
モノが少ないと快適に働ける―書類の山から解放されるミニマリズム的整理術
土橋正
東洋経済新報社
いいんだけど、真似できない
モノが少ないと快適に働ける・・・・誰もが分かっていて、実践できない方法を、割り切ってやってみたら意外にできましたという話。 仕事の内容にもよるのだろうけれど、自分の仕事は、どちらかというと書類を溜め込んで「保管」しなければならない部署なので、あまり参考にはなりませんでした。 けれども、著者のようにシンプルなデスクにしたい!という思いはあります。けれども、ちょっと尖りすぎていて真似できないかな。 この手の本を読むのは、自分の整理や管理が他の人に比べ、劣っているのか優れているのか、また、取り入れられることはないかということに対する確認なので、著者のノウハウ積極的にを語ってくれているのは非常にありがたかった。
1投稿日: 2015.10.27
辞めない理由
碧野圭
実業之日本社文庫
1+1を3にしよう
仕事がばりばり「できる」と思い、自社初の女性編集長を目指している雑誌副編集長の和美。 部下に指示を出し、それをチェックし、だめ出しをする。 残業を厭わず、仕事優先で周囲にもそのような仕事の仕方を求める。 そのような状況で、いつしか周囲から疎んじられ、はめられて左遷者専用の新雑誌準備など手がけていない「新雑誌準備室」へと異動となる。 しかし、そこでくじけず、家庭、仕事、仲間とうまく折り合いをつけやっていく方法があることに気づいていき、やがて・・・といったストーリー。 最初の和美は、私たちが陥りがちな「仕事ができる」を勘違いしている人の典型だといえる。 それは、与えられた仕事をばりばりこなせても、それが「仕事ができる」という評価につながらないということにだ。 時が経ち、部下ができてきて、「自分の背中を見て育て!」では、時代について行けなくことにも、人を育てるということにも、取り残されていく可能性がある。 しかも、人の短所を指摘し、ここがダメあそこがダメとやっていると、人を伸ばすこともできず、いつまで経っても残業残業の毎日で、自分がちっとも楽にならないのだ。 だからこそ、会社には複数の人たちが雇われている。一人では処理できないことを複数で処理することによって、より大きな力が発揮できる仕組みだ。 なにも、いがみ合うために複数の人々が雇われているわけではない。自分との違いは「個性」としてとらえ、それを伸ばしつつ、自分も高められていければいいのだ。 和美も最後は、そのような状態になっていく。仕事に求められているものは、明らかに年代ごとに違うのだ。とはいえ、人間関係は難しいけど。 もし、和美と同じように毎日へとへとになっている管理職手前の人には、「課長になれない人の特徴 今の上司には何が求められているのか」(PHP新書) もおすすめ。
1投稿日: 2015.10.17
「むなしさ」を感じたときに読む本
水島広子
角川SSC新書
突き詰めると・・・
豊かな現代社会にあって、幸せを感じることができず、逆に「むなしさ」を覚えてしまう・・・・それがなぜおきるのか、どうすれば「むなしさ」から脱却できるかを説いている1冊。 ・自己肯定感を高める ・主体的に生きる ・「得る」人生から「与える」人生への転換 ・他人を評価軸にしない ・「今(現在)」に集中して生きる といった方法を、事例を用いて分かりやすく語ってくれます。むなしさを感じていない人でも、参考になる良書です。 ただ、これを突き詰めていくと、「宗教」が説いていることと変わりないと感じます。科学は宗教と対極にあると思われる方が多いと思いますが、実は、「科学」は個人について何も回答していないということも分かります。科学万能主義=科学教で心の闇は癒せないのです。 著者は精神科医で、色々な人と臨床で出会っているのでしょう。一方、医学は科学の粋を集めたものでもあります。そしてその医学者が、行き着いた考えがこの考えであるならば、科学を突き詰めていくと、宗教に行きつくということでしょうか。科学はキリスト教教会から発展していますし…。 この本に共感できるなら、ほんの少し「宗教」の基本が書いてある本を漁ってみてもいいかもしれません。ただ、変な宗教に引っかからないことを願いますが・・・。
2投稿日: 2015.10.14
ワン・モア
桜木紫乃
角川文庫
小さな幸せのためのちょっとの勇気
