にしむらさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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know
野崎まど / ハヤカワ文庫JA
分かりやすいストーリーと分かりやすい結末と分かりやすいオチ
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いきなり読み手の反感買いまくりな主人公らしき男が登場して読むのを止めようかと思いましたが、そこはそれ、わたしももういい大人なので最後まで読みましたさ。
そしたらなんでしょうね、これは、なんて読みや…すいんでしょ。分かりストーリーに分かりやすい結末に分かりやすいオチ。もちろんだからダメなんてことは全然無いので、SFがあまり得意じゃないと思っている人は、ライトノベルの延長だと思って読んでみるといいかも。
ただ、どちらかと言えば「何が書いてあるのかよく分からないけど、なんか凄いことだけは分かる」お話の方が、SFっぽい気がするのん。個人的には、ね。 続きを読む投稿日:2013.12.10
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空を見上げる古い歌を口ずさむ
小路幸也 / 講談社文庫
昔々、あるところ(北海道だけど)に、作家を目指す男が住んでおりました。
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昔話をします。
第29回メフィスト賞受賞作にして、小路幸也のデビュー作でもある本作が世に出たのは2003年4月、そう、もうデビューから10年も経つんだ。それに先立つこと6年の1997年5月、当時わ…たしがやっていた本の感想を載せていたHPを見たよ、というメールを小路さんからもらい、それ以来メールのやりとりをしたり、何回か実際に会ったり、最近ではtwitterで絡んだり?しながらのつきあいも、こちらはもう16年になる。
当時から小路さんは作家志望で、「小説すばる」の新人賞に応募しては、最終候補までは残るけど結局受賞は逃す、ということが何度かあり、本人は「決定力不足のサッカー日本代表と呼んでくれ」などと自嘲していたけれど、もちろん内心はいろいろと思うところがあったんじゃないかな。周りの我々(わたしのHPを通じて知り合ったグループ。その中の一人に後の海猫沢めろん先生もいたけど、それはまた別のお話)は無責任に励ますことしか出来なかったけど、少しでもそれが励みになっていたのなら嬉しいな。
そんな小路さんがメフィスト賞を受賞してデビューする、という話を聞いて、当時の我々は少なからず驚いたものだった。もちろんミステリ好きなのは知ってはいたけれど、だってメフィスト賞だよ? 舞城王太郎に佐藤友哉に西尾維新だよ? いったいどんな作品なんだ、早く読みたいぜ、というわけで、待ちに待った発売日の仕事帰り、当時の職場があった渋谷中の書店を巡り「今日発売の、小路幸也の『空を見上げる古い歌を口ずさむ』という本はありませんか? 今度のメフィスト賞受賞作なんですけど」と書店員さんに片っ端から尋ねて回る、というミッションをこなして遂に手に入れたのだった(口コミって大事よね)。
さて、こうして手にした小路幸也のデビュー作『空を見上げる古い歌を口ずさむ』なのだが、わたしの感想を書くのは控えよう(をい)。だって、もう何年もデビューを待望していて、今度こそはいけるかも、あれ? いつの間にかあの話は立ち消えに? みたいなことがあった後でようやく手にしたデビュー作だったのだから、冷静な感想なんて書けるわけがないのだ。ただ一つだけ言えるのは、ここから全てが始まり、そして10年経った今もまだ続いているのは、とても幸せなことなんだろうな、と言うこと。そしてこの先の10年、20年も、その作品で楽しませてくれることを期待してるぜ、義兄弟。 続きを読む投稿日:2013.12.14
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スマイリーと仲間たち
ジョン・ル・カレ, 村上博基 / ハヤカワ文庫NV
「スマイリー」と言っても、スマイリー小原とは関係ありません
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「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」、「スクールボーイ閣下」に続く「スマイリー三部作」の完結編。ソ連情報部の「もぐら」(二重スパイ)により壊滅的な打撃を受けた<サーカス>(英国情報部)を舞台に…した一作目から読み続けた読者としては、本作ラスト近くでのスマイリーとピーター・ギラムの会話には感慨深いものがありました。ま、「事件の背後に潜むカーラの驚くべき秘密」が、思いの外しょぼかったのは置いとくにしても(をい)。
ただ、まあ、手強いですね、ル・カレは。わたしも、今読み返したら最後まで読み通せるかどうか分かりません。分かりませんが、新訳で再刊行された「ティンカー」から再読したい気持ちが無いでも無いです(どっちやねん)。
そんなわけで、時間と体力があり余ってる人は、まずは「寒い国から帰ってきたスパイ」から読んでみるといいんじゃないでしょうか。あと早川書房は「リトル・ドラマー・ガール」や「パーフェクト・スパイ」も早いとこ電子書籍化するように。 続きを読む投稿日:2013.10.26
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ニコニコ時給800円
海猫沢めろん / 集英社文庫
作者とはトモダチなので依怙贔屓しますが何か?
