ラピスラズリさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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軍師の門 下
火坂雅志 / 角川文庫
読みだすと止まらない
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上巻にもまして一層面白く、一気に読んでしまいました。大河ドラマでは見事に端折られた(笑)鳥取城攻めも詳細に描かれています。
半兵衛の死後は、官兵衛と秀吉の人間関係が通奏低音として描かれ、巻の前半の…高松城攻めから中国大返しの場面、あるいは終盤の官兵衛最後の大博打ともいえる九州戦線を含む、天下分け目の大戦は本当に読ませます。
秀吉がらみの歴史小説ではあまり詳細に語られない、朝鮮出兵についても紙面を割いていて、手元に半島の地図を見ながら読んで勉強になりました。
一方で、秀吉の負の一面までも見抜いていた半兵衛の生前の慧眼を通して、人間の二面性や人の世のはかなさも描かれ、キリシタンへの洗礼を受ける官兵衛の心情に心を寄せてしまいます。また上巻に登場した女性が下巻にもキーパーソンとして登場。張られた伏線の回収も見事と思います。
続きを読む投稿日:2014.07.03
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池上彰の宗教がわかれば世界が見える
池上彰 / 文春新書
知っているようで、実はよく知らない宗教の話
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読む前はイスラムの話に興味を持っていましたが、アメリカのキリスト教徒の思想が、実はイスラムよりも濃厚な「原理的」な思想だったとか、輪廻転生は熱帯の生命力から生まれた思想であるとか、池上さんの切り口は新…鮮。
日本人の静かでしなやかな宗教観も本書で再認識しました。コーランに出てくる「天国」の描写が、現実の日本の風景と重なるなんて!だから自然災害が多く過酷なこの国に、人々は住み続けたのだろうな。 続きを読む投稿日:2014.08.25
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とんび
重松清 / 角川文庫
お国訛りが心にしみる
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瀬戸内の港町に生きた男の一代記。父親を知らないヤスさん、そして母親を知らない息子のアキラ。二人は街の人情にくるまれて、生きていく。おそらく広島県のどこかの町がモデルだろうと思うが、どの登場人物も魅力…的。涙なしでは読めない重松節にあふれている物語です。岡山に住む自分には、ヤスさんの備後弁のセリフが心にしみる。
物語の山場は、思春期から青年期へ脱皮する息子アキラと父ヤスさんとの不器用なぶつかり合い。親の心子知らず、いや、子の心親不らず・・・自分も二人を見守る周囲の一人になった気持ちになって、やきもきしてしまい、最後には涙がホロリと流れてしまいました。 続きを読む投稿日:2013.11.18
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ゴールデンスランバー
伊坂幸太郎 / 新潮社
伊坂さんの本の中で一番読みやすい
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伊坂さんの本を何か1冊、と言われれば、この本を勧めたい。読みやすいと思います。「敵か味方か」とは、堺雅人さん主演の映画のキャッチコピーでしたが、主人公の前に登場するあらゆる人物が、果たして敵なのか?味…方なのか?手に汗握る展開です。 続きを読む
投稿日:2013.10.04
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博士の愛した数式
小川洋子 / 新潮文庫
小川さん独特の慈悲深い文章がたまらない
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ストーリーそのものに何か大きなトリックやどんでん返しがあるわけでもないのに、その文章の暖かみにグイグイ引き寄せられます。数式ネタは数学者の藤原正彦さん(「若き数学者のアメリカ」は、僕の青春の一冊!)…によるものだそうですが、一つ一つのエピソードが光っている。
色々な描写から、舞台は岡山なのだろうと思わせるところは、地元民にとってはツボです。
全てが変わった日、1992年9月11日。忘れもしない阪神×ヤクルト戦(甲子園)の、八木の幻のホームラン・・・。 阪神ファンには忘れられない9.11を小説のターニング・ポイントに設定しているところもツボでした。
読むだけで清涼な気持ちになれた一冊です。 続きを読む投稿日:2013.10.04
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真夜中のマーチ
奥田英朗 / 集英社文庫
ホワイトな奥田ワールド全開
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奥田さんらしいテンポよくスカットさせてくれる物語。夜更かしして一気に読みました。
10億円を巡るドタバタ劇なのにカネの腐臭がしない。ミタゾウ、ヨコケンのキャラが秀逸。クロチェは本心ではお金より家族…が大事。10億円を奪うというミッションは三人が繋がるための方便みたいなもの。読んだ後に爽快さすら感じる。 続きを読む投稿日:2013.09.24