クラフト★ビア★マンさんのレビュー
参考にされた数
601
このユーザーのレビュー
-
火星の人
アンディ・ウィアー, 小野田和子 / ハヤカワ文庫SF
読了後にぽっかり心に穴が
22
読了後、主人公マーク・ワトニーとの時間が終わってしまってぽっかり心に穴が空いてしまった感じ。
「火星に一人取り残される」という、言葉では言い尽くせない人類初の絶望的な状況を前に、皮肉の利いた軽口と、理…性的&実践的な知恵で生き延び続ける彼に魅了されてしまった。
そして彼と同じくらい優秀で行動力があり、手段を選ばないNASAの職員たちに心踊らされた。
餓死、窒息死、爆死、凍死、宇宙を永遠にさまよう・・という恐ろしすぎる状況を前に、巧みな知恵で逆境を乗り越えていくさまは、ワトニー個人の強さもさることながら、人類の知恵のすばらしさを感じざるをえなかった。終盤は手に汗握りすぎて、小説の中の人々と同じようにガッツボーズしそうになった。
ひとついうとすると、あんまり宇宙や科学に詳しくない人間には、用語が難しくて(難しい、というより何を指しているかよくわからない)、何が起きているか理解しにくいところがあった(googleで検索してもそれっぽいものが出てこないことも多い)ので、解説が欲しかったとは思う。というか、これは是非映画化して、映像で見たいと感じた。
ワトニー役は、「ゼロ・グラビティ」でかっこよく軽口をたたいていたジョージ・クルーニーがよいかな・・(ちょっと年代が合わないか)。
めちゃ面白かった。
普段SF小説読まない人でも十分楽しめる、ジャンルを問わない本質的な面白さがある本です。
【追記】
リドリー・スコット × マッド・デイモンで2016年2月映画化きまってたんですね!!絶対見る! 続きを読む投稿日:2015.05.25
-
進撃の巨人(16)
諫山創 / 別冊少年マガジン
利己と利他、個人と組織、家族と人類
8
寄生獣で田村玲子が受けていた大学の講義のテーマが「利己的な遺伝子」。進撃の巨人の前巻15巻でエルヴィンがザックレー総統に指摘された、人類よりも自分の夢、野望を重視する人間なのだという話。本16巻で、自…分の都合よりも一人でも多くの人間を救うことを重視するというピクシスの宣言。やむにやまれず大人たちの都合で人類の命運を負わされたエレンとヒストリアの立場。
そしてこの物語は進撃の巨人。なんてらしい選択をするのだろうなと。上橋菜穂子さんの「獣の奏者」の主人公エリンの導き出した答えに似ている。
利己と利他、個人と組織、家族と人類の対比も進撃の巨人を読む上で重要なテーマなのだと感じた。
余談だけど、相変わらずのヒリついた緊張と絶望描写は本当に突出した作品だなぁと感じた。コニーがすっかり危機的な状況に慣れきっててちょっと飽きてるのがウケました。 続きを読む投稿日:2015.04.11
-
僕のヒーローアカデミア 3
堀越耕平 / 週刊少年ジャンプ
学園ものがはじまるよ
3
学園という日常に突如殺意という非日常をもたらした敵(ヴィラン)との戦いはいったん終結。小気味よいテンポで話がすすむ。
と思ったらいきなりの学園祭編!なんかジャンプっぽさ満開!
