N.Yokoyamaさんのレビュー
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ロウソクの科学
ファラデー, 竹内敬人 / 岩波文庫
ノーベル賞受賞者推薦の書
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電気で有名な英国の科学者マイケル・ファラデーが、青少年のために行ったクリスマス講演会の講義録をもとに出版されたものである。
この本は、昨年ノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏が、化学を志すきっかけとなっ…たものとして有名になり、自分もその影響で購入した。
ファラデーの講義録は、さすがに青少年向けとあって非常にわかりやすく、当時の一般社会への科学啓蒙に対する情熱が伝わってくる。「ロウソクの科学」という訳で現代でも「ロウソクの化学史」といったようなところだが、内容はロウソクの話から広がって、気体の電気分解や酸化・還元といった化学の興味深い内容に詳しく触れている。
現代では中学の理科で習うような内容だと思うが、当時の青少年たちからしたら、これは科学の最先端の内容だろうと思う。本書にも、当時の子供達になったつもりでという記述があったが、当時この講義を聴いた子供たちは本当に衝撃的な印象を受けたに違いない。
本書は、ファラデーの生涯についても納められており、階級支配のあった当時の英国でしがない印刷工が、王立研究所の研究者になる話は非常に印象的だった。
幸運もあったろうが、ファラデーの科学に対する情熱が、様々な障害を乗り越える原動力になったのだろう。今からでもこんな情熱を燃やしたくなってしまった。確かにノーベル賞受賞者が推薦する本だとなぜか感心し、読んで損はないと思った一冊だった。 続きを読む投稿日:2020.05.29
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英語教育の危機
鳥飼玖美子 / ちくま新書
今タイムリーな内容だと思った。
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最近、大学入試の制度を見直すとかいうことが話題となり、特に英語に関して様々な意見が出ているので、興味が湧いて読んでみた。
英語に関しては、昔から学校英語は使い物にならないとか文法重視で訳読しかしない…から会話ができないとか批判にさらされてきたの知っている。本書に書かれているように、英語教育というのは会話ができれば良いというものでもないと自分も思う。本質を見失っているため、英語教育がおかしな方向に向かっているのだろう。
今後はTOEICとか民間の英語の試験を大学入試に導入するという話が出ているが、そもそも目的の異なる試験で学力を測るというのも変な話なのかもしれない。今の入試などの議論は、グローバル人材の育成とかで企業というか経済界の意向が反映されるものになっていこうとしていると感じた。
小学校から英語の授業を作るとか、先生の方も大変なのではないか。本書では、教育の目的として文部科学省で目指している学力などが述べられていたが、そこまでしても一向にレベルが上がらない状況とその原因や問題点が述べられている。本書の問題提起に対して、今後の政府の対応が英語教育の未来を左右するだろう。 続きを読む投稿日:2020.07.20
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宇宙は「もつれ」でできている 「量子論最大の難問」はどう解き明かされたか
ルイーザ・ギルダー, 山田克哉, 窪田恭子 / ブルーバックス
量子力学は面白い
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量子論の謎であった「もつれ」について、その黎明期から現在まで、物理学者たちにどう語られてきたかが述べられている。有名なアインシュタインとボーアの論争や、EPR論文についての様々な物理学者の反応、さらに…は「実在とは」という問いに関して、エピソードを交えながら物語風になっていて面白かった。
最初、これは物理学の本だと思って購入したのだが、特に量子論に関する詳細な記述があるわけではなく、個人の書簡や会議での記録、取材をもとにした科学史みたいなものだと思った。ただ、それで期待はずれだったというわけではなく、著名な物理学者の様々な側面が見えて興味深かった。
エーレンフェストの晩年と死、ボームの終戦後の研究生活などは結構衝撃的で、読んでいて胸にくるものがあった。また、ボーアがなかなかコペンハーゲン研究所の独裁者という感じで、それまでの印象が変わってしまった。
21世紀に入り、実験技術も発達し、「もつれ」についての理解は前世紀に比べて大きく前進した。量子論は現代では情報理論だと言われている。波動関数は知識の束であり、物理学では局所的な実在というものは否定されている。
エピローグでのフックスの言葉は印象的だった。「量子論の構造は、物理学について何も語っていない。」、「量子論とは、我々が知っていることを記述する形式的なツールだ。」
量子力学から情報理論を切り離せば何が残るのかというフックスとルドルフの問いはこれからも議論されるのだろうか。 続きを読む投稿日:2020.07.20
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彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?
