
ウィンダリア 童話めいた戦史
藤川桂介
角川文庫
ウィンダリア
小さな童話。イズーという名の主人公はイサの街を救ったのと同じ方法で壊滅させます。そしてその報酬は一時の栄耀栄華で終わります。裏切り、よくない。そんな話です。かなり子供向けですが、幽霊船の最後の登場とイズーが見た最後の故郷の情景がうまくまとまって小さいながら胸を打ちます。小品ですが、いい作品だと思います。
1投稿日: 2015.06.28【合本版】黄昏色の詠使い 全10巻
細音啓,竹岡美穂
富士見ファンタジア文庫
黄昏色の詠使い
大人は大事なことを忘れている。そんな作品です。クルーエルとネイトの運命と設定が織りなすどこか懐かしいファンタジー作品です。ちなみに主要人物がほとんど死なない…。バトルするのにやられないなんて…。ちなみにセラフィノ言語ってどうやって考えたんでしょう。まあ、それに電子化作品なのでルピが読みずらいという難点が…。もちろん文字を大きくすればいいだけですが、そこまでの気力が…。設定は途中から割増されていくように増えていきますがそれなりに面白いです。最後まで読めました。カインツとイブマリーという一世代上の描写から始まってクルーエルとネイトが紡ぐ結末まできちんと描写されています。ただ、問題は敵キャラの造形が…。まあそれを除けば面白い作品です。
4投稿日: 2015.06.28ドゥームズデイ・ブック(下)
コニー・ウィリス,大森望
ハヤカワ文庫SF
キヴリンは忘れない
二つの場所の異なるパンデミックは史学科の女の子とダンワージーに試練を与えます。ともに暮らした中世の息遣いが消えてゆくのは、感涙を誘います。アグネス、ロズムンド、そして神父ローシェの生き生きとした息遣いと錯視し、奇跡を望む願望と現実。良い作品です。そしてフィクションとしての業がこれほど映える作品もありません。文句なしの5つ星です。
2投稿日: 2015.06.25ドゥームズデイ・ブック(上)
コニー・ウィリス,大森望
ハヤカワ文庫SF
最後の審判あるいは土地台帳
時間ものです。タイトルや受賞歴から考えられる難しい敷居のようなものは、最初のフランス語交じりの中期英語なる場面を過ぎればありません。翻訳機万歳。登場人物の才能に乾杯。13世紀のイギリスと未来のイギリスが舞台です。現代ではウィルスがパンデミックを予感させ、過去では時間の位置がずれ、ここでもパンデミックの予感がします。丁寧に描いてあるので登場人物たちの動きにくぎ付けにされます。面白い作品です。
3投稿日: 2015.06.25獣の奏者 全5冊合本版
上橋菜穂子
講談社文庫
獣の奏者
エリンという獣の医術師の人生を描いた作品です。王獣、闘蛇、そして金色の目をした武力を持たない真王と外敵に備える大公。典範にすべてが縛られた世界で、エリンが活躍し、禁じられたタブーだとわかっていてもどうしてもやらなければならないことをやる物語です。エリンの息子のジョジの台詞。それから四日間だけ母は生きた。印象に残る言葉です。王獣たちの最後には人の力を超えた暴力の果てが透かして見えるように思えます。恋愛要素は、まあ、あまり好きではないですがぼかして書いてあるのでまあ丸です。実に面白い一作です。
0投稿日: 2015.06.23ヴァリス〔新訳版〕
フィリップ・K・ディック,山形浩生
ハヤカワ文庫SF
フィルとファット。
天啓は無く、救いもない。ヴァリスの映画はケヴィンに影響を与え、ファットの釈義に信憑性を与える。ソフィアの超人性とちゃちな仕掛け。すべての展開に二重性がある。二重らせん構造が徴となる。フィルとファットは同一人物だと出てくるが、最後にはまた分裂している。意味不明な部分が多いがグノーシス教、創造神の前に神がいたという主張線は面白い。ラテン語はさっぱりわからないのでその方面の面白さについていけなかった。教養不足ですね。残念。星4つ。
0投稿日: 2015.06.21エンダーのゲーム〔新訳版〕(下)
オースン・スコット・カード,田中一江
ハヤカワ文庫SF
エンダーのゲーム。
エンダーがバトルスクールでやっていたファンタジーゲームが最後になって絡んでくるところになると胸を打たれずにはいられません。小さな子供が勝利して、その小さな子供のことを敵が理解していて…。ピーターとヴァレンタインが地球において成功するのは、物語の展開点なのでしょうが、どうにも都合がよすぎるような気もしますが、最後の展開を見る限りその展開が必要だったとも思えます。新訳らしく、読みやすくそして胸を打つ一作です。
2投稿日: 2015.06.17エンダーのゲーム〔新訳版〕(上)
オースン・スコット・カード,田中一江
ハヤカワ文庫SF
バガーとの戦いか、内乱か。
エンダー少年はどのように使われてしまうのでしょうか。ピーターはどのように権力を志向するのでしょうか。ヴァレンタインは何をなすのでしょうか。上巻だけでもさまざまなプロットが絡み合っています。エンダー少年のファンタジーゲームは幸福な終わり方をします。この作品もエンダー少年に幸福な終わり方をすればいいと思う反面、ピーターに感情移入してしまう部分ところもあります。すべてがゲームですね。うむ。素晴らしいです。
1投稿日: 2015.06.17六花の勇者 5
山形石雄
ダッシュエックス文庫DIGITAL
地上最強の裏切り者?
地上最強がだんだん空しくなっていきます。主人公なのに、扱いがひどい。テグネウに負けちゃうんでしょうかねえ。それでもご都合主義で勝ってしまうんでしょうかねえ。愛は無敵ですがねえ。唐突ですがエンジェル・ハウリングを思い出します。愛の力ゆえに敗れるんですかねえ。次巻以降期待します。
1投稿日: 2015.06.16六花の勇者 4
山形石雄
ダッシュエックス文庫DIGITAL
フレミーよ。お前がか。
裏切りのタイミングはいつになるのでしょうか。それとも匂わせただけなのでしょうか。黒の徒花なる単語が出てきていわくありげです。過去を探りながら、未来を探っていく六花の勇者たち。意外なことにまだ脱落者がでません。むむむ。期待させますな。次巻へ。
1投稿日: 2015.06.16