
なぎさ
山本文緒
角川文庫
「捨てる神あれば拾う神あり」かな
「眠れるラプンツェル」「プラナリア」「恋愛中毒」「きっと君は泣く」その他にも何冊か読了済みだが、全ての作品と言わないまでも、山本さんの描く、痛いほどの絶望の中にある一条の光がクライマックスの辺りで見えるのが好きだ。ただ、この「なぎさ」においては、全体的にとても大人しく感じた。上手にまとまっているというか、丁寧で、人間関係の「どろどろ」っとしたところも健在なのだが、諦めない人間にはいいことが待っているよ、みたいな。それはそれでいいのだが、山本さんの独特のヘビー級キャラクターの、のしかかってくる感じが無くて個人的には残念。でも、たぶん、弱っている人には元気が出る本だと思う。読んで損は無し。
0投稿日: 2016.08.04
暗いところで待ち合わせ
乙一
幻冬舎
じんわり、ほんわか。
色で言えば全体的にグレートーンな話。だが、乙一氏らしく、ぽつりぽつりと作中に小さな明かりが灯る。それがいい。そしてフラグを読者にちらつかせる手腕もさすが。読みながら、二人の幸せを願う気持ちが自然と募るようなストーリーだ。人間不信に陥っているときなど、読むと希望が持てるかも?
1投稿日: 2016.04.25
執事だけが知っている 世界の大富豪58の習慣
新井直之
幻冬舎単行本
大富豪にもいろいろある
一代で富を築いた大富豪と、世襲制の大富豪の違いに触れているのがなかなか興味深かった。これを読んだところで大富豪になれるとは思えないが、考え方や習慣を変えるきっかけにはなるのでは。喫煙者が少ないのもなるほどと頷けた。習慣が大富豪に似てくれば、もしかしたら大富豪に近づけるかもしれない。
0投稿日: 2016.04.25
女流官能小説の書き方
藍川京
幻冬舎新書
「女流」に留まらず
論点がはっきりしていて、官能小説執筆に必要な情報が整然と並べられている、実用書と言える一冊。何よりも著者の作品を取り上げて例に挙げているのがわかりやすい。官能小説だけではなく、この本を読んだ後には小説が書きたくなる。
1投稿日: 2016.03.03寒かったから
響由布子
寒かったから
響由布子
辰巳出版
友達の体験談
友達の体験談を読んでいるような感じです。「ああ、あるかもね」と納得してしまうようなお話で、ドキドキ感はそれほどないけれど、さすが響氏、濡れ場はきちんと官能的に書かれています。終り方もいい。これだけ短いのにちゃんとキャラクターが立っていて、彼等の続編が読みたくなります。
0投稿日: 2016.02.10
逸脱 捜査一課・澤村慶司
堂場瞬一
角川文庫
タイトル通り
読み易さ、わかり易さで星四つ。主人公の澤村は「最高の刑事になる!」って頑張ってるけど、なんかそれで周りが振り回されている感がしなくもない。読者が主人公感情移入型で「オレTSUEEEEE!」ストーリーが好きならば楽しめるかも。それでも、一応主人公はヘタレ属性。犯人の存在感の方が強かったかな。その生き様がタイトルだと思ったが。スリリング感はあまり無し。
1投稿日: 2016.02.10
年下の男の子
五十嵐貴久
実業之日本社文庫
好き嫌いがはっきり別れる作品です
ずばり、面白いです。はっきり言うと、のめり込んで一日で読み終えました。主人公の心理描写も非常に良く書けています。それで面白いだけに、エンドの置いてきぼり感はハンパ無いです。あれだけ慎重だったヒロインはなんだったの、というようなジェットコースターエンディングです。それを面白いととるか、腹が立つかははっきり別れると思います。個人的な意見ですが、児島くんのような男性は恋に恋しているタイプという感が否めません。悪い男ではないだけ、質が悪い気がします。(そういう男と付き合ったわけではないですけど)。ある意味、博打的な一冊です。まあ、それもアリかな。
0投稿日: 2016.02.10
眠れるラプンツェル
山本文緒
角川文庫
人は本能に抗えない
汐美ちゃんは可愛いから今まであまり努力しなくてもうまくやってきたんじゃないかな。初めて自分から欲しいと思った男性とも結婚出来たし、ただ、彼も同じ気持ではないことが薄々とわかってたけど、認めることが怖かった。でも結局、寂しさが欲求不満に火を着けたんだと思う。相手に受け入れられたら、そりゃあ恋になるでしょう。男を踏み台にして進むのも悪くない。ダニーの存在がストーリーを芯のあるものにしているような気がします。
0投稿日: 2015.08.02
愛より甘く、せつなく
亀山早苗
徳間文庫
女性に読んで欲しい官能小説
すごい本です。官能小説ですが、性描写を除いてもヒロインの切実な気持が痛い。彼女が関係を持ったアメリカ人との最後の会話が身に沁みます。とにかくドライな文章なのに、人間の本質がそれぞれのキャラに溢れていて、いい意味でえぐい。性描写ももちろん、お腹いっぱいです。お尻はやっぱり痛そうだけど。
2投稿日: 2015.08.01
第三の嘘
アゴタ・クリストフ,堀茂樹
ハヤカワepi文庫
二人の終焉
「悪童日記」から間が空いてしまったので(「二人の証拠」は別作品だと私は識別している)、彼らの過去を思い出しながら読んだが、結局、あの日記はまるっと嘘だったの?とにかく、母親の仕打ちがひどい。最後まで許しがなかったところも、フィクションなのにリアル。一作目二作目の勢いはないけれども、時代に消えて行った二人の人生を見事に描ききっていると思う。
1投稿日: 2015.08.01
