22歳からの国語力
川辺秀美(著)
/講談社現代新書
この作品のレビュー
平均 3.4 (40件のレビュー)
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面白い見方も
本書でいう国語力とは,国語の試験で必要な技術でも,単なる基礎教養でもありません.対人的なコミュニケーションを含めて,仕事では論理的基盤の準備が必要だというメッセージです.良くある啓発本とはちょっと違い…,おもしろいと思う部分もありましたが,もう少し突っ込んだ内容を期待していた部分もあるので,この評価となりました.
自分の子供(22歳にはまだまだですが)も含めて,普段接する若者に勧められる内容も含まれていますが,彼らにはピンとこないかもしれないなぁ.続きを読む投稿日:2014.01.19
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川辺秀美(かわべ・ひでみ)
編集者・作家。新聞社勤務。1968年横浜市生まれ。立教大学文学部ドイツ文学科卒業。高野山大学大学院修士課程密教学中途退学。就職情報会社を経て、出版社へ転職。書籍編…集長を経て独立。書籍編集に従事するなかでビジネス書から音楽書、科学書、写真集など幅広いジャンルを手がけ、10万部を超える異色の作品を数々送り出した。専門は、国語力と仏教。https://twitter.com/kawabee
22歳からの国語力 (講談社現代新書)
by 川辺秀美
私たちは学校教育の中で紫式部や夏目漱石の名文に触れ、そこから文法や語彙力を学び、読書感想文などで作文力を身に付けてきました。ではその結果、あなたは自身の国語力というものが磨かれたという実感はありますか? 私は学校教育の国語というものにまったく魅力が感じられず、作文も大の苦手でしたし、「主人公はどのように感じていたでしょうか?」といった問いに対して、まるで興味をもつことができませんでした。ですから、国語を学校教育で習った覚えが定かではないのです。 おそらく私が国語力を磨いた 礎 は、暇をもてあました高校時代の読書からでした。高校時代といえば、青春時代まっしぐらのはずですが、周囲の高校生とは対照的に私は真っ暗闇の状態でした。何をしても「つまらなかった」のです。しかし、時間だけはたくさんあったので、本を読み始めました。
私が初めて自分のお金で買った本は赤川次郎と片岡義男の作品でした。その後、世界文学の古典などを中心に読み、大学時代は神秘学やオカルト、幻想文学などが好みでした。しかし、大学生までの読書体験というものは、自分の精神的な拠り所を作るうえでは役に立ちましたが、神秘学や幻想文学を語る友というものは、いまに至るまで現れてきていません。 読書が趣味というのは、知的でよいと思いますが、ややもすると 捌け口 がなく、自己の世界が閉じたままになってしまいます。もし読書というものが閉じた世界で終わっているとしたら、それは逃避以外の何ものでもありません。
国語力を磨けば、数学力も英語力もアップする
ただし、社会に出ると常にこの数字と向き合わなければならないという現実があります。実際、就活時の適性試験などで最低限の算数や数学をこなさなければなりません。入社試験対策であれば、一冊の本をパラパラ読んで、出題傾向と対策を考えればいいだけです。でも、それさえ苦痛だと感じる人もいるでしょう。
しかし、計算式のコンセプトだけでも理解しておくと、少しは役に立つと思うのです。ブラックショールズ方程式のインパクトとは、金融の世界に物理の考え方を入れ、三次元の世界として物事を捉えたということです。その結果、素人にはまったく理解不能の金融商品が設計され、それが世界の金融市場を動かしているのです。一九九八年に起きたロング・ターム・キャピタル・マネジメントの破綻は、金融工学のうぬぼれから起こり、国際金融の歴史の中でも世界最大級の事件となりました。このように一つの方程式が社会を揺るがすインパクトをもったわけです。数学や数字がもっているコンセプトを理解しておくだけでも、金融がおかしなことになっているという感覚はわかるものなのです。
国語を使って考えれば、自然と数学的な思考はできるようになります。あなたがいま置かれている現状を冷静に捉えてみましょう。その中で必要な情報として「数字」や「数学」があったとしたら、恐がらないでそのテーマの本を自腹を切って買ってしまいましょう。そして、必要なコンセプトだけを理解すればよいという気持ちで読むことから始めてみると、思っていたほど難しいものではないことがわかるはずです。
ちなみに、私のベスト3を参考までに列記しておきましょう。 私の好きな本 ベスト3 1『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ 2『自分の中に毒を持て』岡本太郎 3『かつて』ヴィム・ヴェンダース 私の好きな映画 ベスト3 1『パリ、テキサス』ヴィム・ヴェンダース 2『椿三十郎』黒澤明 3『千と千尋の神隠し』宮崎駿 私の好きな音楽アルバム ベスト3 1『ナッシュビル・スカイライン』ボブ・ディラン 2『モーニング・グローリー』オアシス 3『ウォーターマーク』アート・ガーファンクル
私はとくに映画好きというわけではありませんが、ヴィム・ヴェンダースというドイツの映画監督には大変影響を受けています。ヴェンダースという作家は、一見すると「観客を無視しているかのような」映像作品を作ります。ストーリーも非常に個人的なものです。しかし、逆に個人的であるが故に、そこに噓がなく、多くの観客の心を捉える力をもっています。私はそのようなヴェンダースの仕事ぶりに強く共鳴するのです。ですから、本のジャンルでもヴェンダースの作品が入っています。
あなたは司馬 太郎を知っていますか? 読んだことある人? では、そんな名前は聞いたこともありません! って言う人? おそらく名前は知っているけど、 22 歳の時点で読んだことのある人は五%くらいでしょう。まだ読んでいない人はいますぐに書店に行って購入しましょう。好みは分かれるでしょうが、まずは『梟の城』か『国盗り物語』あたりがよいと思います。
