総統とわたし 「アジアの哲人」李登輝の一番近くにいた日本人秘書の8年間
早川友久(著)
/ウェッジ
作品情報
■追悼刊行 日本を思い、台湾を愛した偉大なる政治家、李登輝の人間像に迫る
きっかけは、大学の卒業旅行だった。何気なく見たはずの台北市長選の、熱気に引き込まれた。言葉はわからず、知識もないのに「台湾熱」に浮かされてしまった。そして10年経った2012年、私は李登輝元総統の秘書に指名される――本書は2020年7月30日に97歳で逝去した李登輝・元台湾総統の最も近くにいた日本人秘書が見た、人間味あふれる偉大なアジアの哲人の、最後の8年間の記録である。「暴れん坊将軍とハンバーガーとコーラが好き」「機械に強い」「超現実主義者」「自宅地下に巨大な書庫とシアタールームとゴルフ部屋がある」など最側近の著者ならではの知られざるエピソードが満載。「稀代の人たらし」李登輝のオンとオフを余すところなくみせる1冊!
[目次]
序 章 私が台湾総統の秘書になるまで
第1章 側近の私だけが知っている素顔の総統
第2章 光る政治手腕と人間力
第3章 李登輝の背骨は日本にある
第4章 日本と台湾、東アジアの未来
終 章 アジアの哲人を見続けた八年間と、これから
<著者略歴>
早川友久(はやかわ・ともひさ)
1977年、栃木県足利市生まれ。早稲田大学卒。2003年より金美齢事務所の秘書として活動。2007年から台湾大学法律系(法学部)へ留学。台湾大学在学中に李登輝訪日団スタッフを3回務め、メディア対応や撮影を担当するスタッフとして、李登輝チームの一員となる。2012年、李登輝から指名を受け「李登輝総統事務所」の秘書に。総統や家族の信頼も厚く、最期まで総統の政治活動を支えた。
【企画協力】
ランカクリエイティブパートナーズ
※この電子書籍は株式会社ウェッジが刊行した『総統とわたし 「アジアの哲人」李登輝の一番近くにいた日本人秘書の8年間』(2020年10月17日 第1刷)に基づいて制作されました。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
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台湾の李登輝総統(敢えてこう書いています)が亡くなって4ヶ月が経とうとしています。この間多くの李登輝総統関連本が出版されていますが、早川氏の手による本が抜きん出ているように感じます。人間としての優しさ…、政治家としての強かさのいずれも余り語られていなかったことであることを考えると、総統とそのご家族との最後の8年を共に過ごした李家の家族としての早川氏が語る人物像には尊敬と畏怖と感謝の心が溢れているような気がしました。巨星の墜つ知らせを速報で知り、慄然としましたが、これからも厳しく見守って欲しいと思います。
総統が亡くなられた直後、日本の台湾事務処の各所で記帳が行われましたが、私も大阪は中之島にある事務処に記帳すべく赴きました。平日の昼間であるにも関わらず、10人程の人が記帳の順番を待っていました。総統の遺影を前にして、心の中で「お疲れ様でした。ゆっくりとお休みください。そして、これからも台湾と日本の行末について見守ってください。」と話しかけさせていただきました。続きを読む投稿日:2020.12.07
このレビューはネタバレを含みます
ウェブの記事にて日本人の秘書がいることは知っていた。経歴を見ると同年代、ほぼ同じタイミングで台湾を訪問、同じタイミングで台湾大学に留学していたようだ。勝手に親近感が湧く。。
レビューの続きを読む
さっと読めそうだったこと…もあり手に取って見たら、とても面白かった。李登輝さんの実績はざくっと知っているものの、細かいことはあまり知らなかったこともあり、政治的なことを知るための入り口ではないかもしれないが、身近で見てきたからこその李登輝さんの人間味が非常に良く描かれていて良かった。李登輝さんの人生そのものにとても興味が出てきた。
台中の日本人学校の落成式典に参加した際、李登輝さんが日本統治時代の話をした後の質疑応答に違和感を感じ、尋ねてみると日本は台湾を植民地にして台湾人を苦しめてきたと教えられていたというエピソードが出てくるが、こんな状況が2000初頭まで続いていたことに驚く。
李登輝を抜擢したと言う蒋経国にも興味が湧いてきた。
P.39
総統がいつも言うのは「独立か、統一かという問題よりも、台湾にとって最も重要なのは、台湾が『存在し続けること』にある」ということだ。
P.66
李登輝が話してくれたコーネル大学での思い出話に興味深いものがある。
当時も今も、コーネル大学は農業政策の分野で米国屈指の実績を誇っている。この名門校では、政府が高度な専門知識を持った学者を派遣し、農業の発展を促していくのが伝統的な手法だった。それは「下から上へ」という農民たちが政治に対して影響力を行使すべく、団結して政府に働きかけるやり方ではない。こうしたコーネル大学の理念の影響を受けたためか、李登輝は「台湾の政治を左右する一番の方法は、国民を組織して政治的影響力を発揮させるのではなく、国民党あるいは政府内部を通して変革させていくこと」だと確信を得るようになったという。
P.67
