【感想】街場の米中論

内田樹 / 東洋経済新報社
(6件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
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ブクログレビュー

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  • marcopolo

    marcopolo

    筆者はあとがきで何度もした話しと言っているが、自分にとっては新鮮な内容が多かった。
    ・食い合わせが悪い「自由」と「平等」
     フランスは、平衡を取るため(?)、「友愛」も入れた
    ・常備軍を認めていない合衆国憲法
    ・マルクスとリンカーンに交流があった
    ・リンカーンの再選にマルクス(第一インターナショナル)が祝辞を贈り、リンカーンが謝意を返していたこと
    ・マルクスはテキサスにホームスデッターとして来ていたかも
    ・マーク・トウェインがアメリカ共産党の原始
    ・アメリカ人は最悪を描くことを非難しない
    日本人は非難する
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    投稿日:2024.04.06

  • seihuu

    seihuu

    米中論のタイトルから、アメリカと中国について、特に米中対立、台湾問題、などが中心になっているかと思って読み始めた。
    アメリカが8割、中国論が1割、米中関係が1割位の印象だろうか。初めにでもあるように、ほとんどが米国論であろうか、解決不能な自由と平等については非常に興味深い点が多かった。平等と言うのは、公権力が市民の自由に介入し、強者の権利を制限し強者の富を税金として徴収し、それによって弱者を保護し、貧者に分配することによってしか実現しない。市民を自由に競争させていたら、そのうち平等が実現すると言う事は絶対に起きません。自由の国アメリカが、世界有数の格差社会の国である事はよく言われている通りです。
    それでは翻って中国はどうなのだろうか、凄まじい経済格差の社会である中国で、国民の不満が抑制されているのは、自分にもそのうち冬になるチャンスが巡ってくると言う期待があるからだと言う説明には説得力があるが、この期待が維持されるためには、中国はこれから豊かになり続けると言う成長の保証が必要である。
    中国は共産主義の国であるが、日本の方がより共産主義的であるとよく言われている。では、中国において現在の様々な矛盾の解決策は、中国を共産化することというのが作者の結論。平等を達成すると言う事は、権力を持ち、富裕である人々が私権の行使を抑制し、私財の相当部分を吐き出して、それを公共財として供託することなしには実現しません。中国で権力者たちが日常的に行ってきたのは、公権力を私的用い、公共財を私財に付け替えることでした。共産党は倫理的に潔白でなければならない腐敗キャンペーンの行く先はどこへ向かうのであろうか学習塾の廃止も、共産化の一旦であり、青少年のゲームできる時間の制約も、アヘン戦争前のアヘンと同様に考えることができると言う指摘には納得した。
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    投稿日:2024.03.25

  • aya00226

    aya00226

    このレビューはネタバレを含みます

    国民国家という概念は中くらいの現実。太鼓から存在したモノではない。
    グリーバル企業は国民国家に帰属意識はないことが要件。
    ウクライナの戦争がどうなっても、ロシアは没落する。勢力圏はなくなる。
    『フェデラリスト』の中に合衆国憲法の制定の議論がわかる。連邦派と独立国派の争いがあった。連邦と州の自由とのせめぎあい。軍隊は、同胞に向けられるべきではなく、国外に向けられるべき、という論法で連邦の下に常備軍を置くことになった。一方で、民衆の武装権も保障した。
    アメリカでは19誠意に公教育の導入の反対があった。
    合衆国憲法は、常備軍の保持を禁止している。軍は時の権力者の私兵になる。議会が招集して編成するもの、という建前。

    シオンの議定書=ユダヤの世界政府の陰謀論を書いた書物。
    ロシア・ロマノフ王朝のユダヤ人迫害があったため、ニューヨークのユダヤ人銀行家シフの協力により、日露戦争の公債による資金調達が可能になった。

    陰謀論は、一神教の国々で広まりやすい。日本では広まらない。陰謀論は一神教の裏返し。
    ポストモダニズム=大きな物語の否定=自分が見ているモノは真性かどうか疑わしい。行き過ぎると反知性主義になる。知的虚無主義。
    歴史修正主義=世界の見え方はいろいろあり、どれも等権利である。現代はポスト真実の時代になった。

