パドラッパさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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謎の独立国家ソマリランド
高野秀行 / 本の雑誌社
欧米を真似るのでなく、超えていく民主主義の姿
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外務省のページでは「1991年5月…自称し独立宣言」としか出てこない国に飛び込んで見聞したレポート。数次にわたる訪問を通して現地のパワーバランスなどの深部に迫っていくとともに、日本人にも理解しやすく解…説していく。
旧ソマリアで独裁者がベテランを遠ざけて重用した若手が、内乱を経て北部に帰着し、氏族の長老とともに議論を重ね、リアルな利害を調整した超民主主義社会を実現しているのがすごい。民主的な議論とリアリズムとが対立するように捉えがちなのを反省した。 続きを読む投稿日:2021.08.09
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超空気支配社会
辻田真佐憲 / 文春新書
ゲームをしない私には、ミリタリーゲームの解説が目から鱗
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新旧寄稿の集成本です。3割ほどは既読でしたが配列の妙で面白く読み直せました。
SNSの風圧に晒される中で身の処し方を考えるのに、信頼できる総合知との出会いによるバランスが大切だと思う。とかく非難が先…鋭化しがちな時には次の警鐘を踏まえたい:
「へたをすれば、将来を見越して、若いころから情報を徹底して管理されている二世しか政治家になれないような事態も起こりかねない」 続きを読む投稿日:2021.08.26
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火星へ 上
メアリ・ロビネット・コワル, 酒井昭伸 / ハヤカワ文庫SF
先に前著をお読み下さい
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昨年とても面白く読んだ、同著者・訳者による「宇宙【そら】へ 上下」の続編です。
今回もとても面白いのですが、前著を読んでいないと背景も人間関係も全く分かりませんのでご注意下さい。
感想は「下」に書…きます。
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運営さんへ
著者名のリンクが切れていて前著が探しにくくなっています(ナカグロの有無で別人になっている) 続きを読む投稿日:2021.08.31
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火星へ 下
メアリ・ロビネット・コワル, 酒井昭伸 / ハヤカワ文庫SF
清々しい歴史改変、再び
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「宇宙【そら】へ」の続編。地球に巨大隕石が落ち温暖化が急速に進む中、火星移住のパイロットミッションに臨む主人公たちの物語。
1950-60年代のテクノロジーをいま見直すチャレンジが相変わらず面白い一…方、ジェンダー・人種・障害などについては今もなお当時と同じ偏見を引きずっていることを再認識させられるのは苦いというか辛いものがあった。これも含めて貴重な読書体験に感謝したい。 続きを読む投稿日:2021.08.31
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考える、書く、伝える 生きぬくための科学的思考法
仲野徹 / 講談社+α新書
リモートでも伝えたいことは変わらず
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大阪大学の新入生ゼミ「学門への扉」実践録にして、なかの先生の思考プロセス指南書。
いきなりコロナ禍で出鼻を挫かれZoom講義になるところからの臨機応変紆余曲折が興味深い。リモート授業の臨場感、学生さ…んの自主的な取り組みがよかったです。
学生の論文に対する仲野先生による指導内容が、自分が考えていた改善案と丸被りしたのが少し嬉しかった。 続きを読む投稿日:2021.09.04
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世界の再生可能エネルギーと電力システム 経済・政策編
安田 陽 / NextPublishing
お行儀の悪い発電事業者は退場させるべし
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日本は山肌を削って強引に敷設した太陽光パネルが景観を損ねたりしているが、海外からそういう話が聞こえてこないのが不思議に思っていたところ、欧州には建築不自由の原則があるのだというのが目から鱗でした。おそ…らく多民族社会においてゾーニングという概念も必要だったのだろうと思います。日本でもこれからゾーニングが導入されてくるようで、著者もその策定に関わっておられるとのこと。
また、何かと評判の悪いFITだけれど、実はお行儀の悪い事業者を退場させるにもFITが利くなど認識を新たにした。全般に平易な書きぶりで、面白かったです。 続きを読む投稿日:2021.09.16