李登輝は徹底した現実主義者だ。名より実を取ることで台湾に貢献してきた指導者と言える。そんな現実主義者たる片鱗を見せたのがこの国民党への入党だった。一番の大きな理由は、独裁政権であるがゆえ、党員にならないと会議にも出席できないし、意見も通らないからである。
李登輝曰く「せっかく台湾の農民のために勉強してきたのに、その意見が通らないのでは意味がない。国民党に入ることで台湾のためになるのならたやすいこと」なのだ。
P.75
そもそも学者出身の李登輝は、もちろん政治経験ゼロである。そんな李登輝に対し、蒋経国は、李の職掌と関係のないような会議であっても「出席するように」と言い渡した。李登輝は会議の前に資料を見ながら、その結果を予想する。学術的に考えればこういう政策になるだろう、とあらかじめ考えながら会議に臨んだ。
ところが、会議はいつも予想とは異なる結果となった。そんなことが何度も続き、蒋経国の発言を注意深く聞いていた李登輝は、ハタと気付く。蒋経国は、普通に考えればAという結論になるところを、さまざまな政治的条件を加味してBという結論を導いていた。つまり、学術的にはAという結論が正解でも、政治的にはBが正解なのだ。政治は、議論に勝てば終わりではなく、あらゆる人々の利益を最大公約数的に実現させなければならない、ということを学ぶとともに、中国人をいかにしてコントロールしていくかを身につけたのが、まさにこの「蒋経国学校」だったのである。
P.76
民主化に着手した李登輝は、政権人事においても人々が驚くようなことをしてのけた。蒋介石はその夫人である宋美齢といった国民党中枢に近く、これまで軍部を掌握してきた参謀総長の郭栢村を国防部長に抜擢しただけでなく、次の組閣でなんと行政院長に昇格させたのである。
郭栢村の横暴ぶりは台湾社会でも批判の的だった。その人物を国防部長どころか、内政の要である行政院長に据えるということは、初の台湾人総統に期待した市井の人々からみれば「李登輝、お前もか」という心境だっただろう。組閣人事が発表された翌日、ある新聞は社説ににただ「無言」という文言だけを掲載して抗議の意を評した。(中略)
李登輝が設定した大きな目標は「これまで党のものだった軍隊を、国家の軍隊に変えなければならない」だった。(中略)国防部長は出世ではあるものの、軍の現場とは離れる。(中略)このとき、宋美齢は李登輝をわざわざ尋ねて「台湾海峡がきな臭いこの時期に、郭栢村を参謀総長から外すのはやめてくれ」と懇願している。宋美齢からすれば夫の蒋介石亡き今、軍部を掌握する郭栢村の存在こそ「党への影響力の源」だったのではあるまいか。(中略)李登輝はさらに郭栢村からすれば「痛し痒し」だったろう。大出世には違いないが、ますます軍の現場から遠ざかる。これは、それまで学んだ中国人の操縦法を使ったものだ。
「中国人は出世が嬉しくてたまらない。でも軍からは離れるし、軍事会議にも出られない。嬉しい反面、郭栢村の軍に対する影響力はますます小さくなっていったんだ」
P.82
李登輝は総統在任中の一九九四年、それまで「山地同胞」などと呼ばれてきた人々を、正式に「原住民」と称することを決め、憲法にも明記するように改正した。それまでなにかと差別されることも多かった原住民たちの権利向上を約束したのだ。
P.87
もともと学術の世界で生きてきた李登輝は、「処女マリアが懐胎した」とか「キリストが復活した」などと言われても、どうにも納得できなかった。「どうしてお論理的に、科学的に考えるからダメなんだ」。(中略)最終的にキリスト教の洗礼を受けることを決めさせた牧師は、李登輝にこう言った。
「見えないから信じない。見えるから信じる、というのは信仰ではない。見えなくても信じる、それが信仰だ」
P.106
日本の台湾統治後期に台湾で実施された皇民化運動により、李登輝の家は「国語常用家庭」として日本名へ改名していた。(中略)「国語常用家庭」とは、台湾人であっても家庭内で日本語を話す家庭で、役所が設けた国語家庭調査委員会に申請することができた。「国語常用家庭」は栄誉と見られただけでなく、同時に多くの優遇措置がとられた。
P.152
日本人の精神性と最も対照的な例が中国の『論語』だと李登輝はいう。(中略)
「未知生、焉知死」(中略)李登輝はごくシンプルに「まだ生について十分に理解してないのに、どうして死を理解できるだろうか」と解釈する。ここに日本人と中国人の精神の決定的な差があるという。
日本人は「死」を大前提として、限りある生のなかでいかにして自分はこの生を意義のあるものにしていくか、はたまだどれだけ公のために尽くすことができるのか、という「死」を重んじた精神性を有している。一方で、中国人の精神性は「まだ生について理解できていないのになぜ死を理解できるか」と正反対だ。だから生を理解するために生を謳歌しよう、という発想が出てくる。「死」という限られたゴールがあるのであれば、それまでに目いっぱい生を堪能しようという考え方だ。
P.159
「台湾はすでに独立した主権国家だ。今さら台湾独立を主張して、中国ばかりか日本や米国などの国際社会と余計な軋轢を起こす必要はない。中国と別個の存在なのだから、この台湾の『存在』を守りながら、台湾が国際社会から認められるために必要なことを積み上げていけばよいのだ」続きを読む投稿日:2023.12.24
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