
超高速! 参勤交代
土橋章宏
講談社文庫
こんな上司(部下)がいたら、どんな難題にも立ち向かえる
最初読むと、 閉所恐怖症でちょっぴり頼りない印象の お殿さま・内藤政醇公。 領民と仲がいいのはわかるけど、 それだけで大丈夫?と思ってしまう。 しかし、読み進めるうちに 数々の事件に対して 彼自身の能力の高さ(目からウロコ)や 家臣団の結束のかたさ、 大名行列のあっと驚くパフォーマンスなど どんどんとネタが出てきて 「行けーーっ!」と応援してしまう。 こんな上司がいたら、 こんな部下がいたら どんな難題にも立ち向かえるよな、と 思う読者も多いだろう。 個人的には、家老・相馬に泣かされた。 とにかく痛快、途中でちょっとポロリ。 電子書籍なら、その日の気分で、 思いついた数字を「ページ数」に打ち込んで そこから読むのもいいかも。
3投稿日: 2016.09.11成りあがり
矢沢永吉
ぴあ
10,000円のエピソードに涙
今や日本のロック界に燦然と君臨する矢沢永吉。 その矢沢が、日給2,000円のアルバイトに行く話が泣ける。 5日働いて、10,000円。 バイト先に事情を話して、それだけ払ってもらった。 その1万円札を、苦しい生活に耐えている妻に渡したかった。 が、出来なかった。 帰りのバス代60円がなかったのである。 小銭まじりの金を渡した時、妻がワンワン泣いたという。 その涙をみて、 「くそ! 絶対にビッグになってやる」 と改めて発奮したという。 本書は、 高邁な理想と非凡な才能とともに、 こうした小さな、でも実感あるエピソードが各所に描かれ きれいごとでない「成り上がり」ストーリーとなっている。 「成り上がり」とは、すなわち 小さな膨大な努力の上に建つ華やかな楼閣なのだと 矢沢が教えてくれる。 昭和時代に書かれた本だか、 古さを全く感じさせない内容である。
0投稿日: 2015.09.10イニシエーション・ラブ
乾くるみ
文春文庫
3度読んでみて下さい
にぶい私は、 1度目に読んだ時、 「かわいいラブストーリーだな」 と思いこみ、 最後の1行まで、意味がわかりませんでした。 わかった時のあの驚き、 え、こういう意味でいいのかな?という疑問。 で、そのまま慌てて2度目の読書に突入し 「あああああ、そーゆーこと!」 と、やっと ネットの書評で評判が高い理由に納得しました。 そして、少し時間をあけて 3度目に読んだ時、 主人公の女性に対して、 また少し違う感想を持ちました。 もし、友達だったなら やっぱり、ちょっと 肩を抱いてあげたいような気がしました。 ネタバレになるから、 こんなレビューしか書けませんが・・・ それにしても、これを映画化とは、 いったい、どんな風に作ったのでしょう? にぶい私は、きっと 前売券を2枚買う必要があるでしょう。
1投稿日: 2015.05.10恍惚の人(新潮文庫)
有吉佐和子
新潮文庫
「老人問題」を描いて、今なお新鮮
作品発表から30年以上の時を経ても、まったく色あせない名作。 老人問題だけでなく、女性の自立や介護問題にも 作者の鋭い視線が行き届いている。 突然、84歳の舅と同居することになる主人公夫婦。 しかも、その舅は認知症だった。 そして、この老人はこう描写される。 「恍惚として、夢を見ているようだ」 と。 老いとは何か、 それは本当に「ボケて」「老残をさらすだけ」なのか、 作者は時に冷たく、時にやさしく 老いた男の最期を描いていく。 最後の最後のシーンで、 主人公夫婦の長男(高校生)が 母親にこう言う。 「ママ、もう少し生かしておいてもよかったね」 この言葉、こうして読むと 「何と、ひどい!」と思われるだろうが、 実はそんな感じはしない。 では、どんなニュアンスなんだ? そう思われた方は、本書をご一読されたし。 特に、45歳以上の方 (そろそろ親の介護が頭をよぎる世代)は 読んでみて損はありません。
3投稿日: 2014.11.04脂肪と言う名の服を着て[完全版] 上巻
安野モヨコ
FEEL COMICS
かっこいい彼はデブ女が好き?
