
朱黒の仁 壱
槇えびし
Nemuki+コミックス
歴史は誰が作る?
2016年の大河ドラマと思いきり被ってない?とビックリしたくらい、時期はピタリと当てはまる作品。 ただこの作品は、絵やストーリー展開に好き好きが出ると思いますが、幸村の真田丸の活躍だけを描いたものではありません。(真田丸の話は1巻で終わります) 作者はあとがきにて、その時代に生きている武士の「生き様」よりも「死に様」を描きたかったと書いていらっしゃいます。普通ならば主人公が華々しく活躍する場面だけを取り上げがちですが、影の薄い脇役に近い人物を取り上げることで、この裏にはこういう人物もいたのかと関が原の戦いや大阪の陣の戦いに更に興味がわいてきた作品でした。 (ちなみに話は幸村の息子である大助目線が多いかもしれません)
2投稿日: 2016.06.19
口入屋兇次 1
岡田屋鉄蔵
グランドジャンプPREMIUM
人と人との縁と、心の繋がり
骨太な画風と作者の過去の作品にBL傾向があることから、パッと見では好き嫌いが分かれると思います。 でもこの作品は過去の作品と違ってBL要素はなく(今のところはですが)、口入屋を始めとして彼に従う周囲のキャラクター達のコミカルさと冷淡さのギャップに、いつの間にか引き込まれていました。 江戸の人情物をコミックで読んでみたい、気分をスカッとさせしたい方が読むには丁度よい作品だと思います。
2投稿日: 2016.06.05
飯盛り侍
井川香四郎
講談社文庫
過去も現代も、栄養と健康は重要ですネ
現代でも普段は表に出ることは少ないけど、非常に重要な仕事である賄い方(こういう言い方はしないかしら?笑)の弥八のお話。 少し出来すぎじゃない?と思える場面がいくつかあったので、それで星一つマイナス。 それでもテンポ良く進む話は軽快で、現代よりも食材が極端に少ない時代にあって、手元にある代用品などで兵士の栄養や健康のことを考えられるのは素直に見習いたいの一言でした。
2投稿日: 2016.05.18
天下、なんぼや。
吉川永青
幻冬舎単行本
人生我慢の連続
鴻池財閥の始祖である鴻池新六の生涯記です。(エピソードにフィクション・ノンフィクション色々ありますが) 鴻池といえば海運と新田しか出てこない程度の知識しか無かった私には、実は清酒(当時は濁り酒)の杜氏から身を起こしたという事は結構意外でした。 タイトルがタイトルなので「とにかく儲ける」というスタンスなのかと思いつつ、実はもっと深いこと、大きなことを指していたのだなと読了後に感慨深いものがありました。
2投稿日: 2015.10.17
海将(上)
白石一郎
講談社文庫
「海将」と「海商」の狭間で見たもの
歴史上では武功よりもキリシタン大名として名前を聞いたことがあるという方が多いかと思われる、小西行長の半生を描いた作品。 実際、私も作品を読むまでは「確か居たかも…」程度の知識しかなく、小西行長が武家出身ではなかったことに先ず驚いたくらいです。 ですが小西一党、宇喜田家、羽柴家のトライアングルに置かれ、様々な出来事に心が浮つき、ときに足掻く様は、何事もそつなくこなしてしまう彼の天性の才能がそうさせるのかと、違う意味で感心してしまいました。 最後は中途半端に終わってしまったと作者のあとがきにあるように、全てを読んだ後に肩すかしというか少々物足りなさを感じるのはやむを得ないかと。
2投稿日: 2015.07.04
闇の狩人(上)
池波正太郎
角川文庫
2つの「闇の世界」はどう変化するのか?
盗賊という闇の住人と、金で人を殺めることを請け負う闇の住人。 同じ漆黒でも決して相まみえることのない世界なのに、自身の過去が「闇の世界」に消え失せそのことを哀れんだという接点から、2つの闇が今後どのような変化を起こすのか、先が非常に楽しみです。 ちなみに池波先生の描かれる「何か放っておけない人」は、読み手までついお節介を焼きたくなる気分になってしまいます。(笑)
2投稿日: 2015.05.28
虹の刺客(上) 小説・伊達騒動
森村誠一
講談社文庫
地獄の縁から魑魅魍魎の宴を見ることができたら、こんな感じだろうか
歴史に有名な「伊達騒動」を描いた長編小説です。 読み始めて数ページ目から、幕府を専横する酒井と伊達藩一族のドロドロ劇が始まっています。 若くして伊達藩藩主となった綱宗のことを本気で諫め、伊達藩の行く末を本気で憂慮している人物がこの中にいるのだろうかと思うくらいに、ほぼ全員が私利私欲に走っています。 尤も綱宗も典型的な三代目&剛毅な性格が災いしているので、己が騒動の根本であることを自覚していたのかもアヤシイのですが・・・(苦笑) まだ上巻なので、各の思惑などが明らかになる下巻の展開が楽しみです。
3投稿日: 2015.04.18
謙信の軍配者(上)
富樫倫太郎
中公文庫
幼い約束が果たされたとき・・・
大河ドラマにもなり、「敵に塩を送る」の諺の由来となっている武田信玄と上杉謙信。 ですがこの作中では、そのような温情らしき逸話は出てきません。むしろ憎みあっていたと言って良いほどです。尤も時代背景を考えれば、物語の流れの方が自然かも知れませんが。 そのような強烈な主を持つ山本勘助と曽我冬之助。特に曽我冬之助は物語では存在が霞みがちです。ですが物語が進むにつれ、過去のシリーズにちりばめられていたキーがストンと昇華されていくような感覚を覚えました。 先にレビューを書かれている方の仰るとおり、「早雲の軍配者」から読むことをお勧めします。
1投稿日: 2015.04.05
蜩ノ記
葉室麟
祥伝社文庫
人の欲望という汚泥の中に咲く蓮の花
残された時間は三年。もし自分が同じ立場になったら、どう過ごしただろうか。 自分が死ぬ日にちまで決まっているのに、決して取り乱さず淡々とやるべきことをこなす事は出来ただろうか。 武士らしく人間らしく生きる秋谷や、いつも真正直な源吉らに尊敬の念すら覚えました。
3投稿日: 2014.08.23
大名やくざ
風野真知雄
幻冬舎時代小説文庫
お江戸版サクセスストーリー?!
血筋はそこそこ容姿も悪くないが性根はどっぷりヤクザな虎之助が、ひょんなことから藩主を狙うというストーリー。 なかなかに思いつかない&あり得ない設定が斬新で楽しめましたが、なにより虎之助の「竹を割ったような性格」に、事が起きる度にスカッとしました。
2投稿日: 2014.08.23