その調査をしていくと、上場企業の内定を次々と獲得していく優秀な学生にはある特徴があることに気づいたのです。その特徴が「司馬 太郎を読んでいる」学生だったのです。そういった学生はコミュニケーション技術に長けていて、OBからいろんな情報を得るわけです。そしてOBから推薦された図書が司馬 太郎だったという学生が毎年必ずいたのです。
このことは何を意味するのでしょうか? それは司馬 太郎の小説が世代を超えてコミュニケーションできる話題を提供できているという事実なのです。ですから、その小説の話題で盛り上がることができるわけです。これは司馬の小説が歴史を題材にしているということがポイントです。史実ですから、いくらでも解釈できるし、それぞれの人が意見を言える題材でもあるのです。
はじめは、司馬 太郎から入ってみてください。なぜかと言いますと、司馬 太郎の小説は時代小説でありながら、「仕事」をする人間の生き様を描いたものだからです。そういう意味でビジネス書などを読む前段階として最適な作家なのです。おまけに下手なビジネス書よりも本質的で優れた情報を吸収することができます。
本というのはたかだか一五〇〇円程度のものですから、そのお金で得られる情報効率は他のメディアに比べて圧倒的に高いといえます。
とくに経営者など、一年間に大量に本を消費する層が一定割合で存在しています。私の知っている限りでは、年間三〇〇~五〇〇冊を読んでいる社長が最高に読むレベルです。
では、一方、編集者というプロのレベルですと、どのくらいだと思いますか? 月一〇冊で年間一二〇冊くらいが平均的です。はっきり言って素人に負けています。プロであれば年間で二四〇冊は超えたいところです。
一つだけはっきり言えることがあります。それはある程度以上の量を読むということが、決定的に重要だということです。質というものは、量をこなしたうえでおぼろげながらつかみとれるものです。そのためには絶対量というものがどうしても必要なのです。私はこの絶対量は一〇〇〇冊くらいかな、と感じています。
とくに根拠のある数字ではありませんが、私が書籍編集者として結果を出すのに約五年間かかりました。その間に読んだ総量がだいたい一〇〇〇冊なのです。それ以降は、読書の質が劇的に変化していきました。手にとってパラッと見た瞬間にこの本が自分にとって必要な本なのかそうではないのか、といったことまでわかるようになりました。ですから、情報の選別が異常なスピードで進んでいきました。
読書のコンセプトを考える時、「多読」という概念は中心に置かなければなりません。多読をし続けることで、語彙力も増して思考も深まっていくのです。また、ある一つの単語を獲得するのには、さまざまな文脈の中でその言葉が使われていることを知る必要があります。ですから、よりバラエティに富んだジャンルのものを選択し、大量の情報に触れることでしか、言葉が獲得されることはないのです。
月に一〇冊読めば上位五%の読書家である
文部科学省の『親と子の読書活動等に関する調査』(二〇〇四年度) によれば、小学生では月平均四冊以上読んでいる人が半数近くいます。このことは子供が読書をしている、または教育の中に組み込まれているため「読まされて」いる数字だといえます。ですから、子供は思っている以上に本を読んでいるというデータになっています。一方の大人は、月平均三冊以下の人が八〇%以上です。この差はいったい何なんだろうと思います。 本当は、このデータが逆になっていなければならないと感じているのは私だけでしょうか? 私の場合、子供時代に読んだ本で、いまでも鮮明に残っていて、自分の人生に影響したものはありません。むしろ、一〇代後半から二〇代前半にかけて読んだ本が私にとっては影響力のある本になりました。
読書の効用は昔から叫ばれていますが、実際に読書が私たちに何をもたらしているのかという研究は進んでいないように思えます。国語教育は誰もが重要だと考えていますが、果…
読書のパワーは社会に出てから思い知らされるものなのです。たとえば、ある専門家と話す場合に、その領域のことについてまったく知識がないのであれば仕事になりません。そこでもっとも役に立つのは読書なのです。ですから、 22 歳になったあなたは誰よりも多読家であるということを目指すべきです。そして、現在のあなたが手にする…
では、いったい何冊読めばいいのか。月一〇冊を目標にしてください。たったこれだけのことで、あなたは読書家として上位五%に入ることができるのです。そして、一〇年後には一二〇〇冊もの本を読破しているのですから、その蓄積は必ず人生にも仕事にも多大な影響を及ぼすでしょう。 月一〇冊分の購入費用は約二万円になります。本の平均価格は一五〇〇円くらいですが、専門書になれば三〇〇〇円くらいするものもあります。二万円という額はいまのあなたにとっては非常に大きな金額ですが、ここは将来への投資…
文章を書くうえでもっとも大切な要素になります。私たちは自分自身のことを知っているようで、ほとんど知りません。しかも、「あなたって○○な人ですね」とあなたについて率直に言ってくれる人はそれほどいません。じつは、自分という存在は、自分にとって永遠の謎であり、一生把握できない存在なのです。しかし、他人から見られているあなた自身の存在を意識できていないと、文章のテーマや説得力が薄くなります。また、文章を書くという行為は、そもそも内面を探索したり、内省することであります。自分自身と向き合うことから、すべては始まるのです。
私は武道を足かけ一五年ほど、そして最近では坐禅を二年ほどやっています。その中のトレーニングとして私たちの頭をリセットするのによい方法があるのでご紹介したいと思います。 たとえば、気持ちばかりがあせって空回りしている時、躁に近い興奮状態の時、怒りがおさまらない時、漠然とした不安感に襲われた時など、さまざまな心の状態をゼロ地点に戻すことができます。三種類のメニューを用意しましたので、あなたの心の状態にあったものを選んでやってみてください。続きを読む投稿日:2024.05.18
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