自己啓発をやめて哲学をはじめよう
酒井穣(著)
/フォレスト出版
作品情報
■衰退する日本社会に自己啓発が罠を仕掛ける!?
そもそも自己啓発ビジネスは、
自尊心が満たされていない人をターゲットにしているため、
コミュニティーの中で、それが満たされる仕組みを作り上げます。
そうして囲い込まれた人たちは、お金を失うだけで、
儲かるのは自己啓発ビジネス側だけというのが仕組みです。
■答えをあなたの外側に求めることが哲学
自己啓発と哲学の決定的な違いは、その答えを自分の内側に求めるか、
自分の外側に求めるかということです。
自分の内側に答えを求めるというのは、
努力すれば成功できる、自分の可能性を信じるというもので、
それを信じれば信じるほど、
薄っぺらな自己啓発ビジネスの罠にはまってしまいます。
いっぽう哲学は、自分の内側にひそんでいる可能性を
あきらめることから出発します。
言い換えれば、自分への執着を捨て去ることの必要性を
説いた学問なのです。
その姿勢は、世の中の絶望と向き合い、
外側の世界に見えるわずかな真実とともに生きることです。
■本書は、自己啓発を捨てて哲学に生きることを提唱しています。
ソクラテス、プロタゴラス、デカルト、
ヒューム、カント、サルトルら哲学者が考えてきた哲学にそって、
哲学が自己啓発を否定する流れを解説していきます。
「自分こそが正しい」という、人間に不幸をもたらすであろう絶望から、
その興味を自分の外側に向けていく哲学にこそ、私たちが救われる道が見いだされ、
そこに救済の可能性があるのです。
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商品情報
- シリーズ
- 自己啓発をやめて哲学をはじめよう
- 著者
- 酒井穣
- 出版社
- フォレスト出版
- 書籍発売日
- 2019.04.10
- Reader Store発売日
- 2022.07.08
- ファイルサイズ
- 1.3MB
- ページ数
- 174ページ
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この作品のレビュー
平均 3.2 (12件のレビュー)
-
立派な自己啓発本とも言える『はじめての課長の教科書』の著者が書く『自己啓発をやめて、哲学書をはじめよう』というタイトルの本。「自己啓発と哲学は表裏の関係にあります。その意味では、自己啓発にハマってしま…う人には、哲学の素養もあると信じています。だからこそ、本書は自己啓発と哲学の違いに注目しています」というスタンスから入る。ここで「自己啓発」の定義が必要になる。そうでなければ、本書で最も重要な概念であると思われる「自己啓発」について著者と共有できずに本を読んでしまうことになる。
著者は、「この不思議な世界に対して、不思議な理由を付けて、他人を利用しようとするのが自己啓発の立場です」という。明らかに人をだまして、お金を巻き上げる悪徳商法という位置づけだ。一般に「自己啓発」を、そのような定義で使う人はあまり多くはなく、単に自分で進んで色々なことを勉強して身に付けようとする姿勢や行動、だと思うのだが、この本ではそうではない。ここまでは定義の問題であるのでよしとしよう。
著者の論理がどこかずれてしまっていると感じるのは次のような記述だ。
「かつて、飢えている子供の写真を見て「外国は大変だな」と感じたことがあるかもしれません。実際に現在の世界では、およそ8憶人の人々(9人に1人)が飢えています。人類は、飢えのない世界の構築に失敗し、こうして飢えている人口はむしろ増えています」
ベストセラーとなった『FACTFULNESS』を読まずとも、上記の記述は感情優先の非論理的な議論の典型になっている。世界の食料事情はかなりのペースで改善されていることがデータでも示されている。『FACTFULNESS』から引用すると、「極度の貧困の中で暮らす人々の割合は、20年前には世界の人口の29%だったが、現在は9%まで下がった。...飢餓という、人類の苦しみの根源が消え去るのも時間の問題だ」となっているのが現状だ。
さらに続く次の記述もひどい。
「ここで、今の世界では、先進国と発展途上国のフラット化(先進国の既得権益が減り、発展途上国との差が小さくなる現象)が進んでいるという事実を忘れるべきではないでしょう。つまり、こうした飢えは、どこか遠くの外国の話ではなく、今後の日本にも確実にやってくるのです」
「フラット化」を先進国の貧困化と捉えるのは決して一般的ではないし、進行している事実としても正しくない。そもそもフラット化という言葉が流行するきっかけとなったトーマス・フリードマンの『フラット化する世界』を読めば明らかにわかるように、この場合の「フラット」の意味はグローバル化に近く、経済状況が平均的になるということではない。逆にフラット化により格差は拡大しているが、貧困は少なくなっている、と捉えることがデータから示されることであり、一般的な認識だ。
進化論の援用もやや見苦しいほどに恣意的で、我田引水である場合が多い。哲学を薦めると謳い、学問の価値を語るのあれば、なおさら慎重であるべき進化論の引用において不用意にすぎる点が多い。
