
島原の乱雑記
坂口安吾,古典名作文庫編集部
古典名作文庫
安吾のエッセイ
島原の乱の取材に長崎を訪れた作者坂口安吾のエッセイである。以前読んだ菊池寛の島原の乱と比較すると、遥かに現代的な考え方であり、表現 語り口である。すんなり読めてしまう。作中に描かれていた天主堂の担当者の不可解な態度が、キリスト教内部の勢力争いを連想させて、ちょっと引っかる。
0投稿日: 2025.01.30島原心中
菊池寛,古典名作文庫編集部
古典名作文庫
悲惨な死
底辺に蠢く人の悲惨な死に様を比較的抑えた筆で描き出している。プロレタリア文学というほどのことはないが、ちょっと社会派的に要素も持った作品である。最後の指輪のエピソードで作者菊池寛は、小説として味付けをうまく行っている。
0投稿日: 2025.01.29船医の立場
菊池寛
青空文庫
些細なことが
有名な吉田松陰の密航失敗事件を取り上げている。菊池寛の歴史モノには、定説通りのものと斬新な視点から描いたものの二種類があるが、この作品は後者の好例である。もしこの時、密航が成功していたら、松下村塾は開かれず、維新の英雄たちも随分と違ってきただろう と歴史ifを想像して面白い。
0投稿日: 2025.01.29古代エジプト 失われた世界の解読
笈川博一
講談社学術文庫
言語学中心
古代エジプトの歴史概説というよりは、言語学に焦点を絞った本である。中盤以降に「エジプト文学」という例が逐語訳の形で紹介されている。著者はあえて逐語訳の形を取ったと記しているが、さすがに読みづらい。意訳のほうが良かったのではないか。まあ数千年前の人々の言葉がある程度の制度で解読できるということ自体が素晴らしいことではあるが。
0投稿日: 2025.01.29イチケイのカラス(4)
浅見理都
モーニング
コミックとしては
このような法廷モノはどうしても文章中心の展開となってしまい動きが乏しい。基本的には動きで魅せるコミックとしては、相性が悪い分野である。コミックとしてのもう一つの得意分野である「表情」の点でも漫画漫画したタッチは、今一つの感じがする。社会問題や人間の本質を取り上げたテーマ設定やストーリーの組み立ては大変に優れた作品ではあるが、コミックとしてはいまいちな出来ななってしまったことが残念である。
0投稿日: 2025.01.29義民甚兵衛
菊池寛
青空文庫
祀り上げ
福祉制度が整い心身障害者が比較的まともに生活できるようになったのは、ごく最近のことである。それまでは家族の重い負担になっていたはずである。この物語のような話もきっとあっただろうと、リアル感を持って描きだされている。民衆の間で「義民」と英雄扱いされた人々の中にも、このような例があったのではないかと想像される。
0投稿日: 2025.01.28乱世
菊池寛
青空文庫
なんとも残念
幕末の最後の動乱期の悲しい話である。生死のあわいに立った人間の判断の困難さ 是非を比較的抑えたタッチで、しかしくっきりと描き出している。残念な結果になったことが、更に読者にとって印象深くしている。きっとフィクションなのであろうが、リアル感に満ちている。題名がイマイチな気がする。
0投稿日: 2025.01.28キチガイ地獄
夢野久作,古典名作文庫編集部
古典名作文庫
妄想と現実のあいだ
妄想と現実のあいだの微妙な関係を、精神病者の口を借りて描きあげている。ストーリーの舞台を二重三重に重ねてゆく技法は、なかなかに見事である。いわゆる「キチガイ」の話すことだと言っても、どこか本当っぽいニュアンスが潜んでいて読者をハラハラさせる。
0投稿日: 2025.01.28オシャベリ姫
夢野久作,古典名作文庫編集部
古典名作文庫
童話らしい童話
次々とストーリーの舞台を自由に変えてゆくファンタジー童話らしい童話である。このような作品にありがちな、教訓モノと言って要素もほとんどないし、ましてやエログロ要素もまったくない。素直に読める作品である。
0投稿日: 2025.01.27髪切虫
夢野久作
青空文庫
幻想的ではあるが
輪廻、生まれ変わり を扱っているのでちょっと幻想的でよい。全体のボリュームの半分以上を「詩」の形にして、変化をつけている。それだけにオチの部分のあっけなさにちょっとがっかりした思いがする。もっとも、それが作者夢野久作の狙いだったような気もするが。
0投稿日: 2025.01.27