普通のマンガなら 「彼氏に痩せろと言われて」 みたいなきっかけでダイエットが始まるのだが、 この話は、まったく逆。 主人公(のこ)の彼・斎藤くんは のこがダイエットしていると聞いて逆上し、 「もっと食え! 俺は太っているのこが好きなんだ!」 と、主人公の口に無理やり食べ物を突っ込む過激さである。 なぜ、彼がそうなったのか、その問題はここではおいておくが。 こんな不安定な関係で、 職場でも問題をかかえた主人公は 食生活のコントロールもめちゃくちゃになり 痩せたり太ったり、体型までも不安定になっていく。 美味しく食べ過ぎて太るならともかく、 泣きながら菓子を食べて太っていく姿は かわいそうで、でも歯がゆくて、 「あーっ、もう」と言いそうになる。 それは誰が悪いのか? 痩せてきれいになったら、人生は変わるのか? そして彼女は救われたのか? けっこう重いコミックで 「読後感がさわやか」とは、お世辞にも言えないが ダイエットに悩む人は、一読の価値ありと思う。
6投稿日: 2013.11.24食えなくなった弁護士・会計士・税理士 週刊東洋経済eビジネス新書No.28
週刊東洋経済編集部
週刊東洋経済eビジネス新書
どの仕事でも同じでしょう
その仕事でも 「できる奴は売れ、できない奴は消える」 は共通であり、 それが、今まで一番お偉かった「士業」にまで 及んできたという話である。 確かに相続税申告などでは 相続税案件を毎年何件か手がけている税理士と 経験が浅い税理士では、 申告書の出来栄えに大きな差がつくのは 周知の事実である。 これから依頼しょうという方は、注意されたし。
0投稿日: 2013.11.24浅田真央はメイクを変え、キム・ヨナは電卓をたたく フィギュアスケートの裏側
生島淳
朝日新書
ソチオリンピックまでに読んでおこう
浅田真央選手が、2010年のバンクーバー五輪で敗れたのは フリーの演技で、ジャンプにミスが出たから・・・ それだけが真の原因ではないと書く衝撃の1冊。 なぜ、女子の有力選手はトリプルアクセルを跳ばないのか? それは、採点システムの仕組みに大きな原因があるということが 本書に詳しく書かれている。 タイトルは、女子選手の名前だが 他の内容では、 なぜ、バンクーバーで4回転を決めたプルシェンコは、 4回転を回避したライサチェクに敗れたのか? など、男子選手の話題も入っており、 読み応えがある。 内容的には、2011年までだが 今読んでも、古さはまったく感じない。 また選手だけでなく、コーチや振付師 (タラソワ、モロゾフ、オーサー)といった人たちの略歴も 詳しく書いてあり、 「へー!」と思う箇所がいっぱい。 それにしても、フィギュアの採点はこんなにも奥が深いのか? あえて書くならば 「フィギュアスケートに関しては、 ソチ五輪は、もう、始まっている」 のだということが、本書を読めば実感できる。 ソチ五輪開幕までに読みたい1冊だと思う。
3投稿日: 2013.11.24和菓子のアン
坂木司
光文社文庫
読む人の教養が試される一冊
主人公アンちゃんが「水無月」を知らないのに驚いた。 京都では、6月のあの季節、みんな買う菓子だが、 他の地方では、無名の風習だったのか。 という風に、 和菓子のことで勉強になる一冊であり、 読み終えたあとは、日本茶が飲みたくなる気分だ。 その他、デパ地下の裏事情っぽい部分も描いており 食品偽装の昨今、タイムリーかも。 全体的には、ミステリー仕立てでうまくまとめてあり、 たのしく面白く読めると思う。
1投稿日: 2013.11.13風俗行ったら人生変わったwww
@遼太郎
小学館
うん、誰もが最初はそうだったよね
いつの頃からか、 「何でも事前に知っていて、 転ばぬように、恥をかかないように生きる」 のが定番みたいになっちゃったけど 本当は、 「あー、だめだ、だめだ」 って頭を抱えてうずくまらなきゃ、 人生のことってわからないのかもしれない。 遼太郎は、それを風俗で経験した。 しかも、ものすごくピュアな経験をしてしまう。 彼の一生懸命さに、 何だか、ちょっぴり、うるっと来る。 タイトルの100倍くらいマジな本。 サンプルだけでも読む価値あり。
5投稿日: 2013.11.13神様のカルテ
夏川草介
小学館文庫
父がガンで亡くなった直後に、読みました
映画も観ましたが、この原作と、どちらも泣けました。 病気と闘うとはどういうことなのか、 どうすれば、「その人に最適な最期」を作ってあげられるのか それに正面から向き合ってくれた小説だと思います。 父がガンで亡くなった直後に読んだ(観た)ので なお一層、その優しさが心にしみました。 主人公の医師の名「一止」の意味が素晴らしいです。 知りたい方は、ぜひご一読を。
7投稿日: 2013.11.09