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なんせこないだ(と言っても、もう1年以上前か)、この作品の重版で得た印税でお酒奢ってくれたし。ま、わたしも紙の本と電子書籍版と両方買いましたけどね。
ともすると、その作品よりも今までの半生の方が面…白いんじゃないか?と言われがちな作者ですが、本作は良い意味で「肩の力」が抜けていて、その分、万人ウケする作品になっているのではないか、と。ホストから広告屋、ラジオ作家、DTPデザイナー、と多種多様な職業の経験が生かされているんじゃないかな。でも、やっぱりガチなSF長編とか読んでみたいかも、などと読者は勝手なことを思うのでした。
なんだかそのうち、サクッと芥川賞くらい獲ってしまいそうだけど、そしたらまた奢って下さい。 続きを読む投稿日:2013.10.17
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恋する女たち
氷室冴子, 峯村良子 / 集英社コバルト文庫
♪だけど好きよ 好きよ好きよ誰よりも好きよ
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表紙の写真は若かりし頃の斉藤由貴です。大森一樹監督で映画化された時のヒロインでしたね。共演していたのが高井麻巳子(現・秋元康の嫁)、相楽ハル子(元・ビー玉のお京)、斉藤由貴演じるヒロインが片思いする…野球部のエースが柳葉敏郎(!)だという辺りが時代を感じさせます。
とは言え、確かに配役は時代を感じさせますが、原作の小説の方はさすが氷室冴子、普遍的な物語はいくら時を経ても決して古びないことを教えてくれます。女子高校生三人組の三人それぞれの恋の行方は、同世代の若い読者にも、あるいは高校時代なんて遙か昔になってしまったもう若くない(失礼)読者にも、共感できるところがあるのではないでしょうか。
シリーズ物が多い作者ですが、本作はこの1作で完結しているので、初めて読む氷室冴子作品としては取っつきやすいかと思います。読んでみて気に入ったら、「クララ白書」、「アグネス白書」あたりもお薦めです。
少女小説でデビューし、一般小説に進む作家が多い中で(例えば山本文緒とか唯川恵とか。桜庭一樹はちょっと違うかな?)、少女小説家としての生涯を全うした作者ですが、やはり51歳という早すぎる死は残念であり、このまま忘れられてしまうのは惜しい作品ばかりだと思います。そう、『少女小説家は死なない!』のです。 続きを読む投稿日:2014.02.14
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尖閣喪失
大石英司 / 中公文庫
憂鬱なリアルか、空虚なフィクションか
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初出がハードカバーだったので、ちょっと食傷気味のこの作者のノベルス作品よりはマシかな、と思って読んでみた。読み終えて甚だすっきりしないラストだが、その分リアルに感じられ、如何にもありそうな話ではある…かな。
唯一、今の日本にはこんな腹の据わった政治家はいるのか?という点がリアルからはほど遠く、もしもこの小説に描かれているようなことが実際に起こったなら、きっともっと醜態を晒しまくるんだろうな、「気持ちの悪い政治家ども」は。
尖閣が奪われた?いけいけどんどん力尽くで奪還するぜ!的なお話を期待している人には薦めません。 続きを読む投稿日:2013.10.16