luteceさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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束縛の呪文
夜光花 / キャラ文庫
すっきりしない読後感
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主人公の性格造形とか二人の関係が複雑すぎて、話にはまれなかった。ちょっと理屈っぽい感じの話ですね。執着受けはテーマ的に悪くないんだけど、この人の作風には少しそぐわないと思う。いろいろ挑戦するのは悪く…ないとはいえ。この作者は、コメディタッチの軽めの甘い話のほうが向いている気がする。心理の襞を深く追求しないほうが無難……?
一応ハッピーエンドだけれど、すっきりしない読後感でした。 続きを読む投稿日:2014.07.13
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グイン・サーガ132 サイロンの挽歌
宵野ゆめ, 天狼プロダクション / ハヤカワ文庫JA
パロ編よりは面白かった
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栗本薫以外の作家によるグイン正伝第二弾。今回はパロではなく復興途上のサイロン、『七人の魔道師』の描いた災禍、黒死病にみまわれたケイロニアのその後。
少しずつ着実に復興の道を歩みつつあるサイロンにお…いて、またしても怪しげな陰謀がうごめきだす。そこここに巨大なトルク(鼠)が現れては人々が襲われるという事件が発生。まじない小路の魔道師たちがそろって消失する。ついにはトルクによって死者も出てしまい、そのうち黒死病にまつわるある黒い噂が人々のあいだに広まって……。
パロ編よりはすらすら読めたけれど、やっぱり違和感が拭えませんね。この辺りは仕方がないとはいえ、やっぱり往時の栗本グインを読んでいた頃のワクワク感はない。話はわりとすんなり進んでいくのだが、そんなに簡単でいいの? と思うこともしばしば。民衆が暴徒と化すくだりについても少し安易な気が。栗本さんだったら多分このエピソード書くだけに、もっと紙幅とっているよね。まあ話が進むだけ、終わりに近づくだけいいのかもしれないが。確実に完結してくれそうではある。栗本グインの最大の不満は要するに未完で終わってしまったことに尽きるので。
でも本巻一冊での読後感は、可もなく不可もなくってところ。 続きを読む投稿日:2014.07.06
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グイン・サーガ131 パロの暗黒
五代ゆう, 天狼プロダクション / ハヤカワ文庫JA
完結が第一
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話のテンポは速くてサクサク進んで行くのに、不思議とわくわく感がない。文章もそこそこのレベルなのに、なんだかのっぺりとして平板、メリハリに欠けるというか無味乾燥というか。エンタテインメントであるはずが…あまり楽しめず、読みながら退屈してしまうこともしばしば、栗本グインは一巻2時間とかで読めたのに2日もかかってしまった。確かに作者本人も言うように、故人の模倣なんてどだい無理だから自分のものとして書くしかないにしても、これはないなと思うことが多く、違和感を禁じ得ない。二次創作同人と見なすとしても少し苦しい。特に主要キャラの喋り方くらいはもう少しうまく模倣して欲しかったです。栗本グインへのリスペクトという意味でも。イシュトのしゃべり方がなんだか違う気が……。あとアドリアンってこんな馬鹿だったっけ。しかも完全モブ扱いって酷すぎる。リンダに言い寄ってたあの頃は好青年だった記憶。
続編を書いた勇気に賛辞を送りたいとは思うが、古参のファンとしては複雑な気持ち。宵野ゆめさんのパート読んでから、続きを読むか判断したい。☆は3つけたけど実感としては2.5くらい。いろいろ残念。 続きを読む投稿日:2014.07.06
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東西不思議物語
澁澤龍彦 / 河出文庫
東西比較から見えてくるもの
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主に西欧と日本に伝わる不思議な話を比較紹介したエッセイ。不思議な話は怪談だったり、近年の都市伝説的なものだったり、神話伝説に類するものだったり、歴史上のエピソードだったりとさまざま。二頭蛇、うつほ舟…、姑獲鳥、天女の接吻、邪視、栄光の手、死の舞踏、神隠しなどなどと話題は多岐にわたる。
澁澤のエッセイのうちでは、かなり軽めで読みやすい方だと思うが、自分には少し物足りなかったです。洋の東西を問わず、似たような伝承や出来事が記録され、伝えられてきたというのは、思うだに不思議な感じがする。結局のところ、人間に想像できることというのは、国や文化は違えど大同小異ということなのかもしれない。 続きを読む投稿日:2014.07.06
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胡桃の中の世界
澁澤龍彦 / 河出文庫
出てくるテーマがいちいち興味深い
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澁澤龍彦のエッセーの中では手帖シリーズと『幻想博物誌』が今のところお気に入りなのだが、本書もいいですね。澁澤の博覧強記ぶりが実に際立っている。どんだけ色んな本読んでいるんですかと読むたびに思う。結晶…、螺旋、宇宙卵、賢者の石、動物誌、紋章、怪物などなど自分好みのテーマが盛りだくさん。形象の想像誌という点において、夢の宇宙誌に連なるエッセイ。いつもながら、文学作品や哲学からの引用を交えて語るところはひどく衒学的だが、まったく嫌味がない。やっぱり自家薬籠中のものにしているからですかね。 続きを読む
投稿日:2014.07.06
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幻燈辻馬車(上) ――山田風太郎明治小説全集(3)
山田風太郎 / ちくま文庫
佐幕派ならニヤリとすること間違いなし
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前作が西南戦争を背景として、明治初年の警視庁にまつわる群像劇を連作短編の形式で綴ったのに対し、本作は自由民権運動の高まりをバックに、明治十年代の人間模様を描いた長編。主人公は元会津藩士で、辻馬車の御…者を務める干潟干兵衛。やはり判官贔屓というか、今回も歴史の敗者の側に視点を置いている。干兵衛は、辻馬車の御者となる以前は会津藩の町奉行同心であり、西南戦争にも息子と一緒に参加したという経歴を持つ。御者という仕事柄さまざまな人々と関わりあううち、自由民権運動の壮士の若者らに好感を抱くけれど……。関わるまいとするのに、引き寄せられるように否応なく時代の流れに巻き込まれていく。
前作に続き、山川健次郎やその妹でアメリカに留学した捨松さんなど、幕末維新でも特に佐幕派の人物が登場するたびににやりとする。怪談的要素が強く、荒唐無稽であるのにさほど違和感を感じさせずに一気に読ませる手腕はさすがと思わせる。
続きを読む投稿日:2014.06.28