なのかが非常に分かりにくいため、読みにくい。しかし、最後の第4で、現在「部長」職にある人が より一層の能力開発を行い、創造的に仕事を進めていけるかを説いた本ということが分かった。そのため、部長の方にはおすすめできる本では ないかと思う。 私は、部長になる資格のない困った部長の対策といったことを期待して購入したため、評価が低めです。 現在働いている部門の部長が部長の資格がなくても、その首はすげ替えられないのだから・・・。
0投稿日: 2016.08.27
グラゼニ~東京ドーム編~(7)
森高夕次,アダチケイジ
モーニング
うまくいくか?
先発起用で復帰を図っていくことになった凡田。 相手ピッチャーは古巣のピッチャー椎名。 椎名は歳とともにくる体の衰えを感じ、凡田は手術をしたことによる衰えを感じる。 衰えは、何もスポーツ選手に限ったことではない。 サラリーマンでも気力の衰えと同時に、若い人の台頭を感じることがある。 これを乗り越えなければならないのは、スポーツ選手も一般人も同じかな。 そんな状況をうまく切り抜けるのか?というところ。試合の結果はネタバレになるのでやめておきます。 そして、第2戦を迎え、まだまだ不安な状態が続きます。どんな展開が待っているでしょうか?→次巻へ続く
0投稿日: 2016.08.27
