新消費――デジタルが実現する新時代の価値創造
藤井直毅(著)
/プレジデント社
作品情報
【内容紹介】
ライブコマース、生鮮EC、無人コンビニ、KOL、MCN、D2C、C2M・・・・・・
10億人のネットユーザーを抱える「超高速社会実験場・中国」で行われているマーケティング新常識を徹底解説!
デジタルによって人々の消費行動がどのように変貌していき、企業がどのように対応していくべきかを、「DX先進国」中国で行われている様々な先進的事例をもとに、消費の「価値」「手段」という視点から解説。
これまで中国のニューリテールやデジタルエコノミーに関する解説書は中国書籍の翻訳が多かったが、本書は、世界各国との仕事を手がけ現在は中国をベースに活動する日本人現役プランナーによる執筆が特徴。単なる中国事例の紹介にとどまらず、今後の世界的な消費トレンドの考察を試みる。
様々な業界で、広告・PR、新事業創出などに携わるビジネスパーソンに役立つヒントが満載。
【著者紹介】
[著]藤井 直毅(ふじい・なおき)
電通マクギャリーボウエン・チャイナ
Group Account Director
早稲田大学在学中から欧米系PR会社に勤務。投資ファンドから消費財まで幅広いクライアントに対する広報コンサルティングを中心としたコミュニケーション&マーケティング支援に携わる。クラシック音楽事務所にて海外市場を含む新ビジネス開拓、ファンドレイズなどに携わった後、広告業界へ。PRとデジタルを出発としながらマス広告や事業開発の経験も持つ統合型のマーケッター/プランナーとして、メディアや人々のインサイトを捉えた「拡がる」キャンペーン・ビジネスを様々な立場で仕掛けてきた。特に日本からのアウトバウンドマーケティングや新規事業開発など既存の知識や経験をそのまま展開できない分野に強みを発揮する。
近年は中国現地でのマーケティング支援に注力しており、2021年より二度目の中国生活として北京に居を移す。「日経ビジネス」電子版、「東洋経済オンライン」などに寄稿多数。
【目次抜粋】
第1章 EC:「情報の時代」における価値の転換
第2章 店舗:ECと共存するのか、競争か
第3章 KOL:1,000万人インフルエンサーが狙う巨大消費市場
第4章 MCN:EC関与で地位を高める新世代芸能事務所
第5章 メーカー:価値を生み出す新時代のモノづくり
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商品情報
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この作品のレビュー
平均 3.5 (2件のレビュー)
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「ニューリテール」を提唱したのは、アリババ創業者のジャック・マー氏だ。買い物の定義が大きく変わる。
このことを意識している人がどれだけいるだろうか?
ほとんどの人が消費者側と言えるため「買い物が便利に…なるのは嬉しい」くらいにしか思わないかもしれない。
しかし、その裏側ではテクノロジーがものすごい勢いで進化している。
このインパクトは、小売業の業態変化だけに留まらず、社会全体を大きく変化させていく。
もちろん、その影響は他業界も大きく関係し、場合によっては業界そのものが駆逐されてしまうようなことだって起こり得るだろう。
そもそも数十年前、人々はインターネットで買い物するはずがないと言われていた。
それが今日では当たり前の日常的な出来事となっている。
そもそも日本でもインターネットで買い物しないと言われていたのに、中国でこれだけEコマースがとんでもなく進化するなんて、誰が想像しただろうか?
小売の業態変化については、日本の方が進んでいると思っていたが、結果的に中国の方が上を行っているのが現実だ。
一部の分野に関しては、まだまだ日本の方がすごい面があるのかもしれない。
都市部に限られるかもしれないが、コンビニが街中に徒歩圏内で存在し、24時間いつでも安全に買い物ができるというのは、ものすごいことなのだと思う。
(それが当たり前の感覚になっているのも恐ろしいことだが)
当然裏側で動いているシステムに関しては高度な技術が使われているし、製造から物流、店舗配送の一貫したシステムだって、それこそ世界最高品質と言えるのではないかと思う。
これだけ便利な状況を作り上げたのは日本独特の進化と言える。
一方でリアル店舗が便利すぎる故に、インターネットの力を借りて全く違う発想で小売業を業態変化させるというところまでは、なかなか届かなかったというのが印象だ。
おそらくだが、その辺は中国の方が逞しいというか、様々な物事が整っていない状況だからこそ、一足飛びにテックの力を借りて進化している印象がある。
現金がほとんど使われずにQR決済のアリペイが普及したというのも、中国ならではの事情と言える。
日本はコロナ禍を通じて電子決済が多少進んだかもしれないが、新札を発行しようとするぐらいだから、まだまだ現金神話が強力に根付いているのだと言えるだろう。
中国では現金での偽札が多かったからQR決済が進んだという話も聞くが、皮肉なものを感じる部分である。
