
春にして君を離れ
アガサ・クリスティー,中村妙子
クリスティー文庫
知人に勧めづらい名作
「私はなかなか良くやっていて、自分で幸せを掴み取った」と思っている中年女性が旅の途中で自分の人生を振り返るというストーリー。 多くの女性はこの作品を読むと自分自身の行いを振り返ると思います。人に勧めると、自分を見つめ直しなさいと言ってるように思われるかも・・・なんて思いました(笑) 誰しもが主人公のような面を持っており共感してしまう作品でないかと思いますが、さらに衝撃的な結末が待っており驚きました。 推理小説ではないですが、ある種のどんでん返しだと思いました。 一見すると地味な話の様ですが、とても感情を揺さぶられる作品だと思います。 もう少し歳をとったらまた読みたいです。
4投稿日: 2017.02.15
へなちょこ探検隊 屋久島へ行ってきました
銀色夏生
幻冬舎文庫
屋久島に旅行したことがある方へ
屋久島旅行のエッセイです。 旅行慣れしていない人が初めて屋久島に行ったかなり率直な感想という感じで驚きました。 宣伝っぽさが一切なく、すがすがしいです。あまりに正直なので、日記か!(笑)と言いたくなりますがなんとなく美しい文章で読んでいて楽しかったです。 また、かなり多くのスポットをちょっとずつ紹介してくれているところもありがたく思いました。 私は屋久島旅行に行く前と行った後に読みましたが、旅行後に読んだ方が楽しめるかなと思いました。 行く前に読むには少し現実を突きつけられすぎるかなと思いますが(笑)、旅行後に読むと共感できるし、行った場所を思い出せてとても楽しかったです。 もちろん著者のファンの方も楽しめる作品だと思います。
6投稿日: 2017.02.15
贖罪の奏鳴曲
中山七里
講談社文庫
弁護士御子柴礼司、紹介編?
シリーズ1作目です。1作目であるこの作品を最初に読んだ方が主人公の事情がよくわかって良いと思います。 本作は、悪名高い凄腕弁護士御子柴礼司が弁護する事件が大枠として一つあり、その中で御子柴がどのような人物なのか明かされていきます。 御子柴の過去がメインとして扱われており、正直、事件が解決するころにはそっちの事件はまあどうでもいいかなと思っていたのですが、前評判通り驚くべきどんでん返しがありました。 御子柴の過去からしてとても衝撃だったのに、ちょっとした事件も驚きの連続で、とても面白かったです。 そして、どんでん返しも面白いのですが、トリックよりも犯罪心理などの描写がリアルで感動しました。 本作を読んで、御子柴が良い奴かどうか一先ず保留という感想を持ちました。 続編も気になる幕引きになっており、早速2作目も読みたいと思いました。
7投稿日: 2017.02.15
改訂完全版 斜め屋敷の犯罪
島田荘司
講談社文庫
御手洗の活躍が面白い!
本作は御手洗シリーズ2作目ですが、本作から読んでも楽しめると思います。 流氷館という傾いて建てられた洋館に主人の浜本が数名招待しパーティーを行っていると、密室殺人が起きるという話です。 話がかなり進んだ後、東京の警察からの紹介で助っ人という形で御手洗たちは登場します。 ずっと三人称で書かれている話だと思っていましたが、御手洗たちが登場した瞬間に石岡君による一人称であることに気付いたというか思い出したというか・・・、そういった表現もちょっと面白かったです。 また、肝心のトリックですが「おったまげる」というのが最も相応しい表現かと思いました。あまりにぶっとんでいてきちんと推理できた人なんていないのでは・・・と思ってしまいます。犯人は結構わかりやすいと思いますが・・・。 あと、やはり建物の構造はきちんと理解してから読んだ方がより楽しめると思います。 トリックの以外にも御手洗の活躍の仕方にも驚かされました。ゆっくりとした登場でしたが、彼が登場すると話の展開スピードが倍速になります(笑) 結末もなかなかドラマティックで後半最高に面白かったです。
5投稿日: 2017.02.02
神様が殺してくれる
森博嗣
幻冬舎文庫
隠れた衝撃作!!
