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ラピスラズリさんのレビュー
いいね!された数57
  • 官僚の責任

    官僚の責任

    古賀茂明

    PHP新書

    官僚の生態を熟知する著者の提言

    官僚組織の生態、官僚という人種の思考回路が実によくわかりました。単なる官僚批判ではなく、官僚の生態を熟知して、彼らを使う方法論を提示。提言はエネルギー問題から年金まで多岐にわたっています。

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    投稿日: 2014.08.25
  • 池上彰の宗教がわかれば世界が見える

    池上彰の宗教がわかれば世界が見える

    池上彰

    文春新書

    知っているようで、実はよく知らない宗教の話

    読む前はイスラムの話に興味を持っていましたが、アメリカのキリスト教徒の思想が、実はイスラムよりも濃厚な「原理的」な思想だったとか、輪廻転生は熱帯の生命力から生まれた思想であるとか、池上さんの切り口は新鮮。 日本人の静かでしなやかな宗教観も本書で再認識しました。コーランに出てくる「天国」の描写が、現実の日本の風景と重なるなんて!だから自然災害が多く過酷なこの国に、人々は住み続けたのだろうな。

    2
    投稿日: 2014.08.25
  • ステップ

    ステップ

    重松清

    中公文庫

    主人公と周囲の人間との微妙な距離感までもが物語の魅力になるのはさすが!

     妻を病気で失い、一人娘を男手ひとつで育てていく物語。  話のプロットは一見「とんび」と似ていますが、こちらの話の舞台は東京、主人公も薄めのキャラクターに設定されており、孫娘に強い思い入れを持つ義理の父や、押しは強いが人情家の上司などキャラの濃い(笑)周囲の人間との微妙な距離感の中で賢一は悩み、亡き妻の写真と対話しながら、ときには周囲の助けを借りながら必死に娘を育てていく。  特に義理の父とのかかわりの中での気の使い方には、自分にも身に覚えがあり、「あるある」と思いながら読み進めます。  娘の何気ない表情に、結婚生活わずか3年で失った妻の面影を見たり、母が居ないがゆえに壁にぶち当たりながらも、見事に成長して乗り越えていく娘の姿に、読者の自分も涙ぐむのを抑えきれません。  物語のクライマックスは、新しい人物の登場と、娘との葛藤。そしてずっと支えになってくれた身内の死。命とは?生きるとは?色々と感じるものがあった本でした。

    0
    投稿日: 2014.07.17
  • 軍師の門 下

    軍師の門 下

    火坂雅志

    角川文庫

    読みだすと止まらない

     上巻にもまして一層面白く、一気に読んでしまいました。大河ドラマでは見事に端折られた(笑)鳥取城攻めも詳細に描かれています。  半兵衛の死後は、官兵衛と秀吉の人間関係が通奏低音として描かれ、巻の前半の高松城攻めから中国大返しの場面、あるいは終盤の官兵衛最後の大博打ともいえる九州戦線を含む、天下分け目の大戦は本当に読ませます。  秀吉がらみの歴史小説ではあまり詳細に語られない、朝鮮出兵についても紙面を割いていて、手元に半島の地図を見ながら読んで勉強になりました。  一方で、秀吉の負の一面までも見抜いていた半兵衛の生前の慧眼を通して、人間の二面性や人の世のはかなさも描かれ、キリシタンへの洗礼を受ける官兵衛の心情に心を寄せてしまいます。また上巻に登場した女性が下巻にもキーパーソンとして登場。張られた伏線の回収も見事と思います。

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    投稿日: 2014.07.03
  • 軍師の門 上

