今まで恭子のことを「ママ」と呼んでいた夫が、また昔のように「恭ちゃん」と呼ぶようになるまでの流れに、最初は心配しつつも最後は少しホッとしました。

余命を意識しつつも、自分が今できること、やりたかったことを実行する恭子の前向きさを応援したくなります。

色々葛藤はあるかと思いますが、余命は自分のために生きると決め、それを家族に宣言した恭子の潔さに胸がスカッとしました。

フジイの生き方そのものというわけではないけれど、若干似たタイプの人を思いだしました。キラキラした人生というわけではないけれど、精神的に安定していて、自分軸がしっかりある生き方の良さが感じられます。

序盤で出てくる変な間取りの何ともいえない不気味さが先へ先へと読みたい気持ちを掻き立ててくれます。後半以降は、いわゆる頭の固い自分で物事を考えない人間ならではの融通のきかなさ、思い込みに固執する厄介さから引き起こされる厄介事という感じです。

ヒメシャコガイやタカラガイ、イソアワモチなど、本州の海では見かけない海の生物の写真が豊富で、説明も面白いので、大人が読んでも楽しめます。

ピンチになる場面が何度もありますが、その度に哲雄と歌仙がとっさに機転を利かせて切り抜ける様に感心してしまいました。

ますます危険な状況に巻き込まれ、逡巡や苦悩がありながらも、解決方法を模索しようと冷静さを失わない哲雄が、段々と頼もしく感じられてきます。

娘を守るために犯してしまった殺人を、夫婦のチームワークで何とかバレないようにしようと協力する様子に、緊急事態でも変わらない家族としての絆を感じました。