もうちょっとヴィラン編…で各キャラの掘り下げやってもよかった気がするけどこんなものかなぁ。
クラス最強の轟くんの掘り下げは進んできて、出来との絡みがちらほら。あと麗日お茶子のヒーローをめざす理由も。
爆豪が安定の暴れっぷりであっという間に読み切ってしまった。
中表紙のイラストが素敵です。
はやく次読みたいんですけど。 続きを読む投稿日:2015.04.03
-
伝染(うつ)るんです。(1)
吉田戦車 / ビッグスピリッツ
シュールという概念を教えてくれた4コマの金字塔
8
私は、「行け!稲中卓球部」と「伝染るんです」の笑いが共有できる人はまず仲良くなれる自信がある。
もう発売から20年は経っているのだけど、今読んでも破壊力抜群。
当時中学生だった自分に「シュール」という…概念を教えてくれた本。
「ふつうこう」というフォーマットを逆手に取ったズレを楽しむメタ的な笑いというか、高度なコンテキストが共有できないと笑えない、洗練された作品。
サブカル的な作品ではあるのだが、吉田戦車の本作は安易なシュールではなくて、ズレの強弱がとんでもなくセンスがあったり、ふつう説明のあるキャラや場面の背景を徹底的に描かないことで生まれる奇妙な空気(ちょっと味付けするとホラーになりそうな感じは松本仁志の「ビジュアルバム」と共通した感じがする)がたまらなく上手で、サブカル耐性がない人でもしっかり楽しめるだろう。1巻は結構試し読みできるのでまずはそちらを(あと、是非2巻の最初の話も!これやばい)。
4コマに限らず、あらゆる漫画好きな人にはぜひ読んでほしいギャグマンガの金字塔。電車の中で読むと吹き出すと思うのでご注意を。
他の似たような作品とは一線を画している(相原コージの「コージ苑」は今読むと大分古くてつらいし(涙))。
というか本作の影響でシュールなギャグ漫画というのが流行ったのだと思う。シュールという言葉もこの漫画の頃からではなかったか?
伝染るんです、とはよく言ったものだ。 続きを読む投稿日:2015.03.31
-
IDEOの創造性は助け合いから生まれる
テレサ・アマビール, コリン・M・フィッシャー, ジュリアナ・ピルマー / ダイヤモンド社
ちょっと具体性に欠ける(それとページ数が少ない
7
世界で活躍するデザイン集団IDEOの組織と仕事の進め方を学べると思い購入。
「助け合いが大事」という論に終始しており具体性に欠ける論考。自分に置き換えて自分でも実践できる内容を期待していたが精神論くら…いしか学べなかった。
「相手が困っているポイント以外の助言は逆に困った事態を引き起こす」「助言も過ぎるとプロジェクトの乗っ取りになる」といった、「そりゃそうでしょうよ」といいたくなる一般論ばかり。
「○○自動車の案件では、こういったコラボレーションで窮地を脱した。これはあなたの会社でも参考になるだろう」とか、そういった情報が欲しかったのだけど、ついぞ出てこず。500円を超える本なので200ページくらいは当然あると思っていたら130ページくらいしかなかったりで全体としてちょっと期待外れな印象。
とはいえ、よいところもあったので抜粋。
「助言を求める人は、未完成の仕事の中身をありのままに伝えてもよいと思える人はだれか、考える必要がある」
「『私達』ではなく『私』という表現を繰り返し用いる人に対しては、首を傾げたくなる。一方、他社のおかげで成長できたと鷹揚に語る人は、自分もまた同僚に手を差し伸べられるはずだ」
IDEOに興味がある方はあまり期待しないで読んでみる、のはありかと。
1時間もあれば読めます。 続きを読む投稿日:2015.03.25
-
漂流する巨船 ソニー 週刊東洋経済eビジネス新書No.101
週刊東洋経済編集部 / 東洋経済新報社
ソニーの各時代の経営者たちの声(盛田さんはいない)
12
アプリのおすすめに表示されて衝動買い。
ソニーの各時代の経営者たちのインタビューがバラバラと掲載されている。
井深、大賀、出井の旧世代の経営者の、歴史を感じるインタビューに加え、
現在の経営層の平井…・吉田・十時の世代まで。
(盛田さんとストリンガーの記事はない)
記事の順番がバラバラしていて恣意的。なんでこの並びなのかはよくわからなかった。
出井さんの時代以降は厳しめの記事が並んでいる印象なのは、そういう風にソニーが見られているということなんだろうな。
不思議なのは、出井さんの記事の「デジタル・ドリーム・キッズ」という言葉には時代を感じるが、
井深さんの「アイデアやヒントはいくらでも転がっている。そのアイデアを具体的にしていくことのほうがよっぽど重要」という言葉には
まるで古さを感じないこと。
昔から本質は変わらないのだなぁと思った。
改めてソニーという会社がどんな道のりを歩んできたのか、
今どういう局面にいるのかをざざっと読みたい方におすすめ。 続きを読む投稿日:2015.03.23