
傭兵代理店 万死の追跡
渡辺裕之
祥伝社文庫
四川大震災は核爆発だった!?
シリーズ第7弾。 米軍の最新兵器奪還と人質救出をめぐって、ミャンマー、タイ、中国、チベットとサルウィン川を股にかけて暴れまくる傭兵部隊。 いつものような地味な情報収集活動はほとんどなし。 初っぱなから激しい戦闘の連続。 シリーズ中もっとも苦戦を強いられ、アクシデントと死傷者が相次ぐ。 ミャンマーとタイの確執、中国の少数民族弾圧など、社会問題を絡めながら核心に迫っていく。 ネットでまことしやかに囁かれている「四川大震災は核爆発だった」説を元に話を進めている点も面白い。 この巻だけで一件落着とはいかず、次巻へ続く。
0投稿日: 2017.07.18
吐きたいほど愛してる。
新堂冬樹
新潮社
注意!お食事の前後には読まないように
わかってはいたけど、怖いもの見たさで読んでしまった。 タイトル通り、読みながら吐き気を催す短編集。 グロいというよりゲロい? 読んだ後にこれほど不快感の残る小説は読んだことがない。 とは言え、ストーリー的には面白いし、先が気になってグイグイ読まされてしまう。 ゲロい描写さえなければ、どれも秀逸なサスペンス小説として仕上がっている。 極限まで読者の不快指数を高めるという実験的小説なのかな? この作家さんの他作品も読みたいような…、読みたくないような…勇気が必要です。
0投稿日: 2017.07.12
植物はなぜ動かないのか ──弱くて強い植物のはなし
稲垣栄洋
ちくまプリマー新書
2017年中学入試の説明文出題率No.1の本
説明文でこんなに感動する本も珍しい。 中学生の時にこの本に出会っていたら、きっと理科が好きになっていただろう。 中高生向けに書かれたということもあるが、とにかくたとえが上手い。 サボテンをツインカムターボエンジン搭載のスポーツカーにたとえて説明するあたりは絶妙。 植物を擬人化し、植物の気持ちになって生き残り戦略、進化戦略を説いていくことで、なぜそういう仕組みになっているのかがよくわかる。 これからは道端に咲くタンポポや雑草にも特別な思いを抱いてしまうことだろう。
0投稿日: 2017.07.05
天地雷動
伊東潤
角川文庫
新田次郎と双璧をなす武田勝頼の物語
かなり以前に書かれた『武田家滅亡』につながる武田勝頼の上巻的な位置づけの作品。 信玄逝去から長篠の合戦までを描く。 やはり単独作品としては少し物足りない。 2冊併せて初めて勝頼の壮大な物語が完結する。 長篠の合戦は新田次郎の『武田勝頼』で描かれている説を真っ向から否定する解釈。 あくまでも鉄砲三千丁による三段撃ちをメインに据えて、それが実現可能であることを秀吉の大奔走によって立証しようと試みている。 佐久間信盛の内通偽装工作もなく、正々堂々のガチンコ勝負。 これはこれで面白い。 壮絶な長篠の合戦を堪能できた。
0投稿日: 2017.06.19
うれしい悲鳴をあげてくれ
いしわたり淳治
ちくま文庫
なんか面白いことないかなぁと思っている人に読んでほしい一冊
雑誌連載のエッセイ&小説集。 元ミュージシャン、現在は作詞家&音楽プロデューサーが本職の著者だが、文才もなかなかのもの。 この一冊ですっかりファンになってしまった。 次作が出たら絶対読みます! 小説は星新一と阿刀田高を足して2で割った感じ。 現代社会や人間への皮肉が込めらたブラックユーモア。 一方、エッセイは目の付け所やピックアップする言葉が素晴らしい。 そして哲学的。 すごくいいこと言ってる。 初対面の人に「一時間語れるものはありますか?」という質問、いただきです。 早速、職場で使ってみよう。 個人的には、ナイジェル・マンセルを引き合いに出すあたりがかなりツボ。
0投稿日: 2017.06.03
ちょっと今から仕事やめてくる
北川恵海
メディアワークス文庫
仕事が辛くなったら読んでほしい一冊
映画公開を機に読んでみた。 コミカルなタイトルとは裏腹に中身はいたって重たいテーマの感動ストーリー。 会社のパワハラや長時間労働を苦に自殺されてしまった方々が、もっと早くにこの本に出会っていれば死を選択することはなかったかもしれない。 今も生きることに苦しくなっている人にぜひ読んでほしい一冊。 頑張ることも大切だけど、どうしても頑張れなくなったら逃げ出すこともアリだよね。
0投稿日: 2017.06.01
とりつくしま
東直子
ちくま文庫
ちょっとだけ涙、ちょっとだけ微笑み
号泣するほど悲しくはなく、静かな余韻がゆっくりと体に沁みわたっていくような読後感。 悲しみの中にも最後にふふっと笑みを洩らしてしまいそうな微笑ましささえ感じられる11編の短編集。 それぞれの死者が思い出深い物にとりついて、物視点から残された人たちを見守る。 『ロージン』『青いの』『日記』は秀逸! 家族愛が素敵すぎる。 何度でも読み返したい作品。
0投稿日: 2017.05.30
儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇
ケント・ギルバート
講談社+α新書
日本人が日本人であることに誇りを持てる一冊です
私の中では昔のクイズ番組『世界まるごとハウマッチ』の知的な解答者というイメージのケント・ギルバートさん。 中国と韓国をぼろ糞にこき下ろしています。 中国は「超ジコチューのオレ様国家」、韓国は「密告社会」の「嘘つき大国」と容赦がありません。 中国人、韓国人の方にはちょっと気の毒なぐらい。 反対にこそばゆさを感じるほどに日本人を大絶賛。 ただ、日本のお人好し外交にも問題があると指摘。 知らない情報が沢山あり勉強になりました。 表面的な報道だけで物事を判断してはいけないということを強く感じました。
4投稿日: 2017.05.30
花酔ひ
村山由佳
文春文庫
SMに目覚めてしまった男女の行き着く先は…
村山由佳さん初読みです。 いやぁ、エロいですねー。 女性作家でここまでの描写ができるとはなかなかのものです。 ご本人は実体験があるのでしょうか? 妻の浮気相手が自分の浮気相手の旦那さんって…それって夫婦交換? 夫婦仲は良いのに、ドSとドMの性的嗜好が一致する相手をたまたま見つけてしまった男女が、不貞に走り、酔い、壊れていく、というか壊れすぎ。 SM趣味はないけど、夫婦間に流れる感情には妙に共感を覚えてしまう自分がちょっとコワい。
0投稿日: 2017.05.28
また、桜の国で
須賀しのぶ
祥伝社
ポーランドと日本の美しくも悲しい物語
美しい話だった。 戦争の話だというのに、叙情的な文体と登場人物の清廉さに心が洗われる思いがした。 第二次世界大戦下のポーランドを舞台に孤軍奮闘する日本人外交官たち。 アウシュヴィッツ収容所ではなく、ワルシャワ蜂起を取り上げている点が斬新だ。 女も子供も関係なく祖国を守るためにドイツ軍に立ち向かう市民。 壮絶な戦闘の中、固い絆で結ばれた国籍も人種も違う3人の約束は果たせるのか? タイトルの言葉にジーンとくる。 そしてポーランド出身のショパンの『革命のエチュード』が、今までとは全く違う印象で耳に響くことになるだろう。
0投稿日: 2017.05.17
