かんけつさんのレビュー
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グッドラック 戦闘妖精・雪風
神林長平 / ハヤカワ文庫JA
「戦闘妖精・雪風」の続編
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一作目のラストでてっきり死んだと思っていたブッカー少佐だが、パイロットは死亡して頸の怪我はしたものの生きていて、今回は哲学談義を繰り出す。カウンセラーのフォス大尉とのジェムの正体を巡る議論のあたりは読…む人を選ぶかも。ジェムの正体を巡る話が増えれば、その分雪風の戦闘描写が減る。今巻はジェムの正体の謎解きが中心になっている。
一方、植物状態になっていた深井大尉は復活後は雪風とのコンビで一種の複合生命体のような状態とフォス大尉に評される。
さらに、フォス大尉は謎の異星知性体ジャムをプロファイリングする。
一作目で登場した光学異性体のジャム人間は、FAFに潜入し幽霊部隊となって破壊工作を試みる。このあたりはゾンビ映画っぽい雰囲気。そしてそれを手引きしたのが情報部のロンバート大佐。
第一作では相互理解不能な状態から、コピー人間によるコミュニケーション、今巻では直接対話?、ついには人類からの裏切り者が登場する。
ここで引かれたのでは続きを読まねばなるまい。 続きを読む投稿日:2015.09.05
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戦闘妖精・雪風(改)
神林長平 / ハヤカワ文庫JA
27年ぶりに再読
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謎の知性対ジャムの侵略を防ぐため、ジャムの開いた通路の先、フェアリイ星で防衛任務に当たっているFAFに所属する戦闘機雪風とそのパイロット深井零の活躍を描いた連作短編集。
<改>の前の版を読んだのは19…88年のこと。それ以来の再読なので、細かい内容はほとんど忘れていた。そんな中唯一はっきり覚えていたのが5篇目「フェアリイ・冬」のタイトル。主役の深井零中尉と雪風を脇役に回し、雪かき部隊の天田少尉が主役となる内容も意外と覚えていた。このエピソードがそれだけ印象的だったのだろう。雪かき部隊の天田少尉がなぜか勲章を受け、仲間からも浮いてしまう。叙勲の謎を探る零の親友ブッカー少佐・・・というお話。
人間を乗せると不可能だが雪風単体なら可能な超機動飛行、エヴァンゲリオンに登場したLCLに浸けておけば人間も乗れるかも・・・と思ったがそれではぎりぎりの安全率で設計するだろう戦闘機だと重量オーバーするか。何故人間が必要なのかという問は、これからさらに切実な問題になってくるかもしれない。 続きを読む投稿日:2015.08.04
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バナナ剥きには最適の日々
円城塔 / ハヤカワ文庫JA
平易な文章でも超難解
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「屍者の帝国」「Self-Reference ENGINE」に続く三冊目の円城塔。
ほとんど訳が分からず頭の中に?がいっぱい。最後まで読んで漸く分からないけれど面白いのかもしれないという心境に。解読翻…訳してくれる人がいりそう。 続きを読む投稿日:2016.07.01
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夏のレプリカ REPLACEABLE SUMMER
森博嗣 / 講談社文庫
誘拐犯の仲間割れと思われたが
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本作はこれまでと大いに変わっていて、西之園萌絵の親友吐萌が主人公視点。前作「幻惑の死と使徒」の偶数章であり、前作の奇数章で萌絵と分かれた後に吐萌が体験した誘拐・殺人事件の謎解き話。
犀川先生も出番は…少なく、萌絵も謎こそ解くものの大活躍とまでは行かないのである。
読み終わって、トリックは全然違うのだが某作品を連想したが、ネタバレになるかもしれないので黙っておく。 続きを読む投稿日:2017.12.17
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宇宙の眼
フィリップ・K・ディック, 中田耕治 / ハヤカワ文庫SF
ようやく読めた「宇宙の眼」
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ディック初期の佳作と評価は高かったものの、ハヤカワSF文庫になかなか収録されなかったせいで、私にとっては長いこと幻の作品だった。70年代後半から本格SFを読み始めた貧しい学生にハードカバーの世界SF全…集とか高すぎた。そんなわけでサンリオSF文庫の「虚空の眼」が出たときは嬉しかったものである。
両方読む前の想像だとブラウン「発狂した宇宙」的パラレルワールドものを想像していたのだが、ベバトロン陽子ビームなるものの謎な作用で事故に巻き込まれた人の精神が、意識を保った一人の精神世界に巻き込まれて恐怖体験するという物語。インナースペースものだった。過去に与えた影響は小さくなかったろうが、今となっては目新しさはないかも。とはいえ、ディックらしさはもちろんたっぷり。宇宙の眼は聖四文字で表されるえらそーな神様の眼のこと。神様との接近遭遇体験とか、世界からものが消えていく下りあたりとか、ほとんどギャグでチープでホラーである。 続きを読む投稿日:2016.06.11
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偶然の科学
ダンカン・ワッツ, 青木創 / ハヤカワ文庫NF
そういえば社会学者というのは一体何をやっている人々なのか?
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当方社会学を全く知らない門外漢なので、彼らがやってる実験、思考実験、そこからの推論は興味深いものがあった。
暴動の思考実験とか。100人の集団が暴動を起こすか否か、参加者がほかの参加者99人を常に観察…可能で、暴れ出すかどうかの閾値を持った個人(何人暴れてるから暴れようという)というモデルを設定した思考実験。一人の閾値設定を次の一人と入れ替えるだけで、集団の暴動が発生するかしないか変わってくるが、暴動を画起きた集団と起きなかった集団100人を外から調べるだけでは何が原因か分からないとか。
ほかにも、売り上げという結果だけですべてを決めるのも、売り上げ至上主義者の循環論法なんだな。売れたものが売れるものとか、そんな考えは未来の予測の役には立たないわけだ。
いろいろ考えさせられる本であった。
現実社会は複雑系すぎて未来予測は不可能、予測できたような気がするだけなのかもしれない。 続きを読む投稿日:2016.06.09