
老人と海
ヘミングウェイ,小川高義
光文社古典新訳文庫
老人と海
この作品はどうしても1958年のスペンサー・トレイシー主演の映画を頭に浮かべながら読んでしまう。 大ベテランの漁師にしては、塩を持ってこないなど漁の準備が手抜きすぎる感じもするが、片手一本で鮪を捌き一匹丸々生で船上で食べてしまうなど、ワイルドでタフな一面が格好いい。若き日の思い出の、屈強な黒人との一日かけた腕相撲対決なども名場面。
3投稿日: 2014.10.17白い人・黄色い人
遠藤周作
新潮社
白い人・黄色い人
戦時中が舞台とはいえ、宗教は人間を救うものでは決してないという事を、カトリックの洗礼を受けている遠藤周作が書いた2つの中編を収録。 「白い人」は芥川賞受賞作でナチスもの。「黄色い人」は白人神父から見た我々黄色い日本人を観察した箇所が興味深い。
1投稿日: 2014.08.01襲撃者の夜
ジャック・ケッチャム,金子浩
扶桑社BOOKSミステリー
襲撃者の夜
ケッチャムのデビュー作にして代表作「オフシーズン」の11年後の話である続編。 陰惨な場面が強烈だった前作に比べて、今回はラストのシーンでは爽やかな印象さえある。思わず拍手をしてしまいたくなる、クライマックスの少年同士の対決は名場面。 残酷な血まみれホラー小説から、文学として一歩進んだ感のある傑作。
0投稿日: 2014.07.26朝顔草紙
山本周五郎
新潮社
朝顔草紙
人情&ユーモアもの時代小説に、エッセイに近い現代もの4編を追加した構成。時代小説では表題作の『朝顔草紙』が爽やかな読後感。他には現代ものの不幸な浮浪少女を描いた『お繁』に、ミステリー風味の『うぐいす』が秀作。
0投稿日: 2014.07.16グラスホッパー
伊坂幸太郎
角川文庫
グラスホッパー
前半はテンポが良く、キャラの立つ登場人物が多いので面白かったが、中盤に鈴木の出番が多くなってからトーンダウン。ラストに再び疾走するように話が動くが、結局鈴木を助けたのは誰だったのかハッキリしないのが不満。押し屋と劇団の不自然な関係など、思いつきで書いたような印象しか残らない。
3投稿日: 2014.07.04斜陽
太宰治
新潮社
斜陽
愛人の太田静子の日記を参考にしたというか、丸写ししたという話もあるが、太田静子は開業医の娘で貴族でも何でもないらしいから眉唾もののエピソード。 主人公の女性は今風でいう面倒臭い女タイプ。好きでもなくなった男の子供だけ欲しいという考えは男には理解できないが。
0投稿日: 2014.07.04桜の森の満開の下
坂口安吾
講談社文芸文庫
桜の森の満開の下
安吾は怪談から恋愛もの、人間ドラマにドタバタとオール・ジャンルの作品を書いた器用な作家。太宰や漱石の作品に出てくる悩んで自殺するような弱々しい人物ではなく、血の通った逞しく生きる人間を描いている。それにしても、表題作のグロさは桁違いの凄さ。
1投稿日: 2014.07.04檸檬
梶井基次郎
新潮社
檸檬
短編のほとんどの主人公が病を患っている作者自身をモデルにしたものなので、読んでいると流石に憂鬱になる。マザコンだったのか、同世代の女性よりも母親の出番が多い。代表作の『檸檬』や滑稽な『猫』など、病気ネタとは別の作品をもっと読みたかった。
0投稿日: 2014.07.04新編 銀河鉄道の夜
宮沢賢治
新潮社
銀河鉄道の夜
個人的な賢治の最高傑作「よだかの星」を収録。 有名な表題作は賢治の死後に草稿の形で残されたものを、第三者が編集したものなので評価し辛い。賢治は本当は短い第8章までと、長い第9章は別物にしたかったのではないだろうか。
0投稿日: 2014.07.04山名耕作の不思議な生活
横溝正史
角川文庫
山名耕作の不思議な生活
1927-31年に発表された本人曰く「ナンセンス時代」の短篇集。特に「鈴木と河越の話」は捻りの効いた笑いの傑作。「カリオストロ夫人」のようなSFホラーもあり、色々と楽しめる。
0投稿日: 2014.07.04