iciさんのレビュー
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古代ローマ 饗宴と格差の作法
祝田秀全 / G.B.
雰囲気はわかるのでは?
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参考文献は専門書ではなく、一般向けに分かり易く書かれた本がメインになっています。生活費と奴隷の値段などは参考文献に挙げられている『奴隷のしつけ方』に出ている数字がそのまま書かれていますが、これはその…直後の解説で「生活費はもっと高い」と否定されています。参考文献をちゃんと読んでないのだろうな、と推測できます。
また「豊富なイラスト」をうたっているものの、特に一枚一枚に考証がされているわけではなく、それっぽいイラストを並べているだけです。当時はゲルマン系などの白人奴隷が多かったはずですが、奴隷のイラストはすべて肌が黒い人物として描かれています。
信頼度でいえば漫画版『テルマエ・ロマエ』には遥かに及ばず、映画版とどっこいどっこいくらい。雰囲気くらいは掴めるかも、でも学生のレポートには間違っても使っちゃダメだよ、くらいの信頼度の本です。そう考えると、かなり割高では? 続きを読む投稿日:2024.02.29
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史的システムとしての資本主義
ウォーラーステイン, 川北稔 / 岩波文庫
ウォーラーステイン日本語版で唯一の電子版(たぶん)
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ウォーラーステインの著作群はメインストーリーである『近代世界システム』1~4巻を中心に、それを取り巻く外伝的な単行本や論文集から構成されています。本書は第2巻と第3巻の間に位置しており、ここで提起され…た「反システム運動としてのナショナリズム、労働運動」という概念はメインストーリーである第3巻にも取り入れられています。その点では「外伝」の中では優先度の高い本となっています。ただ扱う範囲がピンポイントであることと、ヴァージョンでいったらVer. 2.5か2.9くらい(最終Verは4)の内容であるため、全体的な入門書に最適とまでは言えません。
しかし電子書籍という要素を加味すると、本書の価値は飛躍的に高まります。ウォーラーステインの著書は、日本ではほぼ名古屋大学出版会か藤原書店からしか出ていないため、電子化は望み薄としか言えないからです。あのウォーラーステインが電子で読める!ならば多少古くても、ピンポイントでもいいじゃないか。そういう方に本書はおすすめです。(シンプルにウォーラーステイン自身による入門書が欲しい方には『入門・世界システム分析』(藤原書店)が良いかと思います) 続きを読む投稿日:2024.02.29