定年前と定年後の働き方~サードエイジを生きる思考~
石山恒貴(著)
/光文社新書
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少子高齢化と長寿化の進行は、人生100年時代と呼ばれる環境の変化をもたらした。労働力調査によれば、2021年の労働力人口は日本の職場の3割以上が55歳以上の労働者で占められていることを示している。だが、これまで日本ではシニアの働き方に対して組織側の施策に焦点があたることが多く、個人の働き方としてどのような戦略をとるべきかについて論じられてこなかった。定年前と定年後をどう働くのか。研究理論と実例から探る。
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日本社会全体の少子高齢化が進む中、企業に対していわゆる「定年」を延長することが求められ、65歳までの雇用確保義務が課されるようになっている。
これを終身雇用・年功賃金という従来からの雇用慣行と整合させ…るために、多くの企業において役職定年・定年再雇用といった制度が採り入れられている。
これらの制度は企業の立場からは「福祉的雇用」として捉えられ、役職定年者・定年再雇用者は賃金が下げられ、技能継承のみやればよいとの低い期待が与えられることでモチベーションが低下していくケースもままある。
一方で、役職定年者・定年再雇用者の幸福感・仕事への熱意は全体として低くないという調査結果が出ている。様々な喪失や衰えがあるはずなのにも関わらず、このような全体傾向が生じる現象を「エイジング・パラドクス」と呼ぶ。
要は、定年後の境遇の変化に対する受け止め方には個人差があるのだ。
そして、その個人差を生じさせる要因は、好奇心の有無や自身のキャリアへの関心があるか否かにあり、シニア労働者には心理的要素としての「働き方の思考法」を身につけることが重要な意味を持つ。一方で、企業組織側にはそれを考慮した上でのシニア社員に対する処遇が必要である。
以上のような著者の考えが事例とともに解説されている。
自分も企業組織の管理職の立場にあり、マネジメント対象となるメンバーにはシニア層の方もいるので、彼らにモチベーションを保って年齢に相応しい活躍をしていただくやり方については日々頭を悩ませている。
また、自分個人としても、定年を意識してこの先のキャリアをどのように送っていくかを真剣に考えなければならない年齢を迎えていることもあり、この本で扱われている論点を他人事でなく関心をもって読んだ。
個人にとって必要な「働き方の思考法」とは。
まずは企業組織に蔓延るマッチョイズムへの囚われから脱却すること。
自身の情熱・動機・強みがどこにあるのかを熟考し「自己の成長と専門性の追求」にフォーカスして主体的に職務を再創造する(ジョブ・クラブティング)。
その際には、独りよがりな「周りの見えないジョブ・クラフター」にならないよう全体性とのバランスに留意して、周囲から受け入れてもらえるようにする。
そのための実践として、スキルシェアサービスを利用してのギグワークや副業フリーランスを通じて業務委託という働き方に慣れること、越境学習となる場に積極的に身を置くことでホームとアウェイを行き来し葛藤を通じた自己調整を経験することなどが推奨されている。
一方、企業組織側は、賃金を引き下げなければならないという認識に引っ張られて、シニアの自己評価を徒に下げるようなことがあってはならない。
シニアに対しても責任のある仕事を与えて権限委譲し、業務目標を主体的に設定してもらって支援を行い、正当な人事評価で報いることが大切である、と。
モチベーションの低下したシニアを企業が低い待遇で囲っておくというのは、誰も幸せにならない話で、社会的な損失は甚大だと思う。
まずは個人が自らのキャリアを自律的に考える素地を広げていくことが重要で、企業側にもキャリア自律を促す取り組みがもっともっと必要なのだと再認識した。続きを読む投稿日:2024.01.13
シニアの幸福な働き方は、どんなものか。離脱理論、活動理論、継続理論を元に、SST(社会情動的選択性理論)やSOC理論(選択最適化補償理論)を紹介しながら、シニアの幸福感を高める働き方を探求。
投稿日:2024.02.11
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