ぼけますから、よろしくお願いします。(新潮文庫)
信友直子(著)
/新潮文庫
作品情報
「今年はぼけますから、よろしくお願いします」広島県呉市。87歳の正月、母は娘に突然宣言した。その言葉通り徐々に変わっていく母。「私はばかになったんじゃわ」と繰り返し「迷惑になるけん、もう死にたい」と喚く母を「誰でも年とりゃあ、おかしゅうなるわいのう」と励まし支えたのは96歳の父だった――。老老介護の現実と互いを思いやる家族の愛情、深く優しい夫婦の絆を綴る感動の記録。
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商品情報
- シリーズ
- ぼけますから、よろしくお願いします。
- 著者
- 信友直子
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2022.08.29
- Reader Store発売日
- 2022.08.29
- ファイルサイズ
- 3MB
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この作品のレビュー
平均 4.8 (9件のレビュー)
-
東京で暮らすフリーの映像作家が、故郷に住む両親を撮影したドキュメンタリーTV番組・映画の書籍化作品。本文では母・文子さんが認知症だと診断される前年の2013年から2018年を描き、あとがき・文庫版あと…がきでは、さらにその後の住友家についても触れる。16話構成、約280ページ。
著者の両親は故郷・広島の呉市で二人で暮らす老夫婦である。認知症と診断される80代半ばの母・文子さんと、90代の耳の遠い父・良則さん。本書は文子さんが認知症であることが発覚する約一年前から、文子さんの症状が徐々に重篤になる過程を描く、認知症介護と家族をテーマにしたノンフィクション作品である。介護としては「老老介護」「遠距離介護」という今日的な側面も併せもち、特徴的なタイトルは、もともと自虐的なジョークも好んで口にしていた文子さんが2017年の正月の挨拶として、著者・直子さんに向けて実際に口にした言葉だという。
かつては完璧な主婦でクリエイティブな能力も高く、著者の誇りだったという母・文子さんが認知症という病によって、家事をはじめとした日常的な行為だけでなく、人格まで大きく浸食されていく過程が詳細に綴られる。その過程によって思い知らされるのは、著者が何度か繰り返して強調するように、認知症の当事者自身が誰よりも記憶の衰えをはじめとした能力の減退を強く意識し、混乱し、怯え、恐れているという事実である。そのことは、著者による文子さんの言動に対する洞察を介して伝わる。また、本書の後半では認知症に対する公的支援の利用についても触れられ、認知症と向き合うために必要な実利的な情報が公開されている点も本書の特徴のひとつである。
認知症の進行の過程をつぶさに伝えるだけではなく、本書を強く印象づけるもう一つの大きな要因は、父・良則さんの存在にある。文子さんが認知症を患うまでは、完璧な主婦である文子さんがいることで家事を一切する機会がなかった良則さんだったが、90歳を超える良則さんは、文子さんの症状の深まりにあわせて家事全般を習得しながら引き受け、普段は二人きりの住友家を切り盛りするに至る。そのうえで良則さんは決してそのことを誇るでも、苦労を感じさせるでもなく、あくまで淡々と当たり前のこととしてこなしていく。そして、最後まで認知症が進行していく文子さんの人間としての部分を最後まで信じ続けていたのも良則さんだったということが、終盤の良則さんによる文子さんへのいくつかのメッセージによって伝わる。良則さんの真摯で素朴な言動にはたびたび目頭を熱くさせられる。
本書によって描かれる認知症の物語は、暗さと明るさ、重さと軽さがないまぜになって、非常な現実感とともにその病の実情を伝えてくれる。終盤の著者・直子さんが母の介護を経て得た「救い」は、同時に親しい人の死に直面する緩やかな過程にある「絶望」でもあった。
「愛」「絆」「死」といった言葉はそれだけだと気恥ずかしく、ときには陳腐にすら感じられてしまう表現である。しかし、本書において描かれた一つの家族の物語のなかでは、これらの言葉が重い実体をともなって読み手の心を捉える。認知症という病を詳述するだけでなく、人間にどれだけ深い愛情がありえるか、人はどのように死と向き合うのかを考えさせる深さがある。認知症というテーマにとどまらず、ある家族の歴史を綴った生活史の側面をも併せもつ、非常に印象的で心を動かされる一冊だった。続きを読む投稿日:2022.09.21
最高に素敵な物語だった。事実をそのまま書いたドキュメンタリーだけど、本当に素敵な家族の心温まるお話しで、こんな生き方、こんな死を迎えたい、と思えるようないい本だった。
投稿日:2023.11.17
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