「天皇機関説」事件
山崎雅弘(著)
/集英社新書
作品情報
「天皇機関説」事件は、この学説を主張する憲法学者の美濃部達吉への、天皇を崇拝する退役軍人や右派政治家の攻撃が発端となっている。1935年2月に始まり、約半年にわたる「機関説」排撃運動の中で、美濃部に対する政治的な弾圧が行われただけでなく、言論や学問の自由も奪われ、立憲主義が事実上停止した。その結果、「権力の暴走」を止める安全装置が失われ、日本は破局的な戦争へと突き進む。この事件は、社会がどのように「壊れて」いくのかを物語る昭和史の重要な分岐点である。現在の政治・社会状況との類似点の多さに戦慄が走る・・・・・・! 【目次】はじめに/第一章 政治的攻撃の標的となった美濃部達吉/第二章 「天皇機関説」とは何か/第三章 美濃部を憎んだ軍人と右派の政治活動家/第四章 「国体明徴運動」と日本礼賛思想の隆盛/第五章 「天皇機関説」の排撃で失われたもの/あとがき/「天皇機関説事件」に関する年表/参考文献
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商品情報
- シリーズ
- 「天皇機関説」事件
- 著者
- 山崎雅弘
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2017.04.19
- Reader Store発売日
- 2017.05.26
- ファイルサイズ
- 1.6MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (11件のレビュー)
-
貴族院議員でもあり、憲法学者であった美濃部達吉らが唱え、
大日本帝国憲法下で30年近くに渡って憲法学の通説とされたのが
天皇機関説である。
国を法人とみなし、統治権は国家にあり、天皇はその最高…機関とし
て、内閣等の機関からの輔弼を得ながら統治権を行使する。
しかし、満州事変後の1935年、軍人出身の政治家たちをはじめ、
右翼団体等から総攻撃を受けることになった。
美濃部達吉が矢面に立たされ、その著作までが発禁処分となった
「天皇機関説事件」を分かりやすく説いたのが本書だ。
もうねぇ、攻撃を開始した軍人出身の政治家っておバカちゃんでは
ないかと思うのよ。美濃部博士の著作さえ読まずに「学匪」「謀反人」
などと言って恫喝するんだから。
それは右翼も一緒。政治家たちを先導した蓑田胸喜なんて、美濃部
博士の天皇機関説の一部を切り取って、理論を捻じ曲げて「けしか
らんっ!」なんてやっているのだもの。そもそも蓑田の「いいがかり」は
私怨ではなかったのかと思うんだわ。
美濃部博士は「一身上の弁明」を議会で演説し、騒動は沈静化するかに
見えたのだが、天皇を利用したい軍部や右翼からの攻撃は増すばかり。
右翼団体や在郷軍人会は別動隊の団体を立ち上げて、国体明徴運動
を錦の御旗にして振りかざす。あれ?別動隊って今の「日本会議」の
やり口がそのまんまだね。
大体、明治維新後の日本って「アジアは後進国だからやだ。ヨーロッパ
列強の一員になるんだもんね」と脱亜入欧を目指していたはずだろう。
それなのに、満州国建国で国際連盟脱退。「日本は他に類を見ない
万世一系の天皇が統べる特別な国なんだぁ」と、西洋思想を排撃って
なんだよ。
天皇機関説を唱える美濃部博士をはじめとした学者さんたちを国賊だと
か、不敬だとか言うけれど、当のご本人である昭和天皇は「機関説で
いいではないか」と容認されているっていうのに。
要は自分たちに都合のいいように天皇を利用していたのは右翼団体や
陸軍皇道派なんだよね。だから、2・26事件を起こして昭和天皇を激怒
させたんじゃないのかな。
今の教科書ではこの天皇機関説に触れているのかな。私は学生時代、
事件の内容は教わらなかった気がする。
新書なので一般向けに分かりやすく書かれており、各人のよって立つ
思想についても解説されているので理解しやすい。
そして、日本会議の手法がこの頃の機関説排撃運動に加担した人たち
と似ていることにうすら寒くなった。
尚、美濃部博士攻撃の急先鋒だった蓑田胸喜は戦後の1946年に自死
している。一説には国体のなんたるかが分からなくなった末の狂死とも
言われているようだ。続きを読む投稿日:2017.08.24
天王機関説事件から国体明徴運動とその後の流れまでを非常に分かりやすく整理してくれている
1935年と100年近く前の事件ではあるが、人の起こしたこと故、現代にも通じる
混乱の最中では道理よりも無理が通…る
国連脱退による国際社会からの孤立、明治以降の欧州文化偏重の傾向、1920年代の軍縮
自国を守らねばならない環境下で力を失っていた軍部が国体という標語のもとに揺り戻しをかけた
結果、理論として天皇自体も認める機関説が排撃され、精神性を拠り所にした国体が推されることとなる
現代日本も経済的な弱体化やコロナ禍という混乱にかこつけて政府は無理筋を通している
社会規模でなく自身の身近な会社でも十分に起こり得る潮流であるし起こっているのかもしれない続きを読む投稿日:2024.01.14
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