ラピスラズリさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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モーニング Mourning
小路幸也 / 実業之日本社文庫
自分の部屋でゆっくり読みたい本
2
親友の真吾の死、その葬儀のために福岡に集まった大学時代の親友・ルームメイト達が、色々な事情が複雑に絡み合って封印されてきた過去を、一つ一つほぐしていくような東京へのロング・ドライブの車内が舞台。
…素敵な思い出に彩られた学生時代の甘酸っぱい過去は読者の心を懐かしい気持ちにさせますが、ある大切な人との暗い過去の思い出は胸が締め付けられる思いがします。
通勤電車や仕事の合間ではなく、家の中で一人っきりでゆっくりと読みたくなる本でした。 続きを読む投稿日:2013.09.29
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真夜中のマーチ
奥田英朗 / 集英社文庫
ホワイトな奥田ワールド全開
2
奥田さんらしいテンポよくスカットさせてくれる物語。夜更かしして一気に読みました。
10億円を巡るドタバタ劇なのにカネの腐臭がしない。ミタゾウ、ヨコケンのキャラが秀逸。クロチェは本心ではお金より家族…が大事。10億円を奪うというミッションは三人が繋がるための方便みたいなもの。読んだ後に爽快さすら感じる。 続きを読む投稿日:2013.09.24
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ルーズヴェルト・ゲーム
池井戸潤 / 講談社文庫
平成ヒト桁代までには存在した、こういう世界が懐かしい
1
「半沢直樹シリーズはヘビーすぎる」と思われている方にオススメです。
企業の業績不振や銀行からのリストラ要求、株主への対策、業界大手から仕掛けられるM&A、下請け製造業の悲哀。起死回生の新技術の開発。そ…れらの経営上の色々なドラマが、社会人野球チームの成績低迷とチーム内の不和、エースと主峰の引き抜き、監督の交代と新エースの成長というドラマに密接にリンクし、同時進行でストーリーが展開されます。野球チームを中心に再び心が一つになった青島製作所。
現実は変わりませんが、最後は野球というスポーツの面白さが全部を洗い流してくれる。
私の会社でも社内運動会や社内旅行的なイベントが無くなって久しいですが、なんだか平成ヒト桁代までには存在した、こういう世界が妙に懐かしくなりました。 続きを読む投稿日:2014.09.05
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鉄の骨
池井戸潤 / 講談社文庫
後半は息つく暇もない展開に痺れます
1
中堅ゼネコンの現場で充実した仕事をしていた主人公の平太が、突然『談合課』と揶揄される業務課へ異動、現場とは全く異質な世界にカルチャーショックを受ける。会社や仕事に対する疑問や社会の「必要悪」に流されそ…うになる自分、恋人の心も自分から離れ、それらをどうすることも出来ない自分の未熟さを思い知る平太。。
しかし直属上司の西田、尾方常務、談合のフィクサーの三橋ら池井戸さん一流のキャラの立った登場人物たちとの痺れる
ようなやりとりが見ものです。「現場にいたんじゃ十年かかっても経験できないようなことが起こるだろうよ。お前は運がいいんだよ」この西田の言葉がこの小説のテーマなのでしょう。
ストーリーは最後に向かえば向かうほど息つく暇のない密度の濃い展開に、平日前の夜に読み始めるのは危険です(笑) 続きを読む投稿日:2014.09.05
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ホームグラウンド
はらだみずき / 角川文庫
読みやすい文体の中に息づくはらだみずきさんの世界を堪能
1
「お父さんたちが子供の頃は、家でゲームなんかせずに、外へ出て遊んだものだ」しかし、現実はどこの公園もボール遊び禁止。そんな問題提起から始まるストーリー。
老人と社会人になって日が浅い孫が主人公:圭…介のホームドラマ。はらだみずきさんの文体は本当に読みやすく、これなら小学校高学年ぐらいから充分読めます。前半では比較的淡々と進むストーリーが、後半になると登場人物の人生模様が変化していき、あっと驚く秘密も明かされていきます。はじめは電車の待ち時間などスキマ時間に読んでいましたが、後半はまとまった時間に一気に読んでしまいました。 続きを読む投稿日:2017.03.20
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軍師の門 上
火坂雅志 / 角川文庫
竹中半兵衛と黒田官兵衛のダブル主人公
1
大河ドラマに触発されて読んだ『官兵衛本』の中では、吉川英次の『黒田如水』とならぶ本だと思いました。もっともこの小説は、竹中半兵衛と黒田官兵衛のダブル主人公の構成です。
火坂さんの歴史小説は本当に読…みやすい。私のように教科書で習った程度の戦国史しか頭に入っていない人間にも、政治的情勢や地理関係、登場人物の人間関係なども充分に理解できました。
登場人物の心情描写も巧み。上巻では半兵衛と官兵衛の人間関係の変化が通奏低音として描かれ、また信長・秀吉はじめ織田家の武将たちが、まるで自分と同じ時代を生きている者を見ているかのように、生き生きと描かれています。
続きを読む投稿日:2014.07.03