
スマイリーと仲間たち
ジョン・ル・カレ,村上博基
ハヤカワ文庫NV
「スマイリー」と言っても、スマイリー小原とは関係ありません
「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」、「スクールボーイ閣下」に続く「スマイリー三部作」の完結編。ソ連情報部の「もぐら」(二重スパイ)により壊滅的な打撃を受けた<サーカス>(英国情報部)を舞台にした一作目から読み続けた読者としては、本作ラスト近くでのスマイリーとピーター・ギラムの会話には感慨深いものがありました。ま、「事件の背後に潜むカーラの驚くべき秘密」が、思いの外しょぼかったのは置いとくにしても(をい)。 ただ、まあ、手強いですね、ル・カレは。わたしも、今読み返したら最後まで読み通せるかどうか分かりません。分かりませんが、新訳で再刊行された「ティンカー」から再読したい気持ちが無いでも無いです(どっちやねん)。 そんなわけで、時間と体力があり余ってる人は、まずは「寒い国から帰ってきたスパイ」から読んでみるといいんじゃないでしょうか。あと早川書房は「リトル・ドラマー・ガール」や「パーフェクト・スパイ」も早いとこ電子書籍化するように。
0投稿日: 2013.10.26
これは王国のかぎ
荻原規子
C★NOVELSファンタジア
ファンタジー作品の入門にうってつけの一冊
今、<日本三大ファンタジー>シリーズを選ぶとすると、小野不由美「十二国記」シリーズ、茅田砂胡「デルフィニア戦記」シリーズ、上橋菜穂子「守り人」シリーズあたりが有力かと思いますが(なお、反論は認める)、荻原規子の「勾玉」三部作や「西の善き魔女」シリーズもいいところまでいくんじゃないでしょうか? 本作はそんな荻原規子作品を初めて読む人にも、「ファンタジー? 所詮子供向けで大人の鑑賞に堪えるようなものじゃないだろ?」と分かったようなことを言って敬遠しがちな「いい大人」な皆さまにも、うってつけの一冊となっております。 いや、確かに上↑の凡庸で陳腐な「書籍説明」を読んだ限りでは、そう思ってしまうのも無理も無いことだとは思いますが、そうやってこの先もずっとこのジャンルの作品を避けて通るのは、もったいなさすぎて<もったいないおばけ>が出ますよ? 取りあえず、だまされたと思って読んでみるのをお薦めします。電子書籍なら表紙イラストが恥ずかしくて買い辛いこともないし、1巻で完結してるので読みやすいしね。あと新潮社は「十二国記」の新作書下ろし長編を早く出すように。「十二国記」の新作書下ろし長編を早く出すように。(大事なことなので2回書きました)
1投稿日: 2013.10.26
赤朽葉家の伝説
桜庭一樹
東京創元社
ま、「渾身の雄編」と言うよりは、大河小説的ホラ話だよね
にゃんぱすー。 富士見ミステリー文庫から出た「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」を読んだ時は、おいおいおい、ライトノベルのレーベルからこんなん出していいのかよ、これ中学生が読んだらトラウマになるんじゃね?と思ったのも今となっては懐かしい想い出の桜庭一樹の代表作、と言ってもいいのではないでしょうか。 第60回日本推理作家協会賞を受賞したことからも分かるとおり、ミステリ的な要素も多少はありますが、どちらかというとファンタジー、それもマジックリアリズム寄りのホラ話、もとい、年代記で、今のところ個人的にはこの作者のベスト作だと思います。 なお、桜庭一樹は「青年のための読書クラブ」も好きなので、新潮社は早く電子書籍化するように(ナゾの上から目線)。
2投稿日: 2013.10.19
800
川島誠
角川文庫
今、800m全力疾走なんかしたら確実に死ぬね
三浦しをんの「風が強く吹いている」や、佐藤多佳子の「一瞬の風になれ」などの、<爽やか青春陸上競技もの>(今、適当に名付けた)の元祖、とまでは行かないまでも、先駆的な作品であるのは間違いないと思います。 もちろん川島誠なので、なんちゅうかこう、もっと「ギラギラ」してると言うか、「爽やか」なだけじゃないと言うかそんな感じですが、スポーツ物が好きな人は読んでみるといいんじゃないかな。 あと陸上競技物では、川上健一のマラソンを題材にした「ららのいた夏 」という作品があって、それもReader Storeで買えるのでそちらもお薦め。
1投稿日: 2013.10.18
ニコニコ時給800円
海猫沢めろん
集英社文庫
作者とはトモダチなので依怙贔屓しますが何か?
なんせこないだ(と言っても、もう1年以上前か)、この作品の重版で得た印税でお酒奢ってくれたし。ま、わたしも紙の本と電子書籍版と両方買いましたけどね。 ともすると、その作品よりも今までの半生の方が面白いんじゃないか?と言われがちな作者ですが、本作は良い意味で「肩の力」が抜けていて、その分、万人ウケする作品になっているのではないか、と。ホストから広告屋、ラジオ作家、DTPデザイナー、と多種多様な職業の経験が生かされているんじゃないかな。でも、やっぱりガチなSF長編とか読んでみたいかも、などと読者は勝手なことを思うのでした。 なんだかそのうち、サクッと芥川賞くらい獲ってしまいそうだけど、そしたらまた奢って下さい。
0投稿日: 2013.10.17
尖閣喪失
大石英司
中公文庫
憂鬱なリアルか、空虚なフィクションか
初出がハードカバーだったので、ちょっと食傷気味のこの作者のノベルス作品よりはマシかな、と思って読んでみた。読み終えて甚だすっきりしないラストだが、その分リアルに感じられ、如何にもありそうな話ではあるかな。 唯一、今の日本にはこんな腹の据わった政治家はいるのか?という点がリアルからはほど遠く、もしもこの小説に描かれているようなことが実際に起こったなら、きっともっと醜態を晒しまくるんだろうな、「気持ちの悪い政治家ども」は。 尖閣が奪われた?いけいけどんどん力尽くで奪還するぜ!的なお話を期待している人には薦めません。
0投稿日: 2013.10.16