ECについては、多少日本でもインフルエンサーから商品を購入する流れが出来つつあるが、この面では中国の方が大きく進んでいると言える。
見栄を張るなどの文化的な背景も影響しているとのことだが、日本のインフルエンサーに変わる、KOL「Key Opinion Leader(キーオピオニオンリーダー)」がこれら新しい買い物文化を牽引しているという。
さすがに人口が日本の10倍以上いる中国では、KOLの1日の売上も桁違いだ。
最近では、KOL自身が商品開発しているし、さらにネットで商品を紹介してから製造に入るという方式も増えているという。
在庫の問題を考えると、受注生産が効率が良い訳であるが、今後の世界の流れを考えても、大量生産の方向ではなくなっていくのだろう。デジタル化を益々進化させて、受注と製造を紐づけることで無駄な在庫を減らすということは、大きなポイントになっていくと思う。
そういう意味でも、KOLの存在は益々大きくなっていく気がする。
店舗の場合は、商品を並べて、それを消費者が見て購入を決定する流れは変えようがない。
つまり店舗に並べる商品はすべて在庫となる。この無駄を省くことは現実的には相当に難しいだろうが、ここにも未来にはイノベーションが起こるかもしれない。
買い物という行為そのものが、未来世界でどのように変化していくのか。
それを想像するだけでも面白い。
KOLに戻ってよくよく考えると、日本でも昔は店舗での実演販売で大きな売上を稼ぐカリスマがいたりした。(今でもいるのだとは思う)
それが、テレビ通販での販売にシフトしていって、今はライブコマースに発展していると思うのだ。
この流れを見ただけでも、日本でもライブコマースはもっと流行ってもよさそうな気がしている。
この点は私が知らないだけで盛り上がっている可能性も否定はできないので、検証していく必要性があるだろう。
今後は世界の様々なものが、バーチャル化メタバース化していく中で、買い物含めた経済活動自体も大きく変化していくだろう。
メタバース内のアバターに着せるファッションを、普通にリアルの洋服を買うかのように購入する行為も、新消費と言えるかもしれない。
アバターファッションはあくまでもデジタル上の服であるが、同じ洋服が自宅に同時に届いても面白い。
コロナ禍でオンラインでのやりとりも当たり前になったが、これがメタバース化で益々日常の出来事のようになっていくのだろう。
ファンコミュニティも普通にメタバース内で開催されるだろうし、その中でのモノの売買も当然行われていくはずだ。
ファングッズの購入もあり得るし、物理的なモノだけでなくとも、一緒に食事会を楽しむことや、一緒に映画などのエンタメを視聴して楽しむ権利を売ることもあるかもしれない。
それらがメタバース内で完結することもあるかもしれないが、デジタルの力を借りて、リアル世界にまさに「沁み出す」感覚として融合していくことだって十分にあり得る。
一時期流行ったZoom呑み会では、ウーバーイーツで同じ食べ物を自宅に届けるというのもあった。
これらの行為がデジタルの力を借りて、比較的容易にできるようになったのは確かなのだ。
今後も益々進化していくと思うと、もはや50代の古い感覚ではついていけないのであるが、テクノロジーが想像以上に進んでいくことだけは間違いない。
既存の常識に囚われずに、如何に柔軟に発想するかというのが大切なのだろう。
世界人口は80億人を超えて、今の時代ですでに食料生産を生業にしている人は本当に数少ない。
究極言えば、衣食住だけがあれば人間は生きていける訳で、それ以外ほとんどが無駄とも言える。
ほとんどの人は食料生産以外のことを仕事にして生きているという状況で、「消費」とは何なのだろうと感じてしまう。
消費自体が無駄な行為なのか、それとも別の考え方が出来るのか。
経済活動自体が不思議な感覚になってしまうのだが、今後持続可能な社会を実現していくために我々はどうすべきなのだろうか。
まだまだこれから世界は変化していくと思うと、やはり中国の状況や、これから台頭していくインドの状況を追いかけていくことは非常に重要なのだろうと思う。
日本は益々高齢化で人口減少社会になっていく訳なので、今後は非常に効率的に消費を回していくという、エコシステムみたいなものが数々立ち上がりそうな気がしている。
デジタルによって我々の社会がどのように変貌していくのか。
その時に企業はどう対応していくのか。
様々考えさせられた書籍であった。
(2024/3/3日)続きを読む投稿日:2024.03.16
このレビューはネタバレを含みます
デジタル勃興の中国におけるマーケティング解説。
レビューの続きを読む
レガシーがないぶん、その様はDX後の日本に当てはまるのではないか、という立ち位置。
中国マーケットの詳細が具体例とともに紹介され
非常に興味深い。
また…、デジタルマーケティングの世界を
俯瞰的にとらえる巻末のコメントも
頭に入れておきたい。
次作執筆の際には
中国企業名、サービス名が漢字で表記されるので
登場2回目以降にもルビを入れるか、
もしくはカタカナで表記して欲しかったです。続きを読む投稿日:2022.06.20
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