iciさんのレビュー
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ワインの世界史 自然の恵みと人間の知恵の歩み
山本博 / 日本経済新聞出版
タイトルは立派
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著者の専門がワインであって歴史ではないせいか、虚構の話を史実と取り違えて論じていたり、信憑性に欠ける内容が多かったり、時々明確に間違っていたりする。史料批判が出来ていないのと基本的な専門知識不足が原因…かと。
酒の席での与太話としてなら笑えるが、素面の時なら突っ込まざるをえない、そのくらいのクオリティ。 続きを読む投稿日:2021.10.17
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タキトゥス 年代記 上 ティベリウス帝からネロ帝へ
国原吉之助 / 岩波文庫
上巻はほぼティベリウスのみ
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ローマ史の中・上級者向け。
最低限、共和政末期から帝政初期、できればトラヤヌス帝統治期までの歴史とカエサル家の系図を把握してないと分かりにくい。その上で読んでいくと、「タキトゥスさん、ティベリウスの…こと嫌いすぎでは?」という印象が残る。スエトニウスに比べるとまともに見えるが、ティベリウスのやることを特に証拠もなしに悪意で判断している。ドミティアヌスへの恨みをティベリウスへ投影しているのかもしれない。とはいえ現存するなかでは最も信頼性がマシな文献なので、概説書の二、三冊も読んだ後でなら、史料批判に気を留めつつ、あくまでタキトゥスの見解として本書を読むのも良いかと思う。 続きを読む投稿日:2022.07.02
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後期ローマ帝国史Ⅰ:帝国の勝利
マイケル・クリコフスキ, 阪本浩 / 白水社
読んでおきたい通史
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原題は"Imperial Triumph : The Roman World from Hadrian to Constantine"、「帝国の勝利 : ハドリアヌスからコンスタンティヌスまで」。コ…ンスタンティヌスまで、と言いながら息子のコンスタンティウス2世の最期と甥の「背教者」ユリアヌスの正帝昇格までを扱っています。原題では特に1巻と銘打たれているわけではないですが、2巻にあたる"Imperial Tragedy"「帝国の悲劇」が本文中でも「続編」として何度か言及されているので、両者の関係が分かり易くなって良い改題かと思います。
内容としては最近珍しいくらいにガッツリ政治史という感じですが、パルティアやササン朝ペルシアとの関係ではユーラシアの地域史として状況を論じており、旧態依然という訳でもありません。アナール以降の政治史離れの後にリファインされて戻ってきた新しいスタイルといえるかもしれません。
本文は割と重めですが、論じているのは実証的で地に足が着いた内容なので、じっくり読めばしっかり理解できるはずです(多分)。 続きを読む投稿日:2022.08.09
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図解 古代・中世の超技術38 「神殿の自動ドア」から「聖水の自動販売機」まで
小峯龍男 / ブルーバックス
机上の空論気味
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古い文献で言及された機械類について「こういうやり方なら実現できるかも」というアイデアを並べている。考古学的なアプローチはほとんどなく、当時の技術や材料で可能かどうかはあまり考えてない。現在のステンレス…削り出しなら可能だとしても、当時の鋳造青銅の加工精度でできるのだろうか、という疑問が付きまとう。いくつかの案件では試作をしているものの、牛乳パックとストローとかを使った小学生の自由研究レベルであり、実物の大きさと重量で動作するかどうかはやはり疑問が残る。
歴史的な説明に関してはすごく古かったり、新旧以前に間違ってたり、特に根拠もなく断言してたりする。沢山の鏡や磨いた金属で光を一箇所に集める所謂「アルキメデスの鏡」が本書では凹面鏡を使った「熱線砲」なっており、無理矢理「超技術」にしてる感が酷い。
あと普通に近世以降の話も出てくる。 続きを読む投稿日:2023.01.28
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人口で語る世界史
ポール・モーランド, 渡会圭子 / 文春文庫
人口しか語らない
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19世紀のイギリスと中国のように人口が圧倒的に多い方が負けている例は「工業力に差があったから」でサラッと流してるのが気になる。じゃあ本書が言っているのは「同じくらいの工業力なら人口、特に若い人が多い方…が強い」っていう当たり前すぎることだけになる。人口や人口動態が重要な要因というのには異論はないものの、それしか論じないのは如何なものか。 続きを読む
投稿日:2023.02.11
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火器の誕生とヨーロッパの戦争
バート・S.ホール, 市場泰男 / 平凡社ライブラリー
そんな火薬で大丈夫か?
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原題は"Weapons and Warfare in Renaissance Europe"、「ルネサンス期ヨーロッパにおける武器と戦争」。長らく絶版で古書でさえ入手困難であった1999年刊行の同名…ハードカバーが復刊+電子化で大変喜ばしい。
原題ではルネサンスに、邦題では火器に寄ったタイトルではあるが、中世末から近世の火器を中心にしつつ、それ以前の火薬を使わない飛道具や接近戦も含めた戦術全体の変化など、幅広い内容を扱っている。軍事史というよりも技術史寄り。
近い内容の書籍としては、ウィリアム・マクニール『戦争の世界史』、マイケル・ハワード『ヨーロッパ史における戦争』、クライヴ・ポンティング『世界を変えた火薬の歴史』あたり。お互いに補完的なので一緒に読んでおきたい。 続きを読む投稿日:2023.06.17