ホッとあたたくなる一冊です。 まず、柿崎美和が描かれ、その友達の鈴音と八木の存在を知ります。そして、鈴音が病気のために、美和に鈴音の個人病院を任せたいというところから連作は始まります。ほんの少しの不幸が、少しずつ幸せに変化していき、最後は当人の少しの勇気で幸せになっていく・・・。ホッとできる瞬間です。 暖かな気持ちになりたい方にお勧めです。 さて、この電子書籍には、珍しく『解説』もついています。本の読み方は個人の自由なので、解説なんていらないと思っていました。 けれども、こういう読み方もできるんだと感心したり、自分とは読み方が違うなぁと思ったり、やっぱり解説はあった方がいいですね。 この本のような物語の進め方を「連作」というのも解説で知りました。
3投稿日: 2015.09.24
はぶらし
近藤史恵
幻冬舎文庫
おもしろいけど、消化不良
途中はどうなることかとハラハラするのだけれど、落ち着くところに落ち着いたって感じです。 3分の2過ぎたあたりから「どうなるんだ?」とドキドキし、一気に読んでしまします。 鈴音と水絵のちょっとしたすれ違い。 水絵はおそらく、鈴音が思っている以上に鈴音を頼りに思い、感謝していたのではないでしょうか。 けれども本当はどうしたかったのか────。 話はとてもおもしろい、けれども、水絵の心理描写が薄く、最後のシーンでもどうなったのか分からず消化不良ですっきりしない。 そんな感じです。
2投稿日: 2015.09.22
鎌倉仏教
佐藤弘夫
ちくま学芸文庫
新しい視点
鎌倉仏教の祖師達の思想がなぜ民衆に受け入れられていったかのかという視点を元に鎌倉仏教を整理し直している。 このような視点はあまり見られることはないという点で、希有で貴重な文献であるといえる。 とはいうものの、あとがきを見ると書かれたのは20年前で、現在の仏教研究の中心は、近代にあるという。けれども、こういう論調が深められることなく消え去って行くには惜しい。 けれども、民衆の生活から鎌倉時代の祖師達の思想が受容されていくさまを描くのは、非常に困難だ。 なぜなら、その時代の一般の人たちがどのような生活を送っていたかを記録している文書は非常に少ないからだ。 これは、歴史となる現代の我々にもいえることで、現代の生活様式や考え方が、1000年後に正確に把握できるほど、日々の生活が記録されているわけではないことからも、容易に想像できる。 それゆえ、推測の域を脱していない記述が多いところがある。仕方がないとはいえ、少々説得力に欠けるところである。 しかし、この本の一番痛快なところは、鎌倉仏教の祖師達を源流とする教団が、権力に妥協し、その思想とは全く異なるものに成り下がっていると喝破している点だ。 このような視点から書かれている著書は少ない。そして、教団は現代の教団の礎を作った「中興の祖」を尊ぶところがある。 私はある宗派の信徒であるが、現代教団の考え方を知れば知るほど、一種の違和感をずっと感じていた。それは、「中興の祖」の考え方が、祖師の考えと異なっているからだと知った。 そして、自分の感じている違和感が間違いでなかったことも知り得た。 鎌倉仏教の特徴は、貴族化した僧侶のあり方を否定した祖師達が、罪の意識に苛まされる民衆の救われる術を、既存仏教を敵に回しても伝えた点であるという視点で描かれている。 現代と違い文字を読めない、書けない人々が、一つの行で救われることをいかに喜んだか、祖師達の身分に関係なく仏は救ってくれるという考えが、虐げられた民衆の一筋の光であったかが想像できる。 その民衆の思いにあぐらをかき、権力におもねり、衰退の一途をたどっていっている現代教団は、今一度祖師達の考えの原点に帰るべきだと考えさせられる一冊。
1投稿日: 2015.09.20
いちばん長い夜に(新潮文庫)
乃南アサ
新潮文庫
ハッピーエンド
前科(マエ)持ちの二人が、出所後、自分たちの過去を隠しつつ、お互いを尊重しあいながら日常生活を送っていく。 出所してしまえば、その後の生活という厳しい現実がある中、一人は夢を持ち、一人は偶然に職を得ながら暮らしている。 そんな二人のストーリーも最終巻となった。最終巻では、綾香の殺人という罪の深さと悔恨が語られます。 命の重みに苛まされながら、悔悟と謝罪の日々を生きていくことが、人を殺めたことに対する償いであって欲しいと思います。 しかし、これは一般的な人の殺人者に対する「思い」なのかもしれません。 常軌を逸した殺人は、殺人を何とも思っておらず、反省の念など微塵も感じられないことがあるからです(酒鬼薔薇聖斗や大教大付属池田小学校殺傷事件の宅間守など)。 ともあれ、二人は二人なりに最後はハッピーエンドです。二人を二人のまま受け入れてくれる人に出会え、夢を実現していくことを感じられる最後でホッとし、なごむことができました。 ただ、初出が断続的だったのか、何度も二人の状況説明が繰り返されるため、各章の冒頭部分は読み飛ばせます。一気に読む場合は、ちょっと煩わしく感じます。この部分で、星マイナス1。
0投稿日: 2015.09.15
仏教の思想 9 生命の海<空海>
梅原猛,宮坂宥勝
角川ソフィア文庫
壮大だった
この本は、1968年に出版されたものが、1996年に文庫化されたもののようである(文庫版 序、はしがき参照)。 文庫版の序には、この本は、密教=祈祷仏教程度にしか認識がなかった人々の認識を変えた著作と記されている。 何を大げさな・・・・と思い読み始めたが、まさしくその通りだったのではないかと思っている。 日本で仏教というと鎌倉仏教を扱うことが多く、浄土真宗、浄土宗、曹洞宗、臨済宗、日蓮宗あたりがよく目にするところだろうか。 これらの祖師は、比叡山(最澄の天台宗)から輩出された方々だ。最澄は平安時代に大乗戒壇の設置に尽力した人である。 その最澄と平安時代に双璧をなしたのは、空海(弘法大師)である。 空海といえばお遍路さん、密教といえば漫画の孔雀王のイメージくらいにしかうかばなかったのであるが、この本を読んで密教の壮大さに触れ、 改めて空海の偉大さ、先見性、天賦の才能を感じるのである。 鎌倉仏教は、一つの教えを選択し、それ以外は目もくれないというイメージがあるが、それらさえ全てを包み込んでいる曼荼羅の世界、大日如来の世界、 即身成仏の世界(ミイラになるということではなく)に驚くのである。 そして、密教は、後から生まれた鎌倉仏教の祖師たちの教えさえもすでに包含しているのではないのかと考えさせられるのである。 密教=秘密仏教なので、護摩木を炊き、真言を唱え、呪術ばっかりやってるというイメージをお持ちなら、密教入門として読んでみることをおすすめする。
1投稿日: 2015.08.29
刑事 雪平夏見 愛娘にさよならを
秦建日子
河出文庫
あっという間に読める!・・・・浅い!
あっという間に読み終えられます。でも、記憶に全く残らない小説でもあります。このシリーズ「推理小説」以外は買っているんだけど、全く覚えがない! それでも、難なく読めたということは、シリーズを全く読んでなくても、読める小説になっているということでしょう。 雪平は、犯人を撃ってしまう刑事で、すでに2人を殺してしまっています。そのことで、元夫は殺され、娘も夫側の両親にとられてしまっています(この小説から購入しても、このくらいは分かるように書いてくれています)。 今回の雪平は、前作で負った怪我のために、刑事ではなく、内勤に異動になっています。しかし、その異動先の上司が殺されたことで、犯人を捜すべく奔走します。 後はネタバレになるため、あまり書けませんが、なんか全てが浅いんです。犯人が犯行に及んだ理由も途中で分かるようになっていて、想像どおりのもの。 ラストシーンも「あ~あ、これって映像ならいいんだけど、小説(文芸)はこれじゃだめなんだよ。」って文芸が分からない私でもがっかりするラストシーン。 映像版「アンフェア」(小説とはほぼ無関係といってもいいです)は結構好きで、雪平=篠原涼子、山路=寺島進はいいキャスティングだと思っています。小説を読んでいても、この二人は頭の中で想像してしまいます。 映像版は、いつまでも終わりが無くて、少ししつこいのですが、2015年9月公開の映画は「本当にthe endか?」と思いながら、観に行く予定です。(小説のレビューとは関係ないですね・・・。)
0投稿日: 2015.08.14
どうする定年 50歳から巻き返し! まだ間に合うマネー対策
日経ヴェリタス編集部
集英社ビジネス書
豊かな老後を考えよう(できれば早めに)
豊かな老後を過ごすための人生設計の大切さを実感。 何も50歳から考えずとも、もっと早くから考えてもいい。 趣味にどっぷり浸かりたいにしても、何か新しいことを始めるにしても先立つものが必要だ。 特に、預金ではお金を増やせなくなった今日、投資はますます重要となっている。その大切さが、身にしみる本である。 相続のところだけは、実感が湧かなかったが、必要な方は、節税対策もしておきたいものだ。 ただ、日経らしく、不安を煽って、ある一定の方向に考えを持っていく論調になっており、少し危険。 投資は、焦らず、余資でゆっくりやるべきだ。
1投稿日: 2015.08.09