森博嗣 / 講談社タイガ
ようやくWシリーズにたどり着いた。
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森博嗣Wシリーズ第1作
面白かった。ようやくWシリーズにたどり着いたという感じか。読んだ感じでは、このシリーズはミステリーだとは思えないので、SF小説ということにした。熊の魔法がミステリー要素な…のかわからないが...、まあ、なんでも面白ければ良いと思う。
ウォーカロンと人間が共存する世界。舞台はどうもあのミステリーのシリーズの200年後くらいだと思うのだが、未来であることは確かだろう。年代的には100年シリーズの後になるような感じだが...。
新たな主人公、ハギリ・ソーイ博士が登場、やはり独特なキャラクターだと感じる。レギュラーになりそうなウグイも魅力的なキャラクターだ。このシリーズも面白くなりそうな感じ。
ウォーカロンにミチルなんて名前が出てくるし、マガタ博士だと...。今後の展開が楽しみである。
今回は電子書籍にしたのだが、だから解説がなかったのだろうか。少し寂しい気もする。 続きを読む投稿日:2020.07.20
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魔法の色を知っているか? What Color is the Magic?
森博嗣 / 講談社タイガ
ハギリ先生って何者?
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森博嗣Wシリーズ第2作
主人公ハギリ博士の研究を巡って何やらキナ臭い展開が...。
今回はウグイに加えて博士の護衛に新たなアネバネという人物が登場。博士、自分の身が危険だということがわかってい…るのかなと思うような態度だが、まあ、一研究者としてはこういうものなのだろう。
しかし、今回もドンパチで博士の周辺の方々は命の危険にさらされることになったが、これも博士の「名推理」で危機を逃れたということなのか。もしかしてこれがミステリー要素なのか...。このシリーズは色が関係するのかな。
まあ、とにかくストーリーは興味深くて非常に面白かった。様々な謎が次々と現れ、博士たちは何かの意思によって動かされているようにも感じる。いずれ、この謎も明らかになって行くのだろう。今後の展開が楽しみだ。
それからマガタ博士...、こんな時代にまで影響力を持っているとは、やはり並みの天才ではなかったようだ。 続きを読む投稿日:2020.07.25
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日本語に主語はいらない 百年の誤謬を正す
金谷武洋 / 講談社選書メチエ
日本語の文法がすっきり理解出来る。
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知り合いの英語の先生に薦められて読んだ。
明治時代以降、日本語の文法がいかに歪められて伝わってきたかが述べられている。この本を読んで、自分の長年の問題が氷解した。学校でも国語の時間に文法はあったが、…どうにも理解できないことが多く、疑問に思うことが多かったが、学校で教えられる文法も、日本語を日本語としてそのまま捉えるのではなく、外国語の文法に当てはめて解釈されることが多かったからだと思う。
そもそも、日本語の「主語」というものが、「動作の主体」だとかさっぱりわからない説明ばかり聞いてきたのだが、英語やフランス語のような明確なものではなく、それらの外国語に無理やり当てはめて出来たものだということがよくわかった。
本書は、日本語の文法が外国語という異質の言語を通して構成されてきた現状を述べ、日本語そのままの形で理解出来る文法が本来のものであると、その誤りを指摘している。まさに「100年の誤謬を正す」という通りだと思う。
どの説明も非常にすっきりしていて、目から鱗が落ちたように感じた。改めて日本語の文章というものを考えさせられる一冊だった。 続きを読む投稿日:2019.09.16