    軍師の門 上

    火坂雅志

    角川文庫

    竹中半兵衛と黒田官兵衛のダブル主人公

     大河ドラマに触発されて読んだ『官兵衛本』の中では、吉川英次の『黒田如水』とならぶ本だと思いました。もっともこの小説は、竹中半兵衛と黒田官兵衛のダブル主人公の構成です。  火坂さんの歴史小説は本当に読みやすい。私のように教科書で習った程度の戦国史しか頭に入っていない人間にも、政治的情勢や地理関係、登場人物の人間関係なども充分に理解できました。 登場人物の心情描写も巧み。上巻では半兵衛と官兵衛の人間関係の変化が通奏低音として描かれ、また信長・秀吉はじめ織田家の武将たちが、まるで自分と同じ時代を生きている者を見ているかのように、生き生きと描かれています。

    1
    投稿日: 2014.07.03
  • 限界集落株式会社

    限界集落株式会社

    黒野伸一

    小学館

    『田舎再生』小説の中でもピカ一です

    『あまちゃん』ブームの前から、都会の人間が田舎にUターン、Iターンして、地元のしがらみに揉まれながら、再生をするというスキームの小説は色々ありましたが、それらの小説に比べても、この小説は一味違います。巻末に膨大な参考文献が掲載されていますが、作者の綿密な取材に基づいたリアリティと、絶妙に残された田舎のノスタルジーがいい塩梅で混ざり合ってるからだと思う。黒野さんの小説は初めて読みましたが、テンポよく読めました。

    1
    投稿日: 2013.11.23
  • とんび

    とんび

    重松清

    角川文庫

    お国訛りが心にしみる

     瀬戸内の港町に生きた男の一代記。父親を知らないヤスさん、そして母親を知らない息子のアキラ。二人は街の人情にくるまれて、生きていく。おそらく広島県のどこかの町がモデルだろうと思うが、どの登場人物も魅力的。涙なしでは読めない重松節にあふれている物語です。岡山に住む自分には、ヤスさんの備後弁のセリフが心にしみる。  物語の山場は、思春期から青年期へ脱皮する息子アキラと父ヤスさんとの不器用なぶつかり合い。親の心子知らず、いや、子の心親不らず・・・自分も二人を見守る周囲の一人になった気持ちになって、やきもきしてしまい、最後には涙がホロリと流れてしまいました。

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    投稿日: 2013.11.18
  • サクリファイス

    サクリファイス

    近藤史恵

    新潮社

    さらっと読めるのに深い印象を残す数少ない本

     題材が自転車ロードレースをめぐる人間模様ということもあって、疾走感・躍動感がある。正直、面白すぎて昨日の夜は1時まで読み込んでしまった。オススメの本です!  『アシスト』というサイクルロードレース独特のシステムに魅力を感じ、主人公:白石誓が飛び込んだ世界。日本を代表するチーム「オッジ」の若手のホープへと成長した誓が直面する人間関係の軋轢、エースへの尊敬と疑惑、ライバルとの関係、夢のステージ、恋愛の古傷、どのエッセンスも魅力的。です。  読むものを共感させるのは、個人プレーでもない・かといってチーム競技とも言い切れない、ロードレースの世界の微妙な世界が織り成す人間の模様に生々しさ、人間臭さが漂っているからかもしれません。

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    投稿日: 2013.10.04
  • 私という運命について

    私という運命について

    白石一文

    角川文庫

    一人の女性の29歳から40歳までの揺れる10年を描いた、フィクションの物語

     主人公の女性の揺れる心が切ない。結婚に踏み切れなかった心情、純平との出会いと事件と別れ、運命をはじめから見定めていた人、そして結末・・・  描かれている時代が、自分の生きてきた時代とぴったり重なるので、ちょっと共感が持てる小説。

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    投稿日: 2013.10.04
  • オーデュボンの祈り

    オーデュボンの祈り

    伊坂幸太郎

    新潮社

    デビュー作にして伊坂ワールド全開!

    リアルとシュールが入り混じり交錯する伊坂ワールド全開。しゃべる案山子が居たり、人を殺してもいい存在?の「桜」がいるシュールな世界である、「荻島」。 物語の後半になって仙台と言うリアルな世界が絡んでくると、荻島がリアルで仙台の方がシュールな世界に感じてしまっている自分が居ます。

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    投稿日: 2013.10.04