luteceさんのレビュー
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明治十手架(下) ――山田風太郎明治小説全集(14)
山田風太郎 / ちくま文庫
破天荒
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『明治十字架』完結。短編二編を合わせて収録。
「明治かげろう俥」は、大津事件でロシア皇太子を救った功により金持ちとなったまではよかったが、おかげで著しく運命が狂ってしまった二人の車夫を描いたもの。…この作品はところどころ飛躍があって、やや完成度が低いように思われる。売笑婦を描く時の山風の筆致はえげつないというか、ひどく生々しい感があって、自分はちょっと苦手だったりする。
最後の短め短編「黄色い下宿人」はロンドン留学中の漱石がホームズと対決するという破天荒なストーリー。ストーリーから推して知るべしかもしれないけれど、こちらも微妙な出来でした。 続きを読む投稿日:2014.07.27
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女王蜂 ~捕縛~
水戸泉, 有馬かつみ / リンクスロマンス
女王蜂 ~捕縛~
水戸泉, 有馬かつみ
黒さが足りないかな
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強○されてるところをハメ撮りされちゃったり、弟に見られながらされちゃったりと、いろいろ過激だけれど、思ったほどはダークな要素もなく、普通の話でした。特にキャラが狂ってたり壊れてたり、歪な関係が描かれる…わけでもない。こういった傾向の話も水戸先生は多いけれど、今回はそれらと比較すればわりと健全な(精神的に)ストーリー。
受の那智がトラウマというか水恐怖症なのだけれど、それを除けば自立していてかなりしっかりしているせいかな、と思います。それもあってか、水戸泉先生の持ち味であるエロ要素はたっぷりあるわりに、意外と普通だと感じましたね。どちらかというと甘めだと思う。
ストーリー上、気になったのは恩師の人とのくだりが、都合が良すぎるという点ですかね。偶然って作者にとって本当に都合がいいですよね。そんなには悪くないけど、ハマる感じでもないかな。黒さが足りないのかもしれないですw 続きを読む投稿日:2015.04.10
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愛罪の代償
水戸泉, 鵺 / 花丸文庫
病みすぎ
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ヤンデレがお好きな作家さんのようですが、こちらの作品はもう完全に狂ってますね。病みすぎですね。
ヤンデレを突き詰めてみたかったとでもいうかのような筆致と文章。
さすがは花丸BLACKかな。
攻めが完全…に壊れています。
密林などで評価高いけれど、私にはそんなに良いとは思えませんでした。
コレ多分ハッピーエンドだろうと思うのだけれど。メリバってやつなの……か?
この先二人がどうなったかだけは、非常に気になるところです。
攻めは女嫌いなのですが、そういう設定にしたから仕方がないとはいえ、女性に対する嫌悪感が描かれていたり、女性との絡みがあったりするのは苦手なので、その点でもあまり好きになれませんでした。
続きを読む投稿日:2015.04.10
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妖精メリュジーヌ伝説
クードレット, 森本英夫, 傳田久仁子 / 現代教養文庫ライブラリー
一族の栄光と悲惨
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リュジニャン一族の物語であり妖精メリュジーヌの物語。史実、騎士道物語とケルト系の伝承が面白い具合に混ざり合っている(メリュジーヌの母は妖精モルガン・ルフェイの姉妹)。中世に成立したメリュジーヌ物語に…は二つあるが、こちらは時代的に少し新しいクードレット版。ベリー公ジャンの依頼になるというジャン・ダラス版も気になる。ちなみに『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』の3月の絵の後景にリュジニャン城と竜の姿のメリュジーヌが描かれている。
13章の(アルメニアにあるという)メリオールとハイタカの城のエピソードは、同時に読んでいたマンデヴィルの旅行記にも記述がある(16章)。中世では有名なエピソードだったのかな?(要確認) 続きを読む投稿日:2014.07.12
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毒薬の手帖
澁澤龍彦 / 河出文庫
西洋毒殺史点描
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古代から現代まで、毒薬と毒殺をテーマにたどった歴史点描。19世紀以降、近代化以降は毒薬もなんだか魅力が薄れてしまうというか、無機的で無味乾燥な印象。戦争において、大量殺戮の道具として使われるに至って…は、ひたすら非人間的・機械的なだけ。
古代ギリシャ・ローマ、チェーザレ・ボルジア、カトリーヌ・ド・メディシス、ブランヴィリエ侯爵夫人(サディズム論となると澁澤の筆が走ってる光ってる)、モンテスパン夫人、ラ・ヴォワザン、19世紀におけるさまざまな毒殺事件、現代の大量殺戮兵器としての毒などが扱われている。
モンテスパン夫人のエピソードは『黒魔術の手帖』にも出てくる。17世紀のフランス宮廷では砒素の毒が大流行したらしい。17世紀は疎いのでもう少し勉強します……。
ところで、澁澤の理想の人物はチェーザレ・ボルジアなのだそう。 続きを読む投稿日:2014.07.06
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明治波濤歌(上) ――山田風太郎明治小説全集(9)
山田風太郎 / ちくま文庫
登場人物が豪華でニヤリ
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上巻は、咸臨丸に乗り組んで勝らと共に渡米した経験をもつ幕臣吉岡艮太夫、北村透谷と自由民権運動(+南方熊楠)、そして樋口一葉と『たけくらべ』にまつわる三編を収録。短編連作ではなく、時代もまちまちなオムニ…バス。幕末・明治の有名人が登場するたび、いちいちニヤリとするのは相変わらず。明治の文化や歴史を知りたい場合は、下手な資料本よりこの山田風太郎の明治ものを読んだほうが却ってためになる気がする。若干、判官びいきと思われることもあるけれど。 続きを読む
投稿日:2014.07.05