    平等は自由のり後回し=平等は、公権力によって作り出されるモノだから。
    民主政は、民衆による民衆の支配が起きた。

    マルクスとリンカーンは同時代に生きた。

    中国は多民族国家。王朝の交代は繰り返し同じパターンでおきた。
    生産年齢人口の減少は2015年から始まっている。
    習近平の反腐敗闘争は、誰を失脚させるか権限をもつものに一極集中する。腐敗がなくなれば、一極集中はできない。腐敗がなくならない構造は温存したまま、腐敗を摘発することで権限が保たれる構造。
    中国の国民監視は世界一。社会的信用スコアが高いと何かと有利になる社会。

    教育の商品化を禁止した双減政策。宿題を制限して学習塾を非営利化した。親の格差を子供に引き継がない共産的な政策。
    アメリカでは、アメリカが滅ぶシナリオが熱心に読まれる。日本では、敗北主義が敗北を呼び込む、というロジックで、それを避ける。

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    投稿日:2024.03.05

  • とし

    とし

    いつもの話が多いけれど、後書きで「ウチダはどうして同じ話をするのか」について書かれていたのが良かった。
    中国では受験戦争が加熱していて、その対策として子どもの学習時間を制限したり学習塾の非営利化までしているというのは初めて読んでびっくりした。続きを読む

    投稿日:2024.02.12

  • masaniro2

    masaniro2

    葛藤がアメリカを育ててきた、という主張は納得できた。
    自由と平等という相反する概念。

    日本は、そのような引き裂かれる状況ならばすぐに投げ出してしまうんだろう。

    中国論も面白く読めた。
    腐敗があるから、公安が脅しを掛けられる。
    農村を見捨てない共産主義。
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    投稿日:2023.12.20

  • やまたく

    やまたく

    街場の米中論

    内田翁の新刊。出版イベント?ではないものの、直近の隣町珈琲のイベントでも言及されており、今後を占う上での指針となる。
    米中いずれにも、政治的な意思決定の基盤となるような歴史的趨向性(無意識)のようなものがあり、そうした趨向性を捉えるための内的葛藤や歴史的な動きがあり、そうした内容を読み解くものである。
    米中論はさながら、組織にも個人にも当てはまる内田翁の私見にもやはり唸らされた。
    また、今回の読書体験は、内田翁の思考の癖を読むことができた、うれしいこともあった。P94で、自由と平等の話が出た際に、食い合わせの悪い二つを接ぎ木するものとして、博愛/友愛をフランスはもちだしたのではないか、さらにその博愛の精神とは、アダムスミスの言うempathyや、中国における惻隠の情にも近い、倫理的な呼びかけではないかとメモしていたが、まさに自分が思い、書いたことが終わりにの部分でそのまま書かれており、非常に驚き、そして喜ばしかった。

    「深い葛藤を抱えている人間は定型に居着かず、一度崩れた後も復元力が強い。逆にシンプルな信条を掲げて、どんな局面でもすぱすぱと決断を下し、内的葛藤のない生き方をしている人間は、短絡的には効率的な生き方をしているように見えますが、成長がない。そして、一度崩れるともう立ち直れない。」

    ここが個人的には米中論のハイライトであると感じる。
    前者はまさにアメリカそのものである。アメリカは理念においても、自由と平等という食い合わせの悪いものを掲げ、そのせめぎ合いの中で常に葛藤をしてきた。無論、自由に偏る面もあったが、それでも国内に平等の流れを内包してきた。さらに、地理的にも政治的にも各州の自治を認め、その合衆国としての矜持と葛藤を持ち続けてきた。そして、まさにそれゆえに現在でも唯一の覇権国家としての立ち位置を持っている。
    一方で、中国は習近平の一党独裁体制により、局所戦(コロナ対応)では強いものの、やはり内面に大きな問題を抱えている。無論、中国は平等に重きをおいている政治システムであるが、実のところ党員とそれ以外、都市と農村の格差、さらには一国二制度における資本主義の部分的な流入による経済格差、さらにはマクロトレンドとしての人口減少といういくつかの爆弾を抱えている。
    その行く末は、非常に面白い。

    また、こちらもマルクスの引用で、以下の文章も非常に含蓄がある。
    「生きている者たちは、ちょうど自分自身と事態を変革し、いまだになかったものを創り出すことに専念しているように見えるときに、まさにそのような革命的危機の時期に、不安げに過去の亡霊たちを呼び出して助けを求め、その名前やスローガンや衣装を借用し、そうした由緒ある扮装、そうした借り物の言葉で新しい世界史の場面を演じるのです。」
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    投稿日:2023.12.16

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