「ホフマンの舟歌」のエピソードでは、イギリスを離れヴェネツィアが舞台となるが、バンパネラ一族とヴェネツィアは雰囲気がしっくりくる。ビリー・ツイストという人物は孤独で独特なクセがあり、今後の展開にどう絡んでいくのか楽しみ。アランを連れカタコンベに移動し、骨で塔を建てるという話が面白い。

新たな人物としてナチスドイツから逃れてきたブランカとノアが登場し、第二次大戦のユダヤ人迫害の背景について触れられる。音楽好きなブランカが、ドイツ語の歌を歌いづらい状況のくだりから、戦争がもたらす不条理と悲しさが感じられる。そしてエドガーたちの仲間が増え、ストーリーがさらに展開していく。

エスターとレオン2人の関係だけでなく、彼らを取り巻くキャラクターたちやおこるできごとに引き込まれる。エスターの両親である大男なのに可愛い性格のギルモア侯爵とメグのエピソード、レオンとクリス様の友情、レオンの両親殺害の真相など、ストーリー全体としてうまくまとまっている。

清野さんは冷静で仕事ができるハイスペック男性で完璧な彼だが、直球の愛情表現をするところや、独特の観察眼で味のあるキャラクター。また静さんも、最初はきつそうに見えたが純真なところがある女性で、由莉のよき理解者となりいい感じ。

作品のタイトルが抒情的で、まず惹きつけられる。絵柄も雰囲気をよく表現している。タイムスリップだけでなく、首飾りにまつわる謎やさまざまな過去の因縁がプロットに絡んでいて、ミステリーとしても充実している。もちろん陽菜と孝章の恋愛の行方も気になる。じっくりと読みたい作品。

男子高生と10歳年上しかもバツイチ女性の恋愛というと、あまり現実的でないように思えるが、2人の関係は一喜一憂しながら進んでいくという、学生同士のような初々しい恋愛の王道。早梅を好きになってから壱成がどんどん純情になり、また成長していく。兄・成吾と早梅の過去のつながりや、悪意に満ちた菊乃の存在など、ハラハラを高めるお膳立ても効果的。

普通、死神というと死へ招き寄せる存在というイメージがあるが、この物語ではちょっと異なり、人生を全うさせ死へと送り出す役割を持っている。それだけに責任が重いが、千鶴と一之助がそれを軽減している。死神も八雲だけではなく、松葉のような違うタイプも登場して面白い。

この作者の作品には他にも姉弟の恋愛を扱ったものがあるが、今作では弟の気持ちの方が強く表に出ていて、姉は頑なに弟への感情を抑えようとしている。ストーリーが進むにつれ2人の関係も進展しているが、今後どのようになるのか予想が難しく、それだけに面白い。

よくある契約結婚から始まる恋愛。頭で考え判断し奏音との結婚を決めたハイスペ男性の真だが、女性としての奏音にどんどん魅かれていき、初々しい恋愛感情を持つ様子が可愛らしい。奏音も家で楽な恰好でお酒を飲んだりと、オヤジが入っているものの、一緒に出掛けたり手をつないだりすることにドキドキ。恋愛に年齢は関係ないと感じさせる。

タイトルのliarは、相手に対してというより自分自身に対して嘘つきであることを語っている。お互いにとても惹かれているのに、その気持ちを伝えないliarであったことが、幸せになることを阻んでしまった。美紗と一哉それぞれの視点から同じ場面が描かれているのが、本音とすれ違いがよく見えて面白い。