街場の米中論
内田樹(著)
/東洋経済新報社
作品情報
疫病と戦争で再強化される「国民国家」はどこへ向かうのか。
拮抗する「民主主義と権威主義」のゆくえは。
希代の思想家が覇権国「アメリカ」と「中国」の比較統治論から読み解く。
アメリカにはアメリカの趨向性(あるいは戦略)があり、中国には中国の趨向性(あるいは戦略)がある。それを見分けることができれば、彼らが「なぜ、こんなことをするのか?」、「これからどんなことをしそうか?」について妥当性の高い仮説を立てることができる。それがこれからこの本の中で僕が試みようとしていることです。(第1章より)
アメリカと中国というプレイヤーがどうふるまうかによって、これからの世界の行方は決まってきます。僕たち日本人にできることは限られています。直接、両国に外交的に働きかけて彼らの世界戦略に影響を及ぼすということは日本人にはできません。日本自体が固有の世界戦略を持っていないのですからできるはずがない。できるのは、両国の間に立って、なんとか外交的な架橋として対話のチャンネルを維持し、両国の利害を調整するくらいです。それができたら上等です。
とりあえず僕たちにできるのは観察と予測くらいです。この二つの超大国がどういう統治原理によって存立しているのか、短期的な政策よりも、基本的にどのような趨向性を持っているのか、それをよく観察して、世界がこれからどういう方向に向かうのか、どのような分岐点が未来に待ち受けているのか。(第1章より)
もっとみる
商品情報
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.3 (6件のレビュー)
-
街場の米中論
内田翁の新刊。出版イベント?ではないものの、直近の隣町珈琲のイベントでも言及されており、今後を占う上での指針となる。
米中いずれにも、政治的な意思決定の基盤となるような歴史的趨向性(無…意識)のようなものがあり、そうした趨向性を捉えるための内的葛藤や歴史的な動きがあり、そうした内容を読み解くものである。
米中論はさながら、組織にも個人にも当てはまる内田翁の私見にもやはり唸らされた。
また、今回の読書体験は、内田翁の思考の癖を読むことができた、うれしいこともあった。P94で、自由と平等の話が出た際に、食い合わせの悪い二つを接ぎ木するものとして、博愛/友愛をフランスはもちだしたのではないか、さらにその博愛の精神とは、アダムスミスの言うempathyや、中国における惻隠の情にも近い、倫理的な呼びかけではないかとメモしていたが、まさに自分が思い、書いたことが終わりにの部分でそのまま書かれており、非常に驚き、そして喜ばしかった。
「深い葛藤を抱えている人間は定型に居着かず、一度崩れた後も復元力が強い。逆にシンプルな信条を掲げて、どんな局面でもすぱすぱと決断を下し、内的葛藤のない生き方をしている人間は、短絡的には効率的な生き方をしているように見えますが、成長がない。そして、一度崩れるともう立ち直れない。」
ここが個人的には米中論のハイライトであると感じる。
前者はまさにアメリカそのものである。アメリカは理念においても、自由と平等という食い合わせの悪いものを掲げ、そのせめぎ合いの中で常に葛藤をしてきた。無論、自由に偏る面もあったが、それでも国内に平等の流れを内包してきた。さらに、地理的にも政治的にも各州の自治を認め、その合衆国としての矜持と葛藤を持ち続けてきた。そして、まさにそれゆえに現在でも唯一の覇権国家としての立ち位置を持っている。
一方で、中国は習近平の一党独裁体制により、局所戦(コロナ対応)では強いものの、やはり内面に大きな問題を抱えている。無論、中国は平等に重きをおいている政治システムであるが、実のところ党員とそれ以外、都市と農村の格差、さらには一国二制度における資本主義の部分的な流入による経済格差、さらにはマクロトレンドとしての人口減少といういくつかの爆弾を抱えている。
その行く末は、非常に面白い。
また、こちらもマルクスの引用で、以下の文章も非常に含蓄がある。
「生きている者たちは、ちょうど自分自身と事態を変革し、いまだになかったものを創り出すことに専念しているように見えるときに、まさにそのような革命的危機の時期に、不安げに過去の亡霊たちを呼び出して助けを求め、その名前やスローガンや衣装を借用し、そうした由緒ある扮装、そうした借り物の言葉で新しい世界史の場面を演じるのです。」続きを読む投稿日:2023.12.16
筆者はあとがきで何度もした話しと言っているが、自分にとっては新鮮な内容が多かった。
・食い合わせが悪い「自由」と「平等」
フランスは、平衡を取るため(?)、「友愛」も入れた
・常備軍を認めていない合…衆国憲法
・マルクスとリンカーンに交流があった
・リンカーンの再選にマルクス(第一インターナショナル)が祝辞を贈り、リンカーンが謝意を返していたこと
・マルクスはテキサスにホームスデッターとして来ていたかも
・マーク・トウェインがアメリカ共産党の原始
・アメリカ人は最悪を描くことを非難しない
日本人は非難する続きを読む投稿日:2024.04.06
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。