「進化論が事実であれば(これを否定することは困難ですが)運が悪いだけで、誰もが脱落者になり得るのです」と書くが、進化論が事実であってもなくても運が悪いだけで、誰もが脱落者になり得るし、進化論が示すところは過去の自然淘汰により現在の生物相が存在するということが言えるだけで、これを運が悪く環境に順応できなかったと言ったとしても、あなたが運が悪くて脱落するかもしれないことにはほとんど関係ないことである。また、人工知能の登場を、「人類から生活の基礎を生み出す仕事を奪うばかりで、(人類の)収容能力を減らす方向に貢献してしまいそうです」と結論づける。どうしたら、こういう考え方になるのだろうか。人工知能は明らかに生産性を向上する方向で(そうでなければ浸透しない)、その進化の速度が速いことによって混乱は起きる可能性はあるが、地球環境の収容能力の観点からはプラスになりこそすれ、マイナスになることはないだろう。「少子化もまた、子供が欲しくないという頭痛ではなくて、人類が滅亡しつつあるという脳卒中に注目することを訴えるものとして認識する必要があるのです」と書くに至っては、著者の方が「自己啓発」や新興宗教の方向に走っているのではないかと心配になる。
どこかがおかしいと感じながら読み進める。特に、自己啓発の例として「紙に書くと実現する」が不自然なほど頻繁に挙げられる。あまりにも繰り返されるので、読んでいるときから著者はこのセミナーに恨みでもあるのではないかと想像できたのだが、あとがきで、著者の友人が「紙に書くと実現する」セミナーにはまってしまったという事実が明かされる。論理ではなく、感情で書いているのか、と合点した。
最後に著者は、友人でもある山口周さんの本にインスパイアされてこの本を書くことになったと告白する。「哲学」ということでは、体系的にも学問として身に付けてきた山口さんのものとは厚みが違う。また一方、「自己啓発」については、友人がはまった例をあまりに一般化しすぎていると感じる。学問として一定の競争環境とレビューを経て評価された「哲学」には優れている点はある。しかしながら著者が「哲学」を薦める説得力のある議論になっていないし、進化論の解釈なども含めて「哲学」の良さを説明するに至っていないと感じる。
それにしても、酒井穣らしくないし、どこか危うさも感じる。『はじめての課長の教科書』だけでなく、その後の『あたらしい戦略の教科書』、『英会話ヒトリゴト学習法』、『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』、『これからの思考の教科書』、『リーダーシップでいちばん大切なこと』、『ご機嫌な職場』、『君を成長させる言葉』など多作だったが、それぞれ素敵な本だった。どうしてしまったのだろうか。
著者は、一定の社会的評価を受けて、こうやって本を出版できていることを「運がよかった」と言う。それは哲学的な幾多の考えの末に辿り着いた境地なのかもしれない。著者の苦悩と達観(とその境地への静かな熱望)が透けるようだ。しかしながら、昔の本からは滲み出てきた自信や自負までも否定しているようで納得がいかない。初心に戻るという意味も含めて、同じテーマでは本を書かないという著者だが、そういった縛りからは自身を解放してもよいのではないか。
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『はじめての課長の教科書』 のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4887596146
『あたらしい戦略の教科書』 のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4887596448
『英会話ヒトリゴト学習法』 のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4569703461
『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』 のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4334035426
『これからの思考の教科書』 のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4828415904
『リーダーシップでいちばん大切なこと』 のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4820718150
『君を成長させる言葉』 のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4534049080続きを読む投稿日:2019.05.27
自己啓発と哲学は表裏の関係にあり、自己啓発は歴史のある貧困ビジネスという視点に惹かれ読んだ。本来の意味がある自己啓発はちゃんとあるはず。自分の自己啓発が作者の言うような、溺れている者に対して藁を売る貧…相なものでないと思いたい。続きを読む
投稿日:2022.06.12
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