本作はインターポールのレナルドが、連続殺人事件の目撃者である旧友リオンに「犯人はレナルドだ」と思われるような証言をされ、 容疑者になるというよりは職業のこともあり、一緒に捜査をしていくという話です。 主人公はインターポールとは言え事務官なので、刑事ものという雰囲気はありませんし、アクション的な要素もなくかなり淡々とした話です。 舞台の多くはヨーロッパで、なんだかお洒落です。雰囲気はスカイ・クロラシリーズに近いかもしれません。 お洒落なんだけど不思議な話でそれだけで楽しめると思っていたら、結構しっかりとしたミステリーでした。 結末があまりに衝撃的すぎて受け入れがたいのですが、よく考えてみると推理可能とも言えると思います。 著者の他の作品だと「すべてがFになる」がミステリーとして有名ですが、こちらの方がミステリーの王道に近いかもしれません。 賛否両論あるかもしれませんが、是非多くの人に読んでいただきたいです! あ、LGBTの要素があるので苦手な人は注意かもしれません・・・。
12投稿日: 2017.01.26
エジプト十字架事件
エラリー・クイーン,石川年
グーテンベルク21
推理できたはずなのに・・・!
本作は国名シリーズ5作目で、エラリーの相棒はクイーン警視でなくヤードリー教授というエラリーの大学時代の古代史の先生です。 有名な作品なだけあり、はっとする素晴らしいトリックでした! じっくり考えれば誰でも絶対推理できたはずの簡単なものだったと思います。 しかし、ミスリードも多く犯人にも意外性があり、とても面白かったです。 作品全体としては、宗教的なエピソードやTの文字という怪しげなメッセージなど雰囲気がありすぐに引き込まれます。 ただ、中盤は状況が二転三転したり、エラリーの行き詰る様子などの描写があまりに長くて辛く感じる部分もありました(笑) しかし、最後の部分は説明も簡潔ですし、さっぱりできる解決が待っているので、ちょっと辛く感じても結末を楽しみに読んでみてください。 とくに、途中エラリーが気にしているちょっとしたことなどを意識して読むと犯人を推理できると思うので、それもお楽しみに!
4投稿日: 2017.01.25
白河夜船
吉本ばなな
幻冬舎
とても不思議、共感できるだろうか?
よしもとばななさんの作品って、恋人との日常の描写とか割と多くの人が共感できるような描写が多い印象でしたが、 本作は3部とも「浮気」「不倫」という関係が存在するためか、そんな感じなの?ととても不思議な気持ちになりました。 そういった関係の経験がある方はもしかしたら共感できるのかもしれません。 3部とも「死」と「浮気」と重そうな設定が登場しますが、やはり悲しい話ではなく、優しく爽やかな印象です。 私は3部のなかでも「ある体験」が特に好きでした。 自称霊媒を通して死んだ人と会うという描写があり、ホラーというわけではありませんが、ちょっと不思議な話で面白かったです。 死んだ人と会うなんて言うと重そうな感じがしてしまいますが、私はこの話が一番変で笑ってしまいました。
5投稿日: 2017.01.24
キッチン
吉本ばなな
幻冬舎
何回も読みます
死別がテーマなんだと思いますが、悲しい話ではありません。 何回読んでも泣いてしまうんですけど、気持ちよくてスッキリします。 こういう純文学ってあまり読みませんが、詳しい人が読むときっといろいろ分解してより深く楽しむんだろうなと思います。 私はなんとなく読んでしまいますが、この作品から色々な成分を摂取して毎度感動します。 読みやすいですし、誰でも楽しめる作品ではないかと思います。
3投稿日: 2017.01.23
後鳥羽伝説殺人事件
内田康夫
角川文庫
リアルでナチュラルな推理小説
本作は探偵浅見光彦の初登場作品ですが、おそらく主人公は警察官の野上さんで、警察官としての靴の底をすり減らす捜査が印象的でした。 探偵は登場しますが、探偵小説というよりサスペンスのような、その中間のような不思議な作品でした。 トリックも驚くようなものではなく、でもよく考えられた現実にありそうなもので、実際に警察の捜査をのぞき見している気分になりました。 また、舞台の広島に伝わるという後鳥羽伝説も魅力的で、観光に行ってみたくなりました。 やはり、サスペンスの2時間ドラマなどの雰囲気に近いものがあり、そういった作品のファンの方にとってはとても楽しめる作品だと思います。 そうでない方も、魅力的な探偵、浅見光彦を知る良いきっかけになる作品だと思います。
2投稿日: 2017.01.18
無法の弁護人 法廷のペテン師
師走トオル,toi8
NOVEL 0
法律、裁判に興味がある方は是非!
正直、表紙からもっと軽いお話かな?と思っておりましたが、裁判員裁判についてとても勉強になる作品でした。 もちろんコメディっぽいやりとりもあり、とても読みやすいのですが、裁判の進行、手続きなどとても理解しやすかったです。 しかも、ちゃんと弁護士さんが監修もされているそうです。 登場人物の弁護士の発想も本当に法律家らしくて良かったです。 法学部出身の方などはきっと共感できるのではないかと思います。 私もこの作品をきっかけに他の司法ミステリーにも挑戦してみたいと思いました。
3投稿日